中指発極楽行
挿入だけがセックスではない、ただ触れ合って、抱きしめ合って、互いにここにいると感じるだけで満たされるものだ、と宥めすかされても、恋人のかつてのお相手達はどうだったのかと聞けば口をつぐむ。年齢も性別も恋人にとってイレギュラーな自分はさぞや勝手が違うのだろう。意地になって脱いで、挿入ろ、と乗っかったらごろんと転がされた。
「……はっ……ちいせえなぁ……」
「ち、さくねぇ……っ」
「ちいせえよ」
ようやく手慣れてきた洗浄をした穴をまじまじと見つめられるのが恥ずかしい。全裸で、仰向けになって、足を上げて、尻をぐ、と見せつける。獄以外になんてしたことがない。こんなこと、獄だから許して、獄だからする。
じぃ、と注がれる視線に耐えかねて、両腕で顔を隠した。もしかして頭隠して尻隠さず、はこういう状況だったのか。一番見られたくない恥ずかしいところは押さえられて逃げられない。せめて二番目は隠したい。ただ恥ずかしいだけでない、喜びと、ほんのちょっとの期待と快感が丸出しの場所を隠したい。口と鼻を塞がぬように交差した腕の下、どれだけ心が隠せるのか。
「ちいせえのに、一生懸命くぱくぱしてんのがやぁらしぃ……」
「言うな、ばか……!」
「早く挿入れて……って言ってるみたいでかぁわいい……」
「かわいくねぇよ……っ」
「……そのくせ、撫でたらびくびく腰退いて逃げて」
「こしょばいんだよっ」
「指、挿入れたらちゅぱちゅぱおしゃぶりする」
「……っぅ、ん……っ!」
いつの間にかローションでぬめった指がぷちゅん……っと穴の中に挿入っていた。とは言っても一本だけ。それも第二関節くらいまで。先を考えたらあまりにも小さな一歩なのに、馬鹿みたいに喜んだ体はちゅうちゅうと吸いついてしまう。
「指引っぱっても全然抜けねぇのな」
「ゃめ、ろっ、よ……」
ぬ、ぬぅ、ぬち、と指のほんのさきっぽが出入りする。異物感がないわけじゃないけれど、獄が触っていると思うだけで腹がきゅうきゅうとうずいて止まらない。言われないけれどちんこも勃ってきて、先走りが垂れている。
「今もこんなんなのに、ちんぽ挿入ったらどうなっちまうんだろうなぁ……?」
「あっ、ぅあ……、ゃあ……!や、やぁ……っやぅ……っ」
ぬうっ、と急に深く押し入られて、びくんと体が跳ね上がった。最近しつこくいじられるようになったそこは、はじめはよくわからなかったのに、だんだんくすぐったくなって、ついには気持ちいいと感じるようになった。指のさきっぽでとんとんこりこりと撫でて転がされるとなんにも考えられなくなる。たった一本の指で尻をいじられて気持ちよくなって、足をどんどん開いて、それどころか腰を浮かせてへこへこ振って、ちんこもゆれながら先走りをもらしている。
「顔隠しても恥ずかしいとこ、ぜぇんぶ見えてるからな」
「んなこと、ゆうなぁ……っ」
「ちっちぇ尻で指ちゅぱちゅぱして、気持ちいいとことんとんしてほしくてちんちんと腰振って……やぁらしいおねだりするくらいイキたいんだろ?」
「ちがぅぅぅ……!」
違わない。もっともっと気持ちよくなりたいし、してほしい。獄からもらうものを全部逃したくないし、返せるものは全部返していきたい。いじわるなことを言って、して。でもその全部から好き、可愛い、といつも言う思いが伝わってくる。指の一本でこんな気持ちいいのはテクニックだの素質だのだけで片付くものじゃない。
恥ずかしくて、気持ちよくて、でも素直にならない心が暴かれる。認めてしまったら恥ずかしい、けれど受け入れたらもっと気持ちいい。口よりずっと正直に甘えて、はしたなくおねだりする体が痺れを切らして叫びを上げた。
「ひっ、あ!あっ!あぁっ!ま、ってぇ……っ!ゆびっ、とめろってぇ!」
「……自分でイイトコに押しつけて締めつけてんの、わかってるか?」
「しらにゃ、わかん、っねぇ……っあっ、や、やあっだぁ!も、そこ、とんとんやめぇっ……!!」
気づけば腰を振るのをやめて、一番気持ちいいところを指でとんとんしてもらえるようにぐ、と押しつけていたらしい。しかも抜けないようにぎゅ、と指を締めつけて。
「なぁ、本当。指一本でこんな簡単におまんこになってどうすんだよ」
「まんこじゃねぇ……っ」
「……この状況でそう言えるのが、お前の良いところで悪いところだよ」
何を言っているのかと追及する間もなく、指の動きが変わった。優しく一定のリズムで撫でさすられて、ふわふわと高められていた場所が、急に激しく強く追い立てるように責められる。腰を振っていたときよりなお激しいそれに頭が真っ白になって苦しいくらいなのに、もっともっととせがむように指を締めつけるのをやめられない。
「あっ、あ、あぅぅ……っあ!あっ!ぁンッ!」
「だからな、ちっちぇけどこんな感じてたらもう立派なおまんこなんだよ……聞こえてないか」
何かを言っている。言われているけれどわからない。とびきり恥ずかしいことだとわかるのに、頭の中で上手く理解できない。一気にてっぺんまで追いつめるようだった動きは、びくびくとふるえだしたらまた優しく変わってしまった。快感でうだったほてりをなだめる穏やかなリズムは、ゆったりとしながらたかぶった体を快感から下ろしてはくれない。
「はぁ、あう、やぁ……、も、おまんこやだ……っ」
指一本で体も心もかき回されて、わけのわからないことしか言えない。今でさえこんな気持ちいいのに、これ以上なんて。
「むり、きもちぃから、も、おまんこやだ……ぁ」
頭がおかしくなる、たすけて、と口では言うものの、体は相変わらず指をちゅぱちゅぱしゃぶっている。矛盾した心と体が恥ずかしいのに、どんどん気持ちよくなっていく。
「痛いっつうならやめてやれんのに……!」
「ひ、あっ!や!やぁっ!おまんこやあっ!おまんこすんなぁ……!」
頭がぐるぐるして、わけがわからなくなるほど気持ちいいからやめてほしいのに、指は全然止まってくれない。とんとんこりこりすりすりと優しく優しく弾いてこねて撫でられて、崖っぷちに追いつめられていく感覚がずっと続く。
「や、やぁ、やだぁっ!」
ぎゅっとつむって腕で押さえた両眼の端からぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。気持ちいい。気持ちよすぎて口はずっと変な声で喘ぎっぱなしで、閉じた瞼の裏でちかちか光る。
おかしくなる、馬鹿になる、もう何にもわからない、ただ自分と同じくらい息を荒げた恋人がぎらぎらした目で見ているのだけはわかった。閉じたままでもわかる聞き慣れた呼吸と浴び慣れた視線。安心するよりも先に興奮して、鼓動が今までないくらい速くなる。どくどくという振動が全身を駆け巡って止まらない。
「ひとやっ、ひとやっ……!ひ、と……っやぁ……」
どくどく、がくがくとふるえる体を貫く指の最後の一突きがトドメとなって、指の主の名前を呼びながらイッてしまった。ぎゅぅぅ、と一際強く締めつけて、気持ちよくなるところに押しつけてながら。
それだって恥ずかしいのに、もっと恥ずかしいのは、イッた拍子にぷしゃ、と射精ではなく潮を吹いてしまったことで、当然ながら指を挿入れていた恋人の腕にひっかけてしまった。しかもふにゃりと萎えたちんこからとろとろと精子があふれてきて、止めたいのに止まらない。
「ちんこ、ばかになった……」
「なってねえよ」
よしよし、と宥める声はどこか嬉しそうで、イッた今も両手を顔からはずせない。だって、絶対こういうときに恥ずかしいことを言う恋人なのだ。絶対に顔を見てはいけないし、目を合わせてもいけない。
「……へんなこと言ったらブン殴る」
「変なことってなぁ……例えばなんだ?」
墓穴を掘った、と思ったときにはもう遅い。目を閉じてもにまにまと嬉しそうに舌舐めずりしているのがわかってしまう。思わず腰を引いたら、ちゅぷ、と粘った音がして、指がこりゅ、と中を撫でた。
「ひゃぅぅっ」
「ああ、まだ抜いてねえのに動くから」
ほんのちょっと、ほんのちょっとこすれただけで気持ちいい。もうイッたのに気持ちいい。イッて、落ち着いたと思ったのに、今までで一番気持ちいいのがずっと続いている。
「いったのに、ぃ……っ」
「おまんこはずぅ〜っとイキっぱなしになんだよ」
「いままで、こんなにゃ、なか、た、のに」
「そうだな、だから今日おまんこになったんだよ」
そうして、いっぱいかわいいかわいいって撫でた甲斐があったよ、と悪い顔で笑われて、また気持ちいいところをいっぱい撫でられた。途中から記憶が曖昧で、ぼんやりと「イクときに名前を呼ぶのが一番かわいい」と小っ恥ずかしいことを言われた気がする。
だから変なことを言うなの言ったのに。後片付けに遠ざかる背中を見るだけで寂しくて、思い出すだけで指一本分、体の奥が切なくなってしまうから。
2022/6/1
BACK
作文TOP/総合TOP