追われたくて逃げるのさ

 最近は少し高額なハズレなし当たりくじというものが流行っていて、自分自身もDRBのファイナリストとして商品にされたりもしている。
 ハズレなしとは言っても一定の品質が約束されるだけで、目当てのものでなければそれがどんなに良いものでもハズレ扱いされるのに変わりはない。
 トレードはもちろん、ファンアイテム専門業者への買取——当然それに付随する金銭トラブルの相談も増えているし、過剰な入れ込み方を見るともはや依存症の一種ではないかとも感じてしまう。
 コレクション欲やコンプリート欲は自らにも覚えがあるが、身を持ち崩すのはやはり異常だ。
「どーしたんだよ獄」
「……お前はまた愉快な格好してるな」
 寺の領分を超えた相談事を獄の事務所に回すお使いに来た空却——恋人が、いつもの装いにプラス、ケープ……? のようなものを羽織っていた。
 可愛らしいキャラクターのプリントされたそれは、一見不良坊主の恋人が着るにはたいそうミスマッチで、自分で買ったのではなく、ここに来るまでの道中でお布施でもされたのだろう。
 ミスマッチとはいえ、華やかな雰囲気の恋人に似合わないわけではない。チームカラーの紫がふんだんに使われているから、馴染みがいいのもある。
「ん? ああ。コンビニでくじやったら引いちまったけど、自分で着るのは恥ずかしい〜って。獄んとこのねーちゃんが」
「……受付のか?」
「そ、最近もう顔パスにしてくれてるねーちゃん。けっこういい賞らしいけど、下の方のやつがよかったんだと」
 以前は空却にも十四にも受付としての対応を崩さなかったのだが、チームを組んだあたりでノーアポでお通ししてはいけない時だけ教えて下さい、と宣った。
 嵐のようなクソガキ二匹に加え、DRB絡みのおかしな人間の来訪が増えたからだろう。苦労をかけているから運が味方したのかもしれない。頭によぎったシブヤの重病患者から目をそらし、そうか、と頷く。
「ねーちゃんは似合うって言ったんだがなぁ」
「似合わなくはねえ、が……!?」
 ちょっとばかり目をそらした隙に、空却が何か被り物をしていた。
 兎の耳に似た飾りのついたフードは紫で、ケープについていたらしい。プリントされたキャラクターを模したそれがまた似合わない——とは決して言えなかった。
「なんだよ、見惚れるほどってか?」
「っちがう!」
「素直になれよ。拙僧はイイ男だもんなぁ」
「調子に乗るなよクソガキ……!」
「なぁに焦ってんだよアマグニセンセ!」
 ぎ、と睨みつければ満足したのか子供が退いていく。
 ひらひらとしたケープの裾をなびかせて、じゃあまたな、と背を向けるのを捕まえれば、ふふん、と鼻を鳴らされた。
 罠にかかったと気づいたのはその時で、観念して抱き締めれば腕の中でかわいいかわいいうさぎがふんぞり返っていた。

2025/10/10


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