一緒にこたつで丸くなる

 何とも無しに寺に集まりだらだらと駄弁っていたときのことだ。空却さんって猫っぽいっすよねと持ちかけた十四が、はぁ? とすげなく返され、それこそ猫の子のようにみぃみぃと泣いた。

「獄さぁん! 獄さんもそう思わないっすか?」
 どうにか味方を作ろうと、十四が上目遣いで縋りつく。畳にごろりと転げた子供二人がじゃれつく様はすでに猫っぽくあった。強いて言うなら十四は大型犬の方が似合うのだが、そうなるとやはり空却は猫っぽい。
 ツンと尖った目尻、しなやかな身のこなし、気まぐれで自由気まま……猫からイメージされるものとよくよく重なる赤毛の子供はどうでもよさそうに十四が貰ったというブランドのカタログを眺めている。興味がわかないページはバンバン捲りあげ、急にぴたりと止まってまた進む。ちら、と覗いても共通点のわからない好奇心の矛先に、気づけばそうだなと口から溢れていた。

「猫っぽいってなんだよ」
「だからさっき言ったろ」
 よもや味方をされると思っていなかったらしい空却が、ひどく憤慨してはぁ?! と叫んだ。やったぁと歓声を上げる十四に猫っぽいところを並べたてられ、あまりの勢いに一瞬は飲まれたものの、すぐに頭を引っ叩いて主導権を握ったのをさすがと言っていいのかどうか。
 しかしながら一度そう思ったら何をしてもそう見えてしまうもので、ぎゃあぎゃあと噛みつく様子すら毛を逆立てる猫の子のようで口元が緩んでしまう。こんなときばかり目ざとい子供は、すぐにぎ、と金の目を怒りで燃やし、獄! と吠えた。
 結局、騒ぎを聞きつけた住職に全員まとめて叱られ、なあなあな空気で解散となった。先んじて――逃げるように――帰った十四を見送り、最後まで理由を言わずに去ろうとする空却を寺の駐車場で引き止めたのが今だ。

「そんな猫、嫌いだったか?」
「別に、嫌いじゃねえよ……ただ……」
 言うまで帰らないし帰さないと掴んだ腕は、ふりほどこうと思えば出来るはずだがそうしない。けれども躊躇うほど、口にし難い理由なら余計に知らずにはいられなかった。
 嫌がることは言いたくないし、したくない。思えば思うほど強く握りしめてしまう。こちらの必死さにほだされたのか、嘘みたいに小さく開かれた口からひそめられた声が出てきた。
「……ヤるとき、突っ込まれる方が……ネコって、言うって……」
 そう、聞いたから、だから、猫猫言われると、そうじゃないってわかってても……思い出して、気まずい――半身をそらしてまで目を合わせまいとする空却――恋人――の腕が熱い。隠されて見えない顔が、耳が、目が、全てが見たいのに、じたじたと暴れて見せてくれない。

「……あ、灼空さん! すみません、急で申し訳ないんですが、今晩、息子さんをお預かりします」
「てめ、獄……っ! なに勝手してンだよっ」
 空いた片手でスマホを操作して、強行手段でかわいい猫を持ち帰る。果たしてご機嫌をなおしてくれるのか。存外、二人きりではかわいく鳴くから、きっと大丈夫だろう。

2024/2/22


BACK
作文TOP/総合TOP