ままごとでは済まぬので

「なぁ獄、やっぱ淫行教師だったんじゃねぇ?」
「は?」

 卒業シーズンが終わり、入学シーズンを迎えた四月。
 陽気に誘われた散歩の帰り道、いよいよほころび始めた桜を見ては嬉しそうにするパートナーの頬もほんのりと桃色に染まる。
 まだ高校生でも通じる幼さもある反面、年相応の落ち着きと不相応なほどの色気を醸し出すようになってきた。
 無邪気にはしゃぐ子供と褥で誘う大人。どちらか、あるいは両方ともを匂わせる笑顔が、はた、と凍りつき、きしむ。
 そうしていくらかしてこちらを向くと眉をむつかしげにひそめたまま、とんでもない口撃を放った。

「だってよ、獄は卒業したら〜って言ってたけど、法律上は四月一日になるまでは高校生なんだって聞いたぜ? じゃあ卒業してすぐ――」
「やめろ」
 卒業式後、すぐではない。すぐではないが、まあやることはやった。散々ちらちらと見せつけられてきた耳だの首だの胸だの腹だの腰だの尻だの足だのは、全て手と口でかわいがった。過ぎた快感と羞恥で逃げるのをもう大人だろうと引き止めて、くたくたになったところをさらに暴いた。少なくとも、身分上は高校生だったパートナーを。
「アマグニセンセ、生徒のお尻をおまんこにしちゃうなんて悪いんだぁ……♡」
 くすくす、とわざとらしくカン高い声で忍び笑いをするパートナーに、挙手で異議を申し立てる。
「……性行為の同意年齢は十六歳未満だ」
「つまり?」
「当時の俺たちは自由恋愛で婚約している三十四歳と十八歳で、お前の卒業後すぐ性行為にも及んだがお互い合意の上だったはずだ。つまり、たとえお前が法律上は高校生の期間でも俺が淫行教師の汚名を着る可能性は低い」
 なんなら俺が学生だったパートナーを諌める涙ぐましい努力の日々と、結婚前のパートナーの俺への蛮行の証言者を探して連れて来てもいい。なにより御義父上に泣きつく覚悟もあると言えば、つまらなそうに矛をおさめてくれた。
「……ま、法律はどうあれ生徒とデキた先生っていうのは事実だけどな」
「どうしても俺を犯罪者にしたいみたいだなあ!?」
「拙僧は獄が教師じゃなくても、犯罪者でも、好きだよ」
 春らしいやわらかな光の中、パートナーがせっかく開きかけた蕾が引っ込みそうなほど綺麗に、かわいらしく微笑む。
 ああくそ、こいつは俺がどういう顔をしたら許すかをわかった上でこんな風に笑うんだ。そして俺も馬鹿だから気まぐれの暴投をうやむやにするために作られた表情がかわいくて黙ってしまう。
 ただ二つ、問題があるとしたらここは顔見知りだらけの近所の道ということと、この顔を誰にも見せたくないのにそこいら中に野次馬がいることだった。

2024/3/31


BACK
作文TOP/総合TOP