争奪戦
いつになくその室には緊張が走っていた。
「恨みっこはなしじゃぞ」
「貴様もな」
「真剣勝負だ」
「「「いくぞ! おりゃーー!!」
霄太師、宋太傅、茶太保は卓子のに乗っている皿に向けて手を伸ばした…………が、先ほどまで置いてあった饅頭が失くなっていた。
「なんでじゃーっ!?」
「さっきまで確かにあったはずっ…」
「なんとっ……」
三人が驚愕していると側に立っていた琳麗が呆れたように声をかけた。
「……なにをなさっているのですか?」
「「「琳麗(殿)……」」」
琳麗は、最後のひとつだった梅饅頭を持ち三人を眺めていた。
「どうして、三人が同じ数になるようにと作ってきたのに取り合いになるのですか?」
「? そうなのか? わしは三つ食べたぞ」
「わしも三つじゃ」
「……私は一人四つずつと用意したのですが……霄太師?」
「「霄っ! いくつ食べたのじゃ!?」
ずいっと三人が顔を近づいてきて、霄太師はやや後ずさった。しかし、ごまかしようもなく皺くちゃの指を広げた。
「……五つじゃ……」
「「〜〜霄っ!! 貴様〜〜!!」」
途端に宋太傅と茶太保は電光石火の如く声を上げた。琳麗は、額を覆ってため息をついた。そして、持っていた饅頭を二つに割りそれを宋太傅と茶太保に差し出した。
「お二人とも、どうぞ」
「おう」
「うむ」
「ああ〜 わしも」
物欲しそうな霄太師を見て、琳麗はにっこり笑った。
「霄太師? 私、しばらくの間梅饅頭と梅茶の準備はしないことに致しますわ」
「なっ、なんじゃとっ!?」
「お仕置きです」
きっぱり言う琳麗に霄太師は膝を抱え隅っこでぶつぶつ言っていたが、聞こえないふりをした。
その光景を見て、宋太傅と茶太保は「「自業自得(だ/じゃ)……」」と呟いていた。
END
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