雑記


煩悩キャリーオーバー


巳年だからスプリットタン空却くんで獄空です。

 年末年始ばかりは本当にお坊さんらしく走り回る恋人と年明けようやくの逢瀬だ。
 メッセージアプリではなく電話で話したい、という、いつにないかわいげに、こちらもつい俺も声が聞きたい、などと甘酸っぱい青春小僧じみたセリフを吐いてしまった。
 疲れのにじむ憎まれ口とラリーをして、しみじみ会いたい、と、こぼすくちびるの形を頭の中で描く。薄桃色に艶めくそこは、塞いで奪ったらほんの少しだけ赤みを帯びる。
 にやけるのをどうにか抑え、近々に約束を交わし、通話終了のボタンを押してようやく口角をゆるめた。
 まだ年明けの厳かな空気の残る寺で会う。いつも以上に最低限の接触しか出来ない——しないと決めている——のをどうにか掻い潜って、キスをしたい——する。

 結果としては、しつこいくらい使えと言って聞かせたリップクリームのおかげで、つやつやとやわこいくちびるからミントの味のクリームをお裾分けいただいた。
 ダメだと言っているのに、と憤慨しながらも、ついに触れるだけなら、と折れた恋人の隙をついて、許されたよりも奥深くへと侵入する。抗議に胸を叩かれても、じわじわと力が抜けていく拳は痛くも痒くもない。ひとしきり味わったくちびるは、年が変わる前となんら変わらず甘かった。
 が、問題は別にある。

「……空却、お前いつからスプリットタンにした?」
「さいしょに、くちンなかつっこんだときにきけよっ」
「そうしたら逃げるだろ」
 だから驚いたけれどそのまま続行した。
 そもそもこちらが二股に割れた舌先にびく、としたのがわかって積極的に絡みついてきたのは恋人の方なのだ。
 ちろちろと二つの舌先でつついたり、生まれたばかりの割れ目に挟み込んで締めつけたり——嬉々としてやりたい放題をして誘い、煽ったのは恋人で、俺はそれに乗っただけなのに。
「いっとくけど、せっそうがやったんじゃねぇからな」
 あげくに初夢枕に立った干支の蛇様の御加護だ、と聞いたこともない話をされる。
「そこは仏様じゃねえのか?」
「そんなの拙僧がききてぇっつうの!」
 おかげさまで助平な弁護士の餌食になったとがなるが、やらしいことをされる原因はお前自身だというのを忘れないでほしい。
「なんにせよ、当分の間は楽しめるってことだな」
「もっかい除夜の鐘鳴らしてやろうか?」
 呆れたそぶりで睨めつける恋人の目が剣呑な色に染まる。
 だがしかし、怒りの皮を被った期待は隠せていないのだった。
2025/01/03/作文


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