熱が孕む
「ふぁあ…めっちゃごりごり〜」
全身がピリピリと熱いお湯によって暖まるのをフレイアは気持ち良さそうにしていた。
他のみんなはとっくに湯から上がっていたが、フレイアはまだ入っていたくて露天風呂へとやってきた。
ぶくぶくぶくとまるで貸し切りのような状態で浸かっていると、バシャバシャと誰かがやって来たようだ。
あー、貸し切り状態も終わりやねーなんて思っていたフレイアは、聞き覚えのある声に伸ばしていた手足に力を込めた。
「ハヤテ〜、露天風呂あるみたいだぞ」
「マジかよ、行ってみようぜ」
この声はチャックとハヤテである。
隣の男風呂に入ったのか、と考えてみれば少しだけ、なんだか恥ずかしくなった。
しかし───
「へぇ、結構広ぃ────」
「………………へ?」
バシャ……とお湯をかき分けた音と、目の前にいる人物にハヤテとフレイアは目を点にした。
「ハヤテー、奥もあるのかー?」
「──っ、いや、行き止まりみたいだな」
「そうか……どうしたんだ、ハヤテ?」
「いや、別に……。お湯が気持ち良いよなって思っただけだ」
「あぁ、たまに入るといいな」
ラグナ人であるチャックは、普段プールで寝る習慣があるからか珠に入る温泉を楽しんでいる。
だが、やはり海の民であるからか「あちーあちー」と上がっていってしまった。
「………チャックさん、行ったかね?」
「ああ……つーか、なんでお前ここにいるんだよ!」
華奢なフレイアはなんとかハヤテの身体によって隠れていたらしく、チャックに気づかれることはなかったようだ。
気づかれなかったから良かったものの、小さなタオルで身体を隠している、大事な恋人であるフレイアの裸が見られたらと不安だったハヤテは、チャックが上がっていった時があまりにも長く感じていた。本来なら3分もなかったが、ハヤテにとっては永遠かとも思えたくらいである。
それは捨て置き、何故フレイアが男湯にいるのか、問いただせばフレイアは目を大きく見開いた。
「え、ここは女湯なんよ」
「はぁ?」
「だって……私、みんなと一緒に入ったんよ?」
「え?」
互いに自分は男湯に、女湯に入ったという。
ハヤテは、もしかして露天風呂は男湯女湯ともに繋がっている───つまり、混浴なのでは?と考えた。
そして、未だにハテナマークを浮かべているフレイアに危機感を募らせた。
こうして会ったのは自分だから良かったものの、これが別の誰かだったら、と思うとカッとした。
誰かが、フレイアの裸を見るとか──なんだそれ、許せるかよ。
この危機感を分かっていない彼女に、ハテナは無性に腹が立った。
「──フレイア」
「ハヤテ……?」
「……」
「…ハヤ、テ…?」
真顔で近づいてくるハヤテに、フレイアは少し……いや、混乱していた。
先程までハヤテの背中に身を隠していた時、実はすごくドキドキしていた。
こんなにも、肩幅や背中が広かったなんて意識していなかったからだ。
自分よりは背が高いのは知っていたが、ハヤテがそんなに大きいなんて思ってなかったのは、他のΔ小隊の人たちが彼よりも背が高かった為だ。
ミラージュとハヤテなら体格は別として、ミラージュの方が背が高い。隊長もチャックもだ。
だから、こんなにもハヤテの背中が広いなんて知らなかった。
そして、今、彼は見たことのない顔で自分を見つめてくる。早く、お湯から上がってしまえばいいと自身で分かってる。露天風呂が繋がっていたと分かった今、この場にいてはいけない。
それなのに、目が逸らせなかった。
「……フレイア」
腕を取られ、胸板へと抱き寄せられた。
肌と肌が触れあい、ドクドクと心臓の音が聞こえるがこれはどちらなのだろう……。
「ひゃあっ!」
「……フレイア…」
「は、ハヤテ…ルンは…」
ぴかぴか光るハートの角に唇を寄せれば、フレイアは身体を震わせた。
感じているのだろう、頬を赤らめ、涙を溜めた瞳で見つめてくる彼女にもう欲は止まりようがない。
「フレイア…」
名前を呼び、戸惑いながら顔をあげるフレイアの唇をすかさず塞いだのだった。
END
お風呂どっきり(笑)
雰囲気、雰囲気小話。
2016/09/30