格好がつかない夜を共に
その華やかで人目を引く外見と言動から、遊んでいそう、と評される空却は、その実、あんまり遊んでいなかった。
なんでも父親兼住職に、口を酸っぱくして性教育とその行為に伴う倫理を説かれ、いい雰囲気になると父親の「一時の欲望に流された結果に責任が持てるのか」という怒号が頭をよぎって萎えるらしい。
「逆に言やぁ、頭ン中のクソ親父がガミガミ五月蝿せぇこと言ってもヤリてぇって思えたらいいってことだろ?」
ベッドの上、あやしくなった雲行きを晴らしたのは恋人である空却ではあったけれど、その発言を肯定するのは安易に感じられて、けれども獄の都合には良かったから「お前がそう思うならそうなんだろうよ」と責任転嫁を吐いた。
かくして初夜がはじまったものの、すでに意識に差があった。獄はとりあえず抜き合いくらいでいたのに、空却は挿入前提で尻を綺麗に整えてきたのだ。
服を脱ぎ、向かい合い、互いにゆるく勃ち上がった陰茎を確認し、いざ、と口火を切ろうとした獄に、突然、空却が両膝を立て、Mの字を描くように大きく股を開いた。
ぱかりと観音開きされた先には、ふるん、とふるえる半勃ちの若茎と、ぷりん、とした子種袋、そしてうっすら赤く腫れた肉縁が、とろ、と透明な汁をこぼしていた。
出来れば獄は空却を抱きたかった。抱きたかったけれど、空却が獄を抱きたいと言うならば未開の地を捧げる覚悟もしていた。ともあれ双方の意思の確認が必要で、抱きたい・抱かれたいと思っていても実際の肉体を見たら変わる可能性だってある。
そういう意味で言えば、これまで断固として抱く側のポジションを譲らなかった獄にとって、望むなら抱かれても良い、と思えた空却は稀有な相手だったのだが、獄本人に自覚はなかった。
「あー……その、なんだ?」
「へ? シねぇの?」
双方、意識の前提の違いにより困惑するも、もはや獄の自宅のベッドの上、事は始まってしまっている。
経験者としてしどろもどろをねじ伏せた獄は、そりゃシてぇけど! と思いながらも顔に出さず、空却に問いかけた。
「いや、俺は空却に抱きたい、とも、抱かれたい、とも、言わなかったから……まずは挿入しないものだとばかり……」
「はぁ? 獄、いっつも拙僧のこと抱きてぇ〜って顔してんのに何言ってんだ?」
あっけらかんと告げられた言葉に、獄の羞恥が学生時代の小っ恥ずかしい記憶と共に臨界点に達する。
俺はそんなにわかりやすく顔に出ていたのか。それも二人きりでそういう話をしている時だけでなく、いつもなのか。空却以外の誰かといる時も、俺が空却を抱きたいと思っているのは筒抜けなのか。
少しだけしんなりとした獄の太茎を知ってか知らずか、恐らく知る気もない空却がそのまま畳み掛ける。
「拙僧は別にどっちでもいいしよ、そんならシてぇって思った相手がヤりてぇって方に合わせるんでいいか、って」
だから調べてやってみた、と、あらためて成果である後腔の縁を突き出し、しかも両側から指で引いて、ふっくらとしたそこを広げて見せた。くぱぁ……と空気が泡立つ音がしたと思うと、中からにちゅちゅ、くちゅ、ちゅぱぁ……とうるおい、ぬかるんだ水音が響き、とろ、とぷ、と拓ききらない中から透明なローションがしたたり落ちる。
ん、と鼻にかかった声を上げ、物慣れぬ様子で眉を顰める表情には僅かな羞恥と、目覚めはじめた快楽への戸惑いがあり、釘付けになったまま、ごく、と生唾を飲み込むと、空却にヒャ、と楽しげに笑われた。
「獄、ちんこデカくなってんぞ」
手が空いていたら間違いなく指をさして笑っていたであろう空却とて、先ほどよりも若茎をぴん、と尖らせ、とろとろと先走りをこぼしているのに散々な言い草である。
普段ならば気にならない体格差を感じる眺めを味わいながら、少し仕掛けてやろうと距離を詰め、指で開かれた肉縁へ、ぷちゅ、とデカくなった先っぽを押し当てた。
「うわっ」
「うわとはなんだうわとは」
かわいらしい反応を期待していたわけではないが、害虫でも飛んできたような物言いに思わずむっとする。
お前が準備したのは、うわとか言ったのよりもっととんでもないことをするためだぞ。わかっているのか。
些細な苛立ちすら即座に反映してしまうわかりやすい器官は、赤々とうるむ秘所に触れたまま、ぐぐ、と熱を孕んでふくれ上がる。
「だって、すげぇ熱ぃし……てか、さっきより、」
さらにデカくなってねぇ? と動揺した声音に、ぞく、と背がふるえた。その反応にまた、ぐ、と大きなったのに、言葉を失うのがわかる。
「……獄、って、ほんっとに拙僧のこと、抱きてぇんだ……?」
上目遣いで見上げてきた金色が、想定外と言いたいげに揺らぐのに、あの煽りぶりはなんだったのかと目が眩む。
年齢不相応な達観と覚悟でこちらを振り回すくせに、後になってとっくに折り込み済みだと思っていたことをほじくり返される。そのいとけなさとうぶさが余計に強烈に効くのだとわかっていないのも頭が痛い。
ぷちゅ……と幼いくちづけのような音を立てて、指で広げられた中へと腰を進める。残念なことに、最初に踏み込んだ先っぽの一角で痛そうに顔をしかめるのを見逃せず、それ以上は止めた。
悔しい、絶対に今日挿入れるとがなるのを宥め、次からは一緒に準備をさせてほしい、俺のサイズがわかった方がいいだろう、と哀れっぽく懇願すれば、助平、と不満気にしながらも折れてくれた。
「そんなに言うなら最後まではいい……でも、このままイケよ」
「ちょっと待て!」
「待たねぇ! このまま、拙僧に先っぽだけ挿入れてイケ!」
喧嘩を売る剣幕で迫られ、そのまま胎に力を込められる。色気も素っ気もないのに、ぷりゅんとした後腔の縁はちゅぱ、と上手に、かわいらしく、発情しきった馬鹿な男の逸物の先っぽにしゃぶりついた。まだ痛みもあるだろうと、ぐ、と身を寄せて、空いた手で若茎を撫でてやる。
「ひっ、ばか! さわん、にゃ、ぁんっ!」
中ですぐヨクなるのは難しい。反面、獄ときたら清らかな身の上の恋人が自ら支度をして、なおかつその証明にと指で秘所を開いただけでもたまらないのに、おぼこい仕草で奉仕までしてくれる。
にちゅにちゅと狭い後腔の縁で尽くされるのも気持ちいいし、自分のためにと張り切ってくれる気持ちも嬉しい。己の果報者ぶりを思うと、かわいい恋人に何かしてやりたくもなるというものだ。
「ひ、んぅっ! ひ、ぉゃ……、ひゃぁ………!」
色も形も綺麗な若茎は、手筒でぬちぬちと扱いてやるとそれだけで嬉しそうにどぷどぷと汁を吐き出し、それに合わせて後腔もちゅ、ちゅぽ、ちゅぅ、と逸物を愛撫してくれる。
「お前の、希望どおり……っ射精してやるよ……!」
「ぁっ、ゃ、ひ、とゃ……っ、せ、そも、ぃく……っ、いくぅ……っ!」
カンのいい恋人はこういうところも押さえられるらしい。射精すと言うのに合わせ、ちゃんと肉縁をきゅぅぅぅ……っと力ませて先っぽにしゃぶりついた。
だからこちらも一際反応のいい先っぽのくぼみとくびれの付け根をこりゅこりゅと強く撫でてやれたし、挿入はしていないけれど二人仲良く達することが出来た。
「……ふぅ……っ」
「ひぃ、んっ……!」
握った指の隙間からぴゅぅぅぅっ、と吹き出した恋人の精子も、みっちりとした肉縁にびゅぅぅぅっ、と放った自分の精子も熱い。
互いに息を吐きながら自然と向かい合うと、寝顔に似た険のない、ぽんやりとした恋人と目が合った。
「すげぇ、きもちよかった……」
うっとりととけた目とゆるんだ口元が途方もない色気を放ち、まだ際どいところと密着したままなのを思い出して盛り上がりそうになる自分を嗜める。
「そりゃよかった」
「ひとやは、きもちよくねーの?」
「……わかんねえのか?」
「また、デカくなってんな」
「わかってるなら聞くんじゃない」
ヒャハハ、と哄笑を上げた空却も、その実、あまり余裕はない。
赤い顔をきょろきょろとさせ、ちらちらと力を取り戻しつつある太茎を見ているが、放たれたばかりのたっぷりとした子種にまみれた肉縁も物足りなげにひくついている。
ついに手のひらの中の若茎が硬くなりはじめたのを合図に、どちらともなくくちびるを寄せた。
挿入までいくかは、まだわからない。
2025/8/10
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