『赤』

 五百年の由緒を誇る寺の後継。それも十代前半で荒行を成し遂げた期待の星。
 そう聞いて、ドアを開けた瞬間、蹴りを仕掛けてくる馬鹿タレを思い浮かべる人間はいない。

「なァに避けてんだよ」
「たわけたこと言うな!殺す気か?!」
 愛しい我が家のドアのむこうから嫌な気配がして、引き戸の裏に身を潜めて開いたのだ。仕事柄、雰囲気とか空気なんてモノを読めなくてはお話にならない。ましてこの中にいる奴のことを考えれば、一筋縄でいくわけがない。
 結果、ぶぉんと強烈な風圧が襲いかかり、危うくドアと壁に挟まれてぺしゃんこにされるところだった。直撃したらと思うとゾッとする。そして命からがら這い出てきた相手にこの言い草。人一人圧殺しかけた態度ではない。
 ああでも、なんの因果かこのクソガキが俺の恋人なのだ……。

「で、どーだよコレ」
 ようやく玄関に上がり鍵を閉める。防犯防音の厳重なマンションだが、遅い時間にぎゃんぎゃん喚いてしまった。近所……せめて隣の部屋……次に会った時にでも謝罪をしなくては……なんて俺が真面目に考えているのがわからないのかなこのクソガキ。
「あのな……ってオイ……」
 無意識でジャケットと靴を脱いで顔を上げた先、スマホに送りつけられたとんでもない光景が現実のものとなって広がっていた。

 格闘ゲームの中華風セクシーキャラもしくは悪の女幹部。まずそんな言葉が浮かんだ。
 全体的にはいわゆるチャイナ服なのだが、ビキニ状の胸元、腹や背中は大胆に露出している。尻や太腿に至ってはほとんど丸出しで、スリットというか、いちおう胸元と腰回りと繋がった布が申し訳程度に前後に垂れているだけだ。それも股下15cmもあるかないかだが。加えて色は恋人の髪の色をさらに深くしたような真紅で、肩の部分に黒いチュール素材のマントがついている。
 不機嫌そうな顔でメンチを切っているが、耳の先がほんの少しだけ赤い。おそらく照れ隠しだ。しかしどれほどキツく睨めつけても下品に崩れない。大人しくしているとわかるが整った顔立ちなのだ。
 腰に手を当てて、軽く交差させた足でぺたぺたと床にリズムを刻む。手の爪は弟子にデコられているが、素足の爪は無垢な桜色でつやつやと光る。荒行のなごりで定期的に全身を剃り上げる肌は若さもあってつるつるで、健康的な脚線はもとより、めったにさらされない腹と背のまばゆさときたら。

 どういうことだよ……。

 どういうこともそういうことも、駅前驚安ショップで買ったんだろうな。生地ペラッペラでテッカテカだし。そのチープさも込みでイイんだよな。写真に撮られたのは気に入らないが見る目がある。十四も世話になってるみたいだし法廷には呼ばないでやる。
 でも『なんか道具とか好きじゃねえんだよな……』とか言われてたんだよ。『どんな服着てても、拙僧だからいいんだろ?』とか言われてたんだよ。『獄が興味あるっつーなら別に付き合うけど、あんまヘンなコトはしたくねえ』とか言われてたんだよ。
 そのぜんぶ、眉間に皺寄せてるくせにちょっとだけハの字に下がってて、じわじわ目線をそらして、いつもより小さい声でひかえめに言われてたんだよ。

 いや、どういうことだよ……。

 どういうことも何も、俺が『赤』『それ着て待っててくれるんだろ?』なんて返信したからだよ。
 いかにも遊んでそうな、そうでなくともチンピラみたいないでたちのバカタレだ。そりゃ顔は綺麗だが、口は最悪に悪い。台無しだ。
 それでも本当にただ粗野で下品で頭の悪い乱暴なだけのクソガキだったら恋人になんてするものか。
 思うよりも箱入り後継者をしていて、根っこのところは真面目で聡く慈悲深い。少年漫画みたいな喧嘩やラップバトルに明け暮れて色事なんかそっちのけにしてきたおぼこい子供だ。

 いや、やっぱどういうことだよ……。

 どういうこともクソもない。色気も素っ気もない生意気なクソガキが、なんのかんのぬかしても真面目で聡明な子供が、『大人のオモチャとかコスプレとかまだちょっとムリ』と言外に訴えた初心な恋人が、スケベなコスチュームでモーションをかけてきたのだ。俺にリクエストまで聞いて。
 正直言って本当に着て待っているなんて思わなかった。いつもの服装で残念でした〜と草を生やされると思っていた。それにクソガキとかなんとか言ってベッドになだれ込むと思っていたのだ……。
 じゃあ『黒』と答えたら黒い方を着てくれたのか。しどけなく横たわり、マイクロサイズの丈から伸びる足をきゅっと閉じて秘所を守る姿もたいそうそそるものだった。まあ守れてないんだが。めちゃくちゃに暴いているんだが。
 断腸の思いで『赤』にしたのは露出している部位だ。送りつけられた写真でのポーズは、少し背を反りながら立っているもので、両腕は後ろで組まれている。チュールマントの下の背以外、剥き出しになった肌のまぶしさに、これを見た人間が自分以外にいることに猛烈な嫉妬が湧き上がった。
 『黒』の付け根ギリギリの太腿だってムカムカとするが、寺の手伝いで腕だの足だのはよく出すからなんとか耐えられたのだ。顔だって流し目で大人っぽく微笑んでいて、いかにもな雰囲気を出していた。
 だが『赤』はダメだ。目つきだけは生意気な子供っぽい笑顔と、相反するように艶かしい扇情的な肢体。簡単に何もかも暴かれてしまいそうな危うい布切れだけを纏って、そんな無邪気に笑うなよ。

 あらためて目の前の空却を上から下まで舐めるように眺めた。
 隠しても滲み出る羞恥がじわじわと耳から顔へと広がって、キツいはずの目も心なしか険が甘い。
 だんだんと落ち着きをなくした手足も、露出した胸やら腹やらを隠すように動き回る。
 やっぱダメだな。こんな姿を初対面の男に晒して、あげく写真に撮らせるなんて。
「なあ空却」
「なんだよやっとか?まあ……おだてられて着てみたけど、やっぱヘンだよな」
 すぐ脱ぐからなどとのたまい、寝室へ向かおうとするのをあわてて引き止めた。掴んだ腕はかすかにふるえている。長考しすぎて不安にさせてしまったのだ。
 自分で『思うより箱入りで、真面目で、初心』だなんて言ったくせに、忘れるなんて。
「獄……?」
「絶対脱ぐな」
「は?」
「俺が脱がすまで、絶対、脱ぐな」

「ひとや……まって、ひとや……!」
 一体全体、何がどうしてこうなったのか。
 理由はわかりきっている。だけれども頭と心が追いつかないまま、体だけが高められる。
 出迎えたときのかんばしくない反応に『失敗した』と思った。するととたんにコスプレまがいの格好をした自分が馬鹿みたいになって、せめて一言、なんでもいいからはっきりとした言葉がほしかった。
 あのカメラマンのように褒めちぎらなくていい。呆れるでもいい。怒るんでも、馬鹿にされたってかまわない。無言のまま、全身を上から下まで見られるのが恥ずかしくて、だんだん怖くなった。
 ようやく口を開いてくれた頃には、もうすっかり気持ちが挫けていた。なんでもとは言ったものの怒気を孕んだ目で頭を抱えては何度もため息をつくー答えなんてわかりきったものだろう。
 着替えて仕切り直そう。そう決めて寝室へと向かうのを腕を引いて止められた。驚いて見上げると、ベッドの上で見るようなギラギラとした目とかち合う。腕を掴んだ掌は汗で湿り、心なしか気が立っているようだった。
 訳がわからず名前を呼ぶと、もっと訳のわからないことを言われた上、自由な方の腕で腰を引っ掴んで抱き寄せられる。
 失敗ではなくもっとマズイことになったのだと気づいたときにはもう、くちびるを塞がれていた。

 そしてあれよあれよとこのザマだ。
「ここ、げんかんだぞ……!」
「安心しろ、オートロックだ」
 着替えるどころか場所もそのままにおっぱじまってしまった。
 口内を蹂躙するような深いくちづけに痺れた舌では呂律も回らず、睨みつけても涙でにじんだ目では迫力に欠ける。その上、掴まれた腕や腰のめったに触れられないようなやわな部位をつぅ、と不規則になぞり上げられているのだ。目の前の不機嫌そうな真顔でちんこだけはバキバキにしているおっさんに。
 そのおっさんに惚れて、押しに押して無理矢理オツキアイをはじめさせたのは自分なんだが、それはそれ。なんのかんの言っても獄だって本当に空却と恋人になるのが嫌ならば、いくらでもやりようがあったのにそうしなかったのだ。空却だって、本気で断られたら惚れた男の心を蔑ろにするような無理強いはしない。
 それでも不安は付き纏う。互いに互いを選びあってこうしている。子供の勘違いだとか、大人の過ちだとか、そういう風にならないように、思われないようにしてきた。
 たまに『いつでもお互いがこの関係をやめられるように』と逃げ道を用意して、気持ちを確かめ、試しあった日々を思い出す。
 年齢も立場も対等ではない二人の『オツキアイ』は当初、世間的には犯罪だった。だから獄は空却の父に話を通し、契約書を作り、最低限の接触だけを貫いた。
 十分すぎるほど愛されている。たとえ世間がそれくらい当たり前だと、ヘンタイだとぬかしても、長いリザーブ期間を経て繋がった日の喜びを忘れることはない。
 まあ、ものすっっっごくねちっこかったんだが。

「……考えごとか?」
「ひぇっ!」
 玄関での行為を止めたくてじたばたとしていたら、後ろからがっちりホールドされてしまった。
 ないようである体格差で、耳元に吐息をたっぷり交えて囁かれる。くすぐったいだけならよかったが、晴れて『お付き合い』成立してから積年の欲望をぶつけられ、今では獄に拓かれていない部分の方が少ない。
 穴だらけの耳も早々に餌食になって、そこだけでイケるまでねちねちと弄り倒された。
 おかげさまで条件反射の染みついた身体は簡単に熱くなる。
 耳の輪郭をくちびるで食まれ、ちろちろと舌で舐められただけで背中がぞくぞくとして、胎がきゅんとわなないた。ピアスの外れた外側を吐息と髪の毛でくすぐられるのがたまらない。
「はぁ……」
 はじめはくすぐったいどころかうざったくてかゆかっただけのところがどうしてこんなに気持ちいいのか。ピアスの着脱でも髪の毛をいじるでも何ともならないのに。
 鼓膜に響く水音がわざとらしく繰り返されて、耳の孔の縁を焦らしながら舐められるのに耐えられない。視界に水がはってゆらゆらと歪み、体がどんどん熱くなる。
 耳だけじゃない、ふれたところがぜんぶ熱い。嫌だと言っても絶対にやめないし、本当にやめてほしいわけじゃないからウソもつけない。
 せめてもの抵抗で意地の悪い舌から逃げようと俯くと、うなじをなまあたたかいぬめりが這った。
 べろりと下からなぞり上げて、首のつけねにちゅっちゅと音をたててくちづけられる。耳からたどるようにして、首もとっくに『そういうふう』に躾けられた。音だけはかわいらしいけれど、くちびるのふれたところからダメになる。待ってくれないし、やめてくれないし、逃してくれない。

 ものすごくねちっこく抱かれた日。しつこいくらい確認に確認をされ、何枚もの書類にサインをした最後の最後、喉の奥底からしぼり出された小さく消え入りそうな声で「もう絶対に離してやれねえからな」と言われた。獄に貸された年季の入った万年筆を持つ手を上から握り込んだ手の平はかすかにふるえていたし、汗びっしょりなのに冷たかった。
 獄は空却の最初で最後の恋人になりたいクセに、自分のものにすることで空却から奪うことを恐れている。心や、身体、時間、未来、可能性。空却のすべてがほしいクセに、怖くて怖くてしかたないのだ。
 かわいそうな獄。バカなクソガキをちゃんと見てくれた真っ当でカッコイイ大人の男だったのに、こんな悪僧に捕まって。この期に及んで絶対に目の前の悪い子供のせいにしない。
 俺だって獄から同じものを奪うのだ、むしろもっと多くを。離してやれないのも同じなのに、自分ばかりが奪うと思っている優しいお前だからこそぜんぶあげたくなるのに。
 冷たい手の上にさらに重ねて挟み込む。正反対にバカみたいに熱い手のひらは、交わるとちょうどいい。この恋を、絶対に謝らないし後悔もしないし怖がらない。だから「早く、お前のものにしろよ」
 そうしてようやくお前が俺のものになるんだから。

 恋人は注射の前に消毒をするように、噛み付く前にキスをする。くちびるが離れてすぐ、がり、と歯を立てられた。こんなことめったにしない。するにしたって見えにくい、絶対服で隠れるところだけ。うなじなんていつぶりだろう。
 何かに縛られるのも群れるのも嫌いだけれども、そんな自分を尊重してくれる恋人にマーキングされるのは大好きだ。押して押して押し通して手に入れた男が、同じところに堕ちてくるのがたまらない。
 思ったより深く入ってしまったのか、舌がふれるとぴりぴりとする。おそらく切れて血が出たのだろう。ちゅうちゅうと吸いつかれた。噛まれて吸われて大惨事なのに、びくびくぞくぞくとする背が止まらない。
「は、ふぅ……あぁ……ッ」
 ぽたぽたと床に垂れる音に目を向けると、自分の目からしたたり落ちた涙だった。二、三度瞬きすると、再びぱたぱたと落下する。星のようにきらめくひらけた視界の端、前垂れを押し上げる自身のイチモツが飛び込んできた。
 まだ耳と首だけしかいじられていないのに、汁にまみれてびちょびちょのまま勃起している。尿道口のあたりに色濃くくっきりと跡が残っていて、テラテラとした生地にぴっちりと張り付いた亀頭が恥ずかしい。意識したらまた少しあふれて、シミが広がる。
 でも自分だけじゃない。ずっと後ろ、ちょうど尻のワレメに挟むように押し付けられた獄のちんこも、じわじわと湿ってきている。耳や首をいじめられてふるえるたびに熱く、硬く、太く、大きく膨れて、時折ぴゅっと軽く吐き出す。布越しにぐりぐりと押し当てられた先にあるのは、淫らに拓き尽くされた空却の後腔だ。擬似的に犯し犯されていることにまたふるえる。
 抱きしめられたまま、もぞもぞと尻をふり、押しつけられた屹立を煽る。見えなくとも、くちゅくちゅと鳴る音で先走りで汚されたのくらいわかる。尻たぶに力を入れて、軽く締めつけると、びく、とふるえた。感じてくれたのが嬉しくて、振り向いて笑いかける。

「ひとや、きもちいい?」
 ここは玄関で、俺はスーツを着たまま股間だけくつろげていて、恋人はスケベなコスチュームのままちんぽを煽って、もうめちゃくちゃである。
 鍛えられてほどよい肉づきの身体は、締まっていながらやわらかい。よい筋肉は脱力しているとやわらかいと言うが、抱くごとにやわくなる尻肉に包まれて気持ちよくないわけがないのだが?
 誤射しなかった自分を褒めたいが、その直後にいやらしいスイッチの入った恋人のどろどろにとけた笑顔に再び堪えるハメになった。
 ワルガキそのものの生意気な笑顔とも、ごく自然な無邪気な笑顔とも、びっくりするほど大人びた微笑みとも違う。全身から好きだと訴えて、甘えて媚びて、ぜんぶあげると言いながら、ぜんぶよこせとのたまう欲にまみれた淫靡な笑顔。
 そんな顔でちんぽを尻コキされて誤射しないのは間違いなく三十路だからだ。十代なら無理だった。おそらく二十代も。
 はあ……と深く息を吐き出して、しまったと飲み込むがもう遅かった。
「だめ、だったか?」
 先までの笑顔が嘘みたいに泣きそうな形に歪んだ。快感をこらえて涙をこぼす癖で、終始金色は水の膜を張ってうるんでいるが、それとは別に目尻に雫がたまる。
 ……この状態の空却の頭がだいぶフワフワして、少し幼くなるのを忘れたのは俺が悪い。平時ならば腹の底に上手にきれいに隠す不安を、剥き出しにしてしまうのを可愛いとも思う。
 だがな
「お前、ガチガチのちんぽ押しつけられてるのわかってんだろ……!」
 きっとそんなことわかっていて、それでも不安なのだ。そうでなければそんなこともわからなくなっているのだ。
 片手で身体をおさえたまま、空いた手で後ろの垂れ布を横にズラす。一部が乾いてかぴかぴとこわばる湿った布の下からわずかに覗いたそこは、くぱくぱとふるえながら、中からしみ出た何かで、濡れてひかっていた。

 準備されていたとしてもいきなり突っ込むわけにはいかない。自身の先走りで指先を湿らせ、それでも心許ないので恋人のそれをもらうことにした。しかし急に与えられた直接的な刺激に、じわじわと熱に炙られていた身体は簡単に極めてしまう。
「あっ!あぅ、あ、あん……ッ!」
 前垂れを押し上げてぱんぱんに膨らんだそこを根本から先っぽへと、裏筋をつぅ、と撫でながらしごき、ぷりぷりとした亀頭を指の腹でさすりながら尿道口の縁を優しくなぞると、ぴゅるぴゅると精を吐き出した。
 ちんこは満足したようにくにゃりと首を下げたが、これからまた嫌というほどイクはめになるのを忘れている。空却は覚えているからか、荒い呼吸のまま、まって、だめ、とつたなくねだる。まあ、待つわけがないのだが。

 『お前のものにしろ』と捧げられたその日から、じっくりとねっとりと俺の好きなように仕上げた身体だ。
 性器を受け入れるために拓かれて、縦にくぱりと割れた後腔に、白濁に塗れた指を挿入れる。やわやわと優しく広げるように動かすと、きゅうきゅうと締めつけて歓待された。ぴったりとくっついた身体から感じる脈はどくどくと速く、胎の中も同じリズムできゅんきゅんとうごめく。
「あっ、ひとや、だめ……」
 空却は奥の方にある泣き所をいじめられるのが好きだ。早く気持ちよくしてあげたくて、中に仕込まれたローションのぬめりも借りて、指を進める。きゅっきゅとしぼるように動くものの、もっともっとと先へ導くようでもあるのは、心にもない拒絶との矛盾もあいまってひどく淫らだ。
 たどり着いた、ほんの少しだけ硬くふくらんだ場所を指先でくん、と押すと、それだけで中はこれまでになくぎゅんと締まり、背は仰け反り、くったりとしていたちんこが首をもたげる。
「ひぃ、ンッ!」
 まだ足りないと亀頭にしたように優しくさすると、甘く達し続けてしまうのか、再び前垂れを押し上げたちんこがぴゅっぴゅっと汁を飛ばす。俯きがちだった顔も上を向いたので、こてん、と倒れて差し出された耳孔に舌を挿入れた。
「やっ!あっ!やぁ……ッ!」
 本来の役割とは別に性器として育て上げられた穴を二つ、同時にいじめてやると射精せずに達する。前垂れにじわりとシミがひろがったが、白くないそれは精ではない。耳はともかく、未だにきゅんきゅんとする後腔はようやく熟れてきた。
 指が抜けることを惜しむようにちゅぱちゅぱと吸いつくのをふりほどき、腰を掴んで煽られ続けたちんぽを挿入する。
「あ、ひとや、きたぁ……」
 嬉しそうにほころぶ甘い声に息を飲んだ。ぐ、と亀頭をおさめ、はやる気持ちを沈めてゆっくりと進む。『気持ちよくしてくれるもの』として教え込まれたそれに、素直にぴったりと吸いついた肉壁が愛撫をはじめ、う、と息が漏れた。
 ゆっくりと割り開き、あるべき場所におさまるようにハマると、それだけで充足感がある。こちらが動かなくとも、胎が搾り取ろうときゅうきゅうとうごめくのだ。少しくびれた弱い部分も、精を吐き出す口も、しゃぶりつくされ貪られる。
「クッソ……!」
 好きにしていい。お前のものだ。
 そう、差し出された肢体を何度抱き潰しても、自分のものになった気がしない。
 当たり前の話、どれだけ空却が一途に健気に自分を慕い身も心も捧げても、空却は空却のものでしかないからだ。またその逆もしかり。
 だから空却も獄もアブノーマルなプレイに興味を持たなかった。それで満たされる欲望は、きっと刹那的で寂しくなるとわかっていたからだ。
 今がまさにそうだ。どれほど魅惑的なコスチュームを纏って誘われても、それをするのが空却だからどうしようもなく乱される。それだけなのだ。
 互いを別け隔てるすべてをなくして、自分の中におさめてしまえれるなら。幸福だとか美しいものだけでなく、痛みや傷もまるごと自分のものに出来たなら。
 決して叶わない願望に最も近いのがセックスだった。そして別け隔てられたからこそ愛おしい。
 けして俺のものにならないお前のすべてを受け止めて、けしてお前のものになれない俺のすべてで返すよ。

 腰を掴んでいた手を離し、身体のラインをなぞりあげる。止まった場所はずっと放っておかれた胸元で、両手は薄い生地の下に入り込み、ぷっくりと尖った肉粒をくりくりとこねまわした。
「ちくびはだめ、ちくび、やだっ……」
 ただでさえ後腔をずっぷりと貫かれているのに、触られなくとも勃起して服の下から激しい自己主張をしていたところをいじられて、ひきつった声をあげる。
「なぁにが、ダメ、だよ……!」
 ヤダだってウソだ。根本から先へと撫であげて、乳輪とのくびれ、先っぽのくぼみ、『気持ちいいところ』と躾けられて、いやらしく、はしたなく変わってしまった乳首を、ちんこと同じようにしごきあげれば、濡れた肉壺はきゅんきゅんきゅうきゅうと咥え込んだちんぽを締めつける。
 後ろから抱き支えるようにしてやらねば、とっくにくずおれている身体だ。逃れたくとも上は乳首をおさえこまれ、下はちんぽで繋がれて、みもだえるしかできない。
「もういくっ!だからっ、あ、ふ、ンッ!」
 腕のなかに閉じ込められて、敏感な身体を弄ばれる子供が解放を訴える。こちらももう搾精を促す肉壺に吐き出したくてたまらない。首にしたようなマーキングを、自分だけにしか許されていないそれを、胎の奥深くに刻みたい。
 乳首の先っぽを摘んできゅっと伸ばす。のびちゃぅ、と小さくもらした声は甘く、びしょびしょの前垂れに新しいシミが出来た。とうぜん、ちんぽにもじゅう、と吸いつこうとしたのを、腰を引いて逃れる。
「やだぁ……!」
 ぬ、ぬ、とさらに肉壺から抜かれていくちんぽに、イク寸前だった子供がないた。『気持ちいいところ』はいじめぬかれて絶頂するだけなのに、最後の高みから下ろされる。
「ゃ、やぁ、ひとやのちんぽ、ぬかないで……!」
 奥まで犯されていた肉壺は、いまは亀頭だけをちゅっちゅとしゃぶり、腰を振ろうとしても乳首を引かれて離されてしまう。その間もちんこはぴゅっぴゅっと前垂れにシミを広げていた。
「ひとや、ひとやぁ……おねがい、だから……」
 身動きのとれない身体のわずかな自由、尻たぶに力をこめて挿入を誘う。それにしたって切なげに胎をふるわせながら、ぽろぽろと涙をこぼしてちんぽをねだる顔がこんなに無垢でいいものか。ああもう、とんでもない生き物を恋人にしてしまった。

 乳首をひっぱるのをやめて、先っぽの腹の部分を指先でくすぐりながら押しつぶす。変わる刺激にふ、と息を吐いたところを狙って、どちゅ、とちんぽを突き刺した。
「あッ!ちんぽきたぁっ……!」
 少しだけ元に戻りつつあった肉壺の隘路をちんぽで開きなおすと、ぶちゅぶちゅと粘った水音がして、肉壁全体がぷるぷるとわななく。少しずつ奥へ奥へと押し開き、ずちゅずちゅと音が鋭く変わっていくのを聞きながら、乳首をいじる。胎にするようにくるくると円を描いてこねまわし、撫でさすりながら押しつぶすのを繰り返すと、カンのいい身体は、今からされることを意識して甘くとろけながらきゅんと締まる。そうしてお膳立てをして、再びたどり着いた一番弱いところをごちゅん!、と勢いよく突くと、声もなく喉と背を退け反らせてイッた。
「ハッ……」
「ふぁ、ぁぅ……」
 ぎゅんとキツい締めつけに、たまらず胎の奥に吐精する。びゅくびゅくと子種を叩きつけられた弱い肉壁は、甘くゆるやかな絶頂をし続けているのか、びくびくとふるえて止まらない。先走りをもらしていたちんこは、二度目の絶頂の跡を前垂れにべっとりとつけて、ぶらんとしていた。前垂れと尿道口を繋ぐ白濁に、肉壺からちんぽを引き抜いた後の光景が重なる。ゴムもせずに無遠慮に注がれた胎からこぼれ落ちる精子が、抱き潰されて縦に割れた孔を汚すー想像に難くない光景を現実にするために、ぐ、と腰に力をいれた。

「そういえばお前、下着はどうしたんだよ」
 あのあとあふれた精子をつたい落としながら『ひとやのせえしがでちゃう……』とぐずられて、もう一回、もう一回とヤリ倒した。
 ぐちゃぐちゃの恋人と玄関を完璧にケアして、落ち着いた今はリビングで食事をしている。
 意識を飛ばして復活からの第一声が『飯』だったのは忘れない。ひどすぎて。まあこちらも意識がなくなるまでヤリにヤッたのだ。おあいこということにする。
 なので喉が少し枯れているし、身体全体が痛くてだるいという身に覚えしかない訴えに誠心誠意尽くしていたときに、ふと思い出した。
 内も外もドロドロになった恋人は、下着を身につけていなかった。そういえば最中に脱がした覚えも脱がれた覚えもない。それはそれでいいのだ。『そういうことを期待して』空却は据え膳状態で待機していたのだから。
 問題は件の撮影だ。あのときも、あんな無防備な笑顔で服の下までそんなことになっていたら。
 悶々と、あらぬ想像が止まらない。何もなかったのなんてわかっている。これはただの気持ちの問題だ。
 じっと力を取り戻した金色の瞳を見つめると、にい、と弧を描いて歪む。これはクソバカガキが悪いことを考えているときの顔だ。間違いなく、爆弾を落とそうとしている。自分自身すら平気で巻き込んで、獄を木っ端微塵にしようとする。
 あの色と形だけは無垢なくちびるを開かせてはいけないのに、真珠色の犬歯が獰猛に光るのに目がくらむ。
「獄は、拙僧がノーパンで知らない男に写真撮られたのと、紐みたいなパンツはいて知らない男に写真撮られたの、どっちの方がイヤだと思う?」
 そうして稀代の悪僧は最悪最凶の二択を掲げて睨みつけるように破顔すると、日本茶をずぅ、と啜った。

2020/12/18


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