モーニングお二つです

 隠れ家カフェなんて言えば聞こえはいいけれど、目立つ場所にないだけ。今どき映えるメニューもwifiもない店に来るのは物好きな熟年層がほとんど。少なくとも赤毛の若いヤンキーは初めて見た。連れ立ってきた常連の男も今どき珍しいリーゼントだが類は友を呼ぶのだろうか。二人のいる席だけが派手派手しい。

「本当にコーヒーでよかったのか?」
「コーヒーがウリの店なんだろ?」

 あくびをしながらそれにコーラって気分じゃねぇ、と眠そうに答えるヤンキーは朝に弱いのだろうか。だるそうに頬杖をついている。
 常連の男は元気そうだが妙に落ち着きがない。向かいに座ったヤンキーに対して気遣わしげにしているものの、関係性がよくわからない。

「普段コーヒー飲まねえクセに何言ってんだ」
「気分だよ、気分」

 だいぶ歳の差があるのに話し方や態度は気安い。親戚というには顔立ちに共通点がない。学校、職場、同好会……思いつくものはあってもどれもピンとこない。一体どこでどう出会ったのか。まるで想像がつかない。

「気分なぁ……」
「そ、アレだ。夜明けのコーヒーってヤツ? 味わってみたくってなァ」

 ファーストキスはレモン味じゃなかったから、と笑うヤンキーに対して、常連の男が言葉をなくす。『お』に開いた口をそのままぱくぱくと開いては閉じをくり返し、最後にはぁ、と大きなため息をついた。

「……ウチで飲むかって言ったら断ったクセに……」
「ヒャハ! あの時は日本茶の気分だったんだよ」

 けたけたと笑うヤンキーに嫉妬か? と楽しげに煽られ、常連の男が妬くかと睨みつける――気になっていた答えが思わぬ形で提示された。なるほど、付き合いたての初々しさと、長く連れ添っての熟れた雰囲気が同居しているんだ。
 ひとりでスッキリしながら、つい聞き耳を立ててしまったお詫びにカップルサービスのハートのクッキーを数枚添え、テーブルへと向かい声をかける。
 応じた二人の顔はどこか雰囲気が似ていた。

2024/5/25


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