常緑の庭の紅一点
「よ」
一週間ぶりの逢瀬は短いのか長いのか。人によるだろうが、少なくとも寂しさのあまり別れを告げてきたかつての恋人には途方もない時間だったらしい。
それに比べて今の恋人のこの態度。手土産を持って訪ねてきた、仮にも婚約者を出迎えるにはスナック菓子よりも軽い。
案内された馴染みの寺の縁側から見える庭は、盛りの過ぎた花と、これから咲き誇る花が入り乱れ、生命の営みそのままに輝いている。
「これから雨が多くなるからな」
次に来るときは何が咲いてるかな、と細める目に他意はない。本当にただまた同じ場所で同じように花を愛でようと言っている。
一週間よりずっと長い時間すら想定した言葉は、けしてこちらを責めることはない。また、次、今度ー遠くない未来を約束する声は心底楽しそうで胸を撫で下ろした。
「どうしたんだよ獄」
「なんでもない」
「なんかあるってツラしてんぞ」
さっさと吐け、と僧侶とは思い難いチンピラじみた声で胸ぐらを掴まれる。さっきとは違う意味で細められた目は、鋭く見えても気遣いがあった。
「本当になんもねえよ」
安心感と、それを抱いた気恥ずかしさをバラしたくなくて余計にふてくされた子供のような物言いになってしまった。今もじぃと見つめ、そらすことを許さない金色には何もかも見透かされている気がする。
「……なんだ、寂しかっただけか」
よかったなぁ一週間で拙僧に会えて、と破顔して胸ぐらから手を離された。ぐしゃぐしゃになった首元を乱暴に整えながら、もっと堪能していいぞと言うやいなや額にくちづけを落とされる。猫の子がじゃれつくようなスキンシップはどんどんエスカレートしていく。
熱を帯びた目は欲を孕み、甘くとけた。見惚れる間にくちびるが重ねられて、ちゅぅ、とかわいらしい音を立ててくっついて離れる。
「拙僧も、会いたかったぜ」
そして意を決したように、うるんだくちびるが遠回しに恋しかったと告げた。
2022/5/14
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