水で流すか底に落とすか豚に食わすか
かわいいかわいい恋人はスキンシップ過多で、喜怒哀楽を隠さず、余すことなく教えてくれる。
飛んで跳ねて喜ぶ姿は年齢よりも幼く、肝が冷え、縮み上がるように苛烈に怒り、哀しみは太陽が雲に隠れ、今にも降り出しそうな空模様によく似ていて、獰猛な獣と無垢な子供の両方の表情で楽しそうに笑う。
見ていて飽きることのない七変化は、自分を偽ることを知らない——あるいは偽らずともいい生を過ごしてきたのだと思わせた。
それに困らされることもあれば、ありがたさに拝むこともある。
今は後者だ。
ソファに腰掛けていたところ、襲撃を仕掛けてきた恋人に膝の上を占拠され、退屈だから構え、と言わんばかりの態度に白旗を上げた。
完全に椅子扱いされ、背もたれとして寄りかかられる。特にそれ以上の要望はないのか、ほかほかとした子供体温が体に移っていく。腹の辺りをあたためるぬくさに気がゆるみ、眠たくなるのを叱咤した。
何か考えて意識を保とうとすると、恋人の寝巻きがわりのスウェットとハーフパンツが目についた。柄のないシンプルなホワイトとグレイの組み合わせは、くたびれや汚れが目立つ。そろそろ洗濯どきかと、じ、と見つめると、悪戯心が湧き上がった。
「ひ……っ」
少しばかりオーバーサイズのスウェットは、常のようにボディラインを隠してしまう。それ自体は悪くない。かわいい恋人のきめ細やかな肌同様、抜群のスタイルの良さを不用意に晒すなどしたくない。
ただ、今は二人きり。恋人に不埒な欲望を抱いて許されるたった一人の相手である自分とだけいるのだから、隠さず、全てつまびらかにしてしまっていいのだ。
もちろんいきなりひん剥くような真似はしない。プレゼントのリボンをほどくように、綺麗で丈夫な包装用紙を破かないように、慎重に、丁寧に、触れる。
「獄……っ」
「いきなり人の上に乗っかって、なあんにもありません、はないだろ?」
背後から手を伸ばし、スウェット越しに胸を包み、両乳首をかすめると、びくん、と膝の上の身体が跳ねた。何度となく番った恋人の身体をいくらか膜で覆われたくらいで間違うわけもない。
女のものとは違う、みっちりと筋肉の詰まった、けれどもそれゆえにもっちりとやわらかな乳房は、手のひらから少しこぼれる重みが心地よい。
す、と指の腹で擦っただけでぷくん、と目覚めた乳首は、乳房を手のひらでたぷたぷとゆするだけで、ぷくん、ぷる、ぷく……っと、そそりたっていく。
スウェットとこすれるのも気持ち良いのだろう。最初の一回だけしか触れていないはずの乳首は、乳房を軽く上下にゆさぶられるだけでスウェットを押し上げるほど硬く勃起していた。
「せっそぉはやらしいことがしたいわけじゃねぇっ」
「こんな乳首勃起させて? 嘘だろ」
「うそじゃ、ね、ぇ……っ!」
どうにか首を捻ってぎゃんぎゃんと噛みつく恋人は、耳まで真っ赤にして目はうるみ、眉だって八の字の形になっている。舌も回らず、声だって甘くとろけて迫力のかけらもない。
負けん気の皮を取っ払ってやろうと、乳首に触れないようにしながら乳房をゆすり続ける。布を挟んでも、もちもち、むちむちとした弾力とやわさ、まろやかさが手のひらに感じられ、硬く尖っていく乳首のこりこりとした感触が恋しくなる。
「ふ……ぅ……ん」
肝心要の乳首に触れるのは避けているものの、乳輪のきわには触れているから、寸止めで焦らされている状態の恋人は、捻っていた首を俯かせ、吐息をたっぷりと含ませて喘いだ。
乳首がそれということは、乳首以外——股の間の若茎だとか、尻の間の縦に割れたすぼまりだとか——も感じている証左となる。今ももじもじと身をよじり、ぎゅうぎゅうと足を寄せて股間を押しつぶすようにしていた。
「おっぱい、気持ちいいなあ?」
「う、るしゃぃっ」
顔を伏せても、短く切り揃えられた髪からはみ出た耳がかわいらしく赤く染まっていて、ひっくり返った舌足らずな声は羞恥を隠すどころか強調する。『気持ちいい』ことを否定出来ていないし半ば肯定していると気づく余裕は当然ない。
擦り合わせた足と足をぐっと押さえ、自分を守るようにきゅっと丸まった恋人の姿は、幼い子供が耐える仕草そのもので、ひどく悪いことをしている気持ちにさせられる。
実際、日々欠かさず鍛錬を重ねた身体を、夜な夜な愛でることでいやらしさを纏うようにさせてしまった。これはお坊様にしていいことではない。閻魔なんぞに負ける気はないが、恋人自ら悪僧と名乗っているのに俺が罪に問われるのはおかしくないだろうか?
「かんがぇ、ごひょ……ゃめりょ……っ」
「おっ……と、すまん」
小さじ一杯にも満たない罪悪感と大さじ一杯ではきかない不満足で、うっかり乳首をいじってしまっていたらしい。
スウェットの上から摘み上げた乳首はこりこりと指に馴染んだ硬さで、包んだまま側面をしごいてやると、びくんびくんと恋人の身体が暴れ出す。
「ば、か……! しゃわんにゃぁっ」
「なんでだ? こんなに立派に育った上、触れ触れってお強請りしてくれる健気な乳首をよしよししないのは罪になる」
「どこのほーりつ、だ!」
熱い吐息と、は、ひぃ、と頑張って甘さを削ぎ落とそうとしている喘ぎをこぼしながら、恋人が俯いたまま一生懸命に噛みつくのがかわいくてしょうがない。
耳はますます真っ赤になり髪の毛と区別がつかない。乳首への愛撫に従順になるように教えた身体は早くイキたいと悶えるものの、素直になりきれない頭と口だけの反抗期から抜けられない。
若茎にするように、しゅ、しゅ、としごいた乳首は、指から解放してやっても萎えず、ぴん、と尖ったままテントを張ってしまう。
今度はふくれてほじりやすくなった先っぽをかわいがろうと、スウェットの上から指を差し込んだ。
「ひっ……ひぅぅぅぅうぅぅ……っ」
途端、膝の上の恋人がのけ反り、一際大きく跳ね、下半身にじわ……と湿り気が広がる。
恋人が気持ちがいいときにするおもらしに手を止めることなく、こり、かり、と両の乳首をほじると、ゃ、ゃぁぁあああぁ……っ、と羞恥と戸惑いに彩られた嬌声が上がった。
耳をすませばぷしゃぁ……と、はしたなく淫らなおもらしとは思えぬ、奥ゆかしく淑やかなイキしょんを垂れ流し、どんどん恥ずかしいおもらしじみを大きくしていく。
「やっぱりおっぱい……いや、乳首か。気持ちいいんだなあ? 俺の服までびちょびちょにしてイッて……」
「ふ、ゃあっ、ゃ、ゃあ、ゃ、ゃ! ゃらぁ……っ!」
最中に意地悪なことを囁かれると気持ちよくなってしまう、俺にだけマゾヒスティックな恋人が、また淫汁の地図を広げてイッてしまう。
指を押し上げる勢いの勃起乳首と裏腹に、恥じらうように縮こまる恋人にぞくぞくと背がふるえ、気づけば思いついた悪いたくらみをうだった耳に流し込んでいた。
「……これから、おしっこする時は乳首オナニーしろよ」
「な、れ……っ、ゃらっ……! ぜ、たぃ、やら……っ!」
「だってなあ……? 乳首いじってる間、ずうっとおもらししてんじゃねえか」
俺までもらしたみたいになってんだぞ、と言えば、ぐ、と黙り込んだが、乳首をほじればすぐに喘ぎ、ぷし、とおもらししてくれる。
「ほおらまた……。乳首が気持ちいいとちんぽ汁じゃなくて潮吹いちまうんなら、オナニーした方がいいだろ」
「にゃに、にゃ、で……ぇっ」
理の完全崩壊した屁理屈は、普段の恋人ならば即座に否を唱え、こちらをさんざ変態扱いして終わっただろう。だが今は快感でうだりきって冷静な判断力も抵抗する力も十全に発揮できない恋人だ。
「ほら、言えよ。これからおしっこは乳首オナニーでイッたときしかしません……って」
もはや舌足らずな反論すら出来ず、ぶるぶるびくびくとふるえる恋人がどうにかいやいやの首振りをする。が、もちろんやめてなどやらない。
乳首ばかりかわいがっていたから、あらためておっぱいを掬い上げて揉みしだく。苛烈な修行の成果でもあり、淫らな房事の結果でもある身体は、立派な胸筋をいやらしくかわいがられて、はしたなく粗相をしてしまう。
「おっぱいでもおもらししちゃったなあ……?」
一緒に乳首もかわいがったらどうなるんだろうな、と恋人が大好きな殊更に低くした声で言ってやれば、はぁぁ……、と一息だけ吐き出して、しょろぉぉ……と粗相の残滓を吐き出した。
スウェットに張られた揺るがない乳首テントを指で挟み、おっぱいを揉みながらしごき、潰し、えぐる。
抱きはじめた頃よりも大きく硬く育った乳首は、ぷくりとふくれた乳輪含め、清らかな僧侶の肉体だとは誰も思わない。服が擦れただけ、意地悪な言葉を囁かれただけで、悦びながら勃起して、達し、粗相をするのは淫乱な破戒僧の身体だ。
ふ、ふぅぅぅ……、ふぅ……と荒く息を吹く恋人は、最後の意地で声だけは殺しているものの、絶頂そのものは耐えられずに、しょろろ、しゃぁぁ……、と淫らな粗相の水音を立てる。
しゅこしゅことしごいて勃ち上らせた乳首のてっぺんを、こしゅこしゅとほじりながらわざと押し潰すと、指の腹の下でぴくぴくと押し返そうとする健気さがあいらしい。すっかり陥落していても、負けん気が失われていないようで嬉しくもなった。
「上手にちくオナおしっこ出来たなあ。次は自分でやるんだぞ?」
快感か羞恥か、すっかりくんにゃりとした恋人は耳に意地悪な言葉を流し込んでも、ぴく、と跳ねたきり反応がない。
仕方なく指先で弄んでいた両乳首を少し強めにぎゅ、と潰すと、びくんっ、とのけ反り、指を押し返すようにふくれあがった。
「返事しな空却。次からのおしっこは自分で乳首オナニーしないと出来ないんだぞ……それとも、毎回、おしっこのたび、俺に乳首イカせてもらいたいのか?」
潰した乳首を引っ張って伸ばしながら問いかけると、首が縦にこくん、と揺れる。
偶然かも知れない、と再度、俺に乳首でイクとこ見られて、それでおしっこするとこも見られたいのか? と聞いても、こくん、と首は縦に振られた。
「ちゃあんと、自分の口で言いな。これからおしっこしたいときは乳首でイかせて下さい、イッたらおもらしするから見てください……って」
絶対に言うわけがない、と思いながら強制した宣誓は、案の定だんまりを決められた。
わかっていたことだからかまわない。折れず曲がらず退かずの恋人が簡単に譲ってくれるなどとは思っていない。頷いただけでも十分だ。
掌中の乳首はもうずっと勃起したまま戻らず、たまにやわらかくなってもしごいてやればすぐに硬く尖る。当分は服に擦れるのも、俺に関わることを思い出すことすらも刺激となってしまうだろう。
こりこりとした感触を楽しみながら、淫らな欲を持て余した恋人に縋られる未来を想像していると、ひとや、ととろけきった甘え声で名前を呼ばれた。
「どうした空却、おもらし見てほしいのか?」
揶揄いをたっぷりと含ませた意地悪い声で穴だらけの耳たぶを食んでやれば、ごく、と息を飲んだ恋人のうるんで落ちそうな金色の目で肯定される。
「……ぉもらし……みろ……」
「へえ……」
ひどく尊大な乳首イキおねだりに、つい、つい、悪い声が出た。
自分で仕組んだことなのに、いざ実行されるととんでもない威力があったという情けない理由だが、青年と言ってもいい恋人におもらしを見ろとねだられるのがこれほど倒錯的なものだとは思わなかったのだ。
かわいがりすぎて布越しでもぷっくりと腫れた乳首をきゅっ、と摘んでひねると、ん、と甘い喘ぎが上がる。こんないやらしい声が排尿のために出ているなど、誰も信じやしない。
「俺の膝、こおんなびちょびちょにしてまだおしっこ出るんだなあ……?」
おもらしではなく乳首イキが目的だろう、と揶揄しながら、乳首をくりくり、こりこり、とこね回すと、ん、んぅ、と喉奥でもがくような返事をされた。
あいにく言っていることはわからないが、天邪鬼な恋人は完全陥落するまで真実を口にはしない。
「……いいよ、いっぱいおもらしさせてやる」
本心を腹にしまいこんで、かわいらしく鼻を鳴らし喘ぐ恋人の、鼓膜を直接ふるわせるような低い声で告げれば、乳首がぷく、と反応した。やはり身体は素直だ。
ぐに、と、こねてふくらませた乳首を、今度は少し痛むくらいに強く潰し、ぎゅううう、と引っ張る。つられてぷっくりとした乳輪も伸び、ほてって熱を帯びていく。
びくびく、がくがく、と腰を起点に揺れる身体は、ほとんどイッていて、けれども射精はしていない。じょわわわ……と、ついに潮の混じらない、ほかほかと湯気の立つ正真正銘のおしっこをもらしていた。
「ふあぁぁぁぁ……」
「ったく……一人でおしっこ出来ないなんざ、いい歳こいて手がかかるガキだよ」
「らてぇ……ひとりでや、たら……、べんじょ、でらんねぇ……」
心底から気持ちよさそうに感嘆を上げる恋人は、意地悪な言葉を意に介さない。
むしろ開き直ったのかスウェットを薄黄色に染め、独特の臭気に塗れても堂々としている。こちらを上目遣いで見つめる目は快感でとろん、としているものの、俯き恥じらっていた姿はどこかへ行ってしまったようだ。
「はあ……」
「んだよ」
「さっきまでしおらしかったのになって思っただけだよ」
「へぇ……アマグニセンセェ、せっそぉにおしっこしたいからちくびでイカせてください♡ ちくびイキおもらしみてください♡ ……ってホンットにいわせたかったんだぁ……」
ベッドの上で自分にだけ見せる、恋人の被虐的な一面に嗜虐心がわいて、ひどく下品な物言いをしたが、本気で実行したいわけでもさせたいわけでもない。
意地悪な言葉とスパイスていどの痛みは限定的だから盛り上がるのであって、日常生活を侵食するようなプレイをしたいわけではない。
まさか、そんな、本当に、乳首で絶頂しないと用を足せないように恋人を躾けるなど——
「そんなわけないだろ!」
「なぁんだ、せっそぉはいいぜ♡ ……さっきの、ちくびイキおもらし……♡ あんがいきもちよかったしなぁ……♡」
「ん、な……っ」
「なぁひとや……♡ せっそぉのちくびイキおもらし……♡ もっかい、みたくねぇ……?」
とろけた黄金色の目がこちらの悪戯心を超えたたくらみに誘う。どうせ後始末はしなくてはならないのだ。
無言で、下着のように胸へと添えていた手を動かせば、恋人が息を飲む。
「……淫乱マゾ坊主の乳首イキおもらしを見て下さい、だろ?」
「……っはぁい……♡ ぃんらんまぞぼーずの、ちくびイキおもらし……♡♡ みてくだひゃぃ……っ♡♡♡」
絶頂を迎えていくらかやわくなっていた両乳首を、爪先で何度か弾いて勃起させ、先っぽのくぼみをこりゅ、とほじると、簡単にぷしぃっ、と潮を吹いた。
それ以降、互いに訪問頻度が増えたとかなんとか言われているが、真相は厠の中にある。
2025/3/19
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