月夜の落し物


てくてくと薄蒼に染まった世界を二人の男女が歩いていた。
琳麗は先程の事を思い出し、クスクスと笑うが、傍らの静蘭は笑うに笑えなかった。


先程まで、二人は琥漣城にいたのだ。朝まで仕事だという、静蘭と燕青に琳麗は夜食を持って行った。
二人に夜食を渡し、帰ろうとした時、送るという静蘭に燕青はニタニタ笑いながら『送り狼になんなよ〜』と軽口を叩いた。
静蘭はそんな燕青に手刀を投げつけたのは言うまでもない。
そのやり取りに琳麗はただ笑って見ていたので、燕青も静蘭もそれを止め、城から出たのだった。


「燕青さんも面白い事言うのね、静蘭が送り狼だなんて」

「あんな奴が言った戯言など忘れて下さい」

「でも、やっぱり、二人は仲良いわね」


ふふっと笑う琳麗に、静蘭はため息をついた。どうやったら、仲良く見えているのだろうか。


「月、綺麗ね…」


ふと、先を歩く琳麗の向こう側の空には淡い光りを放つ真ん丸の月が浮かんでいた。紺色の空に浮かぶ乳白色の月は、美しくて。
その優しく淡い光りは、木々や草葉を照らし、そして濃い影を地上へと落としていく。
静蘭と琳麗の影も長く伸びていた。

なにもかもが幻想的で、ふわりと笑う琳麗を見ていると世界に二人だけしかいないような感覚になる。


「本当に綺麗ね。真ん丸で……手を伸ばしたら、届きそう…」


そう言って、手を天に向けて伸ばす琳麗の姿を見ていたら、静蘭は無意識に琳麗に駆け寄り、抱きしめた。


「…せ、静蘭……?」


いきなり、背後から抱きしめられ、琳麗は混乱した。


「……琳麗、様…」


呟く静蘭はますますギュッと抱きしめてくる。
フッと首筋に息が掛かり、トクンと胸が鳴るのを感じた。


「ど、どうしたの……静蘭…」

「……貴方を帰したくありません…」

「……っ」


くるっと身体を反転させられれば、目の前にある瞳には自分が映っていた。
真摯な眼差しに、またトクンと胸がなり、キュッと胸元を握りしめた。

その先を聞きたいのか聞いてはいけないのか、そんな風に心が揺れ動く。そっと頬に手を添えられ、びくっとするも眼を逸らせなかった。


「……せ「私は、貴方と蜜月になりたい」」


あの月のように、と甘く耳元で呟かれた。
二人の影は自然と重なりあったが、それを知るのは空に浮かぶ月だけだった。



END




あとがき

なんだ、これ?
考えていたものとまるっきり違う話になってしまいました…orz
甘々っ……?っつか、短い!
茶会で出したネタなんですが……自分の文才の無さに泣きそうです。
とりあえず、満月にかけて出したかったのは、狼(送り狼)と蜜月。つ、伝わらないかも。


ちなみに、蛇足でギャグめいたのは下へスクロールしてみて下さい。本当に蛇足です。


では、拙い作品ですがご拝読ありがとうございました!


2008/09/16


















































真っ直ぐ見つめてくる眼差しに、答えられずにいると、間近にあった顔はスッと離れ、いつものような笑顔になる。


「さ、早く戻りませんと、送り狼になってしまいますよ」

「……えっ…」


いつもの静蘭に、つい琳麗はキョトンとした。静蘭はクスッと笑うと


「先程、笑った罰です」

「なっ!? からかったのね!」


ぷいっとそっぽ向いて歩き始めた琳麗の後ろ姿を見て、静蘭は苦笑した。
あのまま……あのまま貴方に触れてよいのか、と悩んでしまった。戸惑った琳麗を見ていたら、手が出せなかった。
彼女に嫌われる、とそう思ったらどうにも動けなかったのだ。


どうにも彼女の事となると、強く出ることが出来ない。


「……情けないな…」

「どうかした?」

「いえ、なんでも。さ、送りますから、行きましょう」


そっと手を差し延ばせば、彼女はクスッと微笑って手を取ってくれる。

月明かりの中、二人は手を繋ぎながら州牧邸まで歩いたのだった。


END

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蒼天の華
恋する蝶のように