05

今日からマ王

隣にいたヴォルフラムを慌てて掴んだ。

「ちょっ、待てって! ヴォルフラム」

「なぜ止める。ユナが襲われているんだぞ!!」

見ればコンラッドもグウェンも飛び出そうとしたのか、村田が掴んでいた。

「いや、だから、まずは様子を──」

『ちょっ……いい加減に、して、くれないかしらっ!!』

優奈の声の後に、ドサッという人が倒れる音がした。
魔族3兄弟はオレらを振り切って、路地へと入っていこうとして足が止まっている。
あー…なんかどういう状況か想像が……。
有利はそんな事を思いながら、路地へと入っていけば、案の定凄いことになっていた。
隣の村田も苦笑い。3兄弟はといえば、呆然としている。

「あれ、みんなどうしたの?」

「……お前こそ、なにやってんだよ……」

見れば(確か)昨日まで優奈の彼氏だった男が倒れ、そいつの首に優奈の足が……首っ!? 足──っ!?

「ゆゆゆ優奈っ!? 何してんだ、お前っ!!」

「うん、襲われたから自己防衛を駆使していたの」

ふふっと笑う顔は……幼なじみでありながら、見る度に怖い。

「……あの、ユーリ…これは…」

助けに入ろうとした彼らは驚くしかないらしい。

「あー……だからいったろ? 大丈夫だって……優奈は強いから平気なんだよ」

「そうなんですか、すごいですね」

はあ、とコンラッドも呆気に取られたらしい。

「〜〜〜〜っおい、あまり心配をかけるんじゃない!!」

ヴォルフラムは優奈に近づき、怒鳴ると優奈は目をぱちくりとして、俺たちを眺めた。
そして、一巡して俺を見ると、苦笑めいた笑みを浮かべ足を下ろした。
そして「ありがとう」と「ごめんなさい」と言った。
とりあえず、オレらはそこから離れ、場所を変えた。

「あれ? しょーちゃんは?」

「勝利ならギャルゲー買いにいったみたいだ」

「…………ギャルゲー、ね」

優奈は有利を見て、ボソリと呟いた。
勝利がギャルゲーのキャラの名前に「ゆうり」と付けていることを。
ちなみに自分の名前があったのはキチッと削除しておいた。

「な、なんだよ…」

「別にー」

知らぬが仏。教えないでいてあげなきゃ。

「あのなー……ったく。なんだよ、心配してみれば返り討ちにしてるし」

「ん? ああ、アイツのことね」

「そ、あの人優奈の彼氏じゃん。ケンカしたのか?」

一、二度遠くでみた記憶がある。

「二股かけられててね、別れるって言ったら、殴られそうになって」

「大丈夫なのか!?」

オレが言おうとしたセリフを横からヴォルフラムがとった。

「女を殴るとは男の風上にもおけん!」

プリプリと怒るヴォルフラムに優奈も驚いているが、ふふっと笑うと、ヴォルフラムの手をとった。

「ありがとう、心配かけてごめんね」

「なっ、僕は別に心配なんて……ユーリが心配していたから、探しただけだ!」

照れ隠しなのかヴォルフラムは顔を赤くして、そっぽ向いた。

「そう、でもありがとう。ゆーちゃんたちも心配かけてごめんね」

ニコニコと笑う優奈に、さっきの一面の欠片もなかった。
その後、今度はスポーツショップとかに行けば、楽しんでいたのはゆーちゃんとなぜかコンラッドさんだった。

「野球知ってるんですか?」

「ええ、以前地球に来た時にショーマに見せてもらってからすっかりファンになって」

聞けばにっこりと笑いながら答えてくれた。
勝馬パパ、野球馬鹿だもんね。ゆーちゃんはその影響バッチリだし……。

「ユナは野球好きなんですか?」

「ん〜〜、どうだろ。でも、小さい頃はよくゆーちゃんとキャッチボールしたし」

「へぇ、今度良かったら俺としてみませんか、キャッチボール」

「……そんなに上手くないよ?」

「構いませんよ、ユナとしてみたいんです」

「そぉ? じゃあ時間がある時にでも」

まあ、社交辞令として答えておこう。いつになるか不明だし。

「おーい、優奈、コンラッドー。次はバッティングセンター行かねぇー?」

ゆーちゃんが向こうを指差しながら、近寄ってくる。
確か併設されてるんだっけ、ここ。

「ええ、俺は構いませんよ」

「コンラッドはそう言うと思った。優奈は?」

「私? うーん別にいいけど、村田くんたちは?」

ちらりと見れば、苦笑している。彼はアウトドア派よりはインドア派に見えるけど。

「村田は見てるだけでいいってさ、本当はボーリングがいいって言ってたけど」

「あ、私もボーリングの方がいいな。みんなで楽しめるじゃない」

にこっと笑うと有利は「ええ」っと言った。
だってバッティングは1人でやるけど、ボーリングはチーム組んで遊べるじゃない。と説明すれば、それもそうだな。と乗ってきた。

「んじゃ、ボーリングにするか」

「僕が言うより優奈ちゃんの意見を取り入れる訳だ、さすが優奈ちゃん」

「だって、せっかく来てるんだしみんなでワイワイした方がいいでしょ」

「それもそうだな、よし! ボーリングにするか」

そんな訳で隣のスポーツセンターに移動した。
チーム分けは、地球チーム対眞魔国チームにしようとしたが、3人が初めてというのもあってじゃんけんで決めた。
地球組、眞魔国組でグー、チョキ、パーをしてそれぞれ同じになったのでパートナーってことになった。
組み分けは以下の通り。

グー:村田、ヴォルフラム
チョキ:優奈、コンラッド
パー:有利、グウェン

「なんで、僕とユーリじゃないんだ!」

「それは仕方ないよ、運だよ運。フォンビーレフェルト卿」

有利と組めなかったことが不満なヴォルフラム・村田組

「よろしくお願いしますね、ユナ」

「私の方こそよろしくお願いします」

ニコニコと和やかムードなコンラッド・優奈組

「あー…グウェン、よろしく〜」

「ああ」

一番静かなグウェン・有利組

大変だったのは、ボーリングのルール、投げ方など説明…
でも、なんだかんだ言ってかなり楽しめたようだった。ちなみにボーリングは2ゲームやって、優勝チームはコンラッド・優奈組だった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「あっ」

家に向かう途中、優奈が声をあげた。

「どうかしたのか、優奈?」

「ごめん、先に帰ってて」

「え、なんで?」

「ん? スーパー寄るの忘れちゃって……冷蔵庫空っぽだから、夕飯の買い物しなくちゃ」

携帯で時計を確認すれば4時前だ。

「夕飯、うちで食わないの?」

「ゆーちゃん、お客様いるんだしそこまで図々しくないよ。じゃ、行くね」

有利の言葉に優奈は苦笑しながら答えて、手を上げた。が行こうとして腕を掴まれた。

「付き合うって! 買い物」

「へ? なんで?」

キョトンと首を傾げる優奈に有利は困ってしまった。そこに横から村田が入って来た。

「だって必要でしょ、荷物持ち」

「そ、そう! 荷物持ちだよ」

「そんなに買わないし……大丈夫だよ。また来たら、撃退するし」

優奈はクスッと笑った。昼にあったことで心配かけているようた。
何かと1人にならないようにしていたみたいだし。

「あれ、分かったちゃった? 渋谷が心配だからって言っててさ。でも荷物持ちするよ?どうせなら新婚さんみたいに手を繋いでさ、チャーミィグリーンのように」

「チャーミィグリーンって……本当に何歳だよ、村田」

村田くんにゆーちゃんは突っ込んでいた。
いつからそんなに漫才じみたことするようになったんだろ。
しかし申し出は嬉しいけど……彼らももれなくついて来るんだよね?
チラリと魔続美形3兄弟を見た。

「えーと、じゃあ村田くん付き合ってくれる? ゆーちゃんはみんなを連れて行かなきゃいけないだろうし…」

「そうだね、スーパーにぞろぞろと行くもんじゃないだろうし、彼らは目立つしね」

「……じゃあ、分かった。村田、優奈を頼んだぞ」

渋々ながらゆーちゃんはそう言って、彼らと家へと向かった。
私達は近所のスーパーまでお買い物をして、村田くんは本当に荷物を持ってくれた。

「重くない?」

「大丈夫だよ、そっちも持つのに」

「いいよ、これくらい。気にしないで」

「じゃあ、手を繋ぐ?」

断ると村田くんはニコニコ笑いながら、さらっと言ってきた。

「は?」

「ほら、チャーミィグリーンのように手を繋いで、スキップで帰るとか」

「…………1人でどうぞ」

「つれないなぁ、優奈ちゃんは」

そんなことを話ながら、家路についた。
家に入ろうとする優奈を見て、村田が昨日のように何か言いたそうな顔をしていたのを彼女は気付かなかった。



To be Continued


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