情痕よもやま話
組み敷いた身体は上から下までまっかっかで、枕に抱きついて小さくなった隙間からのぞく耳やら首やらが隠された顔の恥じらいを伝えるようだった。
繋がった下腹部はゆるゆると動けば、それに合わせてきゅん、きゅう、と締めつけて、噛み殺された喘ぎが、ん、うぅ、と漏れ出る。すでに何度も胎の中をくじられて達した後で、空却の反応はにぶい。
以前、あまりナカでイクと敏感になりすぎて小さな動きでも感じて辛いと言われたことがある。積極的に誘って自ら動いて主導権を握りたがる空却が大人しくなるのは、だいたいそのせいだ。めったにないしおらしさに嗜虐心をくすぐられ、嫌だとなくのを宥めすかして文字どおり抱き潰したら、しばらく距離をとられた。
抱かれている最中ならまだしも、日常でのちょっとした仕草ですら、背から腰、腰から胎にひびくきゅんとした甘い疼痛を呼び起こす。意図せず熱のこもった吐息や喘ぎをこぼして、たいそう気まずい思いをしたらしい。
お互いの身内に相手はバレている。だから空却がいつになく艶っぽく色めいていたら「あああの弁護士先生が……」という視線が痛くてならないし、実際言われることもあるという。遠回しに『ヤリすぎ』と。
だから刺々しい目や呆れたような目で見られるときがあったのか、と納得したものの、これからも味わいたいかと言われたらもちろんお断りだ。
極力、情事を匂わせるようなことはしないー二人の中で平和のためのルールが決まった。
そんなルールを作る前から気をつけていたのがキスマークだったのだが、これは二人してのやらかしがきっかけだった。
空却が感じすぎる声をおさえようとしてくちびるを噛み切り、見かねた獄が自分を噛めと指を差し出したのがよくなかった。けして、悪くはなかったのだが。
うっとりとしながらも恋人を傷つけたくないと、そろそろと甘噛みをして指をしゃぶる健気さ、それに反してちゅぷちゅぷ、じゃぷじゅぷと鳴り響く水音。ちょうど下の、結合部からもしていた音によく似ていたのは悪かった。すごく、よくはあったのだが。
ともかく上も下も獄をいっぱいに咥え込んで、感じすぎてよがる恋人にむしゃぶりつかないなんて、そんな馬鹿な話はないのだ。
結果、双方でちゅぱちゅぱがぶがぶしまくって大惨事になった。互いの全身についた痕に必要なあやまちだったのだ……と言い聞かせあったのは、そう昔の話ではない。
「空却、背中」
「ん……」
キスマークのルールはどこにつけるかをまず言う。その時点で嫌ならナシ。つけても場所がダメならストップ。ひどく痛むのもアウト。事後にもお互いにつけた場所を確認して、服を着た状態でも軽くチェックをする。……すさまじかったのだ、本当に。
声をおさえたOKが出て、のけぞる背にちゅ、ちゅ、と花を撒く。日焼けのない綺麗な背中に痕をつける占有感に少しばかり興奮する。なにものにも縛られない恋人が、自分にだけ許す肌へのくびき。
「はぁ、あ、んッ!」
繋がったままの身体の昂りは、すぐに伝わってしまう。これ以上はしないつもりで、けれども離れ難くゆるゆると繋がっていただけなのに。すっかり硬く膨れたちんぽで、何をされてもイッてしまう、はしたないナカをぐん、とえぐる。
「あっ、あっ、あっ!あ、だめ、あっ!」
心と裏腹にきもちいいことをしってしまった身体は貪欲にきゅうきゅうとちんぽを食い締めた。背中をちゅ、ちゅ、がり、がぶ、と蹂躙しながらだとさらに締まる。
おさえきれずあふれた、上擦った声に、これ以上イッたら、また何もしてないのにナカがうずいて止まらなくなる。自分の指で届かない、奥を犯してほしくて、ぴったりとハメられて、そのまま子種をそそがれたくてたまらなくなるーなんて涙ながらに言われたときを思い出す。
お互い、このままやめる方が辛い。かわりにここで絶対に終わりだ。
「ひとや、ぁ、ダメ、なか、もう、あ、あ、あッ!やぁッだぁ……!」
「出すぞ……!」
背中の真ん中に噛み付いて、絡みつく肉壁の奥、そのひときわ弱いところをぐ、とくじる。今日何度目かの衝撃に泣き喘ぐ声は、形ばかりの拒絶でひどく甘い。かわいくない嘘がつけなくなるまでごちゅごちゅといじめてやれば、素直なナカは種付をねだって、ぢゅう、とちんぽに強く吸いついた。
最後の一滴まで搾り尽くそうとするような食い締めに、一番弱いところをどちゅんと突いてやり、そのまま子種を叩きつける。びゅ、びゅう、びゅる、と無遠慮にそそがれる種汁のマーキングによろこんで、ナカが鈴口にちゅ、ちゅうとくちづけた。
「は、あ……ン……あ……」
何か言いたげに背がふるえたが、これ以上はいつぞやの二の舞になる。今だって咥え込んだちんぽに次の子種をねだるように、無意識できゅんきゅんと締めつけているのだ。
本当にまずい。離れ難く、名残惜しい。それでも自分のいないところで情事の余韻に身悶えさせたくなかった。
きゅうきゅうと甘える肉壁をふりほどき、ちんぽを抜く。亀頭が出る瞬間、ぴく、と再び背がふるえたと思うと、ナカからとろとろと、ローションと子種汁がこぼれ落ちた。
縦に割れた肉縁は、なかなか閉じることがないまま、奥からあふれる白濁にまみれ、それにすら感じるようにひくひくとわななく。
「ん、あ……ひとやの、でちゃう……」
「……っ、あとやっとくから、寝ろ」
熟れすぎた色香と、幼気な微睡みが混ざり合う。せっかく抜いたのに、今度こそ尻に蓋でもしなければならないほど、めちゃくちゃに犯してしまいそうだった。
幸いにも体力の限界か、すやすやと良い子で寝てくれたが、もし少しでも余力があったらと思うと肝が冷える。
完全に眠ったのをみはからい、よっこいしょ、とおっさんくさいと言われる掛け声と共に恋人を抱き上げて風呂場へ向かった。
それにしても背中がすさまじい。目を覚ましたら謝罪しなければ。久しぶりに見る欲望を丸出しにしたような有様に、自業自得ながら頭を抱えた。
何かと乱暴で雑な恋人が、ちゃんと聞いて、忘れないでいてくれることを祈ろう。
2021/02/13
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