小鳥はとっくに鷹のもの

「空却さんってもっとこう……ガンガンいくぜ! って感じだと思ってたっす」

 同じチームの、恩人と師匠がお付き合いしているというのは早々に知らされていたものの、そのお付き合いが清らかなものだというのは今日初めて知らされた。
 恩人はさておき師匠はとにかくせっかちで、待つのが嫌いだと言ってはばからぬだけある。なのでお付き合いともなったら、どんどんステップアップしているのだと思っていたのだ。
 それがまさか来月末に成人するに当たって結婚、そして初夜、なんて言われたら驚きもする。ようやくだぜダーリン、と恩人にわざとらしく婀娜っぽく視線を流す仕草なんて、とっても純潔とは言い難い色気があったのに。

「あのな十四、この生意気クソジャリ坊主はどっからどう見てもチンピラなんだが、煙草も吸わない、酒も飲まない、博打も打たない、当然セックスもしない――暴力と人格以外は割とちゃんと坊主なんだよ」
「言いたい放題してんなぁ? 脱法スレスレバレなきゃ無罪のちゃんとしてねぇ銭ゲバ弁護士」
「事実だろ」
 相槌を打つ間もなく、恩人と師匠の舌戦がはじまってしまった。暴力はともかく人格以外ってなんだよ、体しか残んねぇだろ、と食ってかかるのに、体は清らかだからお坊さんしてんだろ、としれっと返す。
 思えばファンだと言う人が露出の激しいファッションでセクシーなアピールをしても、慌ても騒ぎもせずに風邪引くぞ、と自分のスカジャンを羽織らせようとして失神させていた。恩人にも同じようなのか違うのかはわからないけれど、どちらにしろ自分にはわからないことで、詳しく話されたらきっとどきどきしてそれどころではなくなってしまう。
「ふ、二人の世界に入らないでくださぁいっ!」
「入ってねぇよ!」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねえ!」
 自分がまいた火種でもあるから回収しようとすると、綺麗に揃った仲の良い返事がかえってきた。



 涙腺が壊れたチームの末っ子は正しく自分の恩人と師匠を見ていて、正しく二人の気を引く発言ができる、が――
 まだまだわかっていない。

 実際、空却はガンガンきていたのだ。
 今までなら知らぬ存ぜぬと捨て置いた行為と欲をお前とならしたいし欲しいと求めてきて、自分がさんざアピールされたときに見たのであろうしなを作り、なぁ獄、と二人きりとみたら所構わず迫られた。
 成人まであとたった一年。婚約もしたのだから、いまどき婚前交渉はよろしくないなんて頭が固すぎる。それよりもう我慢できない。キスと服の上からの触りっこだけじゃ物足りない。
 色恋の色の方にとんと興味を示さなかった恋人に、そんな風に熱っぽくシタイ、ホシイ、としなだれかかられて流されないなんてありえない。まして出会った頃の、中学生だった恋人ならばいざ知らず、あとほんの一年で名実共に大人になる恋人だ。
 湧き上がる衝動と熱に浮かされた白い肌が桃色にうだり、脱ぎきられずに乱れた作務衣がそれを引き立てる。初めて抱いた強烈な欲望に溺れた目は、常の鋭くも清廉な力強さをたたえた金色からは想像だにしないほど甘く濡れていた。
 抱く。恋人の父親には結婚後と約束していたけれど、バレなければいい。バレても恋人が婚前交渉を迫っているのは周知の事実で、あんまりシタイシタイとうるさいからちょっとだけしました、と言えば仕方ないと思ってくれるだろう。思ってほしい。
 こちとらずっと恋人をおかずに抜いているのだ。それも年々凶悪化するセックスアピールにこちらのイライラとムラムラも限界で、ついにはどう考えても恋人に似せて描かれた赤毛の少年がパッケージの『生意気ヤンチャっ子キツキツ♡アナルホール』を見つけて、ついうっかり……うっかり使ってしまってから、リピーターになってしまった。
 パッケージに書かれた文言は『最初はツンツンしててちょっと怖〜いけど、エッチなことに興味シンシン♡な男の子のお尻はおちんちんによわよわ♡生意気キツキツ♡処女アナルをいっ〜ぱい♡かわいがってあなただけのエッチなとろとろおまんこ♡にしてあげよう♡』などというどうしようもなく下品で頭が悪いものだった。が。
 した。ものすごくした。本当にキツめに作られたアナルホールは公式サイトユーザーレビューで『キツキツ処女アナルにちんぽを突っ込んで雑魚まんこだとわからせるのがイイ。無理矢理ちんぽの形を覚えさせるのがたまらない』と『優しく可愛がってゆるゆるとろとろになったお尻を生ちんぽ中出しで処女も男の子も卒業させてエッチなおまんこだとわからせるのがイイ』の二派閥にわかれている。
 実際に行為に及ぶとしたら無理矢理などとても出来ないし、したくない。現実的にするならば絶対後者しかない。他の奴とセックスしたいなんて考えられなくなるくらい、気持ちよくしてやるつもりだ。
 だからかイライラとムラムラを追い払うように、キツキツのまま使用することが多かったのだが、これがまあものすごくよく出た。こっちの気持ちも知らないで親父に義理立てするより拙僧にちんこを勃てろと言う恋人の、最低ギリギリに濡らして慣らしただけのヴァージンアナルを、自分のちんぽで無理矢理おまんこにする悪い妄想はひどくたかぶる。
 ごめん、ごめんなさい、と泣きながらちんぽに媚びるよわよわおまんこの恋人にダメだ、許さない、とダメ押しの生中出しをする。さっきまでぴっちりキツキツだったヴァージンアナルが、ちんぽの形にぽっかり開きどろどろのザーメンまみれのすけべまんこになっているのを見ると簡単に復活した。
 そんな妄想よりもずっとかわいらしく色っぽい恋人が、こちらに拒む様子がないのを見て、獄のちんこに触りたい、とすでに膨らんでいた股間へと手を伸ばす。少し遠慮がちにも感じるものの、ベルトをゆるめ、ジッパーに手をかけ、ちぃ、と下ろす動きに迷いはない。
 妄想と現実は違う。オナホールと人体も。挿入はしないとして、お互いのちんこをしごき合うくらいはするだろう。最初に自分のを触らせるから、次に恋人のちんこを触らせてもらおう。きんたまと、できればアナルも触らせてもらいたい。妄想の中で育ってしまったイメージを、現実の恋人で塗り替えたい。
 興奮とたかぶりの果て、ジッパーが下ろされると同時にぶるんっ、と飛び出したちんぽは、ボクサータイプの下着を突き破らんばかりの勢いで、実際少しはみ出していた。さすがにがっつきすぎたかと、ジッパーを下ろしたきり黙ってしまった恋人を見る。
「……デカすぎねぇ?」
 まんまるに開かれた目は少し怯えていて、まだ完全勃起ではないと言うと、は? とさらに大きく見開いた。少ししてかぁ、と頬が赤くなっていくのがかわいくて、もっとかわいい表情を見たくて下着をズリ下げてやる。
「……っ」
 縛るものがなくなったちんぽがぐん、と天を指し、ぶっくりとふくれたさきっぽ、赤黒くぐんと張り出したエラ、どくどくと脈打つ血管の浮いた太茎もずん、と恋人の眼前にさらけ出された。言葉もなく、呆然としながらちんぽをさきっぽから根っこまでじぃ、と見つめ、妄想の中で何度も貪ったくちびるが開かれた。
「……ごめん、むり」

 曰く、あんまりデカくて、色もすごくて、形もなんかヤベェからムリ。
 病気ではないこと、個人差や体格差や経験の違い、その他色々ともかく『俺のちんぽは怖くない』と説得を試みたものの、そもそも性に淡白な恋人からすると『頑張って説明してるけど戸惑う拙僧を見ながらびきびき尖ってるのもなんかこわい』らしい。
 そんなのしょうがないだろ。あんなエッチなことぜぇんぶわかってまぁす♡ みたいなツラとポーズで散々煽ってきたクソエロガキが大人の完全勃起ちんぽでビビってんのに興奮しないわけがないだろ。お前の日頃の行いが俺のちんぽに悪いんだよ。
 ――なんて思っても言えるわけはなく、とりあえずその場をおさめて、せめて空却のちんこも見せてくれ、と頼んだら、誘っておいて拒んだ引け目からか抵抗もなく見せてくれた。
 恥じらいからか少しだけ硬くなったものの、ほぼ平常通りらしきちんこは体格相応の、けれども色も形も使用回数が伺える綺麗なものがふるりと股間で揺れる。あまり見ると目に毒で、焦点を合わせぬようにしてしまう。きんたまも尻もぷりんと愛らしく、再び首をもたげる股間に一生懸命に鎮まるように言い聞かせる。アナルが見れなかったのは残念だったけれど十分満足だった。満足だと、言い聞かせた。
 双方股間をおさめて、なんとも言えない空気の中。いつになく殊勝な顔をした恋人が、初夜までには腹を括るから、とこれまた珍しく小さな声で宣誓した。
 どこまでわかっていてわかっていないのか。かわいい顔をしてかわいいことを言われて、どうにかおさめた股間がぎりぎりと痛む。
「……初夜は絶ッ対……逃さねえからな……」
 地の底から這い出した声は果たして届いたのか。すっかり大人しくなってしまった恋人はしかし、聞こえていたらダーリン、などと煽らない気がするが、攻撃が最大の防御と思っているふしがある。俺が『こいつは焦らされてるみたいなツラをしてるが本当は俺のちんぽにビビったんだぞ』と言わなかったのに感謝してほしい。
 決戦は来月末、泣いても騒いでも答えが出る。

2023/7/4


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