雑記


最近観たホラー映画感想文2022夏+EX


別所に投稿した感想文でした。

・映画タイトル→感想の形式。
・タイトルの映画からタイトルにない映画以外まで、とにかくなんでもかんでも余さず全部ネタバレするし、嫌いなものは嫌いだし、好きなものは好きだから言いたい放題する。
・さすがに不親切なのでラインナップですが、不親切なのでリンクで飛んだりはしません。

ドントブリーズ
犬鳴村
呪詛
女神の継承
9人の翻訳家
舞台版 魍魎の匣
実写版 デビルマン

ドントブリーズ
 人に付き合って二回目の視聴なのですが、私の中で『主人公がムカつく映画』として輝いているのですすめたら観てくれました。血縁者ながら正気を疑う。
 なぜムカつくかと言うと、盲目の元軍人おじいちゃんがヤベェ! という情報だけで観たら主人公(男2女1)……泥棒やんけ……。廃墟だと思って肝試しに忍び込むのも「さよなら……(死んでいい)」と思うのに、泥棒で忍び込んでとかもう「さようなら……(なんで生きているの?)」じゃないですか。
 ところがどっこい、こいつら全員死んでほしいな……死ぬやろ……と思って観てたらなんか一人生存するんですよね。いやそこは死んでほしかったな……。盲目の元軍人おじいちゃんが実はとんでもねえ秘密というか秘密……? なんて言葉ですむのか……??? を持っていて、それはまあもちろん普通ではないので普通に嫌……というか気持ち悪いんですが、泥棒に入った輩がそれを糾弾するのは違わない????? 人んちに泥棒入ってる奴が倫理観説くのどうかしてるぜ!! 納得いかないから無理です。せめて死んでほしかった。おじいちゃんもろともみんな死んでほしかった。なぜなら全員罪人なので、中途半端に生存するなら死んでほしかった。
 続編製作中らしいし、上手くいったら続編作ったろ〜! という終わり方をしますが、私はちょっと倫理観が合わないので観ないですね。
 少し前に新世代ホラー2022という本でわかりやすい正義の不在(たしか)という評論があって、そういう様式ならまあ仕方ありませんな、あらためて気が合いませんな、という気持ちになりました。

犬鳴村
 私にこれを「おもらし要素がある」とすすめた友人がいますが、おもらしと垂れ流しと失禁は全部別物なんですよね。あと尿が黄色すぎるし衣服に色がうつりすぎている。ビタミンCなんぼ取ったんだよ。パニック起こしてみかんのドカ食いでもしたのか。幼児退行した妙齢女性がぺちぺち歩きながら垂れ流すのが好きな方は楽しいかもしれません。私はちょっと違いました。取り憑きトランス系で嘔吐失禁はつきものですが、情緒と演出が趣味ではなかったです。やっぱり尿の色がちょっと……。
 内容は雑に詰め込みすぎておもんなかったです。人間関係わかりにく! なんかダラダラしまりがない。見えてる立体的な幽霊とかすし詰めラッシュ怨霊は監督のいつものやつなのですが、なんでしょうね『呪怨』よりも『こどもつかい』よりのテイストだと思うのですが、どちらにもいるメインモンスター=伽耶子・こどもつかいという『核』がぼんやりめ……? 村全体の呪詛と言われたらそれはそうなのですが、だからかまあとっちらかっているというか……。
 あと全然怖くない。こんなに怖くないのに恐怖回避バージョンって何? これが怖い人はこの世の全てが怖いのでは? と思っていたのですが、恐怖回避バージョンは逆に面白いとすすめられて観ました。たしかにいっそこっちのがおもろいのですが、恐怖とは……?(あそこは回避してここは回避せんのか的な)と頭を抱えるハメになりました。本当になんでしょうね、恐怖って。

呪詛
 ネトフリで話題騒然のお前もあいつも道連れホラー! 私は影響をばちぼこに受けるタイプなので回避するつもりだったのですが、推しカプオンリーイベントの翌日、あまりの晴天と多幸感で勢い余って観ました。まさか恐怖を上回る怒りがあるなんて……。
 ドントブリーズでも主人公にムカついていたのですが、清廉潔白、無辜、善良であれとは思わないものの、自らの行いが最悪の人間なんてホラー映画では存在そのものが=死なんですよね。フラグですらなく死。これは逆に清廉潔白、無辜、善良であることが=死のパターンもあるんですが、清廉潔白で無辜で善良な人間は巻き込まれでもしない限り殺人鬼だの悪霊だのが出る危険な場所に行かないし、無作法をして他者を軽んじて恨まれたり呪われたりしないんですね。
 なのでまあ主人公がムカついてムカついてもう全然……。あの女へのムカつきを無視して恐怖できる?! 私は無理でした。ちなみに冒頭も冒頭の里子に出していた娘の引き渡しシーンで娘が「(里子施設備品の)ぬいぐるみがほしい」と言うのに対して、主人公が近くに施設の人がいるにも関わらず一切の確認もとらず「いいよ」と言うのを観て、こいつは一事が万事こうなんだな……と思ったらダメでした。
 演出や試みなどは素晴らしく、観る呪物として成った瞬間などは感動しました。残穢に例える人がいるのもわかります。視覚効果をフル活用したギミックは諸々の耐性があるなら絶対味わってほしい。ただまあ……主人公がムカつきすぎて全〜〜〜〜〜然! 怖くない……。まあ死んだからいいか……と思いました。

女神の継承
 私は他人の祈り(信仰)というものが大好きなので、最近観た中ではぶっちぎりでよかったです。ミッドサマーに近い感覚で、怖いというよりは宗教体験観光映画でした。ただミッドサマーと違ってモキュメンタリー仕様で、本当にこの事件が起きたのではないかと思わされるすさまじい没入感があります。この作品のために作られた架空の女神以外の生活様式や風景はおそらく現地そのものなので、途中まではモキュメンタリーではなく本当にドキュメンタリーのようでした。
 それがまあいっきにホラーとして牙を剥く、牧歌的な異国の風景に混ざり込む不穏な何かによる事件のレポートではなく、観るものを巻き込む恐怖へと完全に転じるラストは、それまでのモキュメンタリーが見事だっただけにちぐはぐにも感じました。急な屍山血河、阿鼻叫喚の光景は陳腐なPOVホラーに落ちてしまったようでがっかりすらしたのですが、後ほどパンフレットのコラムで取り憑かれた女性が「私が撮ってあげる」とカメラを取り上げるシーンについて言及したものがありました。それを読んで、ああもうここは人が観測して何かできる領域ではなくなったんだな、モキュメンタリーではなくホラーだったのだな、と納得しました。まあまだもったいねえ……と思う気持ちもあるんですが、それは個人の趣味なので……。
 この血と炎に穢された地獄絵図の後の本当のラストで、敬虔に祈り続けていた巫女が祈りを放棄して自分の信仰を疑い泣きじゃくります。泣くところは音声のみなのですが巫女の絶望には似つかわしくない、ただの人間に戻った一人の女性にはお誂え向きのなんの変哲もない風景がひたすらに穏やかでした。
 女神の継承のキャッチコピーは『祈りの先に救いはあるのか。』ですが、祈りは信仰がなければ生まれない行為で、巫女という信仰に生きる者は救いがあろうとなかろうと祈らなくてはならないのです。けれどもそれを拒否した瞬間、巫女の信仰は終わりました。本当に女神が自分の中にいるかわからないという疑いの言葉を巫女が口にしたのは、取材班が巫女でいなければならない相手ではなかったからだと思います。押しつけられた役割をこなし、自らの信仰を疑いながら、それでも巫女として求められたから祈り続けた者の慟哭はキャッチコピーに答えるようで素晴らしかったです。祈りの先に救いはなかった。それがこの映画の答え……というのは短慮な気もします。
 『祈りの先』とはなんでしょう。少なくとも途中で放棄され、疑心に負けた『祈り』に『先』などあるとは思えません。果たされなかった『祈り』に救いはありません。救われるまで『祈る』ものが救われるのです。そういう意味ではちゃんと救われたものもいます。お察しでしょうが取り憑かれた女性の一族を呪った者です。あのおぞましい光景を作り出す妄念が『祈り』だなんて、というのは心がないと思います。『祈り』のほとんどは報われず、救われないものがすることです。自らを無力で憐れな被害者だと思うものがすることでもあります。その点でこの映画で猛威をふるった純然たる憎悪と悪意と呪詛は、どれほどまがまがしくとも『祈り』と同じものです。長い年月をかけて果たされた『祈りの先』を観客は観せられているのです。そして『祈りの先に救いはある』のです。思ったものと違うだけで。
 巫女であることを放棄した女性の死様が比較的穏やかだったのも、他者のために祈り続けた彼女への救いだったらよいと思います。死が救いと言うと陳腐に感じることもありますが、ラストの屍山血河はまあ本当にひどいもんなので、彼女の信仰があの地獄絵図で折れて絶えるのを見ることにならなくてよかったと思います。
 それはそれとして結合部が出てないだけのとんだがっつりセックスシーンに、なるほどR18+……と深く頷きました。他には暗視カメラ視点でのモツとか、鍋にされた犬なんておらんかったんや……という犬鍋、頼むから抱えて離さないでいてほしかった赤児丸かじり、もちろん大人も丸かじりなんかがバンバンサービスシーンよろしく出てくる。キツイ人はキツイだろうからマジで注意しよう。
 あと取り憑かれた女性の変わる過程と完全に取り憑かれた後が本当にキッツイ……。びっくりシーンの玉手箱状態の隠しカメラ連発タイムはたぶん一番ホラーしてる。屍山血河、阿鼻叫喚の儀式シーンよりも嫌さがある。趣味嗜好で差異があると思いますが、映像的に絶対びっくりさせられるのがわかっていて、そして期待も裏切られないから苦手な人は目をつむろう。
 総合的に怖いかというと怖くはないかなあ……という感じです。屍山血河、阿鼻叫喚のラストがあまりにも突拍子もないので、なんかそういうんだな……みたいになる。普通に嫌だなってなった。あと常に現実のが怖いので感知できるかわからんホラー現象よりも逃れられない現実のが怖い。最終的には他人の祈り(信仰)フェチが勝りました。愛を知っているものの魂の悲鳴は深みがあってよく響く。

9人の翻訳家
 ファーストショットが焚書シーンのため、本が好きな人間には非常にストレスフルな映画。
 犬や猫が酷い目にあう映画は観れない……! という人がいるのは知っていましたが、自分もそういうのがあるんだなぁと気づきました。
 本が燃えるの! ストレスフル! とにかく折りに触れて燃える本! この痛みに耐えざる者が苦痛の果てに観ると面白くも悲しい映画ですが、とにかく焚書がストレスフル。人殺しより焚書の方が胸にくるんだな……自分……。

舞台版 魍魎の匣
 実写映画版の榎さんのキャスティングに納得のいってなかった人間なので大歓喜。役者さんは悪くない。テルマエロマエはあなたしかいない……! でも榎さんじゃなくない? 王子っていうか帝王の顔じゃん……。木場も以下同文という感じなので大歓喜。くり返しますが役者さんは悪くないですし、趣味が合わなかった私が100%悪いです。
 とにかくキャスティングが個人的に素晴らしくて文句がない。加えて舞台は見えないものを勝手に観客が観るので豪華なセットもCGもなくていい。(邦キチ2.5理論)そうか……やはり2.5なのか……。
 話の内容はだいたい覚えていたけれど、あらためて観ると役者さんの力でいっそう「久保ヤッベ……コッワ……近寄らんとこ……」と思いました。あの人間があれ書いてしかも実際やってました! って編集者って臓器が剛毛じゃないと勤まらないな。(フィクションだよ)
 関口くんの不安定さもとてもよかったですね。そこそこ社会に溶け込みながら、一瞬で崩れ落ちる精神の脆弱さ、感じやすさが関口くんだ〜!! って感じで。
 褒め言葉しか出てこないんですが、唯一にして最大の問題点は配信のみで円盤がないことです。なぜそんな無体を……。huluで! 観よう!(それしか手段がないので)

実写版デビルマン
 何かと話題に出され比較対象にされる伝説の怪作。huluで魍魎の匣を観ていたら「デビルマンも……観れる……」と恐ろしい宣告をされて観ました。

『目が離せないけど退屈』
『絶対観た方がいいけど面白くはない』
 が私の感想の総括です。
 とにかく観ずして語ることは決してしてはいけない作品だと思います。どうしてこれが生まれてしまったのか? どうしてこれでいいと思ったのか? もしかしてこれが全力で最高だったのか? たくさんの問いが生まれては消え、観終わってからも何かと話してしまう。ただひどいクソ映画だった、に終わらせるには高すぎる謎のポテンシャルがあるので、気のおけない友人などと観て死ぬまで語れるすごい作品だと思います。
 ちなみにググって出てくるだいたいの感想と邦キチの評価はほぼ100%そのまま真実です。顔色が悪く声が小さく、笑い所か真剣なのかわからず、金の使い方がどうかしているキャスティングに目眩が止まらぬ2時間強。人生が変わるとんでもねえデーモンムービーです。

 演技が悪い意味ですごいので常に感情が不明なのですが、田んぼのシーンが最高潮だと思います。あの喘ぎめいたものと何を伝えたいかわからないカメラワークを前に人は哲学者になるしかない。
 大事な女の生首を前に発狂する男が主人公という点では超名作のセブンと同じなのですが、前述のとおり感情が不明なので重みが違います。腹から声出して絶叫しろよ! お前の女が辱められてんだぞ!
 とりあえず観ないとわからないし、観ても何もわからない。
 これが本当の恐怖なのかもしれません。

おしまい。
2022/11/06/感想


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