我ら等しく掌の上の猿
コンセプトカフェ――大小トラブルが発生して仕事が舞い込むようになった新しい飯の種。
ほとんどただのコスプレ喫茶で、チェキだのグッズだのオリジナルドリンクだので身代を潰すなど信じられないが、色恋を匂わせる営業は覿面に効くらしい。どんなに甘い言葉を囁かれたとて、相手は仕事でしかないだろうに。
やれやれ、とため息をついていると、スマホがブ、と小さく揺れた。
メッセージアプリからの通知は恋人からで、ヨコハマに行くと言っていたからそれだろう。油断すると音信不通・行方不明になる恋人に、口を酸っぱくして言い聞かせたら何処に行った何を食ったという連絡はするようになった。
中坊の時分にヒッチハイクで東都に行った時に比べれば進歩した――眉間の皺を解しながら一人で頷く。通知を開いて、その内容にすぐに電話するハメになるとも知らずに。
「んだよ獄、急に電話とか珍しいじゃねーか」
「……? オオサカのセンコーとヨコハマのヤツら? あぁ! カツアゲしてる雑魚共を片付けてたらオオサカのセンコーが手助けしてくれてな。その後に一緒に飯食いに行ったんだけど、そこがくそまじぃ上にぼったくりでなぁ……。店の連中ブン殴るかってしてたら左馬刻……ヨコハマのヤツらが来て……ま、色々あったんだよ」
「雑なまとめ方するな? またヤクザに足代出してもらうのか? その制服はなんだ? あぁもううるっせぇなぁ! 獄が心配するようなこと、なぁんにもねぇっつぅの!」
長い付き合いの恋人が察しよく、待て空却、と追い縋る声を無視して通話を終える。
良かったのか、と問う視線に、良いんだ、と頷いてスマホをポケットにしまった。
帰ったらきっと、嫉妬深い恋人がいきり立っている。
背がふるえる、これはそうなるという予感だ。
そしてそれは、絶対に外れない。
2024/9/6
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