シュレディンガーの猫は布団の中
帰ってくると待ちくたびれた恋人がベッドで大の字になっている光景も見慣れたものだ。
早朝にお勤めがあると出ていくのを引き止める手段は前日に余裕を持って帰宅し、食事や風呂、床を共にすれば容易だが、多忙な時期はまず帰宅が難しい。
大口を開けて眠る恋人は花のかんばせを台無しにした間抜け面で、思わず脱力してしまうのと同時にどうしようもない愛おしさがわき上がる。
ジャケットを脱いだだけ、髪のセットすら崩れかけたまま、ベッドサイドから見下ろした恋人へと手を伸ばす。
見た目よりやわらかい赤毛は身じろぎのたびにふわふわと揺れる。起こさぬようにそっとひとすじだけ撫でると、んん、とくすぐったそうに喉を鳴らした。
自分が触れたから鳴いたのだと思い込むくらいのご褒美はあっていいだろう。
このままベッドに倒れ込んで、離さぬように抱き締めて、明日のことなど考えずに寝てしまいたかったがそうはいかない。
名残を惜しみながら指を引くと、恋人の小作りな頭がごろりと転げてついて来た。
綺麗なまるい額がすり寄せられ、ぱくぱくと動いた口が自分の名前と同じ形を作る。
起きているのか寝ているのか、どちらにしてもくちづければわかるだろう。
2025/4/11
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