溶けて消えてはやらないが+EX
がぶりと歯を立ててついた白いうなじへのマーキングは実に良かった。
囃し立てられながら持ち帰った恋人がシャワーを浴びたがるのを無視してベッドへと押し倒すと、ぶわ、と線香と汗の混ざった香りが立ち上る。
汗臭いだろ、さっきまで走り回ってたし、と逃げ出そうともがく恋人を、そんなことない、俺だってそうだ、と引き止めると、観念したのか大人しくなった。
一枚一枚、衣服を脱がせながら肌の匂いを嗅いでやると、ほてった身体が羞恥でさらに熱を帯びる。
だから臭いって言ってるだろ、と眉を寄せるのに嗜虐心が煽られるも、本当に臭くないから意地悪なことは出来ない。
どことなく甘く、燻された香りが美味そうだと、あっという間に下着一枚にしてしまった恋人に囁く。
ピアスで塞がれていない唯一の穴から鼓膜に響くよう、触れたい、噛みつきたい、味わいたいと我慢弱い男の顔をして縋れば、簡単な恋人は仕方ない、と譲って下さった。
譲歩の代わりか顔を隠す恋人を後ろから抱きしめながら、うだってうっすら紅色のうなじに少し強めに噛みつくと、腕の中の身体が痛みにびくりとふるえる。あやすように歯形がついた肌を舐めると、今度は違う理由でびく、びく、と身体が跳ねた。
のけ反りながら、ふ、ふぅ、とくぐもった息をもらし、様子を伺うそぶりでかすめた乳首は両方とも綺麗に勃起していた。これならば、と下着に手を伸ばすと、ぷるん、としたふくらみが下ろすのを邪魔する。
たったの一噛みでここまでとろけてしまう恋人は、教えられたばかりの快感を貪るのに夢中で、このあとどうされてしまうのか、どうなってしまうのか、と、期待であふれる先走りも、加速する心音も隠せていない。
シミの広がった下着を遠慮なく引きずり下ろすと、ぷりん、と勃起した若茎がはしたない汁にまみれて頭を出した。下着と透明な糸で繋がっている先端は恥じらうように赤い。
「やらしいおもらし上手になったなあ?」
「おもらし言うな……っ」
太ももの半ばでとどまる下着をくすぐったそうにしながらも、本気の抵抗はしないから満更でもないのだろう。証拠のおもらしはまだ続いているし、若茎もどんどん育っている。
「じゃあやらしいの、もっと上手になろうか」
「だから……っ」
苛烈な修行を自他に課す恋人はどうにもマゾヒスティックな素養があるらしく、意地悪いことをするとなんのかんのと悦んでしまう。向上心も人一倍強いものだから、もっとヨクなれる、と言われたら勝手により高みを目指してしまうらしい。
中途半端に下ろされた下着のせいで身動きのとれない恋人の恨めしげな上目遣いににっこりと笑い返し、片手を尻へと伸ばす。
尻でヨクなれると教えた恋人は、まさに元々の素養と向上心が悪く……良く……ともかく、作用して、すさまじい勢いで学習していた。
玩具や器具を与えて一人でもやってみな、と言えば、しっかりと予習復習をし、次に抱く時には確実に成長……と言っていいものか……をしていた。
今日は急な来訪だったから準備が出来ているなど思っていない。魅力的に誘われはしたが今日でなくてもいい。
どうあれ、存分にかわいがって痕を残させてもらおうと、いくらかむち、とした尻たぶを開く。
「……ん?」
「……っ」
開いた先、表面を撫でるくらいのつもりで伸ばした指がコッ、と固いものに当たった。
途端、ぼ、と火がついたように抱きしめた身体が熱くなり、ぷるぷるとふるえだした。
驚きはしたものの、指に触れたものの正体はわかっている。
「なんだ……準備万端だったなら言ってくれよ」
「そやって、すぐ調子のっから……」
コッ、コッ、と爪先でノックしたのはプレゼントした玩具の一つ、アナルプラグだ。恋人の髪の色に似た鮮やかな赤のビジューが目を引いて手に取った。
体勢の都合上、今日は見ることが叶わないが、白い肌と薄紅色の粘膜にほど近い場所を飾る赤色は艶やかでよく映える。ノックを重ねるたびにびくびくとする身体は、戸を開くどころかいっそうきゅっ、ときつく締まってしまう。
「これを挿入れて、一日中?」
「んなわけねーだろ……っ、くるって、れんらく、きてから……」
「もしかしたらエッチなこと出来るかも? って?」
ノックをやめ、ぐりぐりとビジューを押し込むと、きゅん、きゅん、と中から返事があった。舌足らずな威嚇からしても間違いなく甘イキしているのだろう。
ちらりと見れば新しくいやらしいおもらしのシミを増やしている若茎がぴん、と勃ったまま解放されたくてうずうずとしていた。
「……わりーかよ……」
「何が?」
「……ひとやと、やらしいこと、したくて」
じとりとした金色に睨むように乞われて、思わず指先が滑る。
天邪鬼で、売り言葉に買い言葉、一度決めたら退かぬ譲らぬ恋人が、よりにもよってベッドの上で牙を剥いた。
意地悪く責めなければ口にしない素直なおねだりはかわいらしくてたまらないのに、同時にひどく淫らでもあって、いつもの挑戦的な態度との落差が胸を揺さぶる。
そうして指先が狂った結果、じゅぷん……っ、と中のぬかるみを伝えるような感触と音を暴いてしまった。
「ひぅ……っ」
ちょうどいやらしく育てている最中のふくらみに直撃したらしい。腕の中でびくんびくんと暴れていた恋人は、プラグを食い締めながら、ぴゅぅぅ〜っ、とかわいらしく射精をしてしまった。
「お尻で気持ちよくなるの、上手になったなあ?」
「う、さぃっ」
「でもそうだろ? お尻の中の気持ちいいとこ……ぐりぐり〜ってしたら……」
「ゃめ、や、ゃぁぁぁ……」
赤子のようにか弱いイヤイヤをしながら、プラグでほじられるのをしっかりと味わってしまう淫らな身体に口角が悪い形に上がっていく。
突っ張った足をじたじたと振り乱して、ぴゅ、ぴゅぅ、ぴゅぅぅ〜……と尿道に残った精子を撒き散らし、そのたびにふにゃりと首を垂れる若茎がぷるぷると揺れ、中身の失せた二つの袋がやわらかさを取り戻す。
今日はもう射精ち止めだろう。それでもプラグでかわいがるのはやめない。ぐ、ぐぅぅ、ぐりゅ、ぐん、とただ奥へと進むのではなく、ときおり引き、回し、性感帯へと育ちつつある中のふくらみに手解きをしてやる。
「やっぱ上手じゃねえか、やらしいおもらし……」
「ゃ、ゃぁ、やぁぁぁぁ……」
もはや甘くとろけた嬌声を上げながら尻での快感で絶頂するしか出来ない恋人が、びくびくん、と一際大きく跳ねると、ぷしゃあっ、と粗相であって粗相でない、いやらしいおもらしではあるが先走りではない、潮を吹いた。
それにしても若茎そのものには指一本触れないまま勃起し、射精し、潮まで吹いた恋人の尻の仕上がり具合には恋人の日々の研鑽を感じる。
「なあ……俺が今日もしも連れ帰らなかったら、どうしてたんだよ……」
「……? あのまま、てつだってた……けど」
「尻に、玩具突っ込んだまま? オナニーの準備しながら手伝いしたのか……?」
「……いいかた、あんだろ……」
「でもそうだろ? 俺に抱かれるの期待して、でもそうならなかったら……オナニーするだろ……?」
「する、けど……」
消え入りそうな声はもしもの想像で中をきゅう、きゅん、と、うずかせた恥じらいが強い。ビジュー越しでも伝わる熱とうねりは、これまでのオナニーを思い出してかなかなかおさまらないままだ。
「どうやってするんだ? 今みたいにプラグで? それとも別のか?」
「ほ、ぁ……っ」
嘘をつけないよう、天邪鬼の皮をかぶれぬよう、ぐりりゅ、と、尻の中のふくらみを徹底的に責めてやる。
中での絶頂には終わりがない。どんどん性感帯として熟しつつあるそこを、今この時に仕上げてしまうと決めた。
「パールもやったよな……あれで何度も撫でると気持ちいいもんなあ……? ああ、ローターなら好きなとこだけいっぱい狙えるか」
「ほぁ……っ、ほ、ほぁぁ……っ、ひ、とゃ……、ま、てぇ……っ」
「俺のと似たような形とサイズのディルドは使ってるか? 慣れるなら一番いいとは思うけど……デカいだろ?」
「ま、て、てばぁ……っ」
ひ、ひ、と鼻を鳴らす恋人の下半身はもう大洪水だ。
ただでさえ終わらない甘イキをし続ける尻に深く重い絶頂も与え続ける。
そうすると射精すもののない若茎は、いやらしいおもらし——潮吹きをするしかない。
ぷしゃ、しょわ、しょろろ……となき声のBGMにはぴったりのはしたない水音が次第に心地よくなっていく。
「なあ、空却?」
「ひ、や、やぁっ……! まて、ま、てぇ……っ」
もちろん待つわけがない。
どんな事を考えながら、どんな風にこのいやらしい身体を慰めたのかを答えるまで、性感帯として熟れきったふくらみをかわいがるのをやめてやれない。
ぐりゅ、ぐに、ぐぅぅ……。どこをどう動かせばどう反応するか、もう覚えてしまった。いとけない仕草で淫らに達し続ける恋人はすっかり前後不覚だ。
……が、さすがに過ぎた快感でもじもじと悶えるばかりの恋人に申し訳なくもなってきて、次でトドメを刺してやることにする。こちらもこちらで限界が近いのだ。
「よっ、と……」
「ふぁ……っ」
ごりゅんっ! と熟れたふくらみを撫でながらほじると、ぎゅうぅぅぅ……っ、と何度目かの大きな絶頂を迎えてプラグを咥え込んだ。
若茎もこれが最後とばかりにじょば、と盛大な粗相を披露してくれた。射精よりも勢いのある淫らな粗相は、まだ玩具でほじられただけだと思うと余計にそそる。
しかし絶頂の余韻で尻の中がぐにゅ、ぐぅぅぅ、と蠕動するのを感じるたび、勃起したままずっと待機している自分の逸物を挿入れられたらどれほど良いかと歯噛みしてしまう。
本当はほんの少しプラグでかわいがってから挿入するつもりだった。けれどもこのありさまでは恋人にあまりに酷だ。
「大丈夫か空却」
「ひとや……」
ぽんやりとした上目遣いは険がなくあいらしい。
なあなあに抱くことはしたくないから、このまま後始末だけして寝かしつけてしまおう。
「風呂行けるか?」
「ひとやは……?」
「俺はいい」
すり、と張りつめたままの太茎に身を寄せる恋人のけなげさによろめきそうになるのを必死でこらえる。言い募ろうとする口を塞ぐために最初に噛みついたうなじから耳へ、くちびるだけで甘噛みをすれば、くすぐったそうに身悶えた。
「ひとや……っ」
「今日は一人で片付ける——だから、次の予約だけさせてほしい」
また今度、今日するはずだった全部をしよう。
そう告げると、ようやく恋人が白旗を上げてくれた。
「……ばれんたいんのつもりだった」
「バレンタイン?」
甘噛みされるがままに身を委ねてるものの納得はしていないという目の恋人が、ぼそりと漏らす。
そういえば今日はそんなイベントの日だった。雪のトラブルでそれどころではなく、チョコどころではなかったのだ。
「ひとや、くいもんにうるせぇから。……でも、せっそうのことは、ぜったいすきだろ……」
当然のように放たれた言葉の全てが致命的な威力でもって胸に刺さる。
目に入れても痛くない。食べたいくらい可愛い。頭に浮かぶそれらを鼻で笑ってきたのに、痛いくらいわかるようになった。
もう一度、歯を立てたうなじはしょっぱかったけれど、一番甘いものは溶けないまま腕の中にある。
2025/2/15
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