03

今日からマ王

私の言った言葉に彼らは首を傾げた。
まあ、普通そういうもんだよね。例え異世界トリップ常習者でもさ。

「えと、違う地球からって……?」

「言葉通り、君たちとは違う地球から来た、と思うんだよね」

有利がますます分からないという風に呆然としている。

「その自信は?」

健ちゃんが眼鏡を押し上げながら、聞いてきた。やはりそう言われたら訝しがるよね。

「百パーだと思うな。あなた達の地球に「今日からマ王!」という作品がなければ」

「「「今日からマ王?」」」

「そ、ちなみに登場人物はあなたたち。ゆーちゃんが主人公だよ」

ピシッと有利を指差せば、有利は慌てて「おおお俺?」と驚いている。

「そう、だから目を覚ました時、びっくりした。ありえないって。なんでまるマのキャラがここにいるんだろうってね。ま、私がこの世界にトリップしたみたいだけど……」

「証拠、はあるんですか?」

コンラッドが聞いてきた。警戒してるようだ。
彰子は考えるように口元に手を当てた。

「うーん、証拠って言われても知ってることと知らないことはあるよ。知ってる事といえば、有利がわがままプーを平手打ちして婚約成立とか、グェンダルが小さくて可愛いもの好き、あみぐるみ製作者で常に里親募集中、幼なじみのアニシナさんには頭が上がらない。あとは……」

とりあえず持っている知識をズラズラ並べた。
グェン、コンラッド、ヴォルフは似てない魔族3兄弟、母親のツェリ様は自由恋愛旅行に常に行っている。
王佐ギュンギュン閣下は双黒フェチのユーリ大好きで、いつもギュン汁を噴いている。
お庭番グリエちゃんは女装は趣味じゃないけど、ミス眞魔国に選ばれたことがある。
禁忌の箱の鍵のこと、眞王がユーリを王に選んだこと、箱を探しに地球に行ったことなどなど話した。
やはり想像はしていたが、信じられない顔で見られていた。

「まあ、とりあえずこんなトコかな。アニメだとね」

「えっ、アニメだとって?」

「原作は小説──ライトノベルなんだけどアニメと内容が少し違うのよ」

「なぜ、こちらがアニメだと?」

またコンラッドに聞かれて、指を差した。

「あなたがここにいるから」

「俺ですか?」

「そう、小説だとあなたはまだシマロン側にいるの。健ちゃんとは1、2回くらいしか会ってない。だから二人が一緒にいるという時点で、原作ではないってこと。眞王もいるしね」

「なるほど」

彼らは、ふむという感じで各々考えているらしい。
なんか、ズラズラ言っちゃったけど、私大丈夫かな〜って、今更ながら思っちゃった。
結構危険だよね、私の存在。でも眞王いるし、健ちゃんもコンラッドもいるから多分第2期は終わってるはずだし、そこまで情報しか与えていない。
ここがアニメだと、どこらへんなのか分からないし。
もうサラレギーとかジェネウスとか出て来てるのかしら?
あ、でも眞王がいるのをコンラッドが知っているってことはジェネウスは出て来てるか。
ふむふむと考えていると、有利が聞いてきた。

「えと、彰子……?」

「うん?」

「マジ、なんだよな……?」

「なにが?」

「オレらが小説だったり、アニメだったりって……」

「うん」

はっきり答えると有利は頭を抱えてしゃがみこんだ。

「うそだろぉぉ〜。じゃあ、お茶の間の皆さんとかは俺の婚約者が男だって知ってるのかよぉぉ〜」

えっ、そこ気にするトコなの?
もっという事違くない?
むしろ風呂場とかで半裸見られてるんだよっ!?

「だ、大丈夫だよ。有利……アニメじゃないけど原作では有利には彼女出来てるから……(確か)」

「マジっ!?」

ガバッと有利はこちらを向いた。

「うん、マジで……」

やったぁ〜と喜ぶ有利だが、アニメと原作は違うんだよ〜と思いながら眺めていた。
だが、やはりダイケンジャー、言ってはならん事を。

「でも彰子ちゃんが言うには、ここはアニメの世界なんだよね? じゃあ、こっちの渋谷には彼女いないんじゃない」

「え……」

言っちゃった、言っちゃったよ。この人。
有利は恐る恐るとこちらを見た。否定して欲しいという目だよ。
私は苦笑しか出来なかった、ごめんよ!ゆーちゃん!

「で、でも有利にはコンラッドがいるんだしっ!」

「は? なんでコンラッド? ヴォルフラムじゃなくて?」

「フォンビーレフェルト卿でしょ、彰子ちゃん」

「まあ、そうだけど、王道はコンユだよ」

私はサラリと言ってしまった。そのせいで後に大変なことになったけど。

「「「コンユ?」」」

「コンラッド×ユーリ、一番人気あるじゃない?」

「…………はぁっ!?」

「ゆーちゃんは基本受けだから…………そこんとこどうなの?」

ついつい聞いてしまった。
だってかなり気になるじゃない。

「受けって……野球ボールくらいしか受けないぞ!って、違くて! お、俺はっ、受けとかじゃないっての! 女の子が好きに決まってるだろーっ!」

有利は叫んでいるが、村田は可笑しそうに肩を震わせていた。
コンラッドさんは苦笑している。

「原田、彰子ちゃん……あとはどんなのが……くくっ…」

「なっ、村田! 聞くな、聞かないでくれっ!!」

「……有利はああいってるけど……あ、でも公式じゃないから大丈夫だよ! 有利っ!! こう女の子はそういうの好きだから、色々妄想しちゃうんだよ!」

「……妄想って…」

もはや脱力といわんばかりに、しゃがみ込んでいる。

「健ちゃんだって、アレだよ! ヨザ×猊下とかあるんだよっ!」

そう言った瞬間、ブッ!と吹き出す声がした。
コンラッドが笑ったらしい。
何故か健ちゃんの眼鏡が、見えなくなっている。

「……彰子ちゃん、ウェラー卿はどうなのかな?」

「猊下っ…」

「コンラッド? 主に攻めだったりするけど、たまにヨザコンとかグェンコンとか……受けもあるよ」

「「「…………」」」

なんだか非常に微妙な空気を作ってしまった……ヤバいかも。私……。
ちらりと眞王やウルリーケを見れば、眞王は面白そうにしているが、ウルリーケは苦笑していた。
ははっ……夢なら早く覚めてくれ!



To be Continued


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