我ら等しく掌の上の猿+EX

 ナゴヤに戻ってヨコハマ土産をばら撒いていると、不機嫌ですと顔に書いた恋人が現れた。
 まず寺、次いで十四、そろそろ獄に会いに行くかと思っていたのだが、痺れを切らして迎えに来たらしい。どうやらたまたま寺に来ていた十四から戻ってますよ、と連絡されたようだ。
 思い返せばもうすぐ出る、と送った以降は到着を伝えていない。おおよその帰宅時間さえわかっていれば一応安心するのか機嫌は平行線のままなのだが、知らないままそれを他人に教えられるのをこの恋人はいたく嫌がる。
 なおかつ父には先を譲っても十四には譲れないとのことで、そうは言っても自由時間の多さが違うだろうと宥めても『一番に俺に伝えていた』というのが大事なのだと力説された。面倒くさいことこの上ない。だのでたまにそれで嫌気がさして大喧嘩になる。
 ただ今回は『そういう反応をする』のを狙って煽りもした。到着を伝え忘れたのは狙ってはいないけれど、上手いこと焦れて煮詰まっている気配がする。
 ぶすくれた顔で車に引きずり込まれ、あれよあれよと助手席のシートベルトを止められた。土産しか持ってないと言ったら流れるように寺へと電話をし、出先で事件に巻き込まれたようなので詳しい話を聞きたくてなどと最もらしい嘘八百を並べたて、恐縮する父親を丸め込む。
 さすが無敗のベンゴシセンセ、と褒めてやったのに、む、と不満タラタラの顔のまま、どーも、と吐き捨てられた。帰るという連絡は獄にしかしていないし、それもわかっているはずなのに、ほんのちょっぴり先を越して教えられたのがよほど気に食わないようだ。
 なんともおっかない。おっかないけれど、計算して仕掛けた罠にはまってくれたから可愛くてたまらない。久々に会うからいっそうのこと可愛らしさが募ってしまう。子供じみたヤキモチを隠さずに俺を見ろと加えられる圧は、重く絡みつくほどに執着されていると感じてぞくぞくとしてしまう。
 十六歳下の子供のやることを大人として理知的に叱っていた男は、その子供が恋人になった日から自分が嫌だからという感情的な駄々をこねるようになった。当然、重ねたばかりの肌にも如実に現れた。なんにも知らなかった身体はすっかり色艶豊かに拓かれ、恋人の瞬き一つで甘く匂い立って実りを告げる。
 悋気でいっぱいでない時すらそのザマなのに、大人げない嫉妬でおかんむりの恋人が怒りの裏にある本心――臆病な甘え――を全力でぶつけてきたらどうなってしまうのか。そんなの、想像するだけでたまらない。きっと土産も気に入ってもらえるはずだ。
 ろくに会話もせずに走り出した車は、法定速度を遵守したまま最短最速で恋人の家へとたどり着く。無言で鍵が解除され、シートベルトを外した。機嫌を伺う仕草でちらりと横を見れば、出会い頭から寄り切っていた眉間のシワがさらに深くなっている。
 むっつりとしたしかめ面を眺め、つぅっと視線で全身をなぞる。全身からほとばしる苛立ちが、スマートを気取りたがる恋人の獣性を剥き出しにしていた。
 会えなかった時間はお互い同じ。なら、求めているものだって同じはずだ。

 無言の、しかし燃えたぎる炎が見える恋人の背を追って、見慣れた居間へと通された。向かい合って座ると、最低限のもてなしとして出された茶を啜る。そして恋人の怒りを宥めながら、けれども煽りつつ、おおまかな流れを再度説明した。
 DRB参加者連中は獄が心配するようなことはしないと言っても、獄としては思わぬ関わり方をすることが増え、面倒をかけたり借りを作るのが嫌らしい。拙僧の作った借りは獄には関係ないだろうと言っても、保護監督責任を問われるのは俺だと聞かない。
 詫び入れなきゃいけないだろう、とついたため息は『DRBチーム最年長者』としての意味が強い。やっぱり苛立ちの中心は『やんちゃで生意気な後輩』として接客に従事したことにある。
 こちらとしては言われたとおりに振る舞いながら飲み食いして、たまに写真を撮ったりゲームをするだけでいいから寺のおつとめより楽だった。……色恋を期待しているヤツらもいるにはいたから、恋人が許さないのはそこだろう。
 予想どおり、ヨコハマ到着からナゴヤ帰宅まで、つまびらかに話してやったのに食いついたのは潜入先のコンカフェのことだった。
 ふ、と笑いがもれたのを恋人が見咎める。わかっているだろう、わかっていて煽っているだろう、と責める目は色も相まって冷たく鋭い。ここでようやく土産の出番だ。

 待ったをかけて居間を出ると急いで洗面所で着替えた。これから先を考えたら最初から全部洗濯機に入れた方が早い。ほんの数十時間前まで毎日着ていたのとほぼ同じ服は、存外に素早く着替えられた。
 店の制服はあげられないけど似たようなのは売ってるよ、と言われ、驚安の殿堂で仕入れた制服は細かい飾り以外はほとんど同じだった。店のやつの方がもう少ししっかりしていたが、この後は捨てるしかないから強度や出来は関係ない。
「よっ、センパイ! 拙僧……俺になんかご馳走、してくれんだろ?」
 恋人――『先輩』と視線を合わせるよう、机に手をついて身をかがめる。店の時はもう少し低くしていたのは、自分よりも相手が小さかったからか。
 悋気と怒気で威圧的だった鋼色が、動揺と困惑で一瞬だけ瞠目する。隙をつかれた顔も可愛い、と思ったのも束の間、……なるほど、と地底よりも深く低い声が、取り返しのつかない真っ赤っかに染まっているのを嫌でも感じさせられた。

「お前のために金を使えばいいんだろう?」
 恐ろしい、それはまぁ恐ろしい声と共に財布が机の上に置かれた。かたわらに置かれたスマホには件の店のSNSが映っている。
「あ、あぁ、拙、……俺になんか食わせてくれたら、MPっつうのが貯まって……」
「俺が今までお前に奢ってやった分、いくらになると思う?」
「いや、それは拙僧……俺とは関係ないだろ……」
「……じゃあこの店の賃金分払ってやる。今からだけじゃない、実際にキャストとして潜入してた期間分全部。そしたらいいだろう?」
 何が、とはとても聞いてはいけない雰囲気だった。こうしてほしかったんだろう? と言う恋人の目は、質問も拒絶も許す気がない。
「いいぜセ・ン・パ・イ! いぃ〜っぱいっ、あそぼーぜ?」
 たまにいたMPのために全メニュー制覇する客にしたように、挑発的に笑ってやる。それだけで簡単にきゃあきゃあと黄色い声を上げるのがおかしくて、気づけば作るのが楽しくなっていた表情は『先輩』もお気に召したらしい。
 外にいたときは嫉妬と怒りで抑えられていた獣欲が解放されて、比べものにならないほど強い、む、とした熱気と色気が噴き出した。ぎん、と研ぎ澄まされた目は、刃物の鋭さではなく、獣の牙か爪に近い。
 空気だけでぞくぞく……っと背がふるえ、つたい落ちた甘い畏れは胎で弾けた。椅子と机の間、影になって見えない恋人の股座は、きっと自分のモノと同じように硬く尖っている。ふぅぅ……とため息に見せかけた唸り声の熱さに尻の奥がわなないて、ひゅ、と漏れかけた喘ぎを飲み込んだ。
 しかし賃金の支払いだと客じゃなくて店長じゃないか? と思ったのは黙っておいた。だって、これから猛り狂った『先輩』との楽しい楽しい遊びがはじまるのだから。



「制服はきちんと着るのが一番綺麗に見えるもんだ。お前みたいなガキが着崩したってみっともないだけなんだよ」
「ひ、ぅっ」
 オシャレでもなんでもない、だらしがないだけだとペラペラのネクタイを勢いよく引き抜かれ、机の上に倒れ込む。しゅぅっと素早く首の周りを撫で回されるのがこそばゆくて、変な声を出してしまったのを恥じらう間も無く、くつくつと喉奥を鳴らして嘲笑われた。
 倒れ込んだ隙に立ち上がっていた『先輩』は普通に向かい合うより背が高く見える。ネクタイを鞭のようにぴん、と張って伸ばして見下ろされると、腰ががくん、と落ちかけてしまった。
「ああ全く……品も何もあったもんじゃねえなあ。ちゃあんと背筋伸ばせ! シャツもぐちゃぐちゃだろ」
「……っ」
 ぱんっ、と机をネクタイで叩いて、出来なければこうする、と示される。音に釣られて見てしまった『先輩』の股間は、体を丸めて隠している自分とお揃いの苦しみ方をしていて、これならはしたないと責められないだろうと背を伸ばした。
 机にしっかりとついた手でぐ、と体を持ち上げて、気持ち尻を突き出すようにして『先輩』を見上げる。ふくらんでいるどころか生地とは違う濃い黒いシミを作った制服が見えてしまうが気にしない。
「センパァイ、せ……俺はそんなにぐちゃぐちゃじゃないと思いまぁす」
 ぐ、と胸をそらして『やんちゃで生意気な後輩』らしいセリフを吐く。実際、上から二つくらいボタンを外しているだけだ。倒れ込んで乱れてシワがついたものの、ぐちゃぐちゃというほどではない。これより襟ぐりの開いた服を着て怒られたこともある。
「馬鹿な後輩がどんな私服着てようが知ったこっちゃないが、これは制服なんだよ。それともなんだ? こおんなボタン開けてチラチラ胸見せつけて……気づいてないみたいだから教えてやるけど、乳首、両方浮いてるからな?」
「ん、なぁっ!?」
 勃っているのはわかっていたけれど、上着に隠れて見えないと思っていた。たぶん、店のものより数段安い制服ではちんこと一緒に勃起した乳首を隠せない。
「やあらしい勃起乳首、胸張って突き出しやがって……! ちょっとかわいがってやっただけでガキちんこも硬くしておもらししてやがるし……『先輩』の前でそうする意味、わかってんだよなあ……?」
 じ、と見つめられると、指摘されたところがぐぐ、と硬くなって押し上げてしまう。そんなことしたくない、したくないのに。いっそう胸を前に出し、背を反らして足を広げてしまった。
「……俺にはセンパイが助平ってことしかわかんねぇなぁ? 後輩の乳首とちんこが勃ってるからってセンパイにゃ関係ねぇだろ」
 嘘だ。全部、ぜんぶわかっている。
 突き出した胸が揺れ、乳首が擦れるよう、ゆっくりゆらゆらと体を縦にゆする。そうすると自然に下半身もかくかくと揺れ、ちんこも、尻も擦れる。
 どう見たって目的なんて一つなのに、しらばっくれるのはほんの少しの意地と、限界まで煽った恋人――『先輩』を味わいたいからだ。
 会えなかった時間と体を埋めて、満たしてほしい。好きで好きでしょうがないと甘えて求められるほど、可愛くて可愛くてしょうがなくて、なんでも許してやりたくなる。
 ぱんっ! と、今度こそネクタイで尻を叩かれた。音こそ派手だけれど痛くはない。ただ、じんわりと広がる鈍痛が胎を疼かせ、ちんこを弾かせる。
「その『助平な先輩』に尻叩かれてやあらしいおもらししちまう後輩は、なんて呼んだらいいんだろうなあ?」
「『くーこーくん』って呼ばれてるぜ、セ・ン・パイ!」
 完全に勃起して先走りが出ただけでイッてない。
 もう一度打ちすえようと構えられたネクタイに、びくびくがくがくとふるえて期待してしまう。ぴん、と両手で伸ばされた細長い布切れは今にも千切れそうで、必死に睨みつけようとしていた目をそらして閉じてしまう。
 叩いて、叱って、と、お強請りして尻を突き出したのはしかし綺麗に流され、油断し切っていたちんこへと手を伸ばされていた。
「へ、ぇっ!?」
「なんだこのちんこは? ろくに触られてもないのにだらしなく先走りおもらししまくって……」
「なら見んな……っ! って、んで、さわ……っ」
「制服の着こなしもだらしなきゃ、ちんこもだらしねえおもらし癖がある後輩なんて、先輩として恥ずかしいし情けねえんだよ」
 だから『先輩』として指導してやる――
 布越しに散々ちんこを撫でさすった末、こちらこそ恥ずかしくて情けなくなるような鼻の下を伸びに伸ばした助平面でそう宣言された。
 そんないかがわしい指導はいらない、と断る間もなく、机の下に潜り込まれる。がっちりと股間の前を陣取られ、あっという間にベルトを外され、チャックを開けられ、下着ごと太ももの付け根あたりまで下ろされた。開いた足も突き出した尻も半固定状態にされて、ちんこまで丸出しにされてしまう。
「へえ……おもらしがお似合いのかわいいちんこじゃねえか。きんたまもぷりっぷりで……」
「ゃめ、ふ、ぁ……っ、ちんこ、も、たま、もっ……んぅ……っ! しゃ、わん、にゃぁ……っ」
「一生懸命ちんこ硬くして、きんたまぱんぱんにして……かあわいいの……」
 解放されたちんこは、さっきと同じように『先輩』にかわいがられてびしょびしょになってしまった。しかも今度は直接、きんたままでふにふにと優しく揉まれ、かわいい、かわいいと射精を促される。
「せんぱぃ……っ、ぉれ、もぉ……っ、もぉぉ……っ!」
 優しく丁寧に可愛がられたちんこときんたまは、すっかり射精をする気でいた。腰だってもう『先輩』にしごかれるのに合わせてふっていたし、先走りではない熱い迫り上がりを感じていた。
「ああ、ちょっと待て」
 それなのに、『先輩』は無情にも射精寸前のちんこの根本をネクタイで縛り上げてしまったのだ。
 急にぱ、と手を離されて、びくん、とふるえた隙を突かれて、きゅ、と。それもかわいいちんこにお似合いのリボン結びにした、とのことで。
「ふぁ……? な、れ……? ちんこ……ぃきたぃ……っ」
「ダメだ。いっくら制服を正しく着ても、すうぐ気持ちい〜っておもらしするちんこじゃあ意味がないだろ? だから、まずちんこから叩き直す」
「ばっ……かじゃねぇの……っ!?」
「なんだ元気そうだな。もう少しきつく縛るか?」
 かわいいちんこに似合いそうなのがある、と笑う目の奥にごうごうと炎が燃えている。元から燃えていた火と、自分が油を注いだ火と。
 望んでいた熱にどきどきとしながら、これ以上はダメだと頭の中で叫ぶ声がする。今でさえ縛られたちんこは苦しくて、ほどいてもらえるならなんだってしてしまいそうなのに、もっときつく、なんて考えたくもない。
 無言でぶんぶんと頭を横にふれば、机の下からでも見えたのか、このままにしてやる、と最後通告をされた。おそらく、ではなく確実に、『先輩』の意に沿わない言動をすればちんこはどんどん締めつけられていくだろう。
 これから自分の身に起こるかもしれない事態を想像して、きゅぅ、と胎が脈打った。ちんこもぴく、と動いたものの、『先輩』はちょうど机の下から這い出すところだったからか気づかれなかったらしい。
「……さて、と。じゃあまずは……」
 机から出てきた『先輩』は次にやることを決めていたらしく、するりと後ろに回り込んできた。散々尻を突き出してきたのだからそうなるだろう。それに『先輩』だって絶対、ちんこがきついはずだ。
 後ろからは見えないと思って目も口も半開きの、それこそみっともない顔で待っていると、腕ごと囲うように抱きしめられた。密着すると体温も、心音も、呼吸も、何もかもが強く大きく感じられて、自分の馬鹿みたいに上がった体温も、期待しきった心音も、はぁはぁと荒く乱れた呼吸も同じように感じられているのだと思ったら、びくん、と体が跳ねてしまう。
 そんな羞恥と期待とでぐちゃぐちゃの頭と体に喝を入れるように、ごり、と硬い感触が剥き出しの尻に当たった。自分の汗か『先輩』の先走りか。わからないけれど、まだ布地に包まれたままの『先輩』のちんこ――ちんぽは、もうずっしりと重たく、灼熱の熱さをしていた。
 尻にぐりぐりとなすりつけられる『先輩』のちんぽに、ごく、と唾を飲み下す。何度も、もう両手両足の指の本数では足りないくらい、抱かれ、拓かれた体は、このちんぽに逆らえない。
 好きだ、好きだ、と訴えながら、甘えて縋り、そのくせ獰猛に荒らして、俺のものだと暴れ回る。そうして最後に、子供みたいに俺のだとねっちりたっぷりと刻みつけて満足する。
 しょうのない、けれども可愛い可愛い恋人のちんぽは、恋人よりも素直で雄弁で可愛らしい。
「せんぱい……、ちんぽ、あたってる……」
「当ててんだよ」
 ぐりゅ、と尻たぶを割り開くように『先輩』ちんぽがさらに強くすりつけられる。ぐ、ぐぐ、ぐぅ、ぐりゅ、と中をえぐるときと同じ動きで尻のふち、蟻の門渡、きんたまを擦られるたび、布越しなのがもどかしくてたまらない。
「『くーこーくん』はずいぶんやらしいんだなあ?」
「はぁ……?」
「初めて会った『先輩』にこんなことされて……ぜえんぜん、本気で嫌がらないだろ? それどころか喜んでちんぽおねだりして……。俺以外にもこんなことしてたのか?」
 なあ、と問う声は本気だった。
 そんなことするわけがない。あの店の客は女しかいなかったし、写真やゲームでも過度な接触は禁じられていた。
 だからこんな、こんな恥ずかしい格好で、いやらしいことなんか、していないし、出来るわけもない。
「して、なぃ……っ! せんぱいにしか、してなぃ……っ」
「……へえ、じゃあ初めてなのにこんなやらしい反応して、初めてなのに初めて会う『先輩』のちんぽおねだりするんだ……?」
「え、ぁ、ちが……、ちが、わなぃ、けど……」
 『先輩』とはシテないけど、恋人とは、獄とはシテいる。初めてじゃないけど、初めてで、でも、あぁ、頭がこんがらがってきた。
 ここでこのごっこ遊びをやめるのは口惜しくて、でも『先輩』――獄以外と何かあったなんて嘘でも言いたくない。
「そういえば、ここもかわいいちんこと一緒に勃ってたなあ……? 初めてなのに、な」
「んぅっ……」
 初めてなのにいやらしい、と責めることにしたのだろう。ぎゅぅ、と抱いていた手が、そうこうしている間に胸をぎゅ、と掴んでいた。
 ぺらぺらのシャツと上着ではさきっぽの形まで浮かび上がってしまうほど硬くしこった乳首を、わずかな乳房と呼べる胸筋を掴んだまま器用に指でいじる。
 恋人はいつも良質な筋肉はむしろやわらかくなるんだ、と言っているが、お前がそうやって揉みしだくせいじゃないか? とは言えないでいる。言ったが最後、検証だなんだと変なことをはじめるからだ。
「やらしくてやあらかいおっぱいしてんなあ……? 尻もふわふわむちむちしてるし……。なあ、本当に初めてか?」
「はじめて……ぇっ、せんぱぃ、が……っ、はじめて……っ!」
「ふうん……? おっぱい揉みながら勃起乳首かわいがると尻がきゅうう……ってちんぽおねだりするけど……?」
「……お、おれが、やらしいから……っ」
「やらしいから?」
「やらし、ぃ、から……、せんぱぃに、えっちなこと、してほしくて……」
「初めて会う、俺に?」
「ひとめ、ぼれ……した、から」
 またはじまってしまった初めて問答がめんどくさい。
 もういい、なんでもいい。『先輩』だのなんだのと言っていてもヤるのは獄なのに変わりはない。どうせ馬鹿みたいなことを言って、やっているのだ。
 『やんちゃで生意気な後輩』に『一目惚れした相手に発情した淫乱処女』が追加されたところで痛くも痒くもない。
「せんぱぃ、かっこい、から……。おこられたのも、どきどきして……、だから……、おれの、はじめて……せんぱいが、よくて……」
 急造したセリフに合わせ、一生懸命にちんぽに媚びて腰をふり、無言のまま胸揉みしだき、乳首をこね回す指に前のめりにおっぱいを押しつける。
 気持ちいい、気持ちいいと胎がずくずくとうずいて、射精せないちんこがもやもやと痛む。ずっと射精せそうで射精せない、頂点のまま堰き止められた状態に頭がくらくらとしてしまう。
「『やんちゃで生意気なくーこーくん』がずいぶんしおらしくて素直になっちまったなあ? 最初は威勢よく噛みついてきたのに……ちんこと乳首かわいがったら尻までとろとろにして……」
「おれのまほぉでぇ……しり、すぐ、ちんぽいれられるように、したぁ……」
「初めてなのになあ……いいのか? 名前も知らない先輩のちんぽに奥までずっぽりハメられて、ナカぜえんぶ精子で真っ白にされんだぞ?」
「いぃ……、せんぱぃのちんぽがいい……」
 そうだ、帰ってきたら絶対に嫉妬深くて、面倒くさくて、でもそこが可愛くてしょうがない恋人とセックスする気でいたのだ。だから合間をぬって尻を整えていて、まだ少し挿入れるには早いけれど、それでも。
「なぁ、せんぱい……せんぱぃは、おれみたいな、やらしいこうはい、きらい……?」
 ぐしゅ、と知らぬ間に鼻水が垂れていた。涙も。
 嫌いなんて言われたら、たとえ嘘でも胸が痛い。言うのだってこんなに痛いのに、言われたらなんて考えられない。
「せんぱぃ、せんぱぃ……、おれ、せんぱいが、すき……」
「……たちが悪い……」
「せんぱぃ……?」
 ぼそ、とつぶやかれた言葉が聞き取れなくて、振り返る。どんな顔をしているかだけでも、嫌い、なんて万が一にも言わない顔をしているかを知りたかった。
「あのなあ……なんとも思ってねえやつに、俺がこんなことすると思ってんのか?」
 それは『先輩』としての話じゃないだろ、とは言えなかった。
 だって、茹で上がったみたいな真っ赤な顔で、怒りながら喜んでるような、変な顔をしていたから。
「せんぱぃも、おれのこと、すき……?」
「好きじゃなきゃしないって言ってるだろ……」
「すきっていってなぃ……」
「……好きだよ」
 そう言うと、『先輩』か獄かわからないけれど、とにかくキスをしてくれた。
 ちゅ、ちゅ、とまぶたを拭った後、いっぱい口を吸ってくれた。
 それでもう、すっかり満足してしまった。



「『くーこーくん』……いや、『くうちゃん』だな」
「にゃに……?」
「どこの馬の骨ともしれないやつらより、檀家さんの方がいいってな」
「ふぅん……?」
 よくわからないけれど呼びたいように呼べばいい。どう呼ばれても、愛と執着の混ぜこぜになった声は心地良くて、胎の奥にきゅぅ、と響く。乳首と尻へと意地悪はいつの間にか止まっていて、凪いだ体への小さな刺激は全身をゆさぶった。さっきまで触られていた乳首と、縛られたままのちんこがもぞもぞとして、切ない。
「……な、せんぱい……つづき……」
 キスをしたときの体勢のまま続きを強請る。気持ちよくてぐったりとした体をなんとか持ち上げようとすると、机の上に横向きにしてほとんど乗せられてしまった。器用なことに、ずる、と脱げかけた服は下着ともに下ろされてしまった。元よりぺらぺらのシャツと上着だけ着ていても、そんなのほとんど全裸と同じだ。
 頼りない上着に浮いたままの乳首を隠すように腕を胸の前で組み、完全に全裸の足を股間を触れずにもそもそと交差させる。正面から抱きしめ合った体位が多いから今日もそうなるのかと思っていると、仰向けにされないまま、またちゅ、とくちづけられた。
「せんぱぃ……?」
「片足、上げられるか?」
 何がしたいのかよくわからないけれど、足を上げるくらいは出来る。ゆるめにぐ、と伸ばしながら上げると、ちんこがぶる、と揺れるのがくすぐったい。ひらひらしたネクタイが足をかすめるのもかゆいし、足を開いたから尻のふちがくぱくぱとするのも少しだけ恥ずかしい。全部を少しずつ我慢して、これでいいか? と『先輩』を見上げる。
「もうちょっとだけ、動かすな」
 一瞬だけ、まぶしそうにした後、すぐに額にちゅ、とくちづけをして優しく体を引かれた。机に着いた片足はそのままに、ぱっくりと開いた両足の付け根――尻の穴――がテーブルの端に固定される。そうして上げた足を担がれると、何がしたいのかがわかってしまった。
「せんぱい……これ……」
「初めてならバックがいいんだが……立ってられないだろ?」
 動くのもしんどいだろうから、と気遣わしげに微笑まれたけれど、目の奥のぎらぎらとした炎はまるで衰えていない。何かきっと思惑がある。酷いことはされないけれど、ひどくいやらしくて、恥ずかしいことはされるはずだ。
「……それにこれならくうちゃんの顔見ながら乳首もちんこも触れるからな……」
 これだ、と思ったときにはもう遅い。
 ジィィ……と聞き慣れた音がして、ぶるんっ、とむせ返るような熱気を溢れさせながら『先輩』のちんぽがまろび出た。
 ちらりと見えたそれは間近な尻と違ってそう近くないはずなのに、先走りでテカり、びきびきと硬く尖るちんぽの迫力が距離を無視して眼前に圧を放つ。
 何度となく中を拓き、暴かれ、仕込まれたちんぽは、リボン結びで飾られた自らのちんこと比べたら色も形もまるで違う。
 ぶっくりとふくれたさきっぽも、ぐぅと張り出した立派なエラも、太く脈打つ茎も、すぐそばで重く張り詰めるきんたまも――存在全てが猛々しい雄そのものに、きゅうきゅうとうずき続ける胎が飢餓を訴えた。
「せん、ぱぃ……」
「くうちゃんは良い子だから……やらしい勃起乳首、自分で見せられるよなあ?」
 どきん、と心臓近くを押さえた手がふるえる。
 こんなペラペラの服、まくらなくたって見えてるクセに。
 すけべ、へんたい、すきもの、と頭の中で罵倒しながら、シャツと上着、両方のボタンを外していく。
「……ほら」
「乳首が両方、ちゃんと見えるように。出来るよな?」
 一応出したつもりだったけれど、ダメだったらしい。
 ペラペラすぎてすぐにヘタレてしまう生地では意図せず隠れてしまうようだ。
 仕方なく半分脱ぐと、がたがたと動いて両腕を使って胸を寄せ上げた。腕に服がひっかかったままだが、乳首が隠れていないから大丈夫だろう。
 それよりも寄せて上げて強調した胸は、筋肉よりもおっぱいと言うのが相応しい仕上がりだった。
 どうにもむち、とした肉がつきやすいのか、鍛えてもしゅっとした出立にはならない。……さして何もしていない尻もむっちりとしてしまったから、体質だろうか。
 尻の話をすると、今まさに『先輩』に尻を向けているのがじわじわと恥ずかしくなってきた。尻は、胸――おっぱいなど比にならないくらい肉肉しい。足を上げたせいでだらしなく見えていたら恥ずかしくてたまらない。
「せんぱぃ……おれの、からだ……へんじゃねぇ?」
「変……? 何がだ」
「むね、とか……あと、しり……とか」
 恥ずかしいと思うのに、それすら刺激に変えて乳首はぴんと尖る。堰き止められたままのちんこも、く、と伸び上がってネクタイがふるりと揺れた。
「……たしかに、パイズリと素股でも迷ったな」
「ぱいずり」
「でも……くうちゃんは、大好きな先輩にやらしいお尻をもっとやらしくされたいんだろ?」
「さ、れたいっ、けど……っ! ぱいずりとすまたってなんだよ!」
 こちらは意を決して聞いたのに、『先輩』ときたらとんでもないことを言い出した。迷った? 何と何と何で?
 ひどく卑猥で下品な選択肢を並べられ、混乱しながらつい、おっぱいと尻を隠すようにもぞもぞしてしまう。
「なんだ、わかってんだろ? そのやらしいおっぱいと尻、どうして隠した?」
「そんなん、せんぱぃが、やらしぃめで、みるから……」
「逆だ。くうちゃんのおっぱいと尻がやらしくて、見て見てって誘ってんだよ。ああ、ちんこもか。リボンふりふりしてかわいいなあ……」
「かわ……いくねぇっ!」
 真面目な顔でやらしい、かわいい、と言われるたび、頭がダメにされていく。
 いやらしくて、はしたないから、恥ずかしくて、だから、こんな格好、やらしい、とか、かわいい、とか、言われても、喜んじゃダメなのに。
 心と口と裏腹に、腕で隠した乳首がぴんっ、と硬くなって、ちんこは苦しいくらいくっ、くっ、と伸びようとする。尻だって、何もされてないのに、ぱくぱくと勝手にうずいて、ついに奥の方に注いだはずのローションまでつぅ、とこぼしてしまった。
「何言ってんだ? ちょっと見られて褒めただけでエッチなところ硬くして、待ちきれなくて涎垂らすような後輩、かわいくないわけないだろ?」
 大きすぎないけれどむちむちのおっぱいにパイズリさせて、顔と胸を。
 すっかり立派に育ったむちむちのお尻に素股をさせて、腹や股、太ももとお尻を。
 全身、俺のちんぽ汁まみれにしてやりたい――
 そう言う『先輩』のちんぽはさっき見たときよりもさらにぐぅ、と、反り返っている。苦しそうにはぁ、と重く息を吐いて、びくんびくんとふるえるさきっぽを宥めていた。
「せんぱぃ、ちんぽいたそう……」
「くうちゃんが……、やらしくてかわいいからだよ……っ」
「おれ、の……しり、あいてる……」
「……先輩ちんぽ、挿入れていいんだ?」
「だ、て……、せんぱぃ、おれのしどぉ、すんだろ……? ……せんぱいの、ちんぽで、おれの、しり……、もっと、やらしくしてくれんじゃ、ねぇの……?」
 さすがに恥ずかしいけれど腹を括って『先輩』の目をじぃ、と見つめた。ローションのこぼれ出てきた尻のふちをぬち、くち、とわざと音が鳴るように開閉して、『先輩』のちんぽを煽る。自然、腰や尻も揺れて、体が勝手に前にしたセックスをなぞるような動きをしてしまう。時折、『先輩』のちんぽがかすめると、尻からも、縛って塞いだちんこからも、はしたない期待をした汁があふれ出す。
「……っせんぱぁぃ……っ、おれのしり……、せんぱいのちんぽで、ごしどぉ、ごべんたつ……っ、してくらしゃぃぃ……」
 『先輩』を煽るための腰振りで、自分もすっかり出来上がってしまった。隠していたおっぱいもお尻も『先輩』によく見えるように広げたり、ぎゅ、と寄せ直した。真夏の犬のように舌を出して、は、は、と荒い呼吸をくり返し、リボン飾りの施されたちんこもきんたまといっしょにぷるぷるとふってしまう。今の体勢が犬が小便をするときに少し似ていると思ったら、余計に頭の中がいやらしいこと一色に染まっていった。
「いよいよ『やんちゃで生意気』じゃなくなっちまったなあ? 新しいキャラ付け『エッチな隠れドM』とかどうだ?」
「それはぁ……せんぱいと、えっちするときだけぇ……」
「へえ……くうちゃん、エッチでマゾなの認めんだ?」
「だ、て……せんぱいがおれのことひとりじめしたぁい、って、いじわるなこと、いったり、したり、するの……すき、だから……」
 だから、だからはやく、おれをせんぱいのものにしてほしい。
 えっちでもまぞでも、いんらんでもへんたいでもいい。
 こんなばかみたいなごっこあそびでも、おれのものだとほしがられるのがうれしくて、ぜんぶぜんぶあげたくなる。
 せんぱい、と羞恥と、興奮と、欲情と、愛と、ぐちゃぐちゃの頭の中をいっしょこたにした声が出て、目の前がにじんだ。
 ああ、だか、クソ、だか、聞き慣れた呻めきが聞こえたのはそのすぐ後で、ゆらゆらとしていた腰が急にぴたりと固定され、ばちん! と貫かれたのとほぼ同時だった。



「ひゅ、ぁぅ……っ」
「は、あっ……、クッソ……この!」
 衝撃で涙も引っ込んで、かひゅ、と喉から空気が飛び出した。準備していたとはいえ、いきなり全て挿入するには足りていない。
 それはたぶん、『先輩』もわかっていたのに。
「しぇ、ん、ぱぁぃ……っ」
「はぁー……、悪い……、痛かったか……?」
「いたくねぇ、けど、ぉ……っ」
 そう、困ったことに、痛くも辛くもない。
 拓ききらない中をみちみちみちっと、いっきにちんぽで広げられて、そのまま馴染ませるようにずっぷりとハマったまま居座られている。
 はじめこそ驚いていたけれど、じわじわと中がきゅん、きゅう、とちんぽに甘えだし、さきっぽにぐりぐりとされている奥なんて特にひどい。甘えるどころか、ちゅ、ちゅ、とくちづけるように吸いついて媚びてしまっている。
「……だろうなあ……」
 言うまでもなく身をもって味わっている『先輩』の苦笑に余裕がない。お互いに同じくらい我慢していたのだから当然といえば当然か。
 力を抜いたら中がゆるんで楽になるかもしれない。しかしここまできたら逆にもうヤるだけヤったほうが楽になるんじゃないか。力を抜くにしろ入れるにしろ、下腹部を意識するだけで体は勝手にヨクなってしまうのだ。
「ま、初めての割に……スムーズだった、なあ……っ!?」
「ふぁああぁぁぁっ」
 そういえばそんな設定だった。
 本当に初めてだったらこんなデカくて長くて太いちんぽは挿入らない。下準備の甘い尻へいっきに挿入して大丈夫だったのはひとえに慣れだ。
 これまでのセックスでじっくりねちねちと体を作り変えられ、多少強引でも快感を拾い、ちんぽの形を覚えた尻は、急にごちゅごちゅと中の掘削をはじめられても受け止める。
 上げた足を掴んだ『先輩』に立ったまま小刻みに腰をゆすられていた穏やかさは、すっかり掴んだ足ごと身を屈めて深く強く腰を叩きつけられる激しさに変わってしまった。
「ふぁっ、ぁっ、しぇ、ぱぃ……っ、しぇんぱぁっ……!」
「初めてなのに……ちんぽ慣れしてんなあ……っ? 尻、きゅうきゅうさせて……、一生懸命ちんぽしごいて……っ、気持ちいいとこ、当たるようにして……!」
「なれ……て、なぃ……! しり、なかぁ、かってに……っ、ちんぽ……っ、すき、って……ぇ」
 いつもしない体勢は本格的に動き出すと違いが如実になってきて、形を覚え込まされたちんぽなのに、どこか他人行儀に感じる。知っているのに知らないちんぽに与えられる快感に戸惑いながら、変わらない深く重い絶頂の予感だけが近づいてくる。
 今まで広げられなかった場所、当たらなかった場所を、みちち、と開けられ、ぐりゅりゅ、と抉られ、ごりごり、とほじられるたび、まだいやらしくなる余地があったのかと自分の体の貪欲さに目眩がする。気持ちよくなると縛られたちんこが苦しくて、馬鹿になってしまった尻は『先輩』のちんぽになら何をされても喜んでしまう。
「こおんなかわいくて、やらしい後輩に……ちんぽまで好かれるたあ、先輩冥利に尽きるってもんだ……! ……えっちでマゾなくうちゃん、このあとどうされたい……?」
「この、あと……?」
「初めてでキツキツだったのに簡単にちんぽ受け入れて……今も……ちんぽでほじられたら負けじときゅうきゅう搾ってるやらしいお尻……、どうされたい?」
 ぐぐ、と一番深くまで貫こうと倒された『先輩』の体に押し潰されて、ひゅ、と息を飲む。こん、こん、とお伺いを立てるように、ふくれあがったさきっぽにさらに深くほじくられた。
「ま、て……っ、しぇ、ぱぃっ、しょこ、はぁ……っ」
「でも、くうちゃんは初めてだからわかんないだろ? お尻でイかせてほしいとか、ちんこでイキたいとか、すぐ答えられないだろ?」
 腰の動きの間隔が短く、小刻みになるにつれ、ぐ、ぐぅ、とさきっぽがさらに、さらに深く挿入り込む。既知で未知の快感に翻弄されたまま、意識があるときには数度しか許した覚えのない場所が拓かれるのを感じて、けれど止めることが出来ない。
「だから、一番くうちゃんが気持ちよくなれそうなやり方を、ご指導ご鞭撻してやる」
「しぇぱ、ぃ、」
 待って、も。やめて、も。言えないまま。
 それははじまった。

「ゃ、あっ……しぇんぱ、やぁ……! やぁらぁっ……」
 さきっぽでの猛攻は宣言と同時に一層苛烈になった。
 おさまった激しさと反対に、ねっとりねっちりとほぐれた中をちんぽで撫で回される。勢いよく開かれて暴かれて追いきれていなかった感覚がようやく追いついて、動きはずっとゆっくりなのに強烈な快感が降ってくる。
 ぐりゅぅ……と奥へと行き来するちんぽの、びき、と血管の浮いた太竿に、ごく浅いところにあるふくらみをごりゅ、ごりゅ、と擦られるたびに体が跳ねて止まらない。ちんぽの当たる場所が違っても、気持ちよくなれることを知ってしまっている体は違和感すら快感に変えてしまう。
 エラの辺りは普段ならほじってもらえるところに当たらずもどかしさが強かったけれど、気づけば新しくほじられた場所がヨクなっていた。定番の、自分でもよくわかっている気持ちいいところ以外の、ちんぽに弱いところが増えていく。それが少しだけ怖くて、同じくらいどきどきして、またちんぽを締めつけてしまう。
「やじゃないだろ……っ! さっきよりもっとちんぽ搾ろうとしてんぞ……!」
「ふ、ぁ……っ、れも、はじめて、だから……ぁ」
 途端、『先輩』の動きがぴたりと止まった。
 真っ赤に染まり、快感と苦虫を同時に噛み潰した顔に、はた、と思い至る。
「せんぱ、ちが……ちがわなぃ、けど」
「……お前なぁ……」
 ごっこ遊びに乗っかったようになってしまった言葉は、もちろんそういうつもりではなかった。
 はじめての感覚に混乱して、や、というのは拒絶ではないのだと言いたくて、けれども出てきたのは断片だけで。
 『先輩』はどこまでわかってくれたのか、わかってくれたからの表情だと思いたい。
「……俺はこれから、かわいいかわいい後輩のくうちゃんの、お尻の中の一ッ番、奥の奥に射精する」
「へ、」
 全ての動きが止まってから少しして、鼓膜に直接響かせるように欲情しきった声で囁かれた。
 痛いほど甘くて、殴られたくらい重くて、地の底みたいに深い声が、はぁ、ふぅ、と熱くて荒い吐息と一緒に浴びせられる。
 どろりとした色と欲を叩きつけられた耳が、耳たぶから耳の奥底まで、触れられていないのに気持ちよくて、とけそうなほど熱い。
 これからこれとおんなじことをされる。
 初めてじゃないのに初めてみたいに感じる胎を、知っているのに知らないちんぽで。
「かわいそうになあ……くうちゃん。初めてなのに、今日から『先輩』にお尻に中出しされなきゃイケなくなっちまうんだから……」
 ふ、と笑った顔の目は何もかも飲み込んで燃えたように真っ黒で、もう絶対、何を言っても聞いてはくれない。だから今言われたことは全部そうなる、そうなるようにされる。
 尻の一番、奥の奥。そこに貯めに貯めた『先輩』の子種が注がれて、それで気持ちよくなるように『指導』されて、もう二度と、『先輩』に中出しされなきゃイケなくなる。
 そんなわけないとか、嫌だとか、ほんの少しの怖さが湧き上がるのに、エッチでマゾ、と言われたことを思い出して、ぞくぞく、どきどき、という期待が上回った。
 だって、もし、本当にそんなになってしまったら、この体は、『先輩』の、恋人の、獄のモノってことだろう――?
 そう思ったらもう戻れない。戻らなくていい。
 他の人間を抱きたいなんて、絶対に思わせない。
「……せんぱぃ……、そぉ、して……? おれ、そぉ、なりたい……」
 怖がらせるつもりで言っただろう言葉を受け入れられて、綺麗な鋼色の目がますます真っ黒に澱む。過ぎた愛も執着も毒になるのに、持っていたつもりもなかった独占欲がどうしようもなく満たされる。
「……やめてやれないからな……」
 地を這うように低い最後通告へ了承を告げる代わりにくちづけて、きゅぅぅ……と尻を締めつけた。
「ないても、いやがっても……ぜったい、やめんな……」

 再び動き出した『先輩』は、言葉どおり、お強請りどおり、正しく有言実行だった。
「しぇ、ぱぁ……ぃ……っ、しぇぱ……、しり、へん……っ」
「それはな、変じゃなくて気持ちいいって言うんだよ……っ」
「ちぁぅ……、きもちよすぎて……へん……っ」
 一番奥の奥――数度しか開かれたことのないそこを開こうと、ぐりゅぐりゅとほじくられる。知り尽くされた弱点はくり返しこね回され、体は甘く、時折深く絶頂をしていた。
 堰き止められたままのちんこは未だ封じられたまま。擦れて少しだけ緩んだのか、白くにじんだ先走りがとろとろと垂れているものの、そこで達することは出来ない。
 たぶん、もう、尻だけでイっている。たまに『先輩』が乳首を舐めたり摘んだりしてくれるけれど、それでイっても射精には繋がらない。乳首への刺激でびく、とするたび、尻が、びくん、と跳ねてしまう。
「ふうん……」
 真っ黒な目が真っ黒に笑って、ぞくぞく、どきどきが湧き上がる。尻にずっぽりとハマったちんぽが、ただでさえべらぼうに太いのに、ぐぅ、と体積を増した。
「でかくすんなぁ……っ」
「ケツとろっとろにしてちんぽしゃぶりながら馬鹿言ってんじゃねえ……っ!」
「ひ、ぅ……っ」
「いい加減……っ、観念しな……!」
「ゃぁ……、やぁ……っ! しょこ、だめ、ぇっ……」
 お強請りむなしく、より一層ぶりんっ、とふくれたさきっぽがばちゅん、ぶちゅん、とやわな最奥を責め立てる。そこだって他と同じに、いつもと違う場所を感じるように教え込まれてしまった。
 一突きごと、体の奥に叩きつけられる快感が全身に響いて、脳までとろけるようなあり得ない想像をしてしまう。耐えられなくてつむった目の奥からわけのわからない涙があふれて止まらない。
 気持ちいい、きもちいい、きもちいい。がくがく、ぞくぞく、どきどきで頭も体もいっぱいになって、ふ、と意識が遠くなった瞬間。じゅぷんっ、と開きかけていた場所に『先輩』のちんぽが挿入っていた。

「しぇ、ぱぃ……」
「ふぅ……やあっと……挿入れさせてくれたなあ……」
 ぬ、ぐぅ、と、ひとまず馴染ませようとしてゆるゆると腰をゆすられる。それだけで、は、は、と息も絶え絶えになって、頭がぐるぐるとして回らない。回っているけれど、回らない。
 覚えている限りで数回しか挿入れられていないところに挿入っている、そう思うだけで頭と胸がいっぱいで、閉じた目からまたぼろぼろと涙が出てしまう。
「どうした……空却……痛いのか……?」
「いたくねぇ……けど、くるしい……」
 少しだけ慌てた声で宥められて、涙を拭うようにくちづけられるのがくすぐったい。ちゅ、ちゅ、とこぼれたしずくをたどるくちびるがやわらかくて、キスをしてほしくなる。
「せんぱい、きす……きすしたい……」
 ぐずって『先輩』に擦り寄れば、自分だって射精したいはずなのに、待ってくれて、あやしてくれる『先輩』が好き。ちゅ、ちゅ、と今度はくちびるに重ねられたくちびるは欲しかったやわらかさで、体から力が抜けていく。
「ふぁ、あぁぁぁ……」
「よしよし……きもちいいなあ?」
 ふつりと脱力した尻に『先輩』のちんぽがぬ、ぬぅう……と挿入り込む。やわなところをぐりゅ、ぬち、とほじられながら進むのに、『先輩』のご指導ご鞭撻の成果でいやらしくなった尻は耐えられない。
「しぇ、ぱぁ……、ぁっ、ぅあ……、んぅうっ、ふ、ぅう……」
「はあ……くうちゃん、ケツイキすげえなあ……っ、クソ……! ちんぽ……、搾りとられる……っ」
 ぱちゅぅんっ、と小さく弾ける音がして、『先輩』ちんぽのさきっぽのふくらみが全部、一番奥に挿入ってしまった。一番奥に、ほとんど挿入られたこともないところに挿入ってしまった、自ら挿入るのを許してしまった――と思っただけで、きゅぅぅぅ……っと尻の中が全部、一気に締まる。
 これから、ここに、自分でも知らない場所に、『先輩』のきんたまの中身が全部、注がれてしまう。
 それはつまり『先輩』に中出しされなければイけなくなる体に近づくということで――
「は、ぁ……、せん、ぱぃ……っ、せんぱい……っ! おれのなか……だして……っ! せんぱいでしか、いけない、やらしいからだ、なりたい……っ」
 なんて恥知らずなお強請りだと頭の中の自分が怒り狂っているがかまうものか。
 この先、生命が終わっても愛するのは目の前の男だけならば、口を吸うのも、肌を合わせるのも、ただ一人。今だって一人では満足出来やしないから、別の相手なんて考えられやしない。
「ひとや、せんぱい……」
 ぐ、と息を詰めたままの恋人の煮えたぎったきんたまに、これからこれを全部注がれるんだと思うと胎の奥がうずく。最初に見た時からずっと、ずっしりと重たそうにぶら垂れるきんたまはいよいよ爆発寸前だろう。
 中に出されたい、全部注がれたい――胎をうずかせる欲望と、苦しそうなきんたまとちんぽを楽にしてあげたいという献身の利害関係が奇跡的に一致して、尻の中のちんぽにはじらいなく奉仕する。
「いっぱい、ごしどぅくださったから……、おれ、がんばる、から……っ」
 驚いた顔の恋人と見つめ合いながら、一生懸命に中をきゅっ、と締めれば、ぐ、と苦しそうに眉を顰めた。嫌というよりも堪えている表情に安心して、意識して下から上へ、きんたまから搾ったちんぽ汁を尻の最奥へ放てるようにきゅ、きゅん、と導いてやる。
 一番根本のところにぐぅ、きゅっ、と力を込めると、ふ、ふぅぅ、と鼻から出た息が当たって、尻の中では抵抗するみたいにどくどくっ、と竿が脈打った。全部が気持ちいい体にはそれっぽっちすら強烈な快感で、上へ上へときゅっ、ぎゅぅ、と締めるのと一緒に中でイってしまう。互いの鼻と口からはぁはぁ、ふぅふぅとあふれる劣情まみれの呼吸音が絶頂の証だ。恋人は、未だに耐えているけれど。
「はぁ……クソっ、出来のいい後輩で、嫌んなるなあ……!」
 丁寧に、小刻みに、愛撫するほどに硬く尖るのに、射精を堪える恋人とちんぽが愛おしい。絶え間ない絶頂で乳首は空気が触れるだけで痛み、リボンのゆるんだちんこはもうだらだらと汁を垂れ流しっぱなしになっていた。尻だって、気持ちいい以外のことはもうなんにもわからない。
「しぇんぱぃ……、ひとや、しぇんぱぃ……、もう、おれ、むり……、ほんと、に、だめ……!」
 もう耐えられない――言葉以外、体の奥深くで繋がったところでもぎゅうっ、と縋りついて、終わらせてほしいと懇願する。
 まつ毛が絡みそうな距離にある、快感を噛み殺して顰めた眉間から浴びせられる色気に、胎がきゅうきゅんと暴れ回ってちんぽを搾りながら果ててしまう。何度か、何十か、百はいっていないと思いたい。
 触れそうなほど近い、うるんだくちびるから吐き出された、ため息のように深く重い吐息だけを吸いたくて、くちづけを強請って目を閉じる。唯一の持ち物みたいに差し出したくちびるはすぐに奪ってもらえたけれど、半開きの口の間から舌が挿入るのと一緒に、さきっぽの子種口がひく、と動いた。
「ふ、ぅぅ、う、ぅぅ……っ」
 口と口が交わったまま、尻とちんぽもまぐわい合う。上から下からぐちぐち、ぬちぬち、と発情したときに出る粘ついた水音がして止まず、耳まで犯されているような錯覚に陥る。
 思い込みでも、真実でも、ともかく頭のてっぺんからつま先まで、獄でいっぱいになっているのはおんなじだ。
 薄く開いた視界はにじんでぼやけているけれど、三千世界で一番の色男が満足そうに笑っているのはわかる。
 覆い被さって、貫かれて、見えるもの感じるもの、全部、ぜんぶ獄しかいない。
 塞がれた口で伝えられないいとおしさとよろこびを、繋がった場所に託す。
 好きで、好きで、好きしかない――生命の終わりのその先も、共にありたいと願うから、貪欲に全てが欲しくなる。
 過去も今も、未来も。本来なら芽吹いて実る生命の種を、全て注いで欲しいと胎で乞い願う。
 そうして全身で甘え縋って頭が真っ白になる寸前、ふぅぅ、と喉奥で潰れた呻めきが聞こえた。

 びゅぅぅぅっ! びゅるるるるるっ! と勢いよく種をつけられたのは、苦しげな呻めきを断末魔のようだと思ってすぐだった。
 ぐぅぅ……っと強く押しつけられた腰は全て射精し尽くすまで絶対に動かない。経験上わかっていても、いつも覚悟を凌駕する快感に襲われる。
 待ちくたびれた奥の奥は、蒔いた端からぐりゅんぐりゅんとなすりつけて孕ませようとするさきっぽを歓待して、ちゅ、ちゅぅぅぅ……、ちゅぱぁ……と子種口に奉仕をする。しようと思ってではない。そうされたらそうするように体に教え込まれている。
 くちづけするようにちんぽにしゃぶりつく尻は、ふと冷静になると目眩がするほどいやらしい。こんな体にした男をばか、すけべ、へんたい、と何度も罵った。でも、そんないやらしい体になったのを嬉しそうにするから。
「ふ、ぁ……ぁ……ひぉゃ……」
 子種口の奥の奥、ひとしずくの残りもなく注ぎ切られてようやくくちびるが解放された。ちゅぱぁ、と舌と舌を繋ぐ水糸が頬に当たる。散々なぶられた舌は回らなくなっていて、名前も上手く呼べない。
「……これでもう、俺でしかイけねえな……」
 初めても最後も全部、俺だけのものだと真っ黒い影がにぶい鋼色にかかる。おそろしくて、いとおしい。
 執着は人を狂わせる。だからなにものにもとらわれてはならない。仏に帰依するならばなおのこと。
 それでもなお、あやまちとわかっていてなお、愛する男の檻は心地いいのだ。



「やっぱなりきるってムズイよなぁ。全ッ然、店で俺って言えないまんまだったし」
「そうなのか? 最中はずっと俺って言ってたろ」
「……あんま記憶ねぇなぁ……」
 結局、ネクタイは最中に完全にほどけて、封じられた精も尿も潮も混ぜこぜになってテーブルに池を作っていた。べちょべちょになった服は面倒だから池の水を吸わせて丸ごと捨てたものの、さすが驚安。撥水効果もないのにまるで水を吸わない。
 とんでもない有様になった居間の片付けを手伝おうとすると、邪魔だとばかりに沸かしたての風呂に放り込まれた。汗だの汁だのでぐちゃぐちゃで、一番に片付けるべきはお前だと追い出されたのもある。
「覚えてなくていい。俺が忘れないからな」
「……うぇ……ヤダ」
「なんでだよ」
「あの時うんたらかんたらって言った〜とかなんとか言って、やらしぃこと要求しそうだから」
「本当に失礼な坊主だな……!」
 湯船に入りたいのを堪えて、かけ湯、髪、顔、体、と洗い流して清める。忘れてはならぬと尻の穴に手を伸ばすと、居間を片付け終えた恋人が入ってきた。この後あったことは割愛するが、あやうくもう一戦となりかけたとだけ言っておく。
「拙僧さっきまで学生だったからぁ」
「抜かせ不良生徒」
「……後輩の処女食いした悪ーい先輩がなんか言いましたぁ?」
 なんやかんやあったものの、今は二人仲良く湯船に浸かっている。何もかもが広い家は風呂場も広いから、大人の男二人が入っても余裕があるし、少しぬるめでも隣の恋人が熱いからちょうどいい。
 軽口を叩き合いながら伸びをすると、疲れと眠気が出てきた。一回だけとはいえごっこ遊びも含めて濃いセックスだったせいだろう。
「ねみぃ」
「風呂出るまで我慢しろ」
「キスしてくれたらベッドまで入ってやる」
「仕方ねえなあ……」
 ちゅ、と額に降ったくちびるは気持ちよかったけれど物足りない。もっと、と目で訴えればまぶた、鼻、そしてようやくくちびるに触れてくれた。
「ありがと、セ・ン・パ・イ」
「ハイハイ……」
 お礼に頬にくちづけて湯船から出ると、恋人もすぐに着いてくる。穏やかにも感じる付かず離れずの距離にわずかににじむ執着に口元がゆるむのが止められない。
 きっと常世でもおんなじように愛してくれる。
 これは予感じゃない、確信だ。
 そして、これも絶対に外れない。

2024/9/15


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