04

今日からマ王

異世界の方々を案内するとかで、やって来たのは丈下通りだったり、本屋だったり、ゲーセンだったり色々。

「……それにしても、目立つ集団だな…」

「…ははっ、そうだね…」

「まぁ、あんだけ格好いいと目を引くしね」

街中の女性たちが前を歩く、ゆーちゃん曰く似てないようで似ている魔族3兄弟へと視線を注いでいる。
確かに格好良すぎる。

「優奈もそういうのもってたんだ」

「は?」

何げにゆーちゃんの言ってる意味が分からない。

「いや、格好いいとかさ……興味ないんだと思ってた」

「ま、一応女の子だし。格好いい人見ればそう思うじゃない」

「じゃあ、優奈ちゃんから見てあの3人の中で誰が好みなの?」

村田くんがニコニコしながら、聞いてきたから前を歩く彼らを眺めた。
グウェンダルさんは渋いっていうか、眉間の皺が気になる。けど年上過ぎる気がする。
ヴォルフラムくんは……美少年過ぎるが性格が、よく睨まれるし。
やっぱ──。

「コンラッドさん、かな。優しそうだし」

考えて答えると、二人は「やっぱり」と呟いた。

「やっぱコンラッドかよ。どこに行ってもモテモテな人はモテモテなんだな〜」

「しょうがないよ、渋谷。彼はあのツェリ様の息子だよ、他の2人よりも恋愛遺伝子が濃そうじゃないか!」

「あー、なんかそれ納得出来る。一番ツェリ様に似てるし、女慣れしてそう」

二人してなんだか、ウンウンと頷いている。
ってか、恋愛遺伝子ってなに?

「うー、でも私は2人の方が好きだよ?」

「は?」「え?」

「あの3人って言ったからだけど、私はあの3人より2人の方が好きだってば。コンラッドさん、素敵だけど格好良すぎるし、戸惑っちゃうよ」

クスっと笑うと「あ」と言って、優奈は歩きだして行った。
雑貨屋で何か見つけたらしい。
「可愛いー」なんて言って、黒いクマのぬいぐるみキーホルダーを持ち上げていた。
それを見て、有利と村田は顔を見合わせて笑った。

「やっぱ、いいな。優奈ちゃん」

「優奈にちょっかい出すなよ、村田」

「えー、優奈ちゃんは君のじゃないだろう」

「幼なじみとして、または再従兄弟として優奈には素敵な男性を選びたいんだ」

「再従兄弟だって知ったの昨日だろ、あ、でも優奈ちゃん彼氏いたよね?」

村田の疑問に有利はガシッと肩を掴んだ。

「……村田、それは今は禁句だ。優奈が暴れかねない……」

「…………了解…」

2人はうん。と頷いた。
優奈が暴れると大変だからだ。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


2人がそんな事を言っている間、優奈は雑貨屋を見ていた。

「うーん、これも可愛いな。買っちゃおうかな」

並ぶクマのぬいぐるみを選んでいると、横から手が伸びた。
振り返ってみれば、そこにはグウェンダルさんとコンラッドさんが立っていた。背が高いから迫力がある。
というかコンラッドさんは気まずい……朝のことがあるから。頬が熱くなるような気がする。

「買うんですか?」

「え? あぁこれですか? どうしようかと思って」

「…………」

無言でぬいぐるみを見ているグウェンダルさんの方が、気になるんだけど。
そう思っていると、コンラッドさんがコソッと耳打ちしてくれた。
耳に息がーっ!恥ずかしい、意識しちゃダメ、落ち着け、私。

「ああ、気にしないで──彼は可愛いものや小さなものが好きなんですよ」

後半はいっそう小声でグウェンダルさんには聞こえなかったようだ。

「そ、そうなんですか……」

コンラッドさんは普通なのに、意識してる自分が滑稽に思えた──うん、落ち着いてきた。

「じゃあ」

優奈は並んであるクマたちから幾つか選ぶと、レジへと持っていった。

「ユナ?」

パタパタと戻ってくると、タグにシールを貼られた小さなクマのキーホルダーをグウェンダルに渡した。

「……私に?」

「そう、記念に。はい、コンラッドさんも」

「俺も?」

その行動にグウェンダルとコンラッドは顔を見合わせた。
優奈はにっこり笑って口を開いた。

「だって兄弟って聞いたし、お揃いもいいかなって。あ、ヴォルフラムくんもはい」

「なんだこれは」

「地球記念って事で。お兄さんたちとお揃いね」

笑う優奈の目線の先には、同じモノを持つ兄2人の姿。

「あーっ、優奈ずりぃ! 俺らにはないのかよー」

「なによう、地球記念なんだからこの人たちだけ!」

わぁわぁと騒いでいる有利と優奈を見て、彼らはなんとも言えない気持ちになった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ゲーセンへ行って、皆さん意外にも楽しんでいる模様。
意外な嗜好をもったグウェンダルさんはUFOキャッチャーのなかのぬいぐるみが気になるらしい。
確かに可愛いよね、うさぎとかクマとか。

「欲しいんですか?」

「……ユナ」

「取ってあげたいですけど、難しいんですよね…」

「いや、私は別に」

「何してるのの、優奈ちゃん、フォンヴォルテール卿」

「村田くん。うーん、あの白いネコが欲しいんだけどね〜」

優奈がグウェンダルが一心に見ていた白いネコのキャラクターを指差した。

「優奈ちゃんが? ふーん、じゃあ僕が取ってあげるよ。だから後でプリクラ撮らない?」

「えっ、取ってくれるの? うん、プリクラいいよ」

「取ったぬいぐるみは君がどうしようと構わないからね」

パチンとウィンクしてくるのを見ると、グウェンダルさんが欲しいのだってばれてるんだ。

「ありがとう」

さすがは大賢者、見事ネコのぬいぐるみを取ってくれた、しかも2つも。
うち1つはグウェンダルさんに。

「……いいのか? 猊下が下さったのに」

「うん、いいよ。同じのもう1つあるしね。村田くんも分かってて2つも取ってくれたと思うし、だから、はい」

差し出すと、躊躇しながらも受け取ってくれた。
そして大きな手が頭に伸せられて、撫でてくれた。

「……ありがとう…」

「お礼なら村田くんにね」

「優奈ちゃーん」

「はーい。じゃ」

村田に呼ばれ、優奈はプリクラコーナーへと走っていった。
プリクラコーナーに行けば、村田くんはこっちこっちと手招きした。

「どれにする?」

「これは?」

「ああ、いいね」

フレームを選んで、いざ撮ろうとしたらバサッとしょーちゃんが乱入してきた。

「優奈と何をしている、弟のお友達」

「しょーちゃん!」

「ちょっと、渋谷のお兄さんっ、なんで入って──」

そんな事を言ってるうちにカメラは見事に3人を撮っていた。
なんか笑えたのはしょーちゃんが私を抱き上げ、連れて行こうとする決定的瞬間が撮られたのだった。
その後で、普通に村田くんとプリクラを撮っていたら、ゆーちゃんがズルいと騒ぎ、ヴォルフラムくんたちまで来てみんなでプリクラを撮った。
なんだか凄いので出来上がって、思わず吹き出してしまった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


散々歩いたのでカフェテラスで食事をする事になった。
3兄弟さんは3人で一つのテーブル、私たちは4人で座った。
だけどあの3人の座るテーブルへの女性の視線が凄い。
隣の席だけど、離れて座って正解だわ。

「あ、私ちょっとお手洗い行って来るね」

「あ、僕も」

隣に座る村田くんも立って、化粧室へと向かった。

「じゃあ」

村田くんに手を振って化粧室に入った。混んでないので用が終わると、ゆーちゃんたちが待つテーブルに向かおうとして、腕を取られた。
振り返れば、そこに見知った顔があった。

「ちょうどいい。話がある」

そう言われ、そのまま引きずられるように連れて行かれた。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「村田は無事だったとして、優奈は何してんだ?」

「まぁまぁ、優奈ちゃんは女の子なんだし……」

さっきなかなか戻って来ない2人を見に来てみれば、村田はまたしても絡まれていた挙げ句、逃げた。
まあ、助けを呼びに行ったんだが……あの不良たちは俺のはったり魔王モードに怖れをなして逃げていったが、優奈がまだ戻らない。
まさか、村田みたく不良に絡まれてんじゃないだろうな……。
そんな風に思っていると、通りすがりの会話が耳に入った。

「ねぇ、あの子大丈夫かな。なんだか揉めてたけど……」

「なんか殴りそうだよね、男の方が……ケンカだよね」

…………なんか嫌な予感。
優奈の今日の言動を思い出したせいかもしれない。
『そんなのいませーん』
いや、お前彼氏居ただろ!そんなことを考えながら、話してる女の子たちに聞いてみた。

「あのっ…」

「はい?」

「今、話してた……ケンカみたいなのって…女は茶髪で肩くらいでした?」

「ユーリ?」

ヴォルフラムたちが不思議そうにしていたが、なんか嫌な予感がする。
女の人は、頷きながら

「ええ、茶髪で肩くらい。水玉のミニスカートに青のパーカーを羽織っていたわ」

────優奈だ。

「ありがとうございます、あっちですか?」

話を聞いていて、彼らも感付いたのだろう。
コンラッドたちが、彼女たちが歩いて来た方を指差すと彼女たちはうんうんと頷いた。
きっとコンラッドたちの格好よさにノックアウトされたに違いない。
そんなことより、まずは優奈だ。
バタバタと走っていくと、人気のない場所へとやってきた。
どこだ、とキョロキョロしていると怒鳴り声が聞こえた。

『……っ……!……っ、……………っ!!』

『ちょっ、なに────』

優奈の声だ。
ヤバイ、かなりキてる。
止めないと。
そう思った時、隣にいたヴォルフラムが出て行こうとした。



To be Continued


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