ただいまを待ってる
ヒプノシスマイクがこの世に出てから実はそんなに年月は経っていない。ほんの数年前には想像もしていなかった世界になるなんて、ある程度生きていればザラにあることだ。
その渦中に自分が飛び込むことになる、とはさすがに思ってはいなかったが悪くはない。たまにトラブルもあるが。
「本当にあるんすねえ、違法マイク」
「依頼で受けたことあるが、実際に攻撃された直後の被害者を見るのは俺もはじめてだよ」
「で、治す方法はあんのか?」
「こんだけ意識がはっきりしてんだから自然回復するだろ。違法つっても正規マイクの範疇を越えるモンは少ないしな。ただマイクの効果とは断言出来ない。普通に脳味噌ゆさぶられての記憶喪失、の可能性もある。明日朝一で病院行くぞ」
「どっちにしろ短めのタイムスリップ体験って感じか」
「え、マイクのせいじゃないかもしれないんすか……!?」
「あー……また……。死ぬわけじゃねえし、んな泣くんじゃねえよ」
「でも……自分すごいびっくりして……心配、だし……ていうか、なんで空却さんはそんな落ち着いてるんすか!」
「自分以上にパニクってるやつを見たら冷静にならざるを得なかったんだよ。アイモノジューシ、拙僧より一個下って言ってたけど、"今"の拙僧よりは年上なんだからちったあ落ち着けよ」
「ふぇ……獄さぁん!空却さん、中学生からこんなだったんすか?!」
違法マイクー劣化コピーの粗悪品が大半ではあるのだが、ただのマイクでしかないものもあれば、瞬間的に異常な攻撃力を出すものもある。クズの中からマシなものを引き当てる運も実力のうち、というやつだ。
今日、夜遅く。人気のない路上でからんできた三人組は運も実力も残念で、二人は早々に吹き飛ばされ、残った一人なんてマイクが壊れていた。
追い詰められてガタガタ震えながら故障品をいじっているのがあんまり哀れで、こちらがマイクをおさめた瞬間、ブォン、と歪な音を立てて相手の粗悪品が起動した。
周囲の音を無差別に拾ってノイズを上げる。鼓膜を汚すような気持ち悪い音は、握っていた当人には直撃だったらしい。せっかく起動したマイクに向かってヒィヒィゼェゼェと呻くしか出来ないほど苦しんでいる。
どこまで運がないのかマイクがその呻きを拾い上げ、ノイズとハウリングを混ぜて爆音で響かせ、それを聞いてまた苦しみ呻くという最悪のループを生んでいた。
音はうるさく気持ち悪いがそれだけで、普通のバトルでのダメージにはとうてい届かない。ただ、持ち主の狂乱具合からすると何があるかわからないから近づくのは危なかった。
マイクを再起動して止めようとすると、ついに異音の直撃に耐えかねたのか断末魔のような絶叫を上げた。
意味をなさない悲鳴の中の痛みと苦しみだけを拾い上げ増幅してぶつけたようなーそんなところだけ正規マイクばりの仕事をするー衝撃波が放たれる。避けるか防ぐかとなった瞬間ーそこに飛び込む影があった。
ばちん、と電気がはじけるような音がして、小柄な体が軽くのけ反るも、すぐに体勢を立て直す。少しだけフラリとしながら、それでもまっすぐと拳を放ち、正気をなくして叫び続ける相手をマイクごと一撃で沈めてみせた。
鮮やかな一閃は見惚れるほど美しく、ゆっくりと振り返る神妙な顔にはっとして駆け寄る。
怪我はないか、何かおかしなところはないか。隣にいた十四と確認しようとすると、むぅ、と眉をひそめてこう言った。
「ワリィ、ここどこ?」
話をまとめると『頭が痛いと思ったら目の前でおかしな男がマイクを持って叫んでいて、うるさくて殴り飛ばした』らしい。
近くにいる十四をちらりと見たものの話しかけず、獄にだけ話をする空却に嫌な予感がして『"今"が何年何月何日か』を質問する。
聡い子供も察していたのだろう。すらすらと十五歳の、獄と付き合いはじめた時期を答えて『で、"今"は何年何月何日なんだ?』と愉快そうに笑った。
殴る直前、相手はなんでこんなことに、やるんじゃなかった、帰りたい、と後悔をもらしていたらしい。粗悪品が苦痛以外に愚行への悔いを拾っていたのなら、歪な形で効果は発揮されたと言える。
もしくはばちん、と音がしたあたりの衝撃波で脳がゆさぶられ、運悪く記憶の混濁、逆行に至ったか。
可能性が高そうなのはその二つだが、両方が合わさった場合も、どちらでもないかもしれない。ともかく様子を見て病院、しかない。
泣き喚く十四に、空却が泣くなと一喝してはたき倒したところで、頭を抱えながら状況説明をはじめた。
不在の数年間以外の粗方を説明すると、へぇ、と気のない返事をしながらも目は凶暴な光を宿す。
少年漫画が好きなクソガキが『ラップで一番強いやつを決める』なんてのに食いつかないわけはないのだが、今よりもっと子供だったときの気性の激しさは、より野性的な鋭さがある。
姿形は十九歳で、中身が十五歳。パッと見た感じはほとんど変わらないが、それでも表情や仕草がまるで違う。
出会った頃の幼い顔を今の姿でされるのはひどく倒錯的だ。
「しっかし四年後だろ?全然変わってねえじゃねえか」
自分もお前も、と笑う顔は夜の闇の中でも太陽のようにまぶしい。なんて、惜しいー
ほどなくして来た警察に、伸びていた三人組を引き渡した。
夜遅くで未成年二人、一人は記憶に異常があって病院で診てもらう必要もある。このあたりは監視カメラもあるし、からまれた時点からの録音データもある、明日になったらいくらでも話をするから今日は帰らせろ。
というのを名刺を渡しながら薄めのオブラートに包んで話し、ついでに『被害者』の『DRBの参加者』かつ『波羅夷のお寺の子供』を見せると、露骨に嫌なもんに当たったという顔をされた。めでたく監視カメラと録音データを確認して、最低限の現場検証だけして帰宅と相成る。
救急車は本人が馬鹿みたいに元気なのと、かかりつけの医者がいるからとで断ったが、十四までなんでですか?なんて言い出して肝が冷えた。
なぜなら今日の目的は三人で食事をするのが一つ、もう一つは空却とセックスをすることだったのだ。
そういうとき、だいたい空却は事前にあるていどまで自分の身体を拓いてくる。待つのが嫌いな子供が我慢をしなくてすむように、それはもう入念に。
特に今日に限っては医者になんて診せられない。ましてや全身精密検査なんて。
タクシーで十四を送り、空却を連れて自宅へと向かう。
乗る前に灼空さんに電話して事情を説明するとあのバカ息子!と呆れた声で謝罪された。朝一で病院に行くから予定どおりお預かりします、と伝えて通話を終了すると、隣で待っていた子供が少し頬を赤らめて見ている。
「どうした空却、やっぱ寺に戻るか?」
「獄んちがいい、けど」
「けど、なんだよ」
「十九の拙僧は、獄んちに泊まったりすんだな……」
もじ、としながら目をそらす。頬も耳も素直に赤く染まっていて、本当に『恋』も『好き』も『キス』も全部奪った子供に戻ってしまったのだと痛感する。
すっかりふてぶてしくなった空却しか知らない十四が、はじめて中学生って感じました!かわいい〜!なんて言うものだから機嫌を損ねたが、そのとおりなのだ。
勢いキスまではしたものの、中学生の空却を抱くなんて出来るわけもなく、十八になるまでは一応、清く正しいお付き合いをしていた。その中でもとびきりピュアな頃まで巻き戻す、日頃の行いがいいのか悪いのか、とんでもない豪運を素直に喜べるほどのんきではない。
さっきまでの違法マイク野良バトルなんぞよりよほど厳しい戦いが待っているのだから。
待つのが嫌いな子供が準備をしてくるときはだいたい『帰ったらすぐできるように』なっていて、それでもシャワーを浴びて最後の仕上げをしたり、前戯で拓いてほしいとねだられたり、まあまあパターンがある。
そして今日は『帰宅してすぐ玄関でも』までがっつり準備したのだと、事前に連絡があったのだ。ひどく興奮して、我慢しなければと思うほどたかぶってしまうから、と。
実際会うとおくびにも出さずにいるのはさすがで、本当にあんな連絡をよこす状態なのか、と思ったくらいだった。
だが"今"はそうではない。十九歳の、快楽に手綱をつけていられた空却ではない。まっさらなキャンパスに一筆目を置いただけの十五歳なのだ。
違法マイクを食らってからどこかぎこちない。熱っぽい目をしているのを、はじめは頭をゆさぶられた副作用だと考えていた。だが十九の自分が『抱かれている』と知ったときの反応はそうではなかった。自分の身体に起きている異常の原因が目の前の男だと気づいて、どうしようもなく火がついてしまっていたのだ。
頭のてっぺんから爪先まで、好きにしていいと明け渡されて拓き尽くした身体に、くちびるを重ねることすらエロいとのたまう心が宿っている。
身体は十九で、公認の付き合いで、なんなら結婚だってする予定で、一時的に退行しているだけーだとしても『十五の子供』を抱いていい理由にはならない。
たとえ子供自身がめちゃくちゃにされたいと願ったとしても。
帰宅してすぐ、玄関にへたりこんだ。
我慢の限界だったのだろう。タクシーの中でも「お兄さん、熱でもあるの?」なんて言われて「ちょっと、な」とぼうっと返事をしていた。
「大丈夫……じゃねえな」
「ぅ、ん……っ!」
靴を脱がせてひとまず廊下に引きずりあげると、身を守るように丸くなる。口すら開けないと喉奥からくぐもった声で返事をされた。ぎゅう、とつぶられた目尻に乗った朱が、こらえきれずにあふれた涙でにじむ。
「ひ、とやぁ……」
たすけて、と言外に訴える声は庇護欲を誘う幼さがあるのに、その奥底に甘く、淫らな音があった。いつもは遠慮なく開かれる足がぴたりと閉じて、何かを押さえつけるように力をこめている。
おそらくー否、間違いなく十五歳では知る由もなかった強烈な快感に身体を苛まれて、それ以上に困惑と動揺が強いのだろう。達したときと同じ吐息をもらし、腰をふるわせ、目をとろかすのに、なんでかわからない、と怯えていた。
ちんこくらいしかいじったことのないだろう子供が、予期せぬ部位から途方もない性感を得るのはどれほどの衝撃か。身体が準備万端でも、こんな幼い心を抱くなんてとてもできない。
「ちょっとだけ待ってろ」
いいこにしてな、と縮こまった頭を撫でると、弱々しく首がふられる。軽く触れただけだったのに、ぴく、と反応する敏感な身体にまるでついていけないと、ゃ、あ、と当惑まじりの喘ぎをもらした。
その場でどうにかしてしまいそうなのを無理やり抑え、足早にベッドルームまでの道を作る。歩くどころか立ち上がることも出来ないだろう恋人を、未知の快感になく子供を、玄関先で、なんてしたくなかったからだ。
急いで玄関まで戻ると、鼻をすするような音としゃくりあげる泣き声がした。十九でも過ぎた快感でふわふわになった空却は、常の説教も忘れて涙をこぼす。ましてや十五だ。おぼこい中学生の心をおさめる器に、十九の身体は淫らすぎる。
「ひ、とゃぁ……」
ごめん、と詫びるのに何事かと思えば、下腹部がぐっしょりと濡れていた。耐えがたい快楽の渦中、自分の身体がどうなっているのかもわからないまま、たかめられて降りられない子供をどうして叱れよう。
「気にするな、それより」
部屋まで運ぶぞ、と力の抜けた身体を抱えて持ち上げる。一番楽なのは俵持ちだったが、ちょっとの刺激でびちびちとはねるのを御すことを考えて姫抱きにした。丸くなっているのをそのまま運べばいいから、あとは勢いと根性で部屋まで駆け抜ける。
「ふ、ぅ……あ……」
「ゃぁ、だぁ!」
「ひとゃ、なんか、へん……っ」
腕の中で淫らに鳴く子供の方は極力見ないようにして、ずんずんと進んだ先、いつも二人で過ごすベッドにたどり着いた。
なるたけ丁寧にベッドに寝かせた子供は、より一層きゅう、と小さく丸まって全身をびくびくとふるわせる。もうずっと達し続けているのだろう。まだ射精しか知らない子供が終わりのない胎での絶頂にさらされて、平気でいられるわけもない。
かわいそうに、と思う反面、たとえ十五でも耐えてみせそうな子供を知っている。自分と二人きりだから乱れる姿をさらけ出しているのだと思うと、大人げない喜びがわいてきてしまう。
「空却」
「しり、へん、ずっと」
はくはくと息を吐きながら、切れ切れの単語で訴えられるのは想像どおりのことだった。
刺激しないように下着ごとサルエルパンツを下ろす。湿った布を脱がすだけでも熟れた身体は新しい淫液をもらし、望まぬ粗相を恥じらって顔を隠し、ゃだ、と泣いた。
ほとんど乱れのない上半身と、びしょぬれの裸の下半身は雑なコラージュのようだが現実で、あれだけ極めていたのに射精の跡はない。先走りと潮だけだ。ぴったりと隙間なく閉じられた足は、再びきゅう、と小さくなる。
「ひとや……はやく……」
消え入りそうな声で呼びかけられ、膝裏を抱えて向けられた尻を見れば、アナルプラグー濃いピンク色のシリコン素材のものーが白い小さな尻にずっぽりと挿入っていた。
常ならば自ら抜いていやらしくひくつくのを見せつけながら「ナカに出せよ」と誘ったり、抜いてくれとねだって「獄のちんこ、ちょうだい……」などと甘えたりするが、今日はすっかり怯えきっている。
きっと尻を見せるのも嫌だったはずだが、もはや自分ではどうにもならないと思ったのだろう。かたかたとふるえる身体を抱きしめたいのに、今したら感じやすい身体には毒になる。
「抜くぞ」
普段なら婀娜っぽくそそるピンクハートの蓋が、今は地獄の窯の蓋に見えた。軽く指をかけて声をかけると、ひゅ、と息をのんで、首を小さく縦にふった。
できるだけリラックスして力を抜け、と言ってもできないのはわかっている。変に食いしめて抜けないなんてことは心配していない。むしろ、もっと恐れているのはー
「ひっ?!ふ、ぁあぁぁぁっ」
ぐ、とひと息にプラグを引き抜くと同時に、甘くとろけた嬌声が響き渡る。きゅう、とやわく抵抗されたものの、刺激を待ち焦がれた肉壁はぶちゅぶちゅと擦られるのを甘受して、そのままナカでイッた。手の中のプラグは熱を帯び、とろとろとした液体をまとっている。
「は、あ……」
びくびくと跳ねる丸まった肢体のぽっかりと開いた肉縁からは、ぷちゅ……ぷ……とねばった水の破裂音がした。ひくつく熟れた肉壺は、ねだるように透明な汁をしたたらせる。
羞恥と混乱で隠されていた顔がおずおずと上げられ、大丈夫かと声をかけると、焦点のさだまらない、とろんとした金色が、舌足らずにうん、と答えた。
ーまったく大丈夫ではない。十五よりもおさなげな風情をしているのに、ただよう淫靡さは色濃く香る。こうなるのを恐れていた。
「ひとやぁ……」
いやらしく拓きつくされた身体に戸惑っていた子供が順応したというより、衝撃でタガがはずれてしまったのだろう。快感でうだった頭は、自らを苛む嵐のような劣情から解放されたくて、もう一度、と乞うているだけだ。
「ダメだ」
「は、ぁ……な、んで……」
「キスだけでエロいとか言ってるガキにはまだ早い」
たとえ身体が十九だとしても、中身は違う。恋すら知らないと言った子供と積み重ねた年月が、愛が、この身体なのだ。手のひらにおさまらない、簡単にどこへでも行ける、一人でも生きていける、強い人間が一緒に生きたいと選んでくれたから、やわく、甘く、とろける。
「でも、」
「……焦んなくてもすぐこうなる」
不服そうに睨まれても全然怖くないのは今とさして変わらない。違いがあるとすれば、そうやって睨むことが相手に効果的に働くとわかっていないところか。余裕がないせいもあるだろうが、際限なく煽る子供は恐ろしい。
「目が覚めたら、嫌っていうほど抱いてやるから」
だから寝ちまえ、と熱に浮かされる頭を撫でれば、こどもあつかいするな、と首をふった。
正真正銘、子供でしかない顔と仕草で言うセリフではないが、あやすように何度も頭を撫でると、ん……と甘くないて、そのまま寝息を立てはじめる。
簡単に清めた身体は生命そのもののように熱い。抱きしめて、祈るように目を閉じた。
+EX
「ねれない」
むり、と熱い吐息をこぼして、抱きしめた身体をよじる。
だろうな、とは思っていた。
抱かれるつもりで完璧にセッティングされた身体が、何もなしに鎮まるわけがない。
「自分でできないか?」
イキっぱなしの体は、拙くとも自慰で十分満たされるーはずだ。
「ひとやはしてくんねえの……?」
腕の中、きゅ、とすがりつく恋人がどれほどかわいらしくとも手を出すわけにはいかない。だから自慰でなんとか場をおさめたいのだ。
「見ててやる」
「……へんたいっぽい……」
「は?」
「だって、せっそうとえっちはできないけど、せっそうがひとりでしてるとこはみるんだろ……?」
それに、と続いた言葉に頭をかかえて観念する。無垢なまなざしはまぎれもなく色を知らない十五歳で、その目できもちよすぎてうごけない、なんて言われたらひとたまりもない。
「……最後まではしないからな」
「さいごってなんだよ」
「……忘れろ」
ちんこでイカせてやろう、と思ったのだ。自らの身体の変化に戸惑っていたし、まがりなりにも十五の記憶と意識に本来なかったものをあまり増やしたくない。ふるりと勃ち上がったちんこに手を伸ばすと、そっちじゃない、と小さな声で制止された。わざわざ触れてくれるなと言わんばかりにまるまり、足をきゅ、と閉じられる。
「イキたいんだろ?」
「イキ、たいけど、しり、が……」
ひとやといると、それだけできゅうってうずいてとまらない。においが、たいおんが、ふれるだけでも。からだじゅうがどきどきとしてとまらない。
「だから、しりで……イキたい……」
この子供は何を言っているのかわかっているのか。
いいやわかっちゃいない。
快感で使いものにならない身体をいいようにする術なんて知り尽くしている。何度の夜を共にして、ここまで育てたか。うぶな心に濃縮された時間がいっぺんに襲いかかるのを受け入れられるわけがない。
「なぁ……」
ちいさくまるまって寝転がった身体が足を開くと、ちゅぱ、とはしたない水音が響く。煽るのだけは中学生の頃から一人前で、頭の中で天秤がぐらんぐらんと大きく揺れた。
このどうしようもなくかわいくて、どうしようもなくバカな子供のお願いを叶えるのは簡単だ、『絶対にひどいことをしない』と信じている子供の信頼を裏切るのも。
このまま開かれた足を押さえ込んで、まんまるく見開かれた目を無視して、はしたなくひくつく肉縁をぐちゅぐちゅとこね回して、未知の快感で泣き喘ぐのを『尻でイキたいのだろう?』と黙らせて、痛いほど勃ち上がってベソをかいているちんぽを、犯されたいと濡れそぼる肉壺に挿入れて、泣いてわめいて嫌がられても、根っこまでずっぽりと挿入れて、そして、そうして、心とは裏腹に淫らに拓ききった身体の奥の奥にたっぷりと種付をする。
簡単だ。ひどいことではなくて、気持ちいいことで、いやだと言っても最後にはすき、と甘くなく。心は十五でも身体は十九で。だから、ああ、いもしない、信じてすらいない、神にすがりそうになる。仏なら目の前にいる。危うくてごめにしてしまいそうな未来の仏が。
葛藤と懊悩を繰り返して沈黙していると、ぷちゅ、ちゅぷ、ちゅぽ、と控えめな、けれどもいやらしい水音が鳴りだした。
見るまでもない。痺れを切らした恋人だ。
「ぅ、あ、あっん……っ」
片手で両足を抱え、空いたもう片手で肉縁をちゅこちゅこといじる。第一関節くらいしか挿入っていない、ごくごく浅瀬をかき回して、顔を真っ赤にして喘ぐ。
快感よりも羞恥が色濃い顔は、やはり十九歳ではない。待ちきれなくて自ら動いたものの、静かな部屋に響く音にも、見られている視線にも、ほんのちょっと自分で触っただけで声が出るほど気持ちいいことにも戸惑い、恥じらう。
初めて抱いたときにも近いが、ここまでではなかった。状況がまるで違うせいだろう。当たり前に好きだと言って、抱きしめてキスをして、ただ愛撫だけをして寝落ちるだけの夜を重ねて、入念に身体を拓き、いよいよ、と段階を踏んだのだ。本当の本当に、『恋』も『好き』も『キス』も知ったばかりの子供と比べるべくもない。
いやらしいマセガキだと煽って犯してしまえたらどれだけよかったか。惚れた弱味で許してくれると甘えて、いとけない心を蹂躙できたらどれだけ楽だったかーあいにく獄はずぅっと自分を愛してくれる一途で健気な子供をなしくずしに抱くことで、身も心も手中におさめた気になれるほど幸せな頭をしていない。
「ひっ、あ、んっ!」
いつまでも充血してふくれた縁だけをいじるのに自分の指を添えて、ぶちゅ、と一気に挿入した。
ぼんやりしながら尻で指を咥えていた子供は、正面から近づいても無防備なまま。指を重ねてようやくハッとしたものの、次の瞬間には浅瀬のふくらみを撫でられてのけ反ってイッた。
ぷし、ぷしゃ、という聞き慣れたおもらしの音と共にベッドが湿り、ようやくの刺激に熱く濡れたナカがきゅんきゅんと脈打つ。
「ゃ、だぁ……っ!」
尿ではないとはいえ気持ちよすぎてもらす、というのがまだ受け入れ難いのか、ぎゅう、とまるくなった。うぶな反応に胸も、手も痛む。ナカはまだ浅瀬を撫でる指を食い締めたままなのだ。
「……尻でイクのはこんなもんじゃねえぞ」
ひんひんとなきながら、きゅうきゅうと指をしゃぶる子供にささやくと、呆然とした顔をされる。これでまだイッてない?と言いたげな目を見据えて話を続けた。
「もっともぉっと奥、俺の指でも届かない奥の奥……ちんぽのさきっぽでしか届かないとこ……」
ちんぽ、と言いながら硬く勃ち上がった股間を、閉じられた足と足の間にごり、と擦りつける。びく、とふるえると、ナカがきゅう、と締まり、息がは、は、と荒くなる。
「……そこをほじって、突いて、擦って、撫でてやると、ちんぽにちゅぱちゅぱしゃぶりついてくるんだよ」
わかるか?と問いかけながら、擦りつけたちんぽをぐりぐりごりごりと動かした。こうやって尻を犯しているのだと教えるようにずりずりと足に当てる。
「最後、どうなると思う?」
最後ーさきほど聞かれた『さいご』の答え。ぐ、と足のあわいを割り開くように、硬く、熱い、塊を押しつける。
気圧されたのか俯いてしまった恋人はしかし、隠しきれない耳が真っ赤で、ナカははしたなくきゅうきゅうきゅんきゅんと指を食み続けていた。
「……わかってんだろ?」
はぁ、と切なげなため息をもらし、唾を飲む。
心は知らない快感を刻み込まれた身体が、食んだ指にもっともっととおねだりをした。
せまく、あたたかい、やわな場所を、かたく、あつい、ちんぽでかわいがられて、あふれるくらい、いっぱい、びゅぅ……っと種付されて、そうして自分もしらないところまで獄に染め上げられてイキたい、と。
「十九のお前でもイク、イクってべしょべしょ泣きながらやらしいおもらししまくって気絶するほどイイ……って言ったら、わかるか?」
「……っ」
ましてやまっさらな十五歳なんざひとたまりもないのだと言外に告げると、びくん、とふるえた。淫らにわななくナカはそのままに、身体から熱が引いていく。
脅かしすぎたか。いや、それくらいでちょうどいい。十五の無垢な魂に種付絶頂の快感なんて必要ないし、なにより獄と空却が積み重ねたものを一足飛びに味わわせたくないのだ。
今、身を苛む気が狂いそうなほどの劣情は、愛して、愛された時間の分だけ燃え盛るのだと、記憶の片隅に刻んでおいてほしい。四年後の自分がどうやってそうなるのか、四年前の自分と知っていってほしい。もう、今の獄はキスだけで待ってやれないから。
「も、わか、たから……っ!」
怯えた顔でちんこいらない、と弱々しく首をふる恋人は本当にいとけない。不安にさせると思うのに、ぐぐ、と擦りつけたちんぽが力を増す。押しつけられる熱と硬さに、目の前の白い喉がひ、と鳴る。そのくせ身体はきもちいいと知っているからきゅぅぅう……とひくついて、くらい欲望が首をもたげた。
今日だけでもう何度目かの妄想だ。十九の身体に宿る十五の心を、初々しい恋もおぼつかない子供を、めちゃくちゃにする、悪い夢。
やだ、だめ、と拒絶する心と裏腹にもっともっとと貪欲にねだる身体に引きずられ、快感でいっぱいになった子供のナカにきんたまがからっぽになるまで注ぎこんでしまいたい。
今だって指をきゅうきゅうと食んでいて、十分にやわらかくて、あたたかくて、挿入れて、射精して……ああ、クソ!
「……指でやってやるから、そしたら寝ろ」
返事を待たず、浅瀬のやわなふくらみを指でくすぐって転がす。とんとん、と優しくノックすると、そのたびにぴゅっぴゅとおもらしをして、や、ゃぁ、と小さく喘ぐ。
「気持ちいいなら、"いや"はやめな」
素直になった方がずっとイイ、といやらしい弱点を突きながら唆すと、はく、とくちびるが開かれた。
「ひとゃぁ……っ」
とんとん、こりこり、と、ふくらみをそっと撫でてくすぐるたびに、ひとや、ひとや、と舌足らずに名前を呼ばれる。きもちいい、はきっと口にするのが躊躇われたのだろう。幼い恥じらいがかわいく、同時にこれから名前を呼ばれるたびに勃起しそうで恐ろしい。
「っ、ひ、ぅや……ひとやっ……!ひ、とや……ぁ……っ」
浅瀬をいじめ続け、ぎゅうぎゅうときつく締まっていたナカが悲鳴じみた喘ぎと共にぎゅぅん、とひときわ強く締まる。とたん、ぷるぷるとゆるく勃起したちんこが、ぷしゃぁ、と大きく淫水を吹き上げた。
ナカでの深い絶頂を迎え、それでも"いや"も"きもちいい"も言えないのか、縋るように名前を呼ばれる。よすがのない子供のように頼りなく、切なげな声音は未知の快楽への戸惑いと恐れが隠しきれない。
おもむろに弛緩したナカは、とくとくと落ち着いた脈と同じにきゅう、きゅん、と指を甘く食む。淫水を吹いたちんこもくたりとして、ふるりとゆれた。
とろんと落ちかけたまぶたに気づいて、ひとまず落ち着いたナカから指を抜く。すっかりいいように操られていた恋人の指もずる、と出てきたが、ゆるく曲がったまま戻らない。ぬ、ぬち、とはしたない音がして、金色を半分近く塞いだ幕がぴく、と動いた。
「ひとや……」
眠たそうにとろけた声は、甘い疲労感に満ちている。促すまでもなく今度こそ眠りに落ちるだろう恋人に、呼ばれるままにくちづける。まるい綺麗な額から、まぶた、鼻、頬、くちびる。触れるだけのキスもエロい、なんて言っていた子供は眠気に勝てないのか快楽の余韻か、降り注がれるくちびるにくすぐったそうにしながら、ふにゃふにゃと力を抜いて、ん、うん、と鼻を鳴らす。
たれ流しのままの色香と相反する幼い寝顔に安心した反面、どうか目覚めたら"今の"恋人であってほしいと願ってしまう。熱を持て余した恋人を沈めるのに集中しないと、とても自分を抑えられず、腫れたままの股間はもう限界だった。無防備なまま寝息をたてている恋人が恨めしく、それ以上に愛おしい。
この寝顔を眺めながら一発抜くくらいは許されないだろうかー目の前に転がる自慰すら躊躇わせる無垢さに罪悪感と背徳感が混じり合う。力尽きて半開きのくちびるのぬめりすらいやらしくて、ぐ、と天を仰いだ瞬間、暴発した。
どぷどぷとあふれた精で濡れる感触は最悪で、ますますもって目の前の恋人が恨めしい。頼むから、早く戻ってきてほしい。これからも共に積み重ねていく全てを取りこぼさずに。
最後にもう一度くちづけて、後片付けに重い腰をあげた。明日の朝、目覚めた恋人はなんと言うのか。四年と半日ぶりの眼差しが見慣れたものであればいいと思う。
2021/10/10
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