聖淫授受
一人でいる時間がほとんどなくなったことを後悔はしていないが、たまに口寂しい時がある。これまで吸っていた煙草を、空却と付き合いはじめてからは控えるようになったからだ。
頻繁に通うようになった空却の実家——空厳寺——が禁煙なのもあるが、空却に法廷でもラップでも喉を使うだろう? とそれとなく禁煙を促されたのが大きい。ただ仕事道具であり武器であるものとして労られただけならば、そこまでやる気にならなかっただろう。
しかしあの天邪鬼でベッドの上で暴き立てなければ頑として譲らぬ空却が、せっかく獄と付き合えたから出来るだけ長く一緒にいたい、などとひどく小さな声で続けたのだ。
完全な禁煙は難しいが、空却の前や空却と会う前後は控えるようにして、服や小物についた臭いにも気を使うようにした。甲斐あって、空却に最近煙草の臭いがしないと指摘を受け、出来る限り控えている、俺もお前と出来るだけ長く共にありたい、と応えれば、これまた素直に破顔してくれた。
煙草が恋しくないとは言わないが、それ以上に稀少な素直な恋人が愛おしくてたまらない。煙草の代わりにコーヒーの匂いがする、とちゅぽちゅぽと積極的にくちびるや舌を吸われた時には、禁煙する意義を心から感じられた。
それでもやはり、煙草が恋しいときもある。ドラッグ以上の依存性のせいか、煙草へのロマンが捨てきれないのか。どちらにせよ、夢に見るほどとは思っていなかった。
獄は明晰夢を見るタイプで、その日もああこれは夢だな、とすぐに察した。なぜなら現実では絶対にしない、寝煙草なんてことをしていたからだ。
やわらかいだけでなく、あるていど弾力のあるクッションに頭をあずけ、灰も落ちず、減りもしない、けれども絶妙な酩酊感と充足感、ほんのわずかな気だるさをくれる煙草を吸い続ける——シチュエーションも小物も、全てがあり得なさすぎて夢だとわかる、夢。
内容によってはすぐに目覚めることもあるけれど、これは是非とも長居したい。すぅ、と咥えた煙草の煙を深々と胸へと流し込むと、少し頭がぼぅっとするような感覚が広がった。
記憶の中の喫煙体験を掘り起こしているのか、完全に同じとは言えないが、ゆったりとした心地良い独りの時間の結界が煙草だったのかもしれない。
決して『家族』と三人、恋人と二人でいるのが嫌なわけではないが、やはり自分にはこういう瞬間が必要だ。恋人が山に籠るのもわかる気がする。
途端、群れるのが嫌いと言いながら、家族やらダチやらには積極的に絡みに行く恋人が恋しくなった。人間は独りだけでも二人、三人だけでも駄目なのだ。帰る場所があるからこそ独りを選べる。
だからそろそろ目を覚そう——
「……っ!?」
「あ、おきた」
なんとも満たされた気持ちで目覚めると、目の前にとんでもない光景、否、絶景が広がっていた。
見上げた先、まばゆくむっちりとした雪原に可憐な尖りがふっくらと艶やかな桃色に色づいている。豊かな実りのさらに上へと視線をやると、幼子をあやす時と同じ顔の恋人と目が合った。
「ふ、ぅほぉ……?」
口に何か入っているようで上手く喋れない。喉奥からもごもごと声を出せば、険の削がれた顔の恋人がじんわりと目元をうるませていた。
「ねぼけてやがんの……」
ヒャハ、といつもどおりを装って笑うけれど、舌が回っていないし、ん、ぅ、と鼻にかかった息をもらし、身をよじっている。そのたびに口の中ももぞもぞと動いた。
口腔内のやわらかな感触には覚えがある。歯を立てぬよう舌を伸ばすと、こり、と硬くしこった肉粒に当たった。
「ほまへ……」
「ふ、ぅん……っ」
目の前の恋人の顔がいっそうほどけ、喘ぎと同じ甘い香りを放つ。一撫でで何かを察したものの、舌で転がすたび、ん、ん、と鼻にかかった声を噛み殺すのがたまらない。
さすがにこちらが悪いいたずらをしていると気づいて、恋人が身を引こうとするが、そうは問屋が卸さない。
「ひゃ、ぅんっ!」
逃げた肉粒をぢゅ、と吸い上げ、くちびるできゅ、と締めつければ、硬くふくれた一番敏感な先っぽは簡単に捕えられてしまった。衝撃でびくん! と恋人が跳ねた直後、ぷし、とをいやらしい粗相をしたらしいが、解放する気はさらさらない。
ちゅ、ちゅぅぅぅ、ちゅう、ぐりゅぅぅぅん……くちびるで側面を擦り上げながら、先端のやわこいくぼみを舌先で抉る。健気にもその一挙手一投足ごとに極めてしまう恋人の顔は、挑戦的な眉も目もうっとりと歪ませ、真珠色の犬歯をきらめかせる口元は閉じ方を忘れたように端から飲み下しそこねた涎を滴らせた。
当然、全身——特に腰と胎——も甘く、深く、絶頂させ続けているから、頭の下でぴゅる、ぷしゃぁ、しょろろ……と大洪水が起きている。ここがどこかわからないが、場合によってははしたないマーキングで意地悪くかわいがる予定も出来てしまった。
「は、ぁ……、ぁん……っ、ぃく、ぅ……っ! ぃくうぅぅぅ〜……」
乳首を吸われただけで射精に潮どころか小便まで漏らす恋人に、こちらまでぞくぞくと腰がふるえ出す。
眼前で淫らにとけていく顔が一呼吸ついたら、はち切れんばかりにふくれた逸物をどうにか解放する。そうして、熟れて濡れそぼった後腔に全てを射精し尽くしてやる——
ぎちぎちと痛む股間をよじらせながら、何度目かもわからない絶頂でうるむ金の目を睨めつければ、先を期待してねだるように細められた。
2025/8/7
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