邪僧八耐・下
『状況がわからないとは言いましたが、空却は必ず戻ります。あの程度の輩に遅れを取るようなことはありません。ただ……』
戻ったあの子が一番に会うべきは獄くんだと思うのです。
そう真っ直ぐに告げる声と目は、空却と交際したいと頭を下げたときと同じだった。混じり気のない信頼と、その上で試され、問われている感覚。
獄よりも長く、近く、空却と共にあった父親として、獄の知らない空却を知る者として、我が子とその未来を託そうとしている。
たっぷり数時間待たされて、突然ふ、と嫌な雰囲気が消えた。襖の奥から漂っていた尋常ならざる気配はじわじわと弱まっていたが、大元が断たれたのだろう。これが早いか遅いかもわからないが、住職が普段と変わらぬ様子で終わりました、もう入って大丈夫ですよ、と促すから余計にわからなくなる。
解決すればあっという間にそのときは来てしまい、入りあぐねていると渡してやってくれ、と水とスポーツドリンク、軽食の入った袋を渡された。それを見て自分に出された冷え切った茶と菓子を思い出す。そわそわとして落ち着かず、出された茶も喉を通らなかった。礼の言葉もまともに出ない喉を潤して、今度はきちんとありがとうございます、と言って襖に手をかけた。
嫌なモノが消えて、部屋からはまた別の空気が漂っていた。直接的に言えば情事の匂いだ。梅雨時の嫌な湿り気だけを集めたような、む、とむせ返る熱がこもり、独特の香りがする。それがぴっちりと閉じた襖と襖のわずかな隙間から漏れ出ていた。
獄が入るとなった時点で住職は人払いをすると言って席を外している。全部気づいているはずだ。今まで起きていたことも、これから起きるかもしれないことも。
「空却!」
襖を開いた向こう側。すぐにすさまじい精臭が鼻をついた。何人、何十人がいたのか、と思わされる濃い臭いに思わず顔をしかめる。
見えない臭気に阻まれた感覚に目を細めると、すぐ目の前に恋人の姿はあった。見たことのある布団の上、上半身はかつての制服を身につけ、下半身は一糸纏わぬ代わりにべっとりあらぬ液体にまみれて濡れている。仰向けに転がった身体はくったりと力なく膝を立て、ぱかりと開いた足の間には濁った水たまりができていた。下半身だけではない。全身、頭のてっぺんから爪先まで、どこの馬の骨とも知れないモノの汚汁がついていない場所がない。炎と同じ色なのにやわらかい髪も、話し方で台無しになる整った綺麗な顔も、日々の修行で鍛えられたしなやかな体躯も、全て。
まだどこかぼんやりとした金の瞳は布団の近くにあるスマホを見ていたのだろう。呼びかけに反応してこちらへと向けられた目は一度だけ大きく見開かれ、そのあと何事もなかったかのようにスマホへと戻った。気まずい、と思う感覚はあるらしい。
「親父か……」
おっくうそうに身を起こすと、膝を抱えて座り込む。恨めしげにぼそりとつぶやいた声は少しかすれ、いつものやかましさはなりをひそめている。赤く腫れたくちびるにもこびりついた残滓とぬめりに理由の察しはついた。
「……だいたい聞いてる」
逃さぬよう正面を陣取り、自前のポケットティッシュで口を拭い、水の入ったペットボトルを押しつける。飲まず食わずで数時間、休みなどあるわけもなく、労りもされず、都合のいい穴として嬲られた恋人の声を聞くのが辛かった。
ラップであれ、説法であれ、言葉が武器で仕事なのだ。無茶苦茶でも己の信念を貫くまっすぐな恋人の言葉に力をもらってきた。前を向けと励まされ、その過ちはいけないと導かれ、隣より少し前の方からずっと獄に降り注がれてきた言葉を届けてくれた声だった。
自分のものですら躊躇って、けして触れずに、汚さずにいた場所を。拭われた口元以外はまだ汚れたままの顔と身体が、おぞましい想像をたやすくさせる。ペットボトルを咥える口に、水を飲み下す喉に、どれほど無遠慮に押し入り、痛ぶり、汚したのか。
ぶちり、と音がして、頭の血管でも切れたかと思ったら握り締めていた手のひらから出血していた。ぼた、と布団の上に落ちた鮮血に、恋人が身を乗り出した。
「何やってんだバカ!」
口を拭うのに使ったポケットティッシュの残りを手のひらに押しつけられる。薄皮一枚やぶけたていどのことに何をそんなに顔色を変えるのか。自分が今、一体どんなかっこうをしているかわかっているのか。一人や二人なんてものではない。何十人から手籠にされたようなありさまで、疲労困憊してまともに動けもしないくせに。
「こっちのセリフだこのバカ!」
人払いをしてもらっても寺の中。いつもの言い合いとは違う、ごくごくプライベートな内容に踏み込むことになるから声をひそめて話すつもりだった。だったのに、このクソガキがバカだから。
理性の手綱を振りほどいて出た声に、びくりと恋人が跳ねる。出会った頃に着ていた服が今も違和感なく似合ってしまう幼さの残る顔が、傷口を押さえるひと回り小さな手のひらが、陵辱の痕を濃厚に残したまま怯えたように縮こまるのに胸をえぐられた。自分が犯したような気すらしてくる。いっそその方がマシだった。絶対に嫌だと言わない、獄が嫌だと言わせようとしても頑として拒む恋人に甘えてしまえばよかった。
恋人は己の信念を貫いて戦って勝ったのだ。寺でも街中でも子供に好かれて遊んでいるのをよく見るから、卑劣な存在から守りたかったのもわかる。それでも訓話に出てくる聖職者のように一切躊躇いなく人々の代わりに身を捧げるのは、どれほど尊くとも手放しに褒められることではない。
揺らがず曲がらず退かぬ心根を、その強さを知っているし、愛している。ただその愛してやまない至純の心は獄が嫌がって怒るだろうとはわかっていても、己の瑕疵にはならぬからと平気で危険な場所へと飛び込んでいく。
お前のように強くないのだ。信じていても愛していても、それがお前に傷一つつけられないとわかっていても、こんな風に嬲られて痛めつけられて汚されるところなど見たくない。獄以外、父親だって、十四だって、空却を大事にしている人間はそう思っているのに。
「なんでお前は……」
獄がどれほど胸を痛めても、殺さんばかりに怒り狂っても、身も世もなくみっともなく泣いてすがったとしても、空却はそれが自分の道と定めたら止まらない。そういうところに惹かれた。まぶしくて、焼け焦げそうで、綺麗な、触れることのできる太陽のような子供に恋をした。
今後また同じようなことがあったら空却は迷わず同じことをする。容易に想像がつくのに、だからこそ愛おしいと思ってしまう。守ってやるようなタマではない。今更縛りつける気もない。勝手に飛び出してヤンチャをした子供にすることなんてたった一つだ。
「獄……」
ティッシュを押さえる手を捕まえて、ぐい、と引き寄せる。無抵抗に転がりかけた子供が汚れる、と嫌がるのを無理矢理に懐におさめた。べちゃりとした感触が気持ち悪い。独特のツンと鼻をつく生臭さに吐き気がする。襖を開いてから寄りっぱなしの眉間のシワがさらに深くなって、腕の中の子供が暴れ出す。
「離せよ……イヤだろ?」
言葉にされなかった空白に、ならどうして一人で突っ走ったのかと頭の中で責め立てる。囮をするにしたって捕獲役を別にも用意できたはずだ。もっと時間をかけたってよかったはずだ。終わったこと、言ってもしかたないことが頭を駆け巡る。
「嫌で嫌でしょうがねえよ。勝手に突っ走ってヘマしたきったねえガキなんざ」
「……っじゃあ離せよ……!」
御自慢の服が使い物になんなくなるぞ、と皮肉っぽく笑う顔に少しだけ影がさした。傷つけるつもりで言ったのだ、こたえてくれないと困る。なおもじたばたとする子供をさらにぎゅうぎゅうと抱きしめた。汚れても、痛めつけられても、なんにも変わらないまま帰ってきた子供。抱き慣れた肌と熱がここにある。
「よかった……」
安心して漏れた本心に子供の鼓動が速くなった。いくらかしてぴたりと大人しくなると、まじまじとこちらを見つめる。金の目はぱちぱちとまばたきをくり返し、何かを決意したのか、じい、と睨めつけた。
「……他のヤツに手籠にされた拙僧は、抱けねえか?」
「は?」
わけのわからないことを言う子供が逃げ出しそうで、思わずさらにきつく抱きしめる。嫌とは言ったがそうではない。無鉄砲に飛び出して一人でボロボロになったことが嫌なだけで、手籠にされたからなんだと言うのか。望んで不貞を働いたわけではない。守りたいもののために体を張った恋人を穢らわしいと思うなどあるものか。
揺るがぬ芯の宿る目がゆらめく。泣くのをこらえているようにも見える金の水面は初めて会ったときから変わらない。まっすぐで綺麗な子供だ。少しでも反省してほしくて傷つけようなんて馬鹿なことをした。恋人は十分にわかっている。獄が空却以上に空却への害意に怒り、傷つくことを。わかっていてなお身を投じたのだ。愚かで、健気で、愛おしい、恋人に愛以外の何を伝えればいい。
「ひと、」
少し前に飲んだはずの水も乾くほど緊張していたのか、途中で奪いとったくちびるはかさりとしていて、余計に荒れるとわかっているのに舌で舐めてしまった。赤く腫れてぷるりとしたのをちゅう、と慰撫するたび、瞳も腕の中の身体もとろとろととけていく。くったりとした舌も捕まえてきゅうきゅうと絡めとれば、ひくん、と跳ね上がる。くちづけだけで可愛らしい反応をする、いつもと同じにかわいい恋人。
「お前はいいのか」
「なにが」
「俺に抱かれるの、嫌じゃないのか」
口を離しても身体は離さないまま、舌足らずに返事をする恋人を見つめた。本意でない行為をして辛いのは獄ではない。いくら恋人が強くとも、嬲られ弄ばれた痛みが本人すら知らぬ間に蝕むことなどいくらでもある。大丈夫、平気という言葉は信用ならない。そう言って静かに追い詰められ、命を断つ人間がいるのを知っている。
勢い余ってくちづけたものの、触れることだって思い出させやしないか。そうしたらもう抱きしめている今すらもだ。同じ人間であるだけで何もかも違う生き物だから、見逃せば、気づかなければ、簡単に当たり前にあったものは失われてしまう。
抱きしめて、心臓の鼓動すら伝わるほど近くにいるのに次の瞬間にはいなくなってしまいそうで、緩めることができない。一度は止まったはずの出血がぶり返して手のひらがぬめる。情けない顔をした自分が映る恋人の目が、す、と下へとそらされた。
「こんなんなるまでガマンできたの、獄なら拙僧がどうなっても抱いてくれると思ったからだけど……違ぇの?」
試すような金色の奥に見知った輝きが宿っている。全部お見通しの、いたずらな光。
「この状況でどうしたらそんな馬鹿なこと言えんだろうなぁ?」
抱きしめて、くちづけて、許されるなら無遠慮に嬲られた身体を労って愛したい。獄が愛して拓いて花開いた恋人は、踏み荒らされるために生まれたのではないのだから。泥中に咲く蓮より尊く誇らしい、苛烈で清廉な心が有象無象に穢せるわけがない。
「俺に抱かれたくないなら『波羅夷空却』をやめな」
「できねえこと言うじゃねえかダーリン」
常世までリザーブするなんて、束縛する男は嫌われるぞ。腕の中、そう笑う顔はようやく荷が下りたようだった。先にあの世までの縁を結んだのは恋人の方なのにひどいことを言う。ケラケラと楽しそうな声を出す口元に、もう一度自分のくちびるを寄せた。
「……今すぐ、抱きたい」
この世のモノではないなら証拠提出はいらない。さっさと流して片付けて清めたいならそうしよう。これは獄が我慢ならないだけの我儘だ。自分もくちづけくらいしかしたことのない部屋で、恋人が無体を強いられたのを上書きしたい。それが今もじっとりと湿り、もはや捨てるしかない布団だとしてもだ。
嫌だと言われたら退こう。言われなくとも、答えを躊躇うようならばそれはNOだ。我儘を言っておいておかしな話だが、ただ空却が気持ちいいことだけをしたい。好き勝手に暴かれた身体は浅ましい欲を満たすためにあるのではなく、獄と愛し合うためにあるのだと伝えるために。
「ばぁか」
ちゅ、ちゅ、と寄せたくちびるにかわいらしいくちづけが降り注がれた。
抱くことへの了承としてはいとけないくちづけの後、腕を緩め、あらためて上から下まで確認した目を覆いたくなる惨状にぐ、と怒りがこみ上げてくる。恋人にではない、下劣な変態が欲望を持て余さなければこんなことにはなっていないのだ。幼い子供を対象にした上、精神・肉体ともに折り紙付きの強さの恋人でなければ廃人になるような陵辱を望むなど。
「拙僧は、ちぃせえガキがこんな目に合わなくてよかったって思ってる」
血で濡れた手のひらをティッシュ越しに掴んだ恋人が、傷口を見つめながらつぶやいた。一番の動機で本心だろう。子供達に厳しく、乱暴に振る舞いながら、目の奥の光はいつも優しい。
「わかってる。お前は少し間違ったけど正しいことをした」
掴まれた手が強張る。おう、と返ってきた相槌は獄の言う間違いをわかってか小さい。責めたくはないが、今後はどうか少しでも気にとめてほしいのだ。
「……獄とスるまでなァんも知らなくて、とんでもねえ助平親父だと思ったし、スキモノの変態って思ったこともあったけど」
「待て、そんな風に思ってたのか?」
「黙って聞いてろ。……でも、その全部、獄が拙僧のこと好きで好きでしょうがねえのが伝わるから」
ようやく血が止まって、ティッシュの上からくちづけられる。直に当ててくれていいのに、ちり紙一枚挟んだ熱が遠い。
「だから、拙僧は大丈夫なんだよ」
獄が恐れるようなことはなんにもないとあやす声は、自分自身に言い聞かせるようでもあって、ひどく儚く見えた。今日、空却についたほんの少しだけの瑕疵は、獄が愛したからついたものだ。
凪いだ金色のきらめきにほのぐらいよろこびがこみ上げる。愛も痛みも傷痕すらもこの子供に与えられるのは自分だけなのだという醜く愚かな悦び。この世から消えてしまったモノができたことなど、ひっかけられた泥水ていどだ。厄介で嫌な気持ちになるが、それ以上の幸福で薄れて、忘れてしまう。
「なぁ、早く抱けよ……」
ず、と後退り、足を抱えて開く。にちゅ、と粘ついた音がしてぽかりと空いた後腔は白く濁った液体にまみれ、呼吸のたびにどろどろと奥からあふれ出した。くちびる同様、何度となく犯されたそこは赤く腫れて痛ましく、いつもならぷるりと勃起するちんこは力なく垂れ下がったままでいる。
「……やっぱ、イヤか……?」
「違う!」
顔を曇らせ、手を広げて隠そうとするのをあわてて止めた。怒りが湧き上がったのはたしかだが、抱きたくないなんてことはない。
「優しくしてやりたいのに、できなそうにないんだよ」
荒淫で傷んだ身体を労って慰めて愛したいと思うのに、腹の奥底から湧き上がる怒りで乱暴にしてしまいそうになる。最初は胸糞が悪いばかりだった恋人の姿も、いつものように笑い、抱かれたいとねだられるとぐらぐらと欲が煽られてしまってまったく情けない。
子供に欲情する変態と蔑みながら、今よりもっと幼かった恋人に告白されて、子供と付き合うなどできるかと断りながら、あらぬ妄想をしたことがある自分は同罪だ。憎からず思っていた。許されるなら欲しいと思っていた。結局、未だ大人とは言い難いー法の上ではそうだがー恋人とこうして共にいる。
恋人の着ているものもよくない。よくないのは邪な目で見る方だが、目の毒なのだ。付き合う前、制服姿の恋人とことに及ぶ夢を見てはため息をついた。無邪気に向けられる好意を素直に喜んで真綿でくるむように交わることもあれば、何も知らない子供の生意気さをへし折るために抱き潰すこともあった。せめてこの制服を脱ぐまでは、と耐えた日々の象徴なのだ。
「拙僧は優しく抱いてほしいなんて言ってねえんだが」
こともなげに告げた言葉がいかに無鉄砲なものかを恋人は知らない。できうる限り紳士に振る舞い、嫌な思いをさせまいとしてきた大人のタガを、この子供は簡単に壊してしまう。
「むしろ酷くしてほしいって?」
あっけらかんとした態度が少し癪で、意地が悪い返事をする。そんな風に言うならお望みどおりにしてしまうぞ、と。
「獄になら、何されても嫌じゃねえよ」
それなのに、いつもいつも、ずぅっと言ってるだろ、と金の瞳に諭される。初めて恋と愛を告げられた日から変わらない眼差しが、大人の逃げ場を奪っていく。そうしてただの天国獄になった者の前に、子供ではなくなった波羅夷空却の身を投げ出すのだ。
口ー喉を犯されたいのだと、胡座をかいた股間にもぐりこみ、撫でながらねだられた。いつも獄が嫌がってさきっぽをしゃぶらせるくらいだったのに、根っこまでまるまる飲み込みたいと小さな口をあんぐり開かれる。水で流しきれなかった残滓がこびりつく口内は、今望まれていることを何十とさせられたのだと嫌でも突きつけた。
欲という名の思念の塊だから、満たしてやれば徐々に消えていく。厄介で小賢しい相手に気取らせぬよう、一気に力を削ぎ取りたかったから逆らわなかった、と淡々と説く口ぶりは、いつだか害虫駆除のコツを教えられたときによく似ていた。
待つのが嫌いだと言って憚らぬ子供は必要だと判断したらそれができる。感情的に動くが、高度な自己管理を無意識でこなすのが恋人の本分だ。乱れも歪みもない凪いだ水面のような目で話すときは、良かれ悪しかれその時の最適解を弾き出す。荒行を成し遂げる才の根元にある、心の在り方が如実にあらわれた目は恋人の一部で、美しく尊いものを見出してしまいそうになる。でも獄が恋をして、愛しているのはその目ではないのだ。
「その変態な、頭ン中が読めたんだよ。拙僧の中に閉じ込めたせいもあったかもしらんが、記憶だの考えてることだのを読まれてなァ……」
当たり前に自分の中に閉じ込めると言われたが、意味が全くわからない。おそらく漫画だのでよくある霊が入っているような状態だろう。そんな変なもんをしょっちゅう入れたり出したりしてるのかとイラついたが今は後にする。もっと大問題発言をされた。
「思考……記憶も読まれたのか?」
「そ、拙僧がオギャアと生まれた日から今日まで丸裸。もちろん獄とのこともぜぇんぶ」
いちいちいやらしい、実際いやらしい記憶も見られたのだろう。にんまりにやにや、楽しそうに笑う目には先までの冷徹にも感じられる聡さはない。煩悩まみれで、まっすぐで、あたたかい金色が獄の恋人の目だ。
「だからすっげぇ量の手とちんぽが拙僧にやらしぃ〜ことしたんだけど、それもぜぇ〜んぶ、獄のだったんだぜ?」
「は?」
「拙僧がアレの自前のちんこに無反応すぎたからか、記憶の中の獄の手とかちんぽとか……ああ、あと声とか使われて」
「ちょっと待て」
「すごかったぜ……フル勃起した獄のちんぽがズラっと並んで、拙僧のこと犯した〜い、種付した〜いってしてんの……」
「待てって言ってんだろ!」
「あの世のモンだし証拠もねえし肖像権の侵害とか言うなよ」
「そういう領域を越えてんだよ……」
問題はそこじゃあない。目の前の恋人の惨状は情事の記憶を読みとった変態がコピーした自分が生んだのだと言うのだ。形だけで中身は変態だったけどと眉をひそめながらも、どこか惜しそうなのが気になる。
「言うことは変態だから気色悪いんだけど、声は獄だからちょぉっとはグッとくるし。中身は違うって思っても手もちんこも獄のだからなぁ……」
「お前けっこう楽しんでんな?!」
「当ッたり前だろ!だぁれが好き好んで大人しく手籠になるかってんだ。最初の気色悪いモヤみたいなやつのまんまだったら無理矢理にでも片付けたわ」
その場合は拙僧も寺もタダじゃすまんかったろうが、と小さく付け足され、獄をコピーしようとしまいと、結局同じ道を辿ったんだろうと思わされた。しかし見える景色は自分次第にも限度があるだろう。
「面白くねぇってツラだな」
「無体を強いられて傷ついた恋人を気遣ってたんだよ俺は……」
「見てくれだけでも獄だから我慢できたんだって言ってんだろ。それとも貞節を重じて世を儚んでた方がよかったか?」
「そんなタマじゃねえだろ」
「食い気味に即答してんじゃねえよ。わかってんなら偽モンとわかっててもカレシを邪険にできなかったいじらしさに感動しやがれ」
もう勃ってるし、と撫でまわされてふくれたちんぽを掴まれる。煽られた苛立ちと、盲目の愛しさが混ざり合ってさらにぐぅ、とはれていく。
「……俺のちんぽは一本しかねえぞ……」
「拙僧は何百本のコピーより一本の本物がイイんだよ」
拙僧が好きだから、抱きたくて、撫でられただけで簡単にちんぽもきんたまもぱんぱんにする獄がいいーちぃぃ、とジッパーを下ろし、下着をかきわけ、ぶるんっとまろび出たちんぽに釘付けになりながら、うっとりと目を細めてひとりごちる。
「ん……」
いつものようにさきっぽにちゅ、ちゅぅ、とくちづけでの挨拶をして、そのまま根っこまで下り、きんたまへと続いていく。長さを測るように愛おしげにくちびるでなぞられると、年甲斐もなくぶりん、とふくれ、さらに張りつめてしまう。
「まァだ、本番はこれからだぜ……っ」
本当に簡単に煽られたちんぽが最高潮に達したとみるや、ぐぐ、と天を向くきんたまをきゅぅ、と優しく揉まれた。子種を搾ろうとする刺激に軽くのけぞった瞬間、小さな口に真上から飲み込まれる。あんな小さな口に収まるわけがないと思っていたのに、あっさりとちんぽは奥までハマってしまった。案の定狭く小さな口はなにもせずともきゅうきゅうと締まり、あたたかくぬめる。さきっぽをむちゅむちゅと包み込む喉奥に苦しそうな呼吸音と引き換えに与えられる快感は、尻でしゃぶられるときによく似ていた。普段なら萎えそうなものだが、こなれた咥え方に自分の姿のコピーに散々犯されたことを思い出させられる。獄のモノと同じだから、と楽しむことで耐えた恋人の健気さがこの口奉仕に詰まっているのだ。
どくどくと胸がたかなって、ちんぽもぐ、ぐぅ、と脈を強く打つ。そのたびに小さな口腔がふるえ、えずき、締まる。俯いて見えない顔はたぶんぐちゃぐちゃで、髪の毛の隙間から覗く耳のように真っ赤なのだろう。ちんぽで口を犯されている顔が見たい、けれども喉の一番奥に種付をしたい。どちらもしたいがあいにく恋人が欲しいちんぽはこの世に一つきりなのだ。
可愛らしい丸い頭を両手で掴み、ぐん、と喉奥をえぐるように深く押さえつける。音にならない悲鳴でふるえるのすら、ちんぽへの刺激となってしまう。苦しいだろうに決して歯を立てず、むしろ舌を這わせようとするのがたまらない。どこまでもふくれあがりそうな欲望を抑えようと、ついにされるがままの頭をじゅぶじゅぶと抜挿しはじめてしまった。大事にしたくて、もののように扱いたくなくて避けてきたのに、喉を犯す手が止められない。漏れ出るくぐもった呻めきが、苦しみと共に快感を訴えて甘く響く。
「クソ……ッ」
やわく心地いい締めつけを緩められることなく咥えられ、限界を迎えたちんぽで喉をずぶんっと突き倒した。言わずとも射精されるとわかったのだろう。上向いたきんたまをきゅぅ、と転がし、根っこからさきっぽへとちゅぅぅ……っと口腔全体をすぼめて搾り上げた。当然、喉奥もむちゅうとさきっぽに吸いつき、精を根こそぎ奪おうとする。はしたない口まんこの期待にこたえ、迫り上がっていた子種が飛び出した。
「射精すぞ……!」
「ン……っ、む、んぅんっ」
さきっぽを愛撫する喉奥に、びゅるるるるっと勢いよく子種を叩きつける。尻まんこにするようにちんぽで届く一番奥へ一滴残さず注ぎ込まれ、喉まんこはひくひくとふるえ、わずかな残滓すら残すまいと子種口に吸いついた。そこだけではない、腰を起点にぶるぶると全身が跳ねていた。尻にされるように喉を犯され、いやらしい胎がイッてしまったのだ。しょろ、という静かな流水音と、匂いも色も薄い液体が広がる。数時間に及ぶ陵辱でもう出るものがないのだろう。潮ですらない完全な粗相での絶頂を喉への種付でしてしまう恋人に、ぞくぞくとくらいよろこびがくすぐられた。
なんとか理性をふり絞り、これ以上はやめてほしい、と腰を退くと、ちゅ、ちゅう、ちゅぽ、とさきっぽを拭いとり、ごく、と子種を飲み下す。美味いものでもないだろうに、ん、と喉を鳴らす振動にちんぽが反応するのをどうにか抑えた。拷問じみた子種の飲み下し待ちがようやく終わり、満足したのかへにゃりとしたちんぽが解放される。
「ひとやのちんぽとちんぽじる、すき……」
力をなくしたちんぽにちゅ、とくちづけながら嬉しそうに微笑む顔は、目からも鼻からも垂れ流しなのに妙にそそった。興奮冷めやらぬ紅潮した頬ととろけた金色はまだ足りないと言い、もぞもぞとゆれる下半身は子供のように粗相をするくせに、淫らな誘いをやめてくれない。
「おもらしするくらい?」
「いくとしょんべんすんの、いやか?」
上目遣いに問い返されて言葉に詰まる。嫌だと言えば恋人はきっと我慢してしまうだろう。もう出るものなど他にないのに。そんな意地悪いことは言いたくないし、なにより恋人は獄の全てを拒まない。寛容に鷹揚に、ひとまわり小さな身体はいつだって獄を愛して受け入れてくれる。嫌か、とかすかな不安を滲ませて問われるのも、めったにそんな素振りも見せない恋人に甘えられているようで悪い気がしない。だから性の片鱗も感じさせない子供だった頃の装いで、本来の性器ではない場所で極め、精通もしていないかのようにもらすのがひどく倒錯的で参ってしまうことはあっても、嫌などあるわけがないのだ。
「嫌だと思うか?」
かがんでほてる額にくちづける。くすぐったそうにつむる目も、鼻も、くちびるが届く全てに触れると、す、と身体を起こし、ぴとりと胸に貼りつかれた。濡れた生地の感触がひやりとして、その下の熱がじわじわと移っていく。無言の恋人にもしや、と思って顔をはがすと、ぎ、と強く睨まれた。
「すきもの……」
「お前ほんっとにかわいくねえな」
全部が今更なのに安心して恥ずかしがる恋人がかわいくなくてかわいくてしかたない。堪能する間もなく、またすぐ顔を隠した恋人に、覚悟をしろとささやいた。
また顔を見たくて、密着した身体をまさぐる。荒淫で敏感になった身体は軽く触れるだけでも過剰に反応し、腰からそぉっと撫で下ろした手で尻を掴むとびくん、と跳ねてナカに注がれた精を吹きこぼしてしまった。
「ふ、ぅ……っあ、あ〜……」
「顔見せねえとやめないからな」
まだ掴んだだけだった尻はこれからかわいがる。左右の尻たぶを優しく持ち上げ、ときおりふるふるとゆらし、ゆっくりと開く。もちもちぷりぷりとした肉づきは、獄が抱いて揉みしだくようになってからのものだ。手のひらから少しだけあふれる感触を、つれない恋人への意地悪にぎゅぅ、と握り、そのままぱちゅぱちゅと叩けば、ひぅ、と小さく悲鳴を上げる。噛み殺し損ねた声は艶があって、もう一度鳴かせようと尻たぶをむにむにともてあそべば、ぁう、ゃ、とか細く鳴き、どぷぷ……っと散々に注がれた精を盛大にぶちまけてしまった。遅れてしょろ、しゃぁ、と尿をもらす。ぺとりと貼りついたままの身体はどんどん熱くなり、羞恥に燃えるその熱で濡れたものが乾くのではないのかと思うほどだ。
「かぁわい」
恋人が一番いい反応をする声を真っ赤な耳に流し込む。甘えてねだる心を見え見えのオブラートで包むための言葉はなんだっていい。顔を見せないとやめないと言いながら、顔を見せずに悶える恋人を愛でるのは悪いことだ。そんなのわかっているのに、もっと強くすがりつき、ゃ、ゃぁ、ぃく……と鳴くのがかわいくて、左右にぱっくりを開かれた尻たぶの真ん中、ふっくらと縦に割れた肉縁から精子をひり出させるのを止められない。
ぷ、ぷぷ……ぶじゅ、ぶぷっ……と、粘着質な破裂音と鈍い落下音がして、無遠慮に吐き出され精液が汚れきった布団に広がっていく。あとからあとからあふれ出す白濁はいつまでも終わる気配がない。熱い吐息と抑えた喘ぎをちゃんと聞きたくて、肉縁そのものに指をかける。
優しく左右に引くと、抱きついた身体がびくんっと飛び上がった。ぶりゅっ、ぶ、ぶぷぷぷ……と広げた瞬間に栓が抜けたように注ぎこまれた精がぶち撒けられる。まだまだ出るかと尻を揉みながらぐ、とさらに肉縁を開く。飛び上がった身体はそのまま戻らずぴんと張り詰めていたが、ひ、と引きつった声を上げ、胎の奥底にためていた子種を吐き出した。
ぶりゅりゅりゅ、ぶちゅ、ぶ、ぶぷ……っぷ……ぷ、ぷぷ……。長く断続的な吐き出しが終わり、ふるえる恋人の身体を撫でさする。やめさせようと上げるかと思った顔も声も隠されたまま、いじわるしすぎたかと尻から腰、背へと辿り、小さな頭に優しく触れた。いっこうに見せてくれない顔が見たくて、つむじにくちづけを降らせてもいやいやをして拒まれる。ついには貼りつくのもやめて距離を取ろうとしはじめた。
「悪かった。反応が見たくてやりすぎた」
「そうじゃねぇ……っ」
またでる、と顔をくしゃくしゃにしたと思ったら、しゃあぁ……と聞き慣れた音がして、隠そうとべちゃべちゃのシャツを伸ばすが意味がない。ほとんど透明で匂いも勢いもない、絶頂の証がぼたぼたとしたたり落ちる。
羞恥で赤く染まり、口惜しげに歪む眉の下、泣く寸前のようなのに強く光る金色がこちらを睨めつけた。それだけでも焚き付けられるほのぐらいよくぼうを、身につけた服がさらに煽り立てる。
「お前のおもらしなんざ慣れっこだって」
「ふく、よごれんだろ」
「何言ってんだ」
もうとっくにべちょべちょだ、と逃げた恋人を捕まえて、離れないように抱きしめた。まだ少しじたばたとするのをくちびるを塞いで大人しくさせると、股間のあたりがじわりと濡れる。くちづけでぼんやりとしながらも残った恥じらいでやだ、となくのがかわいらしい。
「だから覚悟しろって言ったろ」
年齢不相応に幼いと思ったらその逆もある恋人は、真摯に対峙するほどにその傾向が強くなる。向かい合って言葉を交わすたび、どちらが子供なのかわからなくなることが増えていく。唯一、聡く鋭い子供の物理的な拳と牙すら封じ、一方的に丸め込めるのが今だ。
逃げようと腰を退くのをべちょべちょの布団に両手を掴んで押し倒す。上手いこと開いた足の間に体をねじ込んで、仰向けに転げたのを上から見下ろすと、じっとりと湿った感触にわずかに眉をひそめられた。しかし、すぐにしまった、と目を見開く。いつもならば抵抗も可能だったろうが、数時間分の疲労と消耗がのしかかる身体ではかわいくなくのがせいぜいだ。
「……めがやべぇ」
「あ?」
「けだもののめ、してんぞ」
警戒もあらわにきゅっと細めた金色の真ん中、なるほど物騒な顔の男がいる。ギラギラしていて、頭からぺろりとたいらげてしまいそうな飢えた獣。誰のせいだと思っているのか。
「お前がちょこまか逃げるからだろ」
もう逃さんが、と掴んだ手を握り込む。自分から抱けと迫ったくせにどこか及び腰だが、普通なら心身に長く十分な治療と休養が必要な状況なのだ。手のひらすら性のはけ口にされて、握った自分の手がぬめる。
「て、きれてんのにさわんな」
「もう止まってる」
「きたねぇからはなせ……っ」
真上から見た金色は辛そうに見えた。楽しんで耐えたと言っても本当に大丈夫なわけがない。獄が抱くまでなんにも知らなかった身体は、大事にかわいがられて愛されることしか教えられていなかった。自ら臨んだと言っても享楽に身を浸すためではない。無意識に悲鳴を上げる獄が愛しさえしなければ傷つくことのなかった心をどうしたらいい。
「何度同じこと言わせるんだよ」
自分のせいでついた見えない傷に届くように、かわいくないことばかり言う口にくちづける。引っ込み損ねた舌を捕まえて、舌先で根本からくすぐり、ちゅぅ、と吸ってやればくったりとしてしまう。強張りをとくのにくちづけをしてきたせいか、舌だけでなく身体全体から力が抜けている。ふにゃふにゃになった手のひらをぐ、と布団に押しつけて、さらに口腔を暴くと、じわりと下腹部あたりがしめった。すっかりとろけていた目に羞恥と涙がにじむ。む、ん、うぅ、と鼻と喉を鳴らされても離してやる気にはなれない。結局、ぎゅうっと目がつむられるまでくちづけを続けた。
「ばか」
もぞもぞと足を閉じようとするのを頑として許さず、新しくできた小さな水たまりを眺めていると、直球の言葉で怒られる。恥じらいでほてる顔とうるみながら睨めつける目の組み合わせで何を言われても怖くない。輪をかけて舌足らずになったいとけなさが制服と合わさって、余計にかわいくしか見えない。
「……本当に会ったばっかのころのお前にやらしいことしてる気になってきた……」
「まじでばぁっかじゃねえの!?」
キレのない罵声に混じるのは羞恥だけではなく、証拠にまたじわりと水たまりが広がる。獄が愛でれば天井なしにたかまって、花開く恋人だ。何をしても、何があっても恋しく愛おしい。甘えのない恋人についた見落としそうな瑕疵がうずくたび、大丈夫だと、好きだ、愛していると伝えよう。獄の愛を信じた恋人にできることなんて、それしかないのだから。
「身体は素直でかわいいのになぁ……」
「からだも、だろ」
わざとらしくため息をつくと、むっとしながら噛みつかれた。強く握り返された手のひらが熱い。
「……だいたい、せっそうはだけっていったのに、ひとやがだかないっていったんだろ……」
じ、と恨めしげにあびせられる視線が突き刺さる。付き合うことを了承しただけでも大問題になる年齢の子供は抱けないと断り、住職にもそう言って書面を交わした。秘密なんてバレるもので、特に恋人は押し負けて付き合うと言っただけでかわいらしくなって色気が出てーほんのちょっと、本当にほんのちょっとだけならいやらしいことをしてもいいかな、という浅はかな考えを即ゴミ箱に放り込んだのを覚えている。まだこれから恋人としてやっていこう、という段階で、抱く以前にキスどころか手すら繋いでいなかったのに『獄の恋人』という肩書を得ただけでくらくらするほどかわいくなるなんて聞いていない。未完成で育ち盛りの身体への負担と、時の流れのともに心が変わったときのことを除いても抱けるわけがなかった。悪い大人に頭からぺろりと食べられたことを隠せないまま、呑気に甘く香る子供なんて気が気じゃない。
「そんなに言うなら今、そういうふうに抱いてやるよ」
お誂え向きな服を着ているし、と恋人が胎をうずかせ、とろけてしまう声でささやく。すっかり拓き尽くした身体は不安になるほど素直にぴくん、と跳ねてまた股を濡らした。
「精通……」
「してるっつうの!しってんだろ!」
「わかってるけどなぁ……付き合う前よりガキだろこんなん……」
「いくじなし」
「これで興奮したら変態だろうが」
「じゃあなんでちんこたってんだァ……?」
へんたいいんこうべんごしせんせい、とにまにま笑う顔が本当にただの子供のようでいたたまれない。しかたないだろう。有象無象のただの子供ならムカつくだけの顔でも、かわいくてしょうがない恋人なのだ。今だけじゃない、過去も未来も手に入れて離したくない恋人の、大人として触れなかった瞬間が擬似的でもなぞれるなら、そんなのー
「お前だからに決まってるだろ」
何もかも、今ここに至るまでの全ては空却だからこそ起きている。同じように顔が綺麗でスタイルのいい、ついでに性格だってかわいいガキと同じようなことになってもこんなことはしない。だから好きなだけイッて、もらしてくれていい、とトドメをさせば、それはそれは素直な返事をしてくれた。
手は押さえたまま、あらぬ汁で透けるシャツをたくしあげ、乳首に吸いつく。何もせずともつんと勃ち上がるように躾けた乳首が欲望の餌食にならぬわけもなく、常よりも赤くはれぼったいそこが痛まぬように優しく触れた。舌で包み、強く刺激しないようにしても、ふ、は、と息を吐きながらびくびくとのけ反り、ぴゅっぴゅとおもらしをする。撫でるたびに硬くしこるのをくちびるでやんわりと潰せば、ひときわ大きく跳ね、腹がず、と擦れ合った。
「ほぁ……」
羞恥でか喉奥で声を殺していた恋人の久々の喘ぎは驚いたようなのに快感が混じり、ひどくいとけない。乳首でおまんこイキする身体は、外から腹を撫で回してここでイクんだぞ、と教えた甲斐あって、擦れて当たるのもいいらしい。とろんとしたまま、腹をとんとんと擦り当て、布団に水たまりを作っていく。
「乳首吸われてイキまくってるすけべまんこ、とんとんするのきもちぃか?」
「ん……っふ、はぁ……。きもちぃ……ず、といってぅ……」
もう片方の乳首もかわいがろうと口を離すと、ず、ず、と腹を擦りながらまたいく、とないてふるえる。射精と違い、終わりのない快感にさらされたままの身体は、一度火をつけ直せばすぐに燃え上がってしまう。
もう大丈夫かと手を離し、放置していた乳首にしゃぶりつき、吸っていた方を指で撫でた。あくまでも優しく、ぷくりとしこる輪郭を舌と指でそれぞれなぞる。乱暴にせず、ゆっくりと労わるようにかわいがると安心したのか身体から力が抜け、しゃわ、と静かな水音がした。ひ、と鼻を鳴らすのは何度目かのおもらしへの恥じらいか。失禁と絶頂が結びついた淫らさに意地悪な気持ちが首をもたげる。
「すけべまんこ、いく……っ、いってぅうぅ……」
「こんな服着てもザーメン出ないおこちゃまちんこだもんなぁ……。どこもかしこもちっちぇまんま、やらしいとこばぁっかオトナになっちまって」
ゃ、ゃ、と小さく首をふるのがかわいくて、ちゅぽんと乳首から口を離し、すかさず手での愛撫を与える。両手でくりくりくにくにと撫でると、ぷりん、ぷくん、とはしたなくそそり勃ってしまう。とがりきったのを指の腹で弾けば、おまんこをきゅんきゅんとふるわせた。
「ばか、せーしでる、って……!」
「じゃあ今出してみな。乳首ですけべなおまんこいくいく〜ってしちゃあおしっこおもらししてるおこちゃまちんこでなぁ……?」
きゅむきゅむと強めに乳首を摘んで引けば、あまやかに撫でさすられる快感にひたっていた身体はこんなの知らない、とばかりに甘えてくる。もっと、もっととねだってぐいぐいと腹も擦りつけた。
「ふぁっ、ゃ、あぁあ〜〜〜……」
泣き声まじりの喘ぎにしょあああ……と射精とは思い難い音が重なり、触れ合った下腹部がまた重くしめる。へにょりとしたまま勃起すらできずにいるちんこが射精などできるはずもない。
「結局イキションしてんのかぁわい……」
「う、や、ぁ……っ」
「やじゃないだろ?乳首もおまんこもきもちぃ〜っておもらしイキしてんだから」
「そ、らけろ……ゃ、だぁ……!」
「まぁ、こんだけイクたびおもらししてたらクセになっちまうかもな」
「ちぁう……っ」
それはべつにいい、とぷるぷると耐えながら決壊した涙に疑問が生まれる。じゃあ何が嫌なのか。乳首もおまんこも、おもらしすら今さらで、かと言って相槌めいた嫌とも違う。明確に恋人を快感に叩き落とす何かを言っていたらしい。
「……かわいい」
「っ……んぅ!」
乳首をきゅっ、と引っぱりながら、さきっぽをほじくり、弱りきって八の字に下がった眉の下、どろどろの金色に問いかける。こたえは簡単に返ってきて、足をぴぃんとつっぱねながら、ぷしゅ、と小さく噴き上げた。
「……へぇ……?」
こんなにかわいいと言われていい反応をするのははじめて、というか何を言ってもしても恋人は乱れて止まらない。今回はより顕著なのだ。陽の下で好きだと言うだけで綺麗にほころび開く花は、薄暗がりの中でも同様だった。加えて快感に飲まれまいと足掻くようになんにでも嫌だと言うから、話し合いの末に嫌だと言われても手を止めないことになっている。微妙な、そして奇妙な違和感に首を傾げていると愉快ではない話がはじまった。
件のモノに獄の姿形を真似られて、その中には記憶を直接呼び起こすようなものもあったという。獄の声と話し方を真似るのに空却が反応しないと見るや、そうされたらしい。二人きりの秘事でしか聞かせぬ声を、言葉を、脳裏に刻まれた思い出を侵されながら犯されるのはさぞや心地悪かっただろう。よもや自分の言葉や態度が傷つけたかと乳首をまさぐる手を離せば、ちがう、ととろけた目が否定した。
「ちがう、きもいまねでも、せっそおのあたまのなかのでもない、ほんとのひとやのこえが……きもち、いから……」
意地悪でからかうみたいなのに、空却が好きで、かわいくてしょうがないのを隠しもしない、ただただ甘い声が鼓膜から響いて脳を犯される。それが気持ちよすぎるなんて一体全体どうしたらいい。そんなことを言われて大人しくしていられる余裕はないのだ。
「……ひとや……ちんぽ……」
「言うな」
本当に何をするかわからない、と続く言葉を封じる。目の前の恋人でじわじわと硬く育っていたちんぽは、その恋人自身のとんでもない暴露で一気にぬぅ、とそそり勃ってしまった。注いだ愛の何十、何百、何千……数値にするのも馬鹿らしくなる愛がうやうやしく捧げられる。
「でも、も、せっそぉちんぽほしい……ほんもののひとやのちんぽ……こえだけじゃ、がまん……できね、から」
もとより開いていた足を膝裏で抱えて広げ、ひくん、ひく……っと誘う肉縁を見せつけた。白濁に濡れた濃い桃色は、掻き出しても掻き出してもあふれるほどに犯されたのにまだ足りないと言うから、ごく、と唾を飲み下してしまう。
「ひとやのことかんがえると、けつ、が、どんどんやらしくなって……ほんとに、すけべなまんこになって……だから……ひとやの、ちんぽで、せっそぉいきたい……」
自分のせいですけべになったと言われ、こんな大胆に迫られて断るなんてあるわけもない。くぱくぱとねだるおまんこにずり、とちんぽを擦りつければ、ちゅぅぅぅ……としゃぶりつく。
「挿入れる前からちゅぱちゅぱしやがって……!」
「らて、ひとやのためのまんこだからぁ……っ、だめ、まんこずりずりだめぇ……っいく、いくから……っ!」
「ああ……クソッ!」
小さな頭の両脇に閉じ込めるように手をついて、けなげにねだる肉縁にちゅぷ、とふくれきったさきっぽを当てると、望んだものが来たとばかりに歓待された。先んじての荒淫もあって、きゅんきゅん、きゅうきゅうとうずきながら絡みつくのにあわせて腰を進める。じわじわと体勢を真上から突き倒すように変えているのに気づいているのかいないのか。いく、いってぅ、ずっといってる……と開いた口の大きさに反して細く高い声でなく恋人は、ゆっくりとナカを犯すちんぽに一呼吸おきにびくびくと反応し、達している。
ただでさえぷりぷりむちむちとしているのに、少しでも深く濃く子種を搾りとれるよう、奥へ奥へと導く動きでうねる肉壁は容赦がない。獄のちんぽがぴったりとハマるようにかわいがったおまんこは、記憶の中の獄のコピーに散々耕されたせいもあってか、すさまじくとろとろになっているのにだ。無体を強いられた恋人を労って、愛して、かわいがりたかったのに、その恋人の一番痛めつけられた場所に甘やかされて、愛されて、かわいがられる。情けない、と思うのすらとろかす愛撫は、恋人自身の金の瞳をもぼんやりとさせていた。
「は、ふぁ……ひとや、ひとや、すき……。ほんとのひとやのちんぽ、きもちぃ……」
焦点のあいまいな目が獄を捕まえて、すき、すき、きもちいぃ、と訴える。恋人の聡く鍛えられた頭と身体からどれだけ上手に写しても、それは過去の獄でしかない。いつか時が止まっても、共に歩み続けると誓ったのだ。またたきの間だって未来で、もっと強く、鋭く、今も変わり続けるから、だから。
「ぁ、んで……ぇっ!」
「どした……?」
「きゅぅに、でかくすんな、ぁっ」
「わるい、なっ……!」
「ゃ、ああぁぁぁぁああ……っ!」
盗み見られた恋人の記憶のコピーと重なりたくなくて、意地と怒りでぶっくりとふくれたちんぽでずぶん!と真上から貫く。さっきまでぴったりだったおまんこをみちみちと拓きながら進むのに、閉じきれなくなった小さな口が歓喜と悲鳴の声をあげた。
ぶっくりとふくれたさきっぽで届く一番奥のやわな肉壁をむちゅぅ……とくじるのにこたえようと、触れ合った粘膜がちゅぅ、ちゅ、とくちづける。音だけならばかわいらしいが、爆発寸前の亀頭をさらに煽って急かすはしたないおねだりは、子種口を見つけるやいなや集中的にしゃぶりついた。
「ちんぽちゅぱちゅぱきもちぃかぁ……?」
「んっ、んぅ……っ、きもちぃ……ちんぽきもちぃ……おまんこぜんぶ、ちんぽでいっぱいらから……ず、といってる……っ」
「俺のちんぽ、だぁい好きだもんなぁ?」
「ん……っ、すき……っひとやのこと、すきらから……、ちんぽもすき……だぁいすき……」
すき、すき、と言葉を重ねるたびにおまんこがきゅんきゅんとうねり、根っこから搾りあげるように締めつける。太茎をしごくぷりゅぷりゅの肉壁に逆らうことができないまま、ぱんぱんのきんたまから子種が迫り上がっていく。子種口からあふれた先走りを滑りの増した秘奥にぬちぬちと塗り込めると、精を期待してさらにきゅぅううん……っとちんぽに絡みついた。
挿入する前から気持ちよくなる場所だと教えて、外から撫で、意識させ続けた状態で挿入し、初めて直接触れてからはずっと、ちんぽでかわいがられて射精されたらイク場所、と教えている。いつも強気に上がった眉は八の字に歪み、快感でうだり涙でにじんだ目は今にもとろけ落ちそうで、すき、いく、ぃく、とうわ言をあえぐくちびるは閉じきることができない。腕で囲ってよそ見をさせず、いやらしく拓いた肉穴をふさぎ、かわいらしい口を奪って、逃げることのできない恋人の身体の一番奥深くに種付をしたいーする。
「だぁいすきな俺の、だぁいすきなちんぽで、すけべでかぁわいいおまんこ、どうされたい」
今もちんぽにちゅぱちゅぽとしゃぶりついて、きゅんきゅんきゅうきゅうと締めつけるおまんこは、髪の毛と同じくらい赤い耳にささやくだけでむちゅちゅ……っとひくつく。言葉にならない返事はもらっているが、言葉がほしい。それを最後にふさいでしまうからだ。
「せ、そうのすけべまんこ……っ、ひとやのちんぽで、いっぱいいきたい……。さきっぽ、ぐりぐりしてるとこ……もっとぐりぐり、されて……ちんぽじるびゅぅ〜ってされて……そんで、おまんこいかされたい……っ」
恥じらいでぎゅぅ、とつむられる目尻から涙がこぼれるのにぞくぞくする。強く、美しい恋人がこんなはしたない言葉と身も世もない仕草で種付されたいと心底から乞うのは自分しかいない。何度抱いても獄への愛と獄の愛で変わった恋人が、幼稚な独占欲と支配欲をくすぐり満たす。
「またぁ……!も、やだぁ……っ」
この後に及んでまだふくれ上がるちんぽがイキっぱなしのおまんこをぐりゅりゅっと強くくじった。ひ、と鼻を鳴らして漏れ出た喘ぎはちんぽへの拒絶ではなく、待ち受ける途方もない快感への期待だ。ぼろぼろとしたたり落ちる涙に合わせ、ぴゅるぴゅるとおもらしが止まらない。幼稚で、醜悪で、凶暴な気持ちが端から首をもたげて暴れだす。どうにか理性で封じてもはみ出たものがちんぽに回り、またぐぐぅ、と力を増していく。
「ゃ……あっ、しぁなぃ……!こ、なでかぃの、しぁなぃ……っ、おまんこ、しぁなぃぃ……」
でかい、しらない、と言いながら、しっかりちんぽを迎え入れるおまんこのいやらしさは天井知らずで、そのくせいやいやをして横にふられる首がいとけなくてかわいらしい。こんな服を着たまま未知の快感にふるえられると、もしもあやまちを犯してしまっていたら、という可能性をふたたびなぞってしまう。
「おまんこ、ちんぽしらないかぁ」
「ふ、ぁあ……っ」
「はじめてなのに、こぉんなにちんぽすきすき〜ってしちゃってんのかぁ」
ザーメンも出せないおこちゃまのくせにやらしいおまんこだとささやくと、力なく首をふった。ちがう、ちぁぅ、といよいよ幼くなる反応が余計に煽ることすらもうわからないらしい。
「……はじめてなのに、でっかいちんぽで種付されておまんこイキしたいんだよなぁ?」
「ち、がぅ!」
「かぁっこいい制服着たまま、かぁわいいおこちゃまちんこ……、すけべまんこに種付されてイキションしな……っ」
「やだぁ!やっぁぁぁぁ……!」
言葉に反しておまんこはどきどき、どくどく、と期待を隠せない脈を打つ。しらないと鳴いたはずのちんぽをすっかり包みこみ、きゅむきゅむと甘えるのをもっとかわいがってやりたい。
「はじめてのちんぽ、どうだ……っ?」
「は、ぅ……で、かぃ……っ、ぉまんこ、いく、ぃくぅ……」
とろとろのおまんこと声にたまらず、ずぶん!と腰を深く打ち据える。さきっぽでぐりぐりと撫でていたひときわやわな場所は、焦らすような愛撫から一転した激しさに耐えきれず、きゅんきゅんとひくつきながらイッてしまった。
「あっぅぅ!」
「こら、まぁだ種付してねえだろ……っ」
「や!あ!ら、て、らってぇ……!ちんぽきもちぃ、から……っひとやが、すきだか、ら……」
甘く鳴き、ちんぽにしゃぶりつくおまんこを種付前にイッたお仕置きにとじゅぽじゅぽとこね回す。むっちりと熟れたおまんこは、ぴたりとハマっていたちんぽに敏感にたかめられた肉壁をみちみちと擦られるだけで達してしまう。
ちょろちょろとおもらしをしながら、すき、いく、と喘ぐくちびるに食らいつき、快感でしびれた舌をからめとる。抵抗もなく、きゅう、とくるんで根っこからひっぱるとおまんこまできゅん、とした。ちんぽでさんざんなぶられた口腔は、どうやらくちづけでも弱くなったらしい。口をふさいでよかった。きっとロクな反論もできない恋人にもっといじわるを言って、もっといやらしい身体にしてしまっていた。
「んぅ……っうぅ、ん、んっ、んんっ……!」
喉を鳴らすたびに締まるおまんこにこちらも搾られ、射精したくてたまらない。ぱんぱんになったきんたまが苦しくて、やわやわな肉壁を先っぽで撫でるたびに先走りがあふれ、ぬちぬちと塗り込めてしまう。出会った頃の、今よりもっとずっと幼い姿を装われて、なのに変わらない心根といやらしく拓いて育てた身体なのがよこしまな気持ちを助長させた。
「んっぅ……っ」
かわいがりたくて、いじわるしたくてたまらない。ぬちぬちとんとんとおまんこをこねられるのに焦れたのか、力なく跳ねていた足がく、と腰のあたりに絡みついた。もう十分にずっぽりとハメられているのに、なおも深く、はしたなくいやらしい場所にしとやかに種付をねだるのが覿面に効いてしまう。ぐぅ、と腰を深く落とし、奥までぐりゅんとえぐるように突き立てると、首をのけぞらせてくぐもった喘ぎをあげた。
「ん、ん、んぅっ……!」
短い間隔でずぶんずぶんとやわやわな最奥をくじるたび、絡まる足がおまんこと共にぎゅうぎゅうと押さえつける。出会った頃のような姿で無意識に種付を求められるのにぞくぞくとして、動きを止めることも抑えることもできない。いよいよ強く絡まった足とおまんこに、たまらず貯めに貯めた子種を放つ。
「……っ!」
「んっ!んぅっ……!ん……ぅ……っ」
びゅぅぅぅっ、びゅるるる、びゅぅ……っ、と感じやすくイキやすい、ちんぽのさきっぽで届く一番奥深くへと子種をぶちまけた。とろとろむちむちのおまんこは射精が終わってもなおみちみちとちんぽをしごき、子種口にちゅぽちゅぽとしゃぶりつく。胎を起点にびくびく、どくどくと脈打って、もっともっとと愛撫するおまんこと、ぶるぶるとふるえながらすがる足がちんぽを離してくれない。尿道に残るひとしずくまで搾りとられてようやく少しゆるんだころ、しょろろ、と小さく細い粗相が響く。おもらしもずっとしていたから底を尽きてきたのだろう。恥じらうようにおまんこがきゅぅきゅうと締まるのがいじらしい。
ずっと捕まえていた舌がくたりとして、顔を真っ赤にして苦しげに眉をひそめるのに気づき、くちづけをやめる。とたん、は、ふ、と熱い息がもれ、おもむろに開いた目蓋からとけた金色が覗いた。赤々と腫れたくちびるがふるふると揺れて、どうにか言葉にしようとしては失敗する。
出会ったときの生意気で、可愛くなくて、嵐みたいに引っかき回す子供の面影を残した恋人が、しおらしく艶めきながらくちびるをはくはくとさせる色気ときたら。ついに過去まで手中におさめたような充足感が頭と胸を占めて、まだ挿入ったままのちんぽがぐぅ、と首をもたげようとしてしまう。
「は、ぁ……っま、て……!まだ、ま、て……っ!」
「どんだけ待てばいい……?」
かわいくて、いとおしくて、止まれない。ひどくしたくないと思うのに、優しく触れたいと思うのに、欲しい全てが腕の中にある。焦点もあいまいなままの恋人につけ入りたくないのに、うるんできらめく金色がなにもかも許すように甘くとけた。
「ぜんぶ、ひとやのだから」
だから、ちょっとだけ、そうしたらぜんぶやるから。
回らぬ舌で甘やかされて、背を撫でさするように足がきゅ、と絡みつく。驚いていたおまんこもすっかり馴染んで、ちゅ、ちゅ、と再びふくれたちんぽを歓待した。
それだけの、ほんのわずかな動きでも興奮してしまう。快感の抜けきらない身体のまま、自分を受け入れようとするけなげさに胸が苦しくなる。抱きしめて、くちづけて、離れられぬようぴたりとくっついてしまいたい。思うほど、未だ深く交わったままの楔が強く力を持っていく。
「好きだ……」
こらえきれずに溢れた言葉に微睡から叩き起こされたようにまばたきする目に反して、全身は素直に歓喜をしめす。特に顕著なおまんこは、ぎゅん、と締まり、ひくひくん……っとふるえていた。
「好きだ空却」
「わか、た、わかった、からぁ……っ!」
好きだと告げるたび、きゅんきゅんと締まるおまんこが、天邪鬼な口よりよほど正直に返事をする。ずっぽりとハマったいつもよりふくれたちんぽの形を覚えようと、むちむちみちみちとやわくきつく包み込んだ。
「ひとや」
自分の名前に好きも愛してるも、向けられる感情を全部込められることなんてない。舌足らずに告げられた、たった三文字に詰まった恋人の心がもっとほしい。
「空却……」
快感と疲労でくったりとした恋人におねだりする、なりふり構わぬ声音に自分でも呆れる。挿入したままのちんぽはまだぐぅ、とふくれ続け、そのたびに全身をわななかせる恋人にたかぶってしまう。
「ほんと、がまんできねぇの……」
ふは、と息とも笑いともつかないものを吐き出して、ゴーサインを出された。そうやってまた、待てのできないダメな大人を甘やかす。かわいい、と言いたげにゆるむ眼差しに、お前の方がよほどかわいいのだと教えてやりたい。
「いいぜ、ひとや。せっそうのぜんぶ、てめぇのもんになったっておもうまで、すきにしろ」
キレの戻らぬ舌はそれでもよどみも迷いもなく許しを紡ぎ、最後に残った砦も開け放った。疲労困憊、満身創痍、よぎる不穏な言葉を押し除ける生命の輝きと折れぬ心が、一目で惹かれて恋をした、愛してやまない子供が微笑む。
「……お前は俺に甘すぎる」
「それがうれしいんだろ」
だまってすえぜんくいな、と可愛くないことを言って、ちゅ、とかわいらしくくちづけられた。
同じ体位のまま、乳首を舐めしゃぶり、そのたびひくつくおまんこをかわいがり、こんないやらしい子供を東都になんて行かせてやれない、と言えば、いやいやをするように首を振る。実際は指一本触れないまま飛び出したのだが、もしも今くらい拓ききっていたら、そうでなくともこの肌のやわさと甘さを知っていたら絶対に連れ戻していた。
言葉にされなくとも自分の知らぬ数年が恋人に得難いものを与えたのは事実で、縛りつけることなくいられてよかったと思う反面、虫の居所が悪くもある。そのいとおしく憎らしい数年を埋めるように躍起になってしまう愚かさも受け入れてくれる恋人には無敗の冠を下ろすしかなかった。
恋人への勝利条件は『天国獄』として在ることだけで、敗北条件は存在しない。先に惚れたからと負け続けてくれる恋人に勝利条件が存在しないように。
ただのクソ生意気でバカなガキのはずだった。それなのに今は余裕のカケラもなく、恋人になった子供の全てが欲しくて、一等特別な場所に置かれていたくて仕方がない。
快感でいよいよ頭のふわふわした恋人は、おまんこもとろとろになったまま戻れずにいる。それでも無意識にちんぽを搾り尽くそうと、根っこから先っぽまでをきゅうきゅうと締めつけた。
「……次の種付でイッたら東都には行かせない。ずぅっとここですけべなおまんこいくいく〜ってしてな」
うだりきった頭でもわかるのだろう。や、や、それは、それは、いやだ、と泣き出した。かわいらしくほてっていた顔に悲痛な色が混じり、けれども身体はみっちりと躾けられた快楽から逃れられない。むしろ真上からまっすぐと突き立てられるのを両足でがっちりと腰を押さえつけて、自らおまんこの一番やわな場所への種付をねだっている。
「ぜったぃ、かえる……かえって、きただろ……っ!」
きゅんきゅんきゅうきゅう、甘イキしっぱなしのおまんこに耐えながら応戦する恋人の目はどんなに乱れても綺麗で、自由にどこまでも行かせてやりたくて、どこにも行かせたくない。帰る、帰ってきたー言いよどむ、話してくれない理由がなければ帰らなかっただろうに。
「俺の好きにしていいんだろ?」
どこまでも甘い恋人の、自分勝手で人の話を聞かなくて平気で他人を振り回す恋人の言葉を引きずり出せば、ぐ、と押し黙った。戻らぬ時間、終わった過去、どうしたって覆らない出来事を、今だけなかったことにする。起きたことを否定したいわけではない。良いことも悪いことも、全てが積み重なった一番先にある今が一番いとおしい。今日つけられた瑕疵を、数年前にあった知らないままの時間を、手中におさめるなど到底できない恋人の全てを手のひらに押し込めたいなんて、ただの我儘だ。
「……いまだけな」
それ以上の譲歩はしない、とうるんだ目のまま睨まれる。恐らく今日起きたことへの引け目がなければ殴ってでもやめさせられただろう。こちらとて終わったことにいつまでも囚われるつもりはない。でないと目の前の恋人にまた叱られる。
「ひ、あンっ!」
さて話はまとまった。根っこまでずっぽりとハメたのにちゅぱちゅぱとおしゃぶりをされて、足で逃げ場までなくされたままのちんぽが我慢をやめる。最後の一射のためにぐっ、と硬く尖がり、きんたまもぐぅ、と上がっていった。
「ふぁ……っ!あ、あぅ……、いく、ぃくぅ……、またぃく……っ」
ずっと教えてくれている一番やわな場所をずちゅずちゅと撫で、さすり、くじり、こね回す。快感が極まり、たかぶるほどどこへも行けなくなってしまうのに、いく、いく、と喘ぐのがかわいくて、余計にいじわるをしたくなる。
「かわりにもう、どっこもいけねえからな……」
ずぅっとここで、ずぅっとこうしてるんだとささやきながら腰を打ち据えれば、ひぅ、と鼻を鳴らす。ほのかなおそれの混じる音が何に向けられたのかはわからない。甘えを超えた束縛が恐ろしく見えたなら、今だけ耐えてもらう他ない。
「ひ、とゃぁ……」
押さえつけてからずっとだらりと転げていた両手がよろよろと伸び、ぎゅぅ、と首にすがりつく。足だけでなく、腕までぎちりと絡みつき、離してやりたくとも離せなくなる。恐ろしくないのか、嫌ではないのか。あのおそれはなんだったのか。
「……どこにも、いかねぇ……から……ひとやいがい、だれも、せ、そぅに、さわれねえから……」
だからそんなかおするな、とすり寄せられる額が熱い。もれる吐息も、視線も、全てが炎のように熱いのに、むずがる赤子をあやすように優しく触れて、宥めるように語りかける。一体自分はどんな顔をしているのか。綺麗な金色はにじんで何も見えない。
「なか、だせよ……きんたますっからかんになるまで……せっそぉの、ひとやせんようのおまんこにぜぇんぶ……そしたらも、せっそう、どこにもいかね、から……」
首と腰に絡む四肢にぎゅぅう、と抱きつかれ、結合部がちゅぅ、ちゅぱぁ、とくちづけめいた音を立てた。耐えがたい快楽に抗って、つむりかけた目をなんとか開いている恋人が愛をうたう。
今だけでいい、何もかもを自分に差し出してしまう恋人のほとんどない秘め事も、どうしたって変わらない過去も、全て奪ってしまおう。おあつらえむきに今いるのはくちづけすらほとんどしていない恋人の部屋で、今日無体を強いられていた場所だ。これから先、何度でも思い出してはしたなく身をふるわせてほしい。
「言われなくてもそうしてやる……!」
奥深く突き立てたままのちんぽを再びぐ、と構え直し、ずぶん!と貫いた。かわいがり続けたやわやわな最奥は、焦らされ高められ続け、切なげにひくついている。全身で甘く達し続ける中、一番淫らにとろけているおまんこの、一番ちんぽに弱いところに、今日最後の子種をぶち撒けた。
「ひぉやぁ……っ!ひとゃ……、ひ、とやぁ……」
「は、ぁ……、くぅ、こう……っ」
びゅぅぅぅうううっ、びゅる、びゅぅ……と勢いよく叩きつけた子種は、さきっぽでくすぐられるだけできゅうきゅうとする肉壁を容赦なく絶頂へと突き上げる。おまんこの最奥は注がれた精子を飲み下すようにひくひくん……っと脈打ち、精を吐き出した亀頭にしゃぶりついてむちゅぅと締めつけた。
イキっぱなしで快感から下りられない身体はそこかしこが熱く、はしたなくふくれるのに、自ら四肢を絡みつけて隙間なく交わったせいで擦りつけから逃げられない。ぴん、と勃起したままの乳首も、擦れるだけでおまんこに響く腹も、種付の余韻が抜けきらない身体を終わりのない快楽に閉じ込めてしまう。
「ぁ、ふぁ……ひと、ゃぁ……」
びくんびくん、と跳ねる身体は徐々に弛緩しはじめ、手足もぐらつきながらなんとかひっかかっている。そう距離がないとはいえ派手に落下したら傷めかねない。ゆっくりと下ろしてやろうとすると、じたばたしながらきゅ、とまるまった。ゆるく拘束され直し、ふわふわとさまよう金色の行方を追うと、ん、ぅん……と悩ましげに喉奥を鳴らし、ふるりとふるえる。
「ん……」
快感でうだりきり、ぽんやりとしたいとけない表情のまま吐き出された息は熱く、反面ひどく淫らだった。これ以上は打ち止めのつもりだったのに、ぐらりとする色気を放つ恋人に心をかき乱される。まるまる仕草との落差もあって、離さなくては、と思った刹那ー
「ごめ、ん……でる……っ」
密着した隙間からしょろろ……という小さな水音が響き、触れ合った下腹部がじっとりと重く湿っていく。ゃ、や、となきながら、ぎゅう、と目がつむられ、眉とともに八の字に歪むのがかわいらしい。さすがにもうやめるが、ふぅふぅとこぼれ落ちる吐息にあわせ、きゅぅ、きゅん、と無意識に締めつけられて、ぴくぴくと反応してしまう。
「……やっぱこんなやらしいガキ、一人で東都なんか行かせられねえなぁ」
「ばぁか、どこにもいかねぇって……」
とろけた困り顔のまま、ちゅ、ちゅ、とくちづけをして恋人が笑った。どろどろに汚れても褪せず腐らぬ輝きそのままの瞳が、自分への恋と愛で甘く色づく。
本当に、本当にどこにも行かせなかったならば、この子供はどうなっていたのだろうか。今日の瑕疵も、口を閉ざしたままの過去も、なかったことになったのだろうか。考えても意味のないもしもに浸るのを咎めるように、綺麗な額がごん、とぶつかった。
「なにすんだこのクソガキ!」
「つまんねぇこと考えてドツボハマってそうだから喝入れてやったんだよ」
額を眉間のあたりにぐりぐりと押しつけたまま、話は続く。こういうときにしては珍しく、目をそらすのが気になった。
「なに考えて悩んでもいいけどな、拙僧のぜぇんぶ獄のモンなんだってことは忘れんじゃねぇぞ……だいたい、こんな好きにさせといてばかじゃねえの……」
尊大な宣言の後、小さくつぶやかれた憎まれ口から溢れ出すかわいげが愛おしい。いつも平気で好きも愛してるも言うくせに、恥じらいのポイントがわからない。
わからなくたっていい、言えないままでも、知らないままでも。傷と痛みだけではない、この子供の歩いてきた道の全てがこの世で一番愛して焦がれる生命を作っている。何度迷って見失っても、それはずっと変わらない。
「つまんねぇことじゃあねえよ」
「ベッドですることじゃねえって言ってんだよダーリン」
ぐちゃぐちゃに交わったまま、強く抱きしめてくちづける。うすら暗い闇の中、真っ白い肌と金色の瞳がまばゆく見えた。手を引いて、導くように。
今回の一件が始まってから終わるまで約八時間。
「耐久レースかよ……」
「獄は途中参戦だろうが!拙僧なんざフル稼働だぞ!」
いいかげん風呂と飯となったとき、二人してとても外に出られない有様になっていた。さすがの空却も身体が動かせずに寝転がっている。住職に任された身で報告もあるからと簡単に身支度を整えていると、恋人はすっかり彼方へと追いやられていた軽食を見つけて手をつけていた。
情事の痕跡が色濃く、ロクに後始末も出来ていないままガブガブと飲み、食らうー人にベッドですることではないとどの口で言うのか。はぁ、とため息をつくと、食うか?と袋を差し出される。ちらりと覗く無数のおにぎりは手製だろう。ありがたくいただきたいのはやまやまだが、部屋に乗り込んだときとは何もかもが違うのだ、この状況で何かを飲み食いするなんてとてもできない。いらん、と断るとほぉか、と頬ばったまま袋を下げられた。
「……お前よく食えんな……」
そんだけ消耗したんだろうが、と言外に匂わせながら、ひょいぱくと食べ進める様を眺めていると、こともなげにとんでもないことを言われた。
「汗みどろだの泥だらけだの血塗れだろうと食わんとはじまらんからなァ、寺……はともかく山は一歩間違えば御陀仏しちまう。あとは東都か。着の身着のままだったから最初は野宿して、そのあとは知り合った奴の家とか……横でしばき倒されて血ィダラダラ出てるの見ながら飯とか普通にあったな」
ついさっきまでヤッてました〜って部屋で一時待機とかもしたぞ、と言われて、頭を強く殴られたように目がくらむ。同じ汁でも他人のモンよりはマシだな、なんて一個もフォローになっていないからな。そしてそんな話をしながら食い続けるな。
「ンだよ、拙僧がピュアでカワイイお坊さんじゃなくてガッカリしたかァ?」
「お前がチンピラ不良生臭坊主なんて初めて会ったときから知ってんだよ」
何度目かのため息をケラケラと楽しそうに笑い飛ばす。ピュアでカワイイなんてお互い思ってもないことをよくもまあ言ったものだ。それだけのものだったら恋などするわけがない。愛することも、抱くことも、清濁飲み干してなお真っ直ぐに己の道を進む空却だからするのだ。
最低限の身支度を整え、部屋を出る間際。さすがに腹がくちたと寝転び直す恋人にくちづける。触れるだけのそれに目をしばたたかせる表情はあまり変わらなかったが、かすかに肌に朱が混じった。唐突なくちづけにわずかな惑いを見せる赤い耳にもくちづけを落とし、行ってくる、と伝える。
「おう」
動揺を押し込めた声音は、たぶん獄くらいにしか分からない。出て行ったあと、どんな顔をするのかと思うと悪い気持ちが首をもたげてしまう。そう思ったらつい、だ。
「お前は純粋で、かわいいよ」
それだけ告げて部屋を出ると、背後からばーか!と聞こえてきたが無視をした。本人はもちろん、あの悪僧を知る人間のほとんどが首を横に振るだろうが、それでいい。五百年の由緒の寺に咲いた泥中の蓮は、獄にだけ微笑むのだから。
2022/7/23
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