愛玩弄して目合を

 空却は腐っても破戒していても坊主なので和装の嗜みがあるのだが、その際の発言でまあまあ揉めた。
 よりにもよって、着物の合わせの覚え方など簡単だ、てめぇの利き手を突っ込んで乳を揉みやすいように重ねればよい、と宣ったのだ。
 撤回を迫る恋人——獄と、頑として譲らぬ空却で、比較的穏やかな空気に包まれていたリビングは一触即発の様相に変わる。
 せめて言い合いの発生現場が空却の家——寺——であればよかったものを、全ては後の祭りだった。

「ふ、ぅ……っ」
 早々に立っているのを諦めた空却の、声を殺しきれずに漏れ出る熱い息を感じて、いくらか溜飲が下がるものの、まだくすぶる怒りはおさまらない。
 ぺたん、と腰を抜かして座り込み、そんなことはしていないし、されていない、と信じていても、一度胸に広がったもやつきは、簡単には拭えない。
 目の前の真っ白なうなじは熱を帯びて熱く、やわく歯を立てればいっそう赤く色づいた。
 ぴくぴくと小刻みにゆれる、首筋にちゅ、と触れるだけのくちづけを落とし、浴衣の合わせに差し込んだままの手を動かす。
「ひ、ぅゃ……」
 獄の利き手——右手がするりと忍び込める前見頃の重なりは、それ以上の冒険もないままにぷくん、と勃ち上がった乳首を捕らえていた。
 浴衣に限らず、何度言い聞かせても空却は決してインナーウェアを着やしない。
 だから今日着ている臙脂色の浴衣も、たいそうよく似合っている、と褒めてやろうとした瞬間に、手塩にかけた乳首が首をもたげているのを見つけてしまい、その上、先の宣いようで、それどころではなくなった。
「いつも言ってんだろ? 中に一枚着ろって。そしたら汗で肌が服が張りつくのも防げるし、やらしい乳首だってバレる心配も減るんだからよ」
 そうじゃなきゃもうブラジャーしかない、と、さも苦渋の決断のように振る舞うが、そのやらしい乳首をいじる手は決して止めない。
 元々ぷく、と軽く膨れていた乳首は意識しなければわからないくらいだったのに、器用な指に先っぽを摘まれ、そのまましゅこしゅこと扱かれたせいで浴衣の生地を押し上げるほどに大きくなった。
 もっとも、触られていない方までぷっくりと勃起しているから、全てが獄の手腕ではないかも知れない。どちらにしろ恋人の、空却の乳首はその敏感さを持ち主に甘く見積もられている。
「じゃぁ……! いじんの、やめろってぇ……っ」
 うなじと首筋だけでもいやらしい身体は反応してしまうのに、その中でも一際いやらしく、はしたない場所を、男のシンボルにするようにされたら結果なんて言うまでもない。
 やめろ、と言われて、ぴく、と止まった指は、またすぐにそそり立つ乳首へと伸びる。今度はぶっくりと硬くふくれた先端のくぼみを抉るように、指が突き立てられた。
「はぁっ! ん、ぅっ」
 こり、ぐり、こり、ぐり……乳首を育ててはほじる動きをくり返され、つどつどにのけ反り、びくん、びくん、と跳ねながら、硬くしこった乳首と、乳首への愛撫だけでびん、と尖った若茎を前へ前へと突き出す。
 絶頂することしか考えていないようなとろけきった顔で、それでも声を抑える理性を残している強固な精神力は、房事の場では逆に憐れに見えた。
「乳首片っぽいじられただけでちんこ突き出して腰振って……恥ずかしくねえのか?」
 だからその頑健な壁を打ち崩してやろうと、うなじと揃いに真っ赤な耳に痴態への揶揄を囁いてやる。片乳首だけで両乳首どころかちんこまで勃起させた淫乱、触られてすらいないのに多すぎる先走りで浴衣を濡らした助平、意地悪く責め立てられて乳首もちんこも硬くしてシミを広げる好き者……決して乳首以外は触れぬまま、言葉で耳から脳を犯す。
「ふ、ぅ……っ、ふぅぅぅぅ……っ」
 全て事実だからか、それとも喋る余裕がないのか。息とも呻めきともつかない声を喉奥から発しながら、ぴゅるっ、ぷし、しょろろ……と、いやらしい粗相がリビングルームに広がった。
「片っぽの乳首だけでこんなおもらしして……『空ちゃん』はもう大人だろ?」
 大人なのに恥ずかしい、はしたない、いやらしい……快感でうだった頭に畳み掛け、片乳首への愛撫だけで射精どころか潮を吹き、あげく小水までぶち撒けて達する淫らな身体だと、身体と心に刻みつける。
「は、ぁ……、ぅ……」
 俯いた顔は見えないが、甘く重たい吐息に反抗の意志は感じられない。意地悪い指と言葉でかわいがられるのに耽溺しきった空却は、ぶる、とふるえると、しゃぁぁぁ、と二度目の粗相をしてしまった。
「こら、いっくら気持ちよくてもおしっこ出ます、くらいは言えるだろ?」
「ぁ、ふぁ……っ、でりゅ……っ、ぉし、こ……っ、でりゅぅ……っ」
 乳首を一撫でするだけで達する玩具のように仕込まれ、ぴん、ぴん、くり、こり、と指一本でこねくり回されるのにすら、ぶるりとふるえ、ぷしゃ、ぷし、とはしたない粗相をくり返す。びしょ濡れの下腹部は、きっと焦らされた分だけ熟れているはずだ。
 今日は最後まで片方の乳首だけでするつもりだったが、こちらが耐えられそうにない。浴衣で出掛けるのはまた今度にしよう。

2025/8/4


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