今日の乳首3
世間が空却を『大人』にしたとき、獄もまたそうすることにした。
ようやく手にした肢体は本人の態度に反して小さいままだったが、出会った頃とそう変わらぬ姿はけして抱かなかった『子供』の恋人をも手中におさめるような悦びがある。
いきなり本番までなんかしない。自然に濡れず拓かぬ上、他人も自分自身もロクに知らない初心で清らかな身体だ。まずはお互いの肌に慣れていく。
全てが許される時を迎えた誕生日の夜。由緒正しい寺から拐かした恋人と自宅のベッドの上でお見合いよろしく向かい合って座る。軽くくちづけながら、普段から気になっていた場所を撫で、さすり、食む。くすぐったい、と笑う声に少しずつ艶が混じり、どこをどうしたときかを脳に刻む。
ところがいそいそと服を脱がしあったときに異変は起きた。起きていたというか起きているというか。見慣れた黒い法衣の下からほんのり桃色の真っ白い肌が出てきた感動もそこそこに、本来ならありえない異物が目に飛び込んできた。
白い胸の上、二箇所に絆創膏が貼られていたのだ。
動揺、逡巡、そして。
「空却、これは」
「……?剥がしていいぜ……?」
そうではない。
なぜ乳首に絆創膏を貼っているのかだ。
不思議そうに首を傾げる恋人に、あざとい、という言葉が頭の中で大量発生しながらも口には出さず、頭も抱えず、ただそっと両腕を拘束するように法衣を半端に脱がせる。
けしていやらしいことはすまいと鉄の理性と信念で極限まで心身にアウトプットの遮断をしてきたのだ。
だって獄の恋人はヤンチャでバカなクソガキで、平気で無防備な格好でケッタで爆走したりするのだから。
風をきって走る赤い弾丸、ヒャハハハという悪魔の雄叫びを上げてギュルルとタイヤを鳴らすそれは「灼空さんが免許取らせない理由がわかる」と檀家さんを微笑ましくさせる見慣れた光景なのだが、獄だけはいつもハラハラしていた。
無防備なうなじが、脇が、二の腕が、ふくらはぎが……乱れれば胸元だって開いて汗のたまった鎖骨が晒されてしまう。
怖いことにわざとではない。煽ろうとしているときはもっと的確にすけべな仕草をする。
これらは「クソ親父から逃げてきたわ!廊下の雑巾掛け全部やり直しとかやってられん!」と獄の自宅や事務所に押しかけてくるときの標準的な姿なのだ。
空却の一番弟子で自分を慕うチーム最年少からは「師匠の仏智斬銅羅威武モードをエッチだって思うの、獄さんだけっすよ」とお腹いっぱい……みたいな顔をされた。ところで仏智斬銅羅威武モードってなんだ。他にあるのか。
そう。意識していなければエッチだな〜なんて思わない部位にすらちんちんをイライラさせていた男に、乳首なんてわかりやすいすけべエリアを高解像度で認識なんて出来なかった。一生懸命見なかった。偉かった。そこにこの仕打ちである。神はいない。空却に言ったら「仏様は神じゃねえな」とか長めの説法がはじまる。神道なら乳首にも神が宿る。
「この絆創膏が……天岩戸……?」
「ナニ言ってんだ獄」
獄の苦悩なんて全然知らない空却は、乳首に絆創膏を貼っているだけでここまで動揺されるなんて、という顔をしていた。
『中坊の頃から煽り散らかしてきたクソガキがなんでそんな簡単なことは失念するんだか俺にはちいともわからん……』と後々に天国獄(三十五歳)は語ったという。
かくして天岩戸は開かれるのだが、恋人同士の閨事が神話よろしく綺麗におさまるわけもなかった。そもそも、神話だって無茶苦茶なのだ。神だから、古代だからと今ならば罷り通らないことが平然と成立する。
しかしながらあの混沌に比べたら、と比較するのも馬鹿馬鹿しい。どっちも乱痴気騒ぎに変わりはなく、獄と空却の話に神はいらないのだから。
薄い絆創膏を押し上げる胸元の小さな粒ふたつ。剥がしていいと言われても、直視に耐えかねてそのまま指で挟んでこすり上げる。ぷちりとした可憐なふくらみ、わずかに覗く乳輪に一息に剥がしとりたい欲望が湧き上がる。
どんな理由でもいいではないか、反応を見る限りわざとではいないのだ。どうせ擦れたとかで気にするだけ損をする。そんな風に考えごとをしていたせいで、ぷるぷる、ぷにぷに、と無言でいじくりたおした乳首がむくむくと育っているのに全然気がつかなかった。恋人がやめろ、くすぐったい、はなせ、と言っているのにも。気づいたときには全てが遅く、ひ、と息を飲んだ恋人が背をふるわせて射精しないで絶頂したのでようやく手が止まった。
サルエルパンツの股間部分を膨らませて、一部分だけじわりとシミが広がる。愛用され、着倒され、色落ちてくたびれた黒い生地では濡れたらすぐわかってしまうのだ。乳首を軽くきゅっ、と掴んだり、ぴん、とはじくだけで、ぴくぴくと脈打ちながら透明な汁をだくだくとこぼし続けている。
焦点の合わない金色は見たこともないほどうるんでとろけ、常ならば生意気で可愛くないことばかり言う口が、あぁ、と意味をなさない喘ぎをもらす。過ぎた快感に溺れた恋人の桃色のくちびるは、半開きのまま涎に濡れてぷるぷる揺れ、割れ目から赤々とした舌が見えた。
絆創膏どころではない。ヴァージンのはずの恋人が玄人顔負けの感度をしていることに内心は荒れまくっているのだが、おくびにも出さずにいじり続けている。
この乳首にした誰かーそんな者いるわけがない。だって空却は獄のことが好きで好きでしょうがないのだ。他の人間が眼中に入るわけがない。傲慢だと言われても、出会ってから今まで押して押して押し切られた当事者である。逆に俺以外に目を向ける余裕があったのかと問い詰めたい。
くにくに、ぴんぴん、と茶色の薄膜下の肉粒をこね回す。泣いて喘ぐ顔は知らない快感への怯えも混じっている。クソがつくほど生意気で、粗暴でかわいくないガキが、つけ入り放題でスキだらけの無防備な痴態を晒していた。
中坊の考えた精一杯の色気をぶつけられては鼻で笑って追い返し、その直後に平気で飯をたかるふてぶてしい笑顔の方にどきりとして。今も感度のいい身体より、淫らにとろける顔より、好きという一念で何もかも捧げて許してしまうような在り方にくらくらしてしまう。
子供特有の愚かさなのか、空却自身の性質なのか、その両方か。なんでこんなに気持ちいいかわからない、とびくびくはねる身体がただただ愛おしくてたまらない。
執拗にいじったせいか絆創膏がはずれ、ぷるん、と勃起した乳首が顔を出した。はがれ落ちる感触にすら感じ入る、擦れて少し赤みを帯びた桃色の尖り。ぷっくりとふくれて、もっと、と誘っているように見えるのは気のせいだと思いたくない。
「……おい淫乱坊主、このやらしい乳首はどういうことだ」
ぴん、と片方の乳首をはじくと、ひぅ、と嬌声を上げた。答えな、と問い詰めるものの、ぴん、ぷに、くにゅ、と両方の乳首を交互に指でかわいがるものだから、ふぅふぅと荒い息を吐いてのけ反るばかり。答えがないまま乳首をしごいていると、びくびくんっ、とひときわ強く反り返り、ただでさえびしょ濡れの股間がぶしゅ、と布越しにおもらしを吹き上げた。
「んっ、んん……っ、ふ、ぅ……っ」
匂いも色も尿ではないが、乳首だけで股間をぐっしょりとさせてしまった羞恥から顔は耳まで真っ赤で、目尻には快感以外の雫もたまっている。かわいらしくないてしまうのがわかっているのか、一生懸命に噛み殺したくちびるがぷるぷるとふるえた。
「答えな、じゃないと乳首ずぅっと……」
みなまで言わず、想像させる。このいやらしい乳首の持ち主が、もっともっとはしたなくなってしまうように。あと純粋にどういうことだ。もしかしなくともー
「じぶんで、やった」
ちくびがよくなるとケツもよくなるってきいたから、とうるんだ瞳で見上げられ、ぐさぐさと胸に見えない矢が刺さる。ときめきとか、庇護欲だとか、ムラムラだとか、愛おしさだとか、そういう名前のついたものが。
たしかに獄は抱くつもりだった。出来れば抱きたかった。ただ空却が望むなら抱かれるつもりではあったけれども、出来れば抱きたかった。
黙して語らずにいてもきっとカンのいい恋人にはバレているだろうとは思ってはいたが、抱かれるための準備をされているのは予想外で。恋人の努力の賜物を苛立ちまじりに嬲ったのを反省する。
反面、無垢な身体を拓く楽しみを奪われたような気持ちもあって、こんな敏感になる前に触れたかった、だんだんと快感を得ていく姿を拝みたかった、とも思ってしまう。なんとも傲慢で強欲な願いだ。渋々のていで付き合いだしたのに、真っ直ぐでひたむきな愛に甘やかされ溺れている。
「一人でこんなやらしくなるまでいじってたのか?」
「やらしく、ない……っ」
物慣れぬ桃色をしているのに肉粒そのものは触れられる快楽を知っている形をしていて、今もつまんだままの先端をきゅ、ころん、と指の腹でくすぐれば、息を飲んで身をふるわせた。この色形と反応をする乳首がやらしくないなら、この世のやらしい乳首のハードルが天井知らずに伸びていく。今までやらしかった乳首が一切すけべではなくなる。お前はそれにどう責任をとるのだ。世界の基準、宇宙の理、人の法、その全てと戦う気なのか。どう考えても自らの乳首のいやらしさを認めた方がいい。
恋人の、空却の予想外の全挙動が獄を狂わせ、職員なら「天国さん、お休みしてください」と青い顔で懇願し、十四なら「獄さん、疲れてるんすよ」と本心から心配して労ってくれるようなことを考えていた。
件の恋人といえば、目の前で大宇宙の真理にふれたことをポーカーフェイスで隠し切って乳首をねちねちと愛でる獄をばか、すけべ、ちくびばっかりいじんな、と舌足らずに詰りながら、ぴゅる、ぷしゃ、とぷぷ……とおもらしをしている。腰をゆらし、足をもじもじとさせ、股はもうぐっしょりとしてかわいらしい性器の形もくっきりとしてしまっているのに、抵抗しない。
普段との落差を考えれば、よっぽどしなでも作って婀娜っぽく誘われた方がマシというものを、口先だけの拒絶でとっくに受け入れて許しているのが透けて見えるからタチが悪いのだ。眉を顰められる派手な外見相応に遊んでくれていたら味わうことのなかった苦悩と歓喜が押し寄せて、獄は頭を抱えるしかない。
「こんなんじゃなかった」
すぎた快感に鼻を鳴らしてなく子供は、自分一人でいじっていたときはせいぜい硬くなって、むずむずしたくらいだったのに、と猫の子のような目をまんまるくしている。
獄だってこんなんではなかった。十六も年下の子供の乳首の感度に一喜一憂する日が来るなんて思っていなかった。ガキに何を言われても鼻で笑ってきたのに、解禁早々に目の前で"お前が触るから乳首で感じている"と無自覚に放たれたらたまったものではない。
思えば空却はずっとそうだ。"獄が好きなもの"を的確につついてくるのに、"獄が好きな空却"には照準が合わない。簡単にわかりそうなものなのに、ぜんぜん知らないわからないという様子でいる。今だって"獄だから"なんて言葉が覿面に効くのがわからないはずないのに。
この間も恋人のかわいい乳首はいじり続けている。触りすぎてだいぶ赤くなってしまったが、感度と尖りに見合ういやらしさが滲み出してきた。ごく、と唾を飲んで吸いつくのを踏み止まる。
「もう、やめろ……っ!」
ついに恋人からストップがかけられた。ゆるく拘束された腕を胸元を隠すように寄せる姿がまたあざとい。そうしたところで手の動きは止まらないし、むしろぎゅうと寄せられた手にねだられているようですらある。
いい加減わざとだろう。いやむしろわざとであってほしい。でないともう、ひどい無体をしてしまいそうだ。これが百人が百人同意してくれるものではなく、惚れた欲目と一蹴されるものだとしてもかまわない。恋人の悩ましさの前には全てが些事だ。
「……こんな煽られてやめられると思うか?」
そもそも絆創膏をつけている理由だって聞いていない。硬くなってむずむずした、とは言っていたが疑わしい。ぷっくりとした乳首は完全にいやらしい性器としてそそり立っている。今ほど感じなかったにしても、何かしら思うところがあってつけたのは間違いない。
「煽ってなんかねぇ、よ……っ」
「お前な、もう少し俺に愛されてる自覚持てよ」
「あ……」
い、と言いかけたくちびるを奪いとる。ああいやだ。このガキはなんにもわかっちゃいない。裸になって身体の一番やわなところまで晒して触れ合うに至ってなお、自分ばかりが追いかけていた頃の気持ちのままでいる。
憎からず思っていたにも関わらず、焦らして拒んで待たせて追わせた獄が悪くないとは言わないけれど、それにしたってだ。重ねたくちびるをちゅ、ちゅ、と吸って食むだけなのに、嬉しくて、恥ずかしくて、でも気持ちいい、と思っているのが全部わかってしまう。
入れてくれ、と舌先でくちびるをノックすると、逆にかたくなに閉じてしまった。以前の話し合いでキスだけならしてやると折れるなり、ぱかりと明け渡された小さな口の中をめちゃくちゃに荒らしてから警戒をされている。いっそ抱かれた方がマシ、とまで言われたが、抱かれたこともないクセによく言う。あの時は単純にキスに弱いか口が弱いかのどっちかだと思っていたが、もしかしなくともアレも"獄だから"なのか。
なおもノックを繰り返すと、ほとんどとろけた目で睨めつけながら、すぼめたくちびるで舌を吸われた。だからなぜこいつはそういうことをするのか。
動きを封じたつもりで若干ドヤ顔をしているが、それでじゅ、ちゅぅ、と音を立てて舌の先っぽをしゃぶっているのだ。ぷるんとした薄紅色のくちびるでやわやわと。煽るの意味を調べてほしい。サジェストでお前の名前が出てくるから。
しかしこのおおたわけはすっかり忘れているが、まだ弱点ー乳首は握ったままなのだ。正確には摘んだ、だがそんなことは問題ではない。目の前のクソガキに、もう恋人同士なのだとわかってもらわねば。
「ふっ、ぅんっ……!」
きゅぅ、と強く乳首を引っぱると、じゅっ、と舌を吸われた。びくびくとふるえる身体はすっかり熟れきって、蜜のようにだくだくとおもらしをしているのに、心がついてきていない。とろとろとした金色は与えられる快感でいっぱいいっぱいで、飲み込めきれていないのだ。
「……お前はどう思ってるか知らんがな、俺は好きなやつの裸見て、触って、こんな反応されたら、限界なんだよ……!」
舌を引き抜くと、つぽん、と間抜けな音がしてくちびるから解放される。頭が甘く痺れた恋人にも伝わるよう、ストレートな言葉を選ぶ。好き、と言った瞬間の、びくん……っというふるえはすさまじく、つい摘んだ乳首をぎゅっ、と潰してしまった。それすら快楽とした素直で貪欲な身体が、ひくひくん、と淫らにわななく。
「ふ、ぁああぁぁ……」
「そろそろわかれよ……お前が何したって、俺はもうまともじゃいられないんだって」
普段だってかわいくて仕方ないのに、獄にだけ、獄だから、とかわいい姿を見せられて。何度こんなに気持ちよさそうにしているのだから、とはやる気持ちと手を抑えたか。未だ秘められたままの奥の奥まで、痛いほどふくらんだ性器で暴き立てる妄想は強行突破可能なのだ。
「ひとやも」
うっとり、か、ぼんやり、か。夢見るような瞳に見上げられる。つたなく呼ばれる名前にすら年甲斐もなくきゅん、と胸がときめいてしまう。恋人という言葉の恋の字に感じていた洒落臭さが、空却と付き合いだしてから実感を伴うばかりだ。これまでの自分を、全てを、壊すような感情の嵐。
「ひとやも、せっそうと、おんなじかぁ……」
そして嵐のど真ん中の子供が嬉しそうに笑う。摘まれたままの乳首を刺激されるのもかまわず、腕を寄せ上げて抱きつくようにするのがいとけない。振り回して、振り回されて、今もなんにもまとまっていないのに、おんなじだと言う顔がどうしようもなくかわいくて、ほだされる。
もう一度、くちびるを奪って引き寄せた。だらしなくゆるんだ口腔は今度はノックいらずに歓待してくれて、へにゃりとした舌は簡単に絡めとってしまえる。完全に勃起した乳首をすりすりと撫でれば、ぶるぶるとふるえて目を閉じた。
「ん、ぅ、む、ぅ……」
快感をこらえるように眉間にシワが寄る。普段の小生意気な説法まがいを言うときとは違うシワが。そこだけ切り取ったらどれだけの人間がわかるのか。わからなくていい、誰も知らないままで。
蹂躙しつくした口腔はされるがまま、乳首だって止めるはずの腕がぎゅうぎゅうと締めつける。もじもじとする濡れた下半身はぴん、と張りつめていた。
最初に上だけは脱いで、下はほとんど乱れていない。だから余計にふくらみが痛む。貯め込まれた欲望は爆発寸前だ。
「んっ!」
くん、と乳首を引いて、ふにゃふにゃになった空却の身体を胸で抱き止める。そのまま手を離して、最低限、それこそジッパーを下ろしただけのまま、互いの股間を引き合わせた。
下着越しの熱の塊はどちらもぬちゃぬちゃとしていて、ひとまとめに握り込むと倍になる。ひ、ん、うぅ、となくのを無視して、くちくちぬちぬちと扱くと、跳ねる身体が勝手に乳首を擦って、さらにぐしょぐしょになき濡れた。
どうせ後始末が待っている。さんざんな有様のベッドも服も考えると嫌になるが、この瞬間には変え難い。この世にも、寝台にも、神と仏はいないのだ。いるのはかわいい恋人と自分だけ。ならばベッドを丸ごと買い替えればいい。
「ん、ぅん、ん、ん〜〜〜……っ」
ずりゅ、ぬちゅ、と乳首だけでなく腰をふって陰茎も擦り出した。くびれと先っぽがいいのか、そこばかりをぬ、ぬ、と押しつけられる。乳首だけの刺激で甘く達し続けた身体にようやく訪れた強烈な快感を逃したくないのだろう。目尻からこぼれたしずくがぱちんとはじける。
「う、んっ!ん!ぅん……っ!んん……っ!!」
頬をなぞる涙を合図に、手の動きを早め、よく擦っていた場所を重点的に扱き上げた。ぬち、ぐち、じゅぽ、じゅ、と動くごとに増す粘ついた水音に乱されて、口腔の中までもぐちゅ、ぶちゅ、とはしたない音を立てる。絶頂が近い。
もう肌に慣れる、なんてものではない。そんなかわいらしいものではなくなってしまった。音だけならば挿入しているのと同じで、充満している空気は淫靡でしかない。
空却に出会ってからこんなつもりではなかった、とずっと言っている気がする。何もかもめちゃくちゃにされっぱなしで、何一つ思い通りにならなくて、なのにそれでもいいと思っている。思うほどに愛してしまった。
「ん、ぅん……っ!」
これが最後、と舌も、乳首も、陰茎も、ぐちゅん!と強く交わって、同時にびゅ、びゅる……、と達する。お互いに余裕なく、一気に極めてしまったものの、落ち着いてくるとなんともいえない気恥ずかしさが湧いてきた。
「……お前、結局なんで絆創膏つけてたんだよ……」
言うに事欠いてそれはないだろう。
なんだかんだと勢いでやってしまったが、乳首も、下も、触るのは初めてだったのだ。やらしい反応はキスで見慣れていても、身体に触れるのは今日が初だ。それをこんな暴き立てて嫌になってやしないか。
「……服、すれて気持ち悪ィから……」
お前もお前で普通に返すな。
だいたい想像どおりの答えで安心したものの、思えば獄しか知らない恋人は比較対象がない。こんなもんかと思ってしまうかもしれない。
「あー……なんか悪かったな……」
「何がだよ」
「初めてだろ、一応」
「一応じゃねえわ。ツルツルピカピカの新車だったわ」
どっかの淫行弁護士に傷モノにされたけどな、と詰る口調は、言葉に反して嬉しげで、それに、と少し怒ったように続いた。
「拙僧は、嫌だったらとっくにここにいねぇんだけど?」
空が落ちてくるみたいな顔してんじゃねえよ、と未だに法衣でゆるく拘束された腕を無理矢理に上げ、てい、と頭を叩かれる。
全くそのとおりで、獄の恋人はこの世のなによりもかわいくて、強いのだ。
本当に『大人』になってもどうかそのままーいや多少は落ち着いてほしいがー隣の、ほんの少し前で笑っていてほしい。
それはそれとして今晩のことはリベンジする。絶対にだ。
2021/12/12
BACK
作文TOP/総合TOP