冥土の土産に教えてやるよ

 俺はコスプレが好きなわけじゃない、お前が好きだから何を着てもいいだけでコスチュームフェチではない。
 口を酸っぱくして言っても、またまた好きなクセにとニヤニヤしながら迫ってくる。
 そうして今日はメイドの日だって聞いたんだけどよ、と本人の弁と申し訳ていどのヘッドドレスがなければメイドとはわからないくらい、価格と品性がお手頃なメイド服で乗っかられた。
 上も下も布面積の少ないある種の用途がはっきりした衣装は女性向けなのか、ベアトップの胸元はガバガバで、ちょっとした動きで乳首がチラチラと見えてしまう。狙っているならとんだ小悪魔で、狙っていないならとんでもない小悪魔だ。
 下半身だってギリギリ股間が隠れる程度のミニスカートで、ニーソックスと素足の隙間がチラチラ覗く攻撃力がすさまじい。こっちに関しては狙っている。わざとらしく大胆に動く足は明らかにスカートをはためかせて視線を誘導しているのだから。
「楽しもーぜ、ご主人サマ?」
 ミニスカートの中、下着越しでもすっかり熱を帯びた蟻の門渡りを股間に擦りつけられると、正直に反応してしまう。言葉にしないで目だけで誘う恋人は当然気づいていて、より大胆に腰を振り出した。



「ごしゅじん、しゃま……ぁっ、いく……!おまんこいく、ぃくか、らぁ……っ」
 結局、かわいいかわいい恋人には逆えず、されるがままにご主人様のおちんぽのお世話をしてやると素股でにちゅにちゅとしごかれた。
 楽しげな顔にやられたままでいられるかと、ぷくりとふくれた乳首をきゅぅと引っ張れば、それだけで恋人は股間をびしょびしょにしてイッてしまう。
 放心してふるえる身体を愛撫して、はしたない、いやらしいメイドだとなじって準備万端の尻を犯せば、やはり淫らなおもらしをしたままナカイキしてしまった。
 そこからはもう独壇場だ。恋人が感じすぎて不得手な騎乗位だったのも幸いして、身体中の弱点をかわいがりながら胎の奥深くを突き上げれば、縋りつき、きゅうきゅうと締めつける。
 達するたびに回らなくなる呂律と全身を甘くとろけさせる姿は、メイドでも、ましてや僧侶でもない。
 向かい合って交わって、ひ、は、と引きつった喉から吐き出す息と喘ぎは必死で理性をつなぎとめようとしている。
 今しがた口にされたとおり、根こそぎ搾りとろうと痛いほど締めつけるナカは出口だけではなくなって久しい。
 最初は慎ましやかにきゅ、とすぼまっていた場所は、はしたなく縦に割れ、ふっくらとしてしまった。
 女性器のような秘裂はそれだけ抱かれた証で、束縛したいわけでも支配したいわけでもないけれど、わきあがる優越感と満たされる独占欲に口元が緩んでしまう。
「わるいかお、しやがって」
 ぼそりとつぶやかれた言葉にどきりとする。
 見られたいわけがない。何にも縛られない恋人をベッドに閉じ込めて悦に浸っている顔など。
「……嫌いか?」
「すきだよ」
 ずるいききかたをするとこもふくめて、ぜんぶー
 快楽で溶け落ちたまま、ぼんやりとささやかれた告白にくちづけで返した。



 ぐちゃぐちゃのメイド服をゴミ袋に押し込みながら、ため息をつく。またやってしまった。
 ほとんど抱き潰した恋人はベッドの上でごろごろと転がっている。立ち上がることができないのだからしかたがない。
「なぁにため息なんざついてんだよ。こんなカワイイ〜メイドのご主人様プレイできて最高だったろ」
「自分で言うな淫乱メイド」
「その淫乱の尻にい〜っぱい射精したご主人様の言うことでもねぇからな」
 それは全くそうなのだが、腑に落ちない。
 恋人だってコスプレが特段好きでもないのに、本当にどうしてこんな卑猥な遊びに興じるのか。
「……俺はお前が好きだからメイドでもなんでもいいんだって本当にわかってるよな?」
「もちろんわかってるぜ」
 そんでもってわかってないのは獄の方だよと見慣れたニヤニヤ顔で笑っていた。



 安物だがけして一回きりで使い潰すには安くない買い物をなんだって何度もするかといえば、それ以上の結果が得られるからに他ならない。
 なんにもわかっていない恋人が首を傾げながら部屋から出て行くのを見送り、ベッドに顔をうずめる。
 別にコスプレは好きではない。気分が乗らないと萎えるときすらある。
 なのに何故、と理由を問われたら答えはだいたい一つで、同じようにコスプレに興味がない恋人が"空却だから"と言うからだ。
 どんな装いでも空却だから良いのだと、コスチュームでもプレイでもなく、自分だから良いのだと言われるのはこそばゆく、嬉しくてたまらない。
 真面目な恋人に真正面から空却が良いのだ、好いているのだ、と言われるのなら、痛い出費もかわいいものだ。
 問いて乞えば求める返事は得られるだろうが、それではちょっと物足りない。
 好きじゃないと言いながら食らいついて、やらかしたとばかりに反省会を開くー惚れた相手への誘惑が成功して、自分に陥落する様を味わった上、真摯に愛を告げられる。
 それが恋人と結ばれるまでの恋路をなぞるようでどうにもクセになってしまったことは、本人が気づくまで絶対に内緒なのだ。

2022/5/10


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