心身共に日進月歩

 十六歳下の恋人は修行という名の鍛錬でかなり良い身体をしている。
 普段はオーバーサイズめでボディラインの出にくい服を着ているから、小柄さも相まって気付かれない。しかし、よくよく見ればがっちりとした筋肉がついているのがわかるのに、ひょろりと長身の一番弟子と並ぶとどうにも小作りな印象が崩せないようだ。
 正直なところ、恋人を不埒な目で見られるのが我慢ならない身としてはありがたい。せいぜい小柄で細身のヤンチャな悪ガキと思い込んで、恋愛対象から除外してほしい。
 逆に小柄で細身と思って近付いた輩は、存外にたくましい身体にがっかりして去っていく。それはそれで不快ではあるが、恋愛対象から外してくれるなら文句はない。
 全くもって馬鹿ばかり。
 均等についた筋肉は身が締まり、見た目はすんなりと伸びやかでありながら、ふとした瞬間に色香が漂う。特に尻と胸はがちがちかと思ったらむちりとやわらかい。絶妙な弾力が癖になり、折に触れて揉みしだいては叱られている。
 筋肉はともかく、やわやわとした感触は俺が育てたようなものなのに、生産者に対する敬いが足りていない。
「すけべなこと考えてんだろ」
「俺に対する尊敬が足りないとは思ってたとこだ」
「人の乳揉みながらなぁにが尊敬だ!」
 そういえば泊まりに来た恋人とだらだらしている最中だった。
 風呂上がりのうなじから自分と同じ匂いがするのを嗅いでいたら、気がついたら抱きしめていて、そうしてそのまま、つい。
 あまりの揉み心地に我を忘れていた。疲れているのかもしれない。
 おかんむりの恋人に、こそばいからやめろ、と振り払われて、両手が空を掻く。手が離れる刹那、胸元が揺れたのを見逃さなかった自分を褒めたい。
 修行熱心な恋人のたゆまぬ努力と、こちらの愛を込めたスキンシップが、きっともっと豊かな胸元へと近づけるだろう。そう思うと、つい先ほどまで揉んでいた胸が恋しくなる。
 手のひらにおさまらぬ胸筋にうっすらとついた媚肉をやわらかくほぐすと、ぎゃんぎゃんと吠えて羞恥を誤魔化すのもかわいくてたまらない。
 思い出すと余計に物足りず目で訴えると、恋人もじい、と恨めしげな視線を流してきた。
「……拙僧だって、獄の乳揉みてぇのに……」
 ずっこい、と、どんなときも遠慮のない声量を控えめにしてのおねだりは、恋人になってから身についたものだ。
 竹を割ったような性格で、まどろっこしいことを嫌がる子供だったのに、俺に効くとわかってからすっかり板についてしまった。
「……乳首に触らないなら」
「ンだよ、獄も絶対ハマんのに」
「俺はいいんだ、俺は」
 さすがに、こればっかりはケチと言われても譲れない。
 ……もう少し、上手にねだるようになったら……危ないかもしれない……。

2024/11/8


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