もう三分待って

「日本人で初めてラーメンを食べたのは水戸黄門と言われている」
「んで?」
「その水戸黄門の誕生日の七月十一日をラーメンの日としている」
「じゃあ拙僧の誕生日が唐揚げの日になるのも近ぇな」
「人の話聞いてたか? 初めて食べたって言ったろ。一応言っとくと毎週金曜は唐揚げの日だ」
「へぇ! じゃああとで買いに行こうぜ。そんで獄の誕生日はハムの日にしてやるよ」
「却下だ。この前も食ったろ。ついでにハムの日は八月六日だ」
「じゃあ一人で行くわ。八、六……ハム……語呂合わせか。っておい! 獄の誕生日、佃煮の日らしいぞ!」
「車出してやる。は? 佃煮って……いや、嫌いじゃねえけど……」
「すぐそこのコンビニ行くだけだからいらねーよ。ヒャハ! 拙僧の誕生日、食いもん関係のなんもねぇの!」
「そろそろ煙草がなくなるからついでに奢ってやる。……献血の日? 空却、お前は血の気が多いからちょっと抜いてもらって社会貢献してきたらどうだ」

 返事をしようとした瞬間、ピピピ、とスマホのタイマーが鳴り響いた。
 開いていたネット事典を遮る通知を切り、三分間待つと出来上がる日本最古のカップ麺の最新版の蓋を開く。
 途端、熱い湯気が立ちのぼり、顔面に食欲をそそる匂いが浴びせられた。
 夜の浅いうち、ほんの少しだけ盛り上がって、中途半端な時間になって寝つけなくなった真夜中。それなりに動いたからか腹が減り、二人して夜食を啜っている。
 そんなに心配しなくとも、ここらへんのチンピラはとっくに手出しはしてこない。たとえ深夜のコンビニでも、よく言って聞かせたから襲撃などしてこないはずだ。
 素直に護衛を申し出られない恋人がかわいくて腹がいっぱいになってきたから、キスをして、どう転ぶかで考えよう。

2025/7/11


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