始業ベルは壊れたの

 昨日は大変お楽しみでしたので、体がまったく動かせない。
 理由は純粋な疲労もあるけれど、それ以上にほんのわずかな刺激でも昨夜の余韻が全身に響きわたり、抜け出せない快感に引きずりこまれてしまう。服が擦れただけで感じるから大きめのTシャツのみを着て、恋人のベッドを占拠し、出来るだけ楽でいられる体勢でいた。
「もう行くが……大丈夫か?」
「大丈夫じゃねえけど、介護はいらねえよ」
 ベッドから手が届くサイドテーブルに、水だの直通番号に即繋がるスマホだのを用意されているのにそばにいてほしい、なんて言う気はない。むしろそばにいられたらマズイ。
「しっかり稼いできな」
「なんかあったらすぐ連絡しろよ」
 触れられると辛い、と風呂場で後始末をされたときに伝えたからか、距離をとられている。ありがたい。ありがたいことなのに。
「……獄、こっち来いよ……」
「身体、辛いんだろ?」
「いいから」
 そうして渋々近寄ってきた恋人に、ベッドから這いずり出してキスをする。触れ合うだけの軽い、キスを。
「いってらっしゃい……」
 触れられるのは辛いけれど、離れすぎるのは寂しい。そんなワガママを飲み込むためのキスだった。だってほんのすこし前まで誰よりも近くにいたのに。
 照れくささもあってベッドに戻ろうとすると、ぎゅう、と抱きしめられ、そのままくちびるをむさぼられる。触れるだけなのに、ちゅ、ちゅう、と割り開くように強く吸われ、身体の奥がきゅうん、とわななく。
 ダメだ。また気持ちよくなる。イキすぎて勃起のできないちんこの代わりに、際限なくイキ続ける尻がだんだんと深くなるくちづけに悦んできゅぅ、きゅぅぅ……といやらしく蠕動する。
 くちびるの奥、あわくゆるんだ歯列を舌先でノックされ、躾けられた口はぱかりと開いて迎え入れてしまう。縮こまっても器用な舌に絡めとられて根本までくすぐっていじめられる。ちゅ、ちゅというリップ音から、ちゅぷちゅぷとはしたない水音に変わり、あふれたよだれがこぼれ落ちた。
「ふ、う、ぅぅ……♡」
 せっかく落ち着かせていた身体はすっかり快感を取り戻し、胎の中は甘くイッている。くちづけられていなければ、抱きしめられていなければ、あられもなく喘いでびくびくとのたうち身悶えていた。
 未だ離してくれない恋人の、ぎらぎらとした目の奥にやらかした、と書いてあるのが見える。それでも咥内をむさぼる舌も、腰から下へと伸びる手も、止まらないまま激しさを増していく。
 これ以上は、頭がダメになる。にじんでぼやけた視界もじわじわとまぶたが降りはじめ、四肢も力が入らない。快感だけが鮮明に、ちかちかと頭と身体をかけめぐる。
「ん……はぁ……♡」
 ようやくくちびるが解放されたものの、さんざんむさぼられてしびれきってしまい、しゃべるどころか呼吸もままならない。目も口もはれぼったくなって、とろとろと涙とよだれがしたたり落ちる。獄の大事な戦闘服がべしょべしょになってしまうのに、離してくれない。
「や、あぁ♡ふぁぁっ……♡♡♡」
 ぼんやりしている間にTシャツをまくり上げられて、熱を孕んだ尻があらわにされる。抵抗することもできないまま、昨夜のなごりでやわいままの肉縁がぐ、と広げられた。
 何度となく開かれ、くじられ、子種をそそがれた、くちづけだけでイッてしまう場所だ。挿入されるときのように触れられたら、ちんこを咥えこもうとぱくぱくとして、奥は覚えた形に埋めてほしくてきゅうきゅうと締めつけてしまう。
 頭と身体に刻まれた強烈な記憶が引きずりだされ、甘くイッていた胎がついに深い絶頂を迎えた。くったりしたままのちんこから、ぷしゃ、しょろ、と恥ずかしい音がする。抱きしめられたままだから服にかかってしまうのに、もっと思い出せと言うように、ぐにぐに、ぐぱぐぱと尻を弄ばれてしまう。
「も、やだぁ……っ!」
 キスがしたいだけだった。恋人が帰ってくるまでの数時間を乗り切るためのキスが。なのになんで奥深くまであばかれるようなキスをされたのか。
 きもちよすぎて、やめてほしくて、はなしてほしくて、でもどこにもいかないでほしくて、やだ、と言いながらきゅぅぅ、と物欲しげにねだる胎に逆らえない。しまいにはひ、ひ、と子供みたいに泣き出してしまった。
 バカになった頭の中にかすかに残った冷静な自分がキスなんかするから、わかってたクセに、と呆れている。最初に止められなかった時点で同罪だ。恋人を離したくないなんて幼稚なワガママの共犯者だ。
 しゃくりあげる背をいたわるようにさすられる。そんな優しさすらいやらしく感じて身体がびくびくとはねてしまう。ごめん、と舌足らずに謝ると首を横にふられた。それからベッドに乗せられ、目の前で口に出すのがはばかられる液体まみれのスーツを脱ぎだす。
 着替えるのだろう、と思って見ているとこてん、と転がされ、のしかかられた。カチャカチャと金属のぶつかり合う音がして、軽やかな衣擦れとともに勃起したちんこが突きつけられる。
「ごめんな」
 期待にふるえる身体が、びくんとはねた。

2021/05/03


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