おとぎ話でおわりたい

 『初めて』をこんなところでいただきたくない、と宥めた子供がいつも通りに振る舞えるようになるまで駄弁り、ようやく部屋から追い出した後のことだ。

 かわいいかわいい恋人(暫定)は、子供で、生徒で、付き合うのはもちろんのこと、キスやセックスなどもってのほか。卒業までは暫定だと口を酸っぱくして言いふくめ、どうにか教師と生徒のわりに距離が近いていどに抑えている。入学前からの顔見知りだと言えば、ああそれで、と納得する者もいるが、当然カンのいい者には――というか子供が隠しやしないから――バレていた。俺とて時折向けられる眼差しに、問題児に懐かれて可哀想以外の種類があることに気づかないほど鈍くはない。
 卒業というゴールが近づくほど、子供はますますあけっぴろげになった。学校では『先生』とつけろと言ってもへえへえと流し、距離が近いではごまかしのきかない密着をし、あげくにコスプレセックスを迫る。
 昔から顔の綺麗な子供だった。そしてそれに惹かれて湧いた虫を殺すのも上手い子供で、俺が庇ったり弁解した回数は両手足の指では足りない。ただそれだけ、そんなほんの些細なことで懐かれて、好かれて、そして――
「あー……ちんぽ痛え……」
 十六も年上の大の大人が情けないことに、気づけば同じ穴に落ちていた。

 子供の手前、見栄を張っただけで、自分への好意をダダ漏れにした顔もスタイルも整った恋人に迫られて嫌なことなどない。ましてやスマートに引き締まった身体によく似合うコスチュームなど、学校でなければあぶなかったと断言出来る。
 なぁんにも知らない真っ新真っ白の恋人に食べて食べてと据え膳に乗られて、本当に全く、俺はよく耐えた。よって当然のごとくちんぽが痛い。部屋から追い出して安心した反動で、もはや一歩でも動いたら発射する。
 幸いだったのは子供が着替えを含む荷物を一式持ってきていたことと、職員室から盗んだ鍵を没収して内鍵をかけられたことだ。これならとりあえず一発抜く猶予はある。

「くそ……っ、こっちの気持ちも知らねえで……」
 舌打ちと共に解放したちんぽは、ぶるんっと元気いっぱいに飛び出して、みっともないくらい先走りでべちょべちょになっていた。む、と醸し出されるような熱気すら感じて、恋人のかわいらしい勃起を思い出す。
 腹の上で飛んだり跳ねたり擦りつけたりするセックスの真似事で欲情した子供が、プリーツスカートをふんわりと持ち上げて色気がないかと問う姿はひたすらに毒だった。あの時むしゃぶりついて犯さなかったのは学校だったからと、俺が恋人を愛しているからで、あの恋人に勃起しないやつは病院で精密検査を受けた方がいい。
 まだそう過去ではない。ソファーにはぬくもりが残っていて、抱きしめた感触だって覚えている。あと一年もない、ほんの数ヶ月後に卒業するまで待ってほしいと切実に訴えて、綺麗な丸いひたいにくちづけたらようやく頷いてもらえた。
 しょうがねぇな、とふてくされながらも触れるだけの幼いくちづけに耳まで赤く染める恋人に、そんなんでセックスする気だったのかと暴発しかけたのだが、先走りですんだらしい。よっぽどひどい有様の下着を見せつけて、お前のせいだぞ責任を取れと言ってやりたいが、今は派手な外見を裏切るうぶなしぐさに耐えられる気がしなかった。
 そういえば恋人の下着はどうなっていたのだろう。プリーツに出来たらシミは言い訳のしようがない。履いていたのかいなかったのか。今更になってしっかり中を見ておけばよかったと後悔する。
 下着を押し上げるちんこの先走りがスカートにおもらししてしまうのも、下着から解放されたちんこが慣れぬ感触のプリーツスカートに先走りをおもらししてしまうのも、どちらもたまらなくそそる。意地悪く責めたてて、より濃いシミをスカートにつけさせたら――苛立ちもあって、存外に清純派な子供に酷いことをしたくなった。自制の二文字が脳裏をよぎるが、これ以上汚したくないだろう、と下着を脱がせ、スカートを自分で持ち上げさせるのも悪くないなんて考えてしまう。
 ほんの少し前まで目の前でくり広げられていた健気な激励スクワットは、もうすっかり卑猥な妄想に塗り替えられてしまった。規則正しい動きはそのままに、下着を身につけていない股間を見せつけるようにスカートをたくし上げる。かわいらしく勃起したちんこも上下に揺れ、ぺちぺちぷるぷると音を立てながら先走りを撒き散らし、ついには射精してしまう。はしたなく露出したままザーメンをぶち撒けさせるのもいいが、快感で手元が狂えばぐしゃぐしゃに乱れたプリーツをさらに汚してしまうことになるだろう。
 ほんのりとあたたかいソファーを撫でながら、恋人のやわさを覚えている手でちんぽを扱く。フレ♡ フレ♡ とあらぬ場所を応援する姿は網膜に、声は鼓膜に刻まれて、しゅ、しゅ、と記憶をなぞるように手を振ってしまう。
「ふ……ぅっ」
 我慢を重ねたちんぽはすぐに硬く張り詰め、上り詰めた。頭の中の恋人は自由になるはずなのに、どうしても挿入しているイメージが出来ない。
 卒業したらなんて言ってもまだ迷っている。もっと幼い頃から知っている子供だ。歳の離れた弟のように思っていたら恋を謳われて愛を訴えられ、言ったら聞かない性質とあんまり一途な目に負けた。だからこそ暫定なのだ。子供が、傷つかないために必要なのだ。
『ひとや』
 先生をつけろ、と何度口を酸っぱくしても聞きやしない子供の、ほしくてほしくてしょうがないとなく声がフラッシュバックして、心臓と手を揺さぶった。
 頭の中だけの恋人がのけ反り、脱力しかけた腕をなんとかピン、と伸ばしてスカートへの種付を避ける。それと同時に喉奥で息も声も噛み殺してした射精が、冷えはじめた頭をさらに冷たく乾かしていった。嫌になるほど濃く、量も多い手のひらの中の欲望にめまいがする。
 もはや見たことも触れたこともない性器がぷるぷるとふるえる様を想像して抜く日が来るとは思わなかった。来てはならないと言うべきで、来てはならなかった日であったのに。
 暫定の恋の幕を下ろす日だってそうだ。本来なら暫定でもあってはならない。決して負けてはならない勝負に負けた時点で俺が全て悪い。子供を拒む義務を放棄したから傷つく権利も無い。綺麗な言葉で覆い隠した醜い執着を真実の愛にしたいなんて甘えだ。
 数ヶ月後、今度こそひたいではなくくちびるにするくちづけに、どうか目覚めないでいてほしい。

2024/2/3


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