階段話
三人でつるんで行動するとき、まず空却が先頭きって歩き出し、それを十四が追いかけ、最後に獄がついてくる。
どんなときでもだいたいそんな調子なので、あまり気にしたことがなかったのだ。
ある日のこと、いつものように三人で出かけて、獄が奢ってくれるという店に向かう途中、長い階段があった。
事前に話されてはいたが、実際に見てみるとなかなか凄まじい。視線を上に向けても、終わりが見えるようで見えない。空却なんかはうげ、と言いながらもどこそこよりマシかなんて涼しい顔をしていたが、十四は少しげんなりしていた。うう、と呻いていると、獄にこれがなければいいんだがな、なんて励まされて、足を踏み出した。
ひょいひょいと登る空却と、それについていく獄、しんがりが十四。珍しく最後になった十四は、しんどいながらもめったに見ない景色を楽しんでいた。
空却の背は普段から見ているが、獄の背中はずいぶん見ていない。というか二人が並んだ背を見ていなかった。
二人は付き合っているけれど、そういうそぶりは見せないようにしている。それはそれ、これはこれ、と思っても誰しもが上手く切替できるわけではない。十四は二人といて居心地が悪い思いをしたことがないから、やっぱり二人はすごいな〜と思っていた。
今も後ろから二人を見ていても、歳の離れた友人にしか見えない。年齢だけじゃない。見た目も、雰囲気も、てんでバラバラなのに、対等に話してたまにじゃれ合う。不機嫌そうな顔をしても、楽しそうだ。
しかし何か変だ。微妙な、本当に些細な違和感に頭を捻っていたが、考えこんだ隙に二人にかなり差をつけられてしまっていた。
「おーい十四!大丈夫かー?!」
大きな声で呼びかける空却に意識を引き戻される。あわてて返事をしようと顔を上げた瞬間、違和感の答えにたどり着いた。
空却と獄の身長差はだいたい十センチほどなのだが、その差がほぼなかったのだ。
ちら、と二人の足下を見ると、獄が一、二段分下にいる。目線が合うように調整して歩いているのだろう。それもごく自然に。
獄は意識的にしているのか、空却は気づいているのか、それとも全部無意識なのか。
すぐ行きます!と言うつもりで口は全然違うことを言っていた。
「なんか自分、お腹いっぱいっす〜」
2021/02/24
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