09

黒子のバスケ

バスケ部の合宿が終り、茉穂はのんびりと夏休みを満喫していた。
友達と海やプール、ショッピングに夏祭りなどなど盛り沢山である。
無論、真面目に宿題や課題をやり遂げていた。
今日は友達と神奈川まで出かけ、散々遊びまくり、そろそろ帰ろうかと駅まで来た時だった。
近くでやたら背の高い人達がたむろしていた。

「ねね、あの人たち背が高いね」

「本当だ。それになんかかっこいい人もいるね」

「うん! あの髪が黄色い人でしょ?」

友達の会話を聞きながら、そちらを一瞥すると背の高い男五人がいた。
なにやら一人に対して、慰めているのか、宥めているのか分からないが、わぁわぁと何だか騒いでいる。
つか、黄色い髪で背が高い人ってどこかで……。

「ねぇ、あれって雑誌に出てる……」

「うん、モデルの!」

「キセリョだよ!かっこいい〜」

やはり黄瀬くんだ!
あー、そういえば海常高校って神奈川だったっけ。
というか、こんな所で会うなんて思わないわ。
友達は声掛ける?どうする?なんて話しているが、勘弁してくれ。と思う。

「ねぇ、茉穂?」

「な、何?」

「声掛けてみない?」

「は?や、やめてこうよ。なんか話してるみたいだし、早く帰ろうよ」

「えー、でもさぁこんなチャンス滅多にないんだしさ〜」

「声掛けてみようよ、あっちも人数いるみたいだし!」

いやいや人数いるからって、何?集団ナンパ?つか、逆ナンとかやめて!
そんなことを思っていると、勇気りんりんな友達が声をかけに行った。
あのコ、すごすぎない?
ポカーンと見ていると、どこかの店を聞いてるみたいだ。さっきここらへんは私の庭だ!って言ってたよね?

「あれ? もしかして、白川さんじゃないっスか?」

友達の積極性に呆然としていたら、黄瀬くんに気づかれてしまった。
隣にいた友達は腕を掴みながら「何?知り合い!?」と聞いてくる。地味に腕が痛い。

「あ〜〜、同じ中学だったの」

「ちょっと!そういうのは早く言いなさいよ! あっち行こ、そんで紹介して!」

「そうよ、早く行こ」

両腕を友達に取られ、黄瀬くんたちがいる所へ移動した。

「やっぱり、白川さんじゃないっスか!久しぶりですっス」

「あー、うん。久しぶり」

「こんな所で会うとは思わなかったっス。どうしたんスか?」

確かに地元で会うならまだしもここは神奈川なのだから、そう思うのは仕方ない。

「友達と遊びに来てたんだ。そういう黄瀬くんは……」

チラリと一緒にいる人達を見る。
インターハイで観た覚えがあるし、背も高い人ばかりだから、部活の先輩たちなんだろう。

「あ、部活の帰りなんスよ」

「そうなんだ、大変だね。お疲れ様です」

先輩方に会釈をすると茶髪のやや顔が整った人が歩み寄ってきた。

「黄瀬、こちらの素敵なお嬢さんは誰なんだ?」

(……素敵な……お嬢さん?)

「え、えっと、こちらは同じ帝光中だった、白川さんです。黒子っちの幼なじみなんスよ」

「へぇ」

テツを知っているの?かと疑問を抱きながら、「白川です」と頭を下げていると、ぐいぐいと後ろから引っ張られた。
そんな三人同時に引っ張らないで!「紹介しなさいよ!」と訴えてくるのが分かる。

「あ、こっちは、俺の部活の先輩たちっス」

やはりそうか。と思い、自分も友達に目を向けた。


◇◇◇◇◇


何故か、私たちは今カラオケに来ていた。
自己紹介した後、よく分からないが黄瀬くんの先輩の一人が「ここは(リ)バンですね!」とよく解らないことを言い始め、誰かが「折角だからカラオケ行きたい」と言った。多分、友人だ。
私は盛り上がる彼らを眺めつつ、フリードリンクのお茶をストローで吸った。

「なんだってこんなことに…」

ボソリと呟くと、「全くだ」と隣から返ってきた。独り言のつもりだったのだが、ちらりと隣を見ると、彼も無意識で返したようで、バチっと目が合った。
慌ててそっぽ向かれた。よく見るとあれだ、試合で見た。
青峰くんとの試合で黄瀬くんが、限界を出しきり立てなくなった時に支えていた人だ。多分。

「あ、の…」

「あ、ああ、……なんだ?」

「えっと、インターハイの時に黄瀬くんを支えてた人ですよね?」

「なんで知ってんだ?」

驚いたのか、こちらを振り向いた。
熱血漢っぽい気がするが、テツは上手く黄瀬くんを扱っていると言ってたような。

「あ、試合観たんです。……結果は、残念でしたね」

口にしてから失敗したと思った。
負けて悔しい訳じゃないだろうし、あれからそれほど日も過ぎていない。

「え? 白川さん、試合観に来てたんスか?」

会話が聞こえたのか、黄瀬くんが振り向いた。

「珍しいっスね! あれスか? 青峰っちが出るから?」

「青峰くん? なんで? 試合はテツたちと観てたんだよ」

なんで青峰くんが出てくるのか分からない。そんなに仲が良い訳でもないし。

「えー? 俺、黒子っちに会ったっスよ、でも何も聞いてないっス」

「別に言う程の物じゃないんじゃないかな? あ、でもテツから黄瀬くんと会ったっていうのは聞いたよ」

「へ? そうなんスか?」

「うん。なんか、らしくないとか言ってた」

「なんか言ったっスかね?」

「試合観てたって、あの透明少年と来てたのか?」

「そういえば黒子っちは合宿してたとか言ってましたけど、え?白川さん、誠凛のマネージャーなんスか?」

慌ただしく聞いてくる黄瀬くんに「違う」と首を振る。
食事係として付いていっただけだと言えば、臨時マネージャーっスか。と言われた。
確かに臨時マネージャーみたいなもんだったかもしれない。

「へぇ、そうなんスか」

うん、と返事をしたところで、黄瀬くんは友人らに話しかけられている。
あまり嫌そうにしていないので、気を遣わせちゃったかな、と思わくもない。
ふと、メールの着信音が鳴り、携帯を取り出した。

「あ、」

高尾くんからだ。
添付されている画像を見て、思わず笑いが出た。
隣にいた笠松さんが気にしていたが、笑いのが止まらない。だって、

「どうかしたのか?」

「い、いえ、思いがけないメールが届いたので…」

見せても大丈夫だろうと思い、差し出すと笠松さんは呆然としていた。
だって、画像は緑間くんが、鳩を追いかけている写メなんだから。

「これって……秀徳の…………何してんだ?」

呆れている先輩の言葉に高尾くんからのメールを読むと『ラッキーアイテム確保中』と書かれている。
そうか、緑間くんの今日のラッキーアイテムは『白鳩』なんだ。

「ラッキーアイテムを捕まえてるみたいですね」

「『キセキの世代』のヤツはよく分かんねぇヤツばっかだな」

「ふふっ、そうですね」

緑間くんの事は最近になってから知ったが、テツを始め、青峰くん、黄瀬くんは勿論、噂やテツからの話で聞いていた他の二人も中々一癖も二癖もあるようだった。

「笠松先輩! 白川さんといい感じっスね」

ニヤニヤしながら間に入ってきた黄瀬くんに笠松さんが顔を真っ赤にしながら、「何言ってんだ!黄瀬ぇ!!」と怒鳴っている。
本当に何言っているんだろ。

「違うよ、黄瀬くん。コレを見せてただけだよ」

そう言ってさっきの写メを黄瀬くんに見せると「緑間っち!?」と携帯を見つめた。

「あ、相変わらずなんスね………あれ? 白川さんって緑間っちと仲良かったんスか?」

「う──ん、そうでもないと思うけど。まともに話したのだって、合宿が一緒になった時だったし」

誠凛と秀徳が合宿した場所が同じだった事を伝えた。
黄瀬くんはへぇと相槌をし、携帯を取り出した。

「せっかくっスから、俺らの写メを撮って送ってみましょうよ」

「? なんで?」

記念スよ、記念。と分からないことを言いながら、黄瀬くんは私の友人に撮影を頼んだ。代わりに私とも撮ってね!と言う友人に軽くOKを出しながら、カシャッ!と撮ってもらう。
ニヤニヤしながら「どんな反応するんスかね〜」とメールを打っていた。
私もせっかくだから、テツに黄瀬くんに会ったよ的なメールを打った。


その日の夜、緑間くんからは「明日はきちんとラッキーアイテムを所持するのだよ」というメールがあった。
確か、今日の運勢は悪かったらしく、緑間くんが心配していたことを思い出す。
別段、黄瀬くんたちと会っただけで変な事はなかったしな、とも思いながらも、緑間くんって心配性なのかな?と首を傾げた。

その夜、黄瀬のところには緑間から電話があったとか、なかったとか。
テツに黄瀬から「なんか分からないけど緑間っちから怒られたっス!」と泣きメールが来たとかなんとか。





To be Continued



メールを寄越したのは高尾なのに。
笠松先輩の存在が途中から空気に(苦笑)

2013/05/23


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