プライベート磔獄門

 にゃあにゃあと鳴き真似をしながら、ごろりと寝そべる恋人はご丁寧に作り物の猫の耳と尻尾をつけていた。

「気色悪い真似をするな」
「なァんだよ、せっかくカワイイ恋人が猫の日♡ サービスしてやったってのに」
「誰の入れ知恵だ? 十四か? 檀家さんか? ……山田一郎か?」
「惜しい、正解は前に一郎がワケわかんねぇこと言ってたの思い出した、だ」
「オタク趣味も考えもんだな……」
「テメェも大概のクセして何言ってやがるんだか」

 冬用におろした毛足の長いラグに頬を擦り寄せて悪態をつく不良猫は、すっかり仲直りした親友との思い出話をよく口にするようになった。
 楽しそうに新しい土産話をも聞かされることも増え、名前も言わず、どこか苦しげに吐き捨てる様が痛々しくもあった頃に比べれば良い事だ、と思う。
 思う、が。

「……山田一郎はライバル視してるダチがこんな馬鹿丸出しのごっこ遊びに興じてるなんて知ったらショックだろうな」
「獄は一郎のことなぁんもわかっちゃいねぇなぁ! いつもはキリッとしてる……ナン……チャラ? ちゃんが、主人公の……ナンタラにだけは甘えん坊なのがギャップがあってイイんだって言ってたぞ」

 寝転がったままふんぞりかえる恋人が言う事は何も山田一郎に限った意見ではないとは思うのだが、あまり深く追求すると本人不在のままプライバシーを暴くことになりかねない。
 あいまいに頷きながら、ん? とひっかかった小骨に気づく。

「つまり空却は俺にだけ猫の真似事をしてにゃあにゃあ鳴いてくれている、と」
「ハナからそう言ってんだろーが」
「じゃあ他の男の名前を匂わすな、そして言うな」
「獄クンてば、ホンット器がちっちぇのなぁ」

 ごろごろ転がり喉を鳴らす恋人が鷹揚に笑う。
 自分が選ぶ側であり、選ばれる側であると疑わぬ自信は間違っていないから二人きりで部屋にいる。
 嬉しそうに輝く金色の目は好奇心に殺される猫と同じだ。

「なぁ獄、拙僧ら何度番ったと思ってんだ? そんなおっかない顔しなくったって、不貞なんてしやしねぇよ」
「俺には我慢ならんもんが二つある。一つ、飛び散る動物の毛。二つ、わざと妬かせようとする恋人だ」
「うだうだ言ってねぇでさっさと来いよ」

 拙僧はもう待ちくたびれた——
 綺麗に弧を描いたくちびると一緒に、きらめく瞳も細められ、のけぞって白い喉笛が晒される。
 猫が噛み付くのは首の裏側なのだが、まあ細かいことはいいだろう。
 優しく歯を立てると、ひ、と小さな喘ぎが上がった。

2025/2/22


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