溺れてる
抱きしめてくるハヤテに、フレイアは胸を押した。
ドクドクと聞こえるこの音は自分なのか、それとも目の前の彼なのか、分からない。
「ハヤテなんか、キライ…」
ぼそり、と呟けば目の前のハヤテは肩を竦めながら、困ったように笑った。
手で胸板を押しても、ハヤテはフレイアから離れることはない。むしろ先程よりも抱き寄せられている。
「俺はお前のこと、好きだぜ」
耳元で囁かれ、フレイアの身体は沸騰するくらいに熱くなる。それでも口から出るのは心とは違う言葉ばかりだ。
「……私はキライ…」
「うん、」
自分で言ったにも関わらず、否定されないと切なくなるなんて勝手で、また涙がたまりそうになる。
否定しないなら、それならば早く離れてくれたら、と思う。
「せやから……」
「分かってる……」
何が…という問いは先程から繰り返すように触れるハヤテの唇に吸い込まれていく。
「ん…」
「分かってるから……」
「……ハヤテ…」
「お前も俺が好きだってこと…」
唇が少し離れ、彼を見上げれば真摯な眼差しがフレイアを見据えている。
ハヤテの袖を掴むと、また柔らかい唇が降ってくる。
「……ん…」
息を吐く暇もないくらいに離れない唇が気持ちよく、夢心地になってくる。
世界が、止まればいい、なんて陳腐な願いが頭に浮かぶ。
「……フレイア」
名前を呼ばれ、目を合わせるのが恥ずかしくて堪らない。それを知っているのか、ハヤテはフレイアの頬に手を添えてきた。
先程からもうルンが光っているのは感じているし、彼にも見えているだろう。恥ずかしくて死にそうになる。
「死なれちゃ困るな…」
優しい声音で笑う彼に、口にしていたのかと思うといっそう恥ずかしくなる。顔を隠したいがそれも出来ずにいると、ハハッと笑い出すハヤテを睨む。
睨んでみたものの、ハヤテは優しく笑うだけだ。
「……何、笑っとるん…」
「いや、可愛いな、って」
「なっ!」
「好きだぜ、フレイア」
甘い媚薬のような睦言に、柔らかい感触にフレイアは溺れていくしかなかった。
「………私も、好き…」
「……知ってる」
ようやく言えた告白も、ハヤテは今更とばかりに再びフレイアにキスをしたのだった。
終われ
2016/06/27