お口と恋人

 けして小さいわけではない。むしろよく開く。
 そこからのぞく舌は健康的に赤く、歯も綺麗な真珠色で、犬歯がわずかに鋭い。
 くちびるのあわい桃色は、くちづけるとぷるりとやわらかく、重ねるほどに赤く腫れぼったくなる。
 小憎らしい揶揄いも、至極真面目な説法も、甘く高らかな嬌声も、全てこの口から生まれるのだ。
 だというのに、

「あ、はぁ……ん、ちゅぅ、ん……っ」

 その口が、一生懸命に、ちんぽをしゃぶっているなんてー



 自分も何かしてやりたい、と歳の離れた恋人は言う。
 いつも気づいたら気持ちよくされて、そのままぶっ飛んでしまうのだと悔しげにされたが、負担になるだろう尻の準備を全てして、抱いてほしいとねだられて、不満なんてあるわけがない。
 以前、準備からしてやりたいと言ったら、抱かれる前に精根が尽きると青い顔で断られた。
 心身共に強靭な恋人の無垢な身体を、快楽に貪欲に、従順になるよう拓いた結果、全身を性感帯にしてしまったからいたしかたない。
 こちらとしてはそれで十分すぎるのだ。好きだ好きだと全身で訴えられて、いやらしいいじわるやいたずらも、求められるのに応えたいと受け入れて。
 だというのに、



 ベッドにどん、と押し倒されて、大股開きで転がったところに素早く入り込み、股間を陣取られた。
 太腿を這い回る手がじわじわと真ん中へと迫り、ゆるく膨らんだそこをひと撫ですると、興奮と期待に染まった顔がくちづけするように寄せられる。
 かちゃかちゃとベルトを外す指先はせわしなく、衣擦れに紛れて唾を飲みくだす音が聞こえた。かわいい恋人に熱っぽい視線と吐息がそそがれて反応しないわけもなく、チャックが下される頃には痛いほどだった。
 帰宅してすぐのところを強襲されて、シャワーも浴びていない。それどころかお互い着の身着のままーせいぜいジャケットとスカジャンを脱いだていどーだ。一日中着たスーツの下の、さらに下。そんな場所に触れさせたくない。思いとは裏腹に解放されたちんぽはぶるん、と勢いよく反り返った。

「獄のちんこ、元気じゃねえか」
「元気じゃねえとは言ってねえだろ。シャワーくらい浴びさせろ」
「ダ・メ・だ」

 下ろされた先からあふれる、むわ、とした熱気はけしていいものではない。何度か用足しにも行って、歩き回って座りっぱなしで汗ばんで、おまけにこんな簡単に勃起してーそんなものをうっとりとした目で見ないでほしい。
 白い指がそろそろとちんぽに伸ばされる。おっかなびっくりを絵に描いたような動きと、欲にまみれた視線とのギャップに、握られたそこがまたひと回り育ってしまう。

「……ひとやのすけべ」
「そのすけべのちんぽ握ってるお前はなんなんだよ……っ」
「決まってんだろ……コイビトサマだよ」

 両手で根本を優しくきゅ、と締められ、さきっぽにちゅう、とくちづけられる。それだけでこみ上げてくるのを飲み込んで、されるがままにしてやることにした。
 いきなり奥まで咥え込む、なんてことはないと思ったが、最初にくちづけたところからなぞるように、ちゅ、ちゅう、と吸われるだけとは思わなかった。
 形を確かめるように触れるくちびるがかわいらしく、欲に濡れた目に見つめられるのにぞくぞくする。刺激そのものはほぼないが、焦らされているのかうぶなのかわからなくて、根本の締めつけを無視して膨張していく。

「……でっか……♡」

 リップ音にまぎれてぼそりとつぶやかれた感嘆を聞き逃さなかった。
 そうだよ、お前はいつもこんなもんを尻に入れられてんだよ。
 小さくて狭くて慎ましかった肛門を、ちんぽにやらしくしゃぶりつく性器にして、その上、大事な大事な仕事道具で、武器の、口まで。

「ん……ぅ♡」

 陶然としたまま、ぱかりと開いた口がさきっぽを咥え込んだ。亀頭をちゅぱちゅぱと舐めしゃぶり、尿道口を舌先でちろちろとくすぐる。根本をおさえていたはずの手は、片方は肉茎をしごき、もう片方は睾丸をこねていた。
 ちゅぅ……と無垢な色のくちびるをすぼめて、赤黒い雁首にしゃぶりつき、こちらを見る金色は絶頂しているときと同じ熱を帯びている。
 多くを語るくちびるが、乱暴に差し伸べられる手が、精を搾りとろうと淫靡にうごめく。
 全てが見えているような、怖いくらい綺麗な金色が、どろどろの色と欲にまみれて澱んでいる。
 はぁ……と吐き出された熱い息は、よだれと我慢汁も同時にこぼして、亀頭を濡らし、したたり落ちて肉茎をつたい、睾丸まで落ちた。
 かわいらしいくちづけから直接的な愛撫に変わり、視覚効果だけではない快感がすさまじい。
 ふぅふぅと荒く呼吸するしか出来ず、油断したらすぐにでも気をやってしまいそうで、腹に力を入れ続けている。
 促されるままに口を犯してやれば、きっと触れてもいない胎を犯されたようにイクだろう。
 亀頭だけでごく浅いところをくじってやったときと同じように動いている口内は、間違いなくはしたなく変わった後腔を意識していた。
 淫らに拓かれて、犯されて、性器にされた場所と同じようにされたい、とくちびるを差し出しているのだ。

「この、クソガキ……ッ!」

 今すぐ頭を掴んで喉奥までちんぽを突っ込んでやりたかった。
 どうせさきっぽだけでは満足できなくて、根本までずっぽりとハメられて、自分の指でも届かないような奥の奥に子種をぶち撒けられたいのだ。口だってそうなるに決まっている。
 恋人だってそうされたいと、好きで、好きで、どうしようもなく愛おしくて、望まれたら全てをあげたくて、何もかも許してやりたいのだと、強くきらめく瞳の奥から訴えてくるのだ。
 十六も歳下の子供に甘やかされるーなんとも締まらない話だ。

「う、ぇ……って」
「ここまで、だ」
「……ぁんでだよ、もうすぐでるだろ」
「口じゃない方がいいんだよ」

 あんぐりと大口を開いて飲み込もうとするのを首根っこを掴んで止めた。
 そのままうつぶせになっていた身体を引っ張り上げて、向かい合うように座らせる。
 口周りをべちょべちょにしてぶぅたれる顔はそれでも煽情的で、腹にぐ、と力を入れ直す。
 そうして胎を犯したいのだと、パンツごしに尻たぶを両側からやわく引くと、びく、と背をふるわせた。

「い、やだっ……」
「なんで」
「だって、また、

 せっそうばっかりきもちいい、なんて。
 そんなバカな話があるか。



 自分ばかりいい思いをしている、なんてことはないのだとずっと伝えてきたつもりだったのに、プライドなのか負けず嫌いなのか、てんで納得していなかったらしい。
 少しはわかっていると思っていたのに、あげたがりで甘やかしたがりなのも相まって大事故だ。
 やらかしたと察してか視線を泳がせながら、口ならまだ感じすぎないから口でイかせたかったとこぼされた。
 そのわりにひん剥いたパンツの下ははしたなく濡れそぼっていて、絶対に何度かイッている。目の前の恋人の『感じすぎない』はどうなっているのか。
 なんのかんの言いながら準備されていた尻は、簡単に指を飲み込んで、ちゅう、と吸いついた。ちんぽだってすぐに挿入れられるくらいとろとろになったそこを、指でこちゅこちゅとくすぐると、自由になったくちびるがいやらしくなき喘ぐ。
 背を走る快感に耐えかねてくずおれた身体を胸で受け止めると、まだ濡れたままの手で縋りつかれた。
 こうして抱きついて、自分にしか見せない『恋人』の顔で、ひとや、と呼ばれる。それだけで、こんなに満たされるのに。
 一人で勝手に焦る子供に、教えてやらなければいけない。



「ぁ、ひ……あぅ……♡」
「まぁた、イッた、なぁ?」
「う、ぁ♡あぁ〜……♡」

 ぷし、ぷしゃぁ、とカウパーなのか精なのか、潮なのかもわからない淫液を吹き出して、恋人が胎でイく。
今日だけでもう何度目かのことだろうに、恥ずかしそうに頬を染め、身をよじるのがたまらない。
 いつもならナカでイキすぎないよう、浅く深く行き来するが、恐らく今も『自分ばかりイッている』と思っている子供に『ちゃんとイイ思いをしている』と教えるため、一際弱い奥だけを犯し続けている。



 挿入前、肉縁のシワが伸びきるほど両側から尻たぶを開くと、くぷ、くぽ、と指を食んでいた余韻が響いた。ぷちゅ、という小さな破裂音と共に中に仕込まれたローションも流れだし、ひ、と鼻を鳴らして胸の上の身体がゆれる。
 すぐ寂しげにひくつく肉縁にちんぽを挿入れると、やわらかくぬめるナカに導かれるまま、簡単に秘奥までたどり着いてしまった。
 道中、きゅん、きゅん、と心臓と同じリズムでゆるゆると締めつけられたのが、とん、と奥の奥にある弱いところを突くと、きゅぅ……と搾るように変わる。
 胸に縋る両腕に頭を挟んで、顔を隠し、声をひそめ、うぅ……♡と唸るように喘ぐのが気に入らなくて、どちゅん、と強く突き立てた。
 とたん、背をびん、と反りながら、やあらぁぁああ……っ♡と悲鳴に近い嬌声を上げる。すぎた快楽に綺麗な金色は滲みきって、普段の面影はほとんどない。
 くちびるだけで拒絶して、ナカはぎゅうぎゅうと締めつける。尻だってもっと奥にというようにぐりぐりとふりながらイッた。
 腹のあたりがじわじわと湿る感触に視線をやると、勃起したまま精を吐き損ねたちんこが、ぶるぶるぴくぴくとしながらぴゅるぴゅると多すぎる先走りをこぼしている。
 この間も甘くイキ続けながらちんぽをきゅうきゅうと締めつけるのに耐えて、どちゅどちゅと奥をいじめてやると、やだ、やあ、と幼く泣くくせに胎のナカははいやらしくからみついて離さない。
 快感を拒まないように仕込んだ身体は、もうそれだけでいっぱいいっぱいになってしまう。常の頭のキレを失った子供につけ入る、悪い大人の、卑怯な手だ。
 たくさんの、守るようについたピアスを無視して、小さな穴の奥、鼓膜に直接響くようにささやく。
 恋人が、空却が、気持ちいいと思うように自分も気持ちいいのだと。本来ならば性器ではない場所を、自分だけに許してくれたのが嬉しくてしょうがないと。清らかでいなければいけない身体をはしたなく、淫らに変えたのを自分のものになれたようだと喜んでくれたのが愛おしくてたまらないと。自分ばかり気持ちよくて、嬉しくて、幸せで、好きなんじゃないかと思ってしまうのだと。
 言葉を重ねるごとに全身を染める赤色も深まり、こぼれる喘ぎも、や、やあ、もぅやぁ……っ♡と甘く甘くとけていく。
 いじめ続けている秘奥は、どちゅ、という一突きに、ちゅぅぅ……と強く吸いついて離さない。子種をねだって最奥が亀頭に媚びるように、肉茎を包む肉壁も押し上げ、搾るようにきゅうきゅうきゅんきゅんと締めつける。
 焦点も曖昧なびしょ濡れの瞳を見つめながら、好きだと、何度も何度も繰り返すと、拒絶しかしなかったくちびるが、ようやくすき、と描いて、微笑んだ。
 限界まで膨らんでいた、と思っていたちんぽが、また熱を帯びて硬く、大きくなる。とろりとしたままの金色がぱちくりとまたたいて、薄く笑んだままのくちびるが、あ♡あ♡と意味のなさない音でないた。
 覗く舌の、口内のあまりのなまめかしさに、音を吐き出す瞬間のくちびるにくちづける。自分のモノを舐めていた、だとかどうでもよくなるほど誘われて、縮こまる舌を捕まえてじゅ、と吸えば、秘奥もきゅうん、と一際強く締めつけた。
 上も下も、からみつき、すいつかれるまま、ちんぽをどちゅん、と突き上げて、そのままびゅうぅ、びゅるる、びゅ……と子種を叩きつける。余さず搾り尽くそうと尿道口をくすぐる肉壁を、残滓を擦るようにぐぅっ、くじると、イキ癖のついた胎はまたきゅん、と反応する。
 深くくちづけたままだったくちびるを解放すると、は、と舌とよだれをたらして荒い息を吐いた。少しだけ腫れたくちびると、ひくひくとわななく赤い舌が、見えないナカの絶頂を伝える。
 一度激しく絶頂をしたおかげか、少しだけ陶然とした雰囲気が抜けたが、ナカはずっとちんぽをきゅう、きゅん、と食い締めていた。
 さて、わからずやの恋人に、どれだけ伝わったかを確認しなくてはならない。



「も、ぃぃ、から」
「なにが?」
「わかった、からぁっ!」
「だから、なにが?」
「ひとやも、きもちぃい、って……」

 ナカにぶち撒けた子種を肉壁に擦り込みながら、感じやすく、すぐイッてしまうのがかわいくて、できるだけ長く自分に甘えて縋る姿が見たくてイクのを我慢しているだとか、よく回る舌も頭もふにゃふにゃになって、小さな子供みたいになってしまうギャップがたまらないだとか、抱かれるようになってから、射精するよりナカでイく方が気持ちよさそうなのにものすごく興奮するだとか、ともかく普段言ったら怒られそうなことを言い続けた。
 二度とバカなことを言わせまい、身体も心も芯からわからせてやろうと、もはや途中から意地になっていたのもある。
 だからきゅうきゅうとちんぽを締めつけながら、もうイキたくない、と泣く恋人に、まずい、と思うまで止まれなかった。

「……今度、自分ばっかり、なんて言ったら……こんなんじゃすまさねえからな……」
「ひ、あ♡も、いわない、から……っ♡」

 だして、と言うのに従って、ちんぽを胎から抜いてやる。それすらひ……♡と感じ入った声を上げ、咥え込んだ肉茎の形に開いて戻らない肉縁から、ぬと、と精子とローションが混じった淫汁がしたたり落ちた。
 完全に抜ける寸前、張り出した亀頭がやわな縁をごり、とえぐったせいか、息をつめて絶頂した恋人がきゅうぅ……と強く締めつける。
 思いもよらない刺激に、こちらもびゅ、びゅ、と子種を吐き出した。

「ぁん♡あっ♡いく♡もぅや♡やぁ♡やぁ……っ♡」
「っ……!」

 甘く緩慢にイキ続けた恋人は、それがトドメとなってか、ついに意識を手放した。
 くったりとした身体は、胎と肉縁以外ー全身もひくひくとふるわせながら、しょろ、と力なく股間を濡らす。
 犯され尽くした穴の奥からこぷ、ぷちゅ、と溢れ出す汁と、出したばかりの白濁が混ざり、とろとろとしたシミをシーツに作った。
 半分、……七割自分のせいだとしても、惨憺たる有様に頭を抱えて、力尽きた恋人を抱きしめる。
 涙の跡の濃い顔は、痛々しく、それでもなお綺麗だった。
 こんな無体をしてしまうほど、イカれてしまっているのだと、どうかはやく気づいてくれ。
 祈るように腫れたまぶたにくちづけて、重たい腰を上げた。

2021/04/12


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