後生丸ごとイートイン
拙僧のコト、もう食えねぇ?
——などとかわいらしく煽られたのも数年前。
成人からいくらかして、すっかりパートナーとしての地位を盤石にした子供——空却は、堂々たる態度で煽るようになっていた。
空却から差し入れとして所長室に持ち込まれたフライドチキンは、空きっ腹に響く実に魅惑的な芳香を放っている。所員にもリクエストを聞いたらしいが、馬に蹴られたくないと断られたからとせんべいを持ってきていた。
そうしてありがたく、いつぞやのようにソファに並んで御相伴に預かりながら、出先では骨がないものを選びがちだ、と呟いたのが運の尽きだ。
「なんでだ?」
「手が汚れて食い難いだろ? 今みたくゆっくり出来たらいいが……バタついてると足のとこ以外は細かい骨も出るしな」
「へぇ」
手で持った骨付きチキンをしげしげと眺める空却に、決してこの差し入れに不満があるわけではない、とフォローを口にする前に、当の本人に楽しげに遮られた。
「拙僧のことは骨の髄までしゃぶるクセに」
白い髭の老人がマスコットのファストフード・フライドチキン屋のオリジナルブレンドチキンをひと齧り。獰猛な肉食獣めいた口元が脂でぬめり、綺麗な弧を描く。
『いつでも・どこでも』が省かれた揶揄は、骨付きチキンを完食するよりもよほど手間のかかる行為を厭わないのに、と浅ましさを責め立てた。
「お前が俺に食われたがってんだろ」
しかし、このていどの煽りに負けていたら空却のパートナーなぞつとまらない。
助平心を揶揄われたなら、こちらも下心を揶揄うまでだ。
そうすればわざわざ二人きりになれるような差し入れを持って会いに来た健気な伴侶も報われる。
2024/12/6
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