狂宴のちの子兎たち
紆余曲折を経て、バニーという言葉を見るやいなや、うぇ、と顔を歪める恋人を責められない。
責められない、のだが。
ある――二人して巻き込まれた珍事の――時期になると、暑中見舞いだのの皮をかぶった卑猥な貢物が我が家に届くのだ。
「絶ッ対! 着ねぇからな!」
懲りずに送りやがって! 見たくもねぇ! 捨てろ! と鬼の形相で吐き捨てられた小包の中身は、それでもマシな方なのを恋人は知らない。
主に身につける意味の感じられない布切れや紐切れと一目で毛並みの良さの伝わる兎のつけ耳と尻尾。一部の尻尾には丸い球が連なったものだとか、人参型をしたもの、男性器を模したものがぶらんとぶら下がっている。どう使用するかなど、言わずもがなである。
他にもローション詰め合わせ、各種性玩具、果ては撮影機材から何に使うのかわからないものまで。あれだけ辛酸を舐めさせられて有り難く使うと思っているのだろうか?
それらが過剰かつ華美な包装をほどこされ、うやうやしく献上される。大量に。匿名で。
おかんむりでキッチンへと籠城した恋人を連れ戻すためにはこれらを片付けなくてはならない。
こんなものはこちらとて触りたくもないし、ゴミとしても出したくない。仕方なくオーナーに電話して引き取ってもらっているのだが、悔しいことに玩具の類はともかく衣装のセンスは悪くないのだ……。
元の素材が華やかな恋人に過ぎた飾りはうるさくなる。安っぽいコスプレ衣装とは違うシンプルな、けれども引き締まった中にやわくまろやかな色気を醸し出すボディラインを際立たせるデザインのそれらは、おそらく全てオーダーメイドだろう。
ボンデージめいたものが多いのにも、わかっていると頷いてしまう。自由気儘に見える恋人に潜むストイックさはマゾヒスティックな素養にも繋がって、ひどく相性がいいのだ。
白い肌を拘束し、いやらしく彩る布と紐は、想像するだけで目眩がするほどよく似合う。
あいらしく色香をふり撒く子兎が本来隠さなければならない場所を曝け出し、尻では球か何かを模した玩具を食んで尻尾をふる。
身も世もなく名前を呼ばれ、縋りつき、ねだられるのはさぞや絶景だろう。
「ああ……クソ……ッ」
明瞭明確に想像可能な光景に、頭と胃――遺憾ながら股間もひどく辛い。
どうにか気を紛らわそうとすると、よけいに赤毛の兎耳が視界の端にちらついた。
2024/8/2
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