「名字さんってさ。光来くんと付き合いたいとか思わないの?」

「えっ」

隣の席に座る昼神くんから突然そう話題を振られて、思わず普段出さないような変な声が出てしまった。突然何を言い出すんだ。いや、そもそも星海くんが好きなんて昼神くんに言ったっけ...?

「えーー......えっと......」

「あ、いいよ隠さなくて。光来くんと話してる名字さん見れば、大体みんな分かると思うけど」

「えっ、待ってそんなに私分かりやすい!?!」

教室にいる人はまばらで、幸いなことに昼神くん以外には聞かれていないらしかった。

「うん。逆に隠せてると思ってたのが驚き」

「そんな...ショックなんだけど」

ていうか昼神くん、意地が悪い。星海くんとの仲を取り持ちたいなんて協力的な感じではなく、単純に面白がっている様子である。

「いや、ごめんね、別に意地悪したかった訳じゃなくてさ。名字さんとなら光来くんのカッコ良さを分かち合えるかなって」

「えっ」

予想しなかったベクトルの話に、思わず私の思考は停止した。私と星海くんにはつい最近まで接点はなかったのだけれど、幸郎くんと話す星海くんと、私も一緒になって話すようになったのは記憶に新しい。席替えで今の座席になってからなので、2か月前くらいだろうか。

遡ってそれよりも前に開催された球技大会で、私は星海くんの存在をはっきりと認識した。長身の男の子よりも、学年中が認めるイケメンな男の子よりも、私には星海くんが一番キラキラして見えた。そう思ってしまってからは、まるでフィルターがかかったかのように星海くんのことが眩しく見えていたのだった。ひっそりと姿を追ってしまうような、ある意味一種の推し活のような。

だから、好きなのかと聞かれればそうなのかもしれないけれど、どちらかというと話すことすら恐れ多い感覚なのだ。

「ほら、光来くんっていちいちカッコいいじゃん?言うこともやることも」

「......分かる」

「何でもできちゃうし」

「うんうん」

「」



「俺さ、嬉しくて。光来くんの魅力に気づいてくれる女の子がいて」

「え?」

「ちょっと、いやだいぶ、めんどくさいところはあるけど。でも本当にいい奴なんだよね、光来くん」

「......うん。まだ話すようになってちょっとだけど、それは分かるよ」

「...良かった。だからさ、俺がいうのもおかしな話なんだけど、分かってくれる人がいて良かったーって思って」

「はは、変なの昼神くん」

「ね、俺本当何言ってんだろ。けど光来くんは優良物件なので、本当におすすめです」

「...部活仲間のお墨付きだね」

「うん。だから名字さん、ちょっと頑張ってみてよ。俺も光来くんをイジりたいからさ」

「......そっちが本音でしょ」

バレた?とにしし、と笑う昼神くんを見て、



「おい。随分楽しそうだな」

「!星海くん、」

「おー、名字お疲れ。幸郎、現文の教科書借りにくるんじゃなかったのかよ」

あーーごめん忘れてた、と昼神くんが星海くんから教科書を受け取る。

「持ってきてくれるなんて優しいねえ」

「いや、移動教室ついでだから構わねえけど」


「幸郎、あんま名字にちょっかい出すなよ」

「ハイハイ、分かってるよ。怖いなあ」

こうして、私と昼神くんは密かに「光来くんカッコいい同盟」を組むことになったのだ。




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