甘いデザートをどうぞ。
「フレイア、デザート買ってきたぜ」
「ほあぁ!あんがと、ハヤテ!」
ハヤテが買ってきたデザートにフレイアは目を輝かせた。早く早くと両手を伸ばしてくる彼女にハヤテは笑いながら「ほらよ」と手渡した。
「ほわぁ!りんご?!」
「シャーベットだけどな」
手渡された林檎の器にフレイアは興奮気味にそれを持ち上げては、目を輝かせている。
帰る途中で見つけたシャーベットの文字とその器にすぐに思いついたのは、目の前にある笑顔である。
予想通りのその嬉しそうな顔にハヤテは満足気に眺めていた。
その視線に気づいたのか、フレイアは「なんね」と言葉を返すが、ハヤテはそれでも楽しそうにフレイアの頭を撫でた。
「なんでもねーよ。早く食おうぜ」
「ハヤテのはなんなん?」
先程、袋から出されたのはフレイアの分だけでハヤテの分はまだ袋の中である。
興味津々とばかりに袋から出されるのを見つめるフレイアにハヤテはまた笑みを浮かべた。
「俺はこれ」
袋から出て来たのはフレイアの手の中にある林檎の器ではなくただのカップだ。
本当は自分もデザートを買おうかと考えたが、特に甘い物が欲しかった訳でもなかった。
まぁ、中身は林檎ジュースなんだが。
「えー、ハヤテは食わんの?」
「ああ、これで良い」
「それ、何味なん?」
聞いてくるフレイアにハヤテはニヤリと笑いながら「アップルジュース」だと告げれば、彼女はまた目を輝かせた。
「アポジュー?!」
「アップルジュース」
「ハヤテもりんご食べたかったんやね」
ニコニコと笑うフレイアにそういう訳でもないと思いながらも頷いた。
「……まぁな」
「言ってくれれば一口くらい………でもりんごやし、…」
むむむ…と考え込むフレイアにハヤテはまた笑う。
くるくると変わる表情は本当に見ていて飽きない。
「いいから、お前はそれ食えよ」
せっかく買ってきたんだからと言ってしまえばフレイアは「でもアポジューも……」と口を尖らせてきた。
「じゃあ、一口くらいやるよ」
「ほんに?」
「それ、食ってからな」
「ほいな!」
うひひ、と気持ち悪い笑い方をするフレイアにハヤテは呆れながら「早く食えよ、溶けるぞ」促した。
器に入っているから溶けたとしても溢れる心配はないが、シャーベットである以上早く食べてしまった方がいい。
フレイアも「はわわ」と言って蓋を取った。
スプーンを差し出せば「あんがと」と笑顔を向けてくる。
りんごの匂いを堪能してから、シャーベットを掬い口に運ぶまでの仕草を見て、次にくる満面の笑みは想像しやすい。
思った通りに「ゴリゴリ〜」と蕩けるような笑みを浮かべていた。
あまりにも嬉しそうに、旨そうに食べるフレイアにハヤテは林檎ジュースを飲みながら眺めていた。
「あー!ハヤテ、全部飲んじゃあかんかんね!」
「へーへー」
ぷくーと頬を膨らませるフレイアに「どんだけ林檎が好きなんだよ」と笑いたくなる。
食事でも林檎ばかり食べるフレイアに対し、ハヤテは意味もなくイラッとした。
「フレイア」
スプーンで掬ったシャーベットを口に含んで嬉しそうにしている彼女のスプーンを奪いとってやると、驚いている。
「な、なんね?」
「俺にもくれよ」
「は?」
答える前に小さな手にある林檎の器からシャーベットを掬うと、「あー!」と声をあげるフレイアの口に突っ込んだ。
「ふ、ふぁふぁふぇ?」
てっきり食べられると思ったモノが口の中で溶けていく。何事かとハヤテを見ようとすればそれはもう目の前にあった。
至近距離で目と目が合う。それと同時に冷たい口の中に生温い熱を感じるとともに柔らかい感触がある。
空の蒼のような彼の眸の中に自分が映るのを見つけ、ようやく自体を把握した時には、ちゅっと軽い音と共にぬくもりと蒼い眸が遠ざかった。
呆然としてるフレイアをよそにハヤテは「結構旨いな」などと軽く言っている。
「はや、ハハハハハハハ、ハヤテっ!い、いま……っ!」
真っ赤になりながらどもるフレイアに、ハヤテはまたニヤリと笑うと頬に手を伸ばした。
カップを持っていたからか若干冷たい手は、熱をもったフレイアの頬には気持ち良かったがやっていいことと悪いことがある。
今のは、果てしなく後者だ。
「一口くれって言っただろ」
「っっっ!!!」
ペロッと舌を出すハヤテにフレイアは何を言葉にすればいいのか分からない。
何も言わないフレイアに対し、ハヤテは持っていたアップルジュースを口に含むとフレイアの腕を引っ張り寄せて、顎を固定すると口を合わせた。
驚くフレイアの腰を逃がさないようにもう一方の腕に絡めると身体は密着するしかない。もだもだと動く身体を、唇を合わせた。
殴られるかも、なんて考えながらも大丈夫だろうなんて自信もあった。
口の中にあったアップルジュースは最早自分の口にはなく、フレイアの口に移動してる。
んく、んくと少しずつ飲んでいるのか、溢れたジュースが口元から垂れていた。
「飲みたかったんだろ」
「…………バカ!」
あ、殴られる?と思った衝撃はやはりなく、くたりと凭れるフレイアにハヤテは笑いたくなる。
顔を真っ赤にし、キスだけで腰砕けたフレイアがとても可愛くて、このまま抱きしめてしまいたくなる。いや、食べたくなる。
そんな事を思いながら、ハヤテは何か言いたそうにしている小さな唇をまた塞いだのだった。
END
2016/07/26