一緒にベッドで丸くなる
猫は尻尾の上あたりをとんとんすると気持ちいいらしい。
「そんなん、ねこのはなし、だろ……っ」
「お前も猫みたいなもんだろ?」
ふざけるなという叫びは、残念ながら直後にとん、と尾骶骨あたりを叩かれて、だらしない喘ぎに変わってしまった。
「あ♡ ぁうっ♡ ぁっ♡ あぅぅぅ……っ♡」
ベッドならいざ知らず、ダラダラと動物動画百連発なんて番組を垂れ流していた居間にいる。家主の厳選した家具は、普段から汚すなと口を酸っぱくして言われているのに、よりにもよって家主直々に一番汚れる行為を強いられていた。
畳生活でどうにも床に転がってしまうのを気遣って用意されたクッションに頭だけ乗せて、ほとんど見たことのある動画を適当に流し見していただけなのに。急に尻をぱん! と叩かれて、その後はテレビから流れてくるBGMに合わせて尻をリズミカルに弾かれた。挙句に猫扱いで尾骶骨のあたりをとんとんと叩かれている。
こんなんで気持ちよくなんぞなるものかと思っていた。いたのに。最初に尻を叩かれた時点で危なかった。尻の中まで貫くような衝撃は、恋人に快感を教えまれた体には鋭く、甘く、びぃん、と響く。あきらかに痛みではない理由でのふるえがバレているのだろう。尻穴を割り開くように、尻たぶを強く揺さぶるように、何度となく重ねた夜を思い出させるように弄ばれる。
ようやく動きが止まって一息つくと、口とちんこがびしょびしょになっていた。クッションはともかく、寝転んだのはフローリングではなく家主がお気に召したというラグの上だ。このままではあらぬシミが出来てしまう。出来たって構やしないと思えたらよかったけれど、この恋人はこちらの粗相でダメになった家具や寝具を『うちの猫がイタズラして』と言っているらしいのだ。
何がイタズラだ。お前がイタズラしているのだろう。今だって急に仕掛けてきて、隠しようもないくらいぐずぐずにしたクセに。呼吸のたび、にちゅ、にちゃ、と股間で濡れた音がするのも、洒落たラグに恥ずかしいシミが出来かかっているのも、全部ぜんぶ、獄のせいだ。
どっからどう見てもマズい状態なのがわからないはずもないのに、興奮して上擦った声の恋人が後ろから囁くように猫の弱点について話をはじめた。それは猫の話だろうとなんとか返事をしたものの、尻肉を弄ばれて甘イキしまくっている体では説得力がまるでない。無言でとん、と叩かれたと思ったら、尻から快感を押し出されたみたいに甘ったるく喘いでしまった。
「本当に効果あるんだな」
「ぁ♡ ちぁぅ……♡ ねこじゃ、にゃぃ……♡♡」
「とんとん♡ ……ってすると、足ピンして甘イキしまくってるのに?」
「したくて、して、にゃぃぃ……っ♡♡」
「へぇ……嫌なのにお尻ぺんぺんととんとんでそぉんな感じまくっちまうんだなぁ……」
それからずぅっと、尻をとんとんとされて甘イキし続けていたら、ぞわりとする悪だくみの気配がした。かわいいかわいいと猫可愛がりするくせに、ときおり急にひどく意地悪なことをする恋人は、いつそのスイッチが入るのかわからない。そしてこの間にもとんとんは続いている。
「あっ♡ あ、んっ♡ ゃあっ♡ ゃ……♡ ゃあらあぁぁぁぁ……っ♡」
不穏な空気が収束し、直後にばちん! と手のひらが尻へと振り下ろされた。最初のよりもさらに深く、ちんぽで抉られる奥底まで届くような一撃に股間が決壊する。耐える間もなく、ぷしゃぁぁぁぁぁっ♡ と潮とも尿ともつかない粗相が音を立ててラグに広がっていった。
甘く焦らされ、たかめられ続けた体ははしたないおもらし絶頂から抜け出せない。強く叩いた後の慰撫にとろけ、再びとんとんと甘やかされ、びくびくとはねて粗相をするしか出来なくなってしまう。
「ゃぁあ……っ♡ とんとん、やぁ……♡」
「じゃあぺんぺんしてやるよ。……ぺんぺんの方が痛いのに、おもらしイキするほど気持ちいいんだもんなぁ……?」
「ぺんぺんも、やぁ……っ♡ ろっちも、ゃらぁ……っ♡」
背後です、と尻を打ち据える動作を取られ、それだけでぶるりと体がふるえた。嫌だ。痛みではなく、その痛みで気持ちよくなって、また、イクのが――
「……やぁらしぃマゾ猫ちゃんになっちまって……♡」
「ひ、にゃぁっ♡♡」
いやだ、やだ――どう思っているかなんてわかっているはずなのに、恋人の手のひらは無情にも尻へと落とされた。ちんぽのさきっぽでしか届かない、一番奥の、一番いやらしい、子種を浴びせられたらイクように教え込まれた場所が、尻を強く叩かれて貫かれる。強烈な一刀の後、今度はじわじわと広がっていくむず痒い痛みが尻奥を犯していく。イクほどではない、終わらない甘イキがまたくり返しくり返し、尻の外から内へと染み込んでいく。
「ぁ♡ ふあぁぁ……♡」
いやらしいと言うよりも、むしろお仕置きや意地悪に近いことをされたはずなのに、イッてしまうのが恥ずかしい。いやだ、やだ、と頭の中で叫ぶのに、実際には尻叩きでの絶頂に浸りきって、じょ、と射精の代わりにおもらしをしてイッている。
「このラグ、買い替えたばっかなのになぁ?」
「ごめ、にゃしゃぃ……♡♡」
「今度はうちのマゾ猫ちゃんがおもらししても大丈夫なの、一緒に選ぼうな……♡」
「ゃあ……♡」
「ああ、さすがにもったいないからこのラグもクリーニングに出すか。おもらし猫ちゃんにも手伝ってもらって……♡」
「やっ♡ やらぁっ……♡♡」
他人に粗相の事実を見せつけるから付き合えなんて、ひどく意地悪いことを提案された。そんなの嫌に決まっている。店員にさも本当の猫がしでかしたみたいに醜態を語るのを聞いていろと言うのだ。悪趣味な意地悪――そう思うのに。
想像しただけで、ぞくぞくびくびくと体がふるえて止まらない。気づいたら、また――
「……お前はほんと、やぁらしくて、かわいいよ……♡」
「ぁ♡ ゃ、あ……♡ やらぁ……っ♡♡」
もう何度目かもわからないおもらしイキは、しょわわわわ……っ♡ とあたり一面に飛沫を上げて撒き散らかすもので、ラグに致命傷を与えてしまった。こんなの、猫の仕業だなんて誰も思うまい。恋人と一緒に店など行こうものなら、そんなのはもうプレイに他人を巻き込むのとおんなじだ。絶対に阻止をしなくてはと思いながら、恥ずかしい想像でまた、またおもらしして、イッてしまう。
「……っ♡♡♡」
「しーしーきもちぃなぁ? マゾ猫ちゃん……♡」
マナーウェアって知ってるかと言われたけれど、わからなくて、ただ、また何かひどく意地悪なことをしようとしているのを感じていた。
2024/2/23
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