愛おしい蛇足
天国獄の仕事場に余計なものはない。
クソガキと呼ぶ子供達の持ち込んだ菓子やゲーム機が転がっていても、それらを片付ければ無敗の弁護士にふさわしい佇まいを取り戻す。
そんな天国獄は最近ついに勝訴どころか政権を勝ち取ってしまい、応援はしていたもののいざその日を迎えると現実感がなかった。弁護士も他人の人生を左右する仕事ではあるが、国民、国ともなるとさすがに途方もない。
天国獄の所属しているチームのリーダーが他の出場チームのリーダーへと協力を促したことで、ひとまず『話し合い』となったものの、優勝者としての責務が他のチームよりも多いのは変わらない。
結局、ファイナルディビジョンラップバトル優勝という肩書きと祝福以外、以前とさして変わらない状況のまま、いっそう多忙になった天国獄は、自分の上司であり雇用主である。
毎日が繁忙期のピークのようなありさまで、さすがに疲れをにじませて仕事机へと向かう上司のヘアセットもわずかに乱れていた。
ウチはリーダーも二番手もガキであてにならん、とぼやいた上司は、なんだかんだ言っても頼られるのが好きなのだろう。それぞれに殺到したマスコミからファンまで、あらゆる問い合わせへの窓口を一本化させて捌くシステムをあっという間に作り上げた。
お一人で? と聞いて、他所のディビジョンと協力して作成したと言われた時に、これからそうなっていくのだと不思議とあっさり受け入れていた。
そういえば上司の仕事場に増えたものがある。
それはファイナルディビジョンラップバトル優勝直後に撮られた写真で、汗をかき、服も髪も乱れ、ところどころ怪我や汚れもあるけれど、全員が笑顔で写っているものだった。
どのタイミングで撮られたのかもわからない。優勝した後のメディアの殺到ぶりは凄まじかったからだ。
何かとこだわりの強い上司がマスコミにもセンスの良いヤツがいるじゃねえか、と比較的素直な賞賛をしたのも印象深い写真は、上司の仕事机の定位置に鎮座している。
激務の最中、険しい顔をした上司の目元がやわらぐわずかな時間、視線の先には件の写真がある。
おそらく、これから先も、ずっと。
2025/4/19
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