百八番ですよね
真の常連客は自分から常連とは名乗らない。
むしろ店側が勝手にあだ名をつけて、裏で今日も来た、なんて話すようなのが常連だ。(※諸説ある)
うちにもツナマヨ先生だのスイーツマダムだの、本人にバレたらクレーム間違いなしのあだ名がはびこっていて、今日も見慣れた顔ぶれがいつもの商品を何も言わずに買っていく。
だからあれ? と思ったのだ。いつも煙草だけを買っていく煩悩リーゼントが、カゴいっぱいに漫画雑誌だ駄菓子だ炭酸飲料だのを持ってきてホットスナックまで注文する。
頭の中で首を傾げながら商品を読み込むとラインナップに覚えがある。たまに来る派手な赤毛のヤンキー、そいつの買う物によく似ていた。
ちらりと店内を伺うと、雑誌コーナーにヤンキーがいた。知り合いだったのか。リーゼントだしヤンキー繋がりか? でも煩悩リーゼントは近所の弁護士事務所の社長のはず……。
「クレジット一括で」
見慣れたクレジットカードをタッチ決済の読み取りに掲げられ、はい、と言うつもりで煙草はいいんですか、と言っていた。
微妙な間と空気に煩悩リーゼントが少しだけ目を見開いて、その後に小さくため息をつく。覚えられてるのがイヤなタイプか。いや、ほぼ毎日買ってんだから無理だろ。
「なんだよ獄、常連サンかァ?」
「黙れ。奢ってやってんだろ」
「勝手にコンビニ入って勝手にカゴ突っ込んで勝手にレジ行くのは奢りっつうんか?」
「よく見ろ、お前がいつも買ってるモンだろ」
「教えた覚えねぇんだけど」
「んなの見てりゃわかる」
いつの間にか隣に来ていたヤンキーが次々と爆弾を落とし出した。待て待て……お前が入れたんじゃないのかよ。見てるだけで覚える? このいっぱいのカゴの中身全部? そんなの煙草の番号どころじゃない。記憶力がものすごく良いか、あるいは――
「……煙草も」
こっちの視線に気づいてか、煩悩リーゼントが追加注文を出した。ため息まじりの投げやりな声に、いちおう確認で番号を告げて読み取ると、今度こそ会計は終了した。
2024/5/22
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