10
夏休みも終わり、9月に突入した。
東京はまだまだ残暑が厳しく、茉穂は学校帰りに友達と寄り道をしていた。
「はぁ〜、もう9月だっていうのに暑いわよね〜」
「本当。でもお店はもう秋物が並びまくってて、なんだか訳がわからなくなるわ、本当に涼しくなるのかしら」
「いえてる〜」
友人たちの残暑の愚痴を聞きながら、茉穂は扇子を片手にパタパタと扇ぎながら、道を歩いていた。
「って言うか、何で扇子なんて持ってんの? 茉穂」
「んー、今日のラッキーアイテムなんだって」
「ラッキーアイテム〜?」
「うん、おは朝占いの。私、今日10位らしくて」
「茉穂って占い信じるクチだっけ?」
「しかも、らしいって何よ、らしいって?」
「あー、知り合いが信じる人でね、毎日教えてくれるんだよ」
「へ〜、なんか凄いね」
そう、今朝も緑間くんからおは朝占いのメールが届いた。ラッキーアイテムがないなら、届けるというくらいだ。
まぁ、流石にそれは遠慮している。テツに言ったら何とも言えない顔をしていたのを思い出す。
そんなことを考えていたら、友人二人が帰らなくちゃいけないらしく、先に行ってしまった。
どうしようかな、と考えていたが目の前にマジバが見え、ちょうど喉が渇いていたから寄ることにした。
「茉穂〜、何頼む? 私はアイスコーヒーにするよ」
「私は暑いし、シェイクにしようかな」
注文した品を受け取り、席に座ろうとしていたら、ポンポンと肩を叩かれた。
「やっほ〜、茉穂ちゃん。久しぶり〜」
「え、高尾くん!? 」
振り向いたら、そこには高尾くんの姿があってびっくりしてしまった。
傍らの友人は誰?という顔をしている。というか、なんか怖い顔つきだ。
「高尾っ! 何をしているのだよ!」
「あ、わっりぃな、真ちゃん。茉穂ちゃん見かけたからさ〜」
高尾くんが肩に腕を回し、ポンポンと叩いてくる。
緑間くんの登場で展開についていけずにいたが、高尾くんが友人に話し掛けた。
「茉穂ちゃんの友達? ここに座ってもいいかな〜?」
「は、はい! どうぞ!」
高尾くんが友人の隣の席を指差すと、友人は置いておいた荷物を取り、席を引いた。
なんだか高尾に見惚れている。顔いいしね、高尾くん。
「高尾っ!」
「なんだよ、真ちゃん。久々に茉穂ちゃんに会ったんだし、別に構わないじゃんか。ね〜、茉穂ちゃん」
急に話を振られ、高尾くんの横に立っている緑間くんを見上げた。背が高すぎて首が痛くなりそう。
「う、うん。良かったら緑間くんも座ったら?」
そういって、空いている隣の椅子を引いた。
「わ、分かったのだよ」
眼鏡を弄りながら、緑間くんは席に座った。
一瞬、間が生まれる。
ぶっちゃけ、これからどうするのよ?と疑問を抱くと、高尾くんが口をひらいた。
「君は茉穂ちゃんの友達なの? あ、俺は高尾 和成。秀徳なんだ」
そう会話を始めた。
友人は緑間くんの挨拶も聞きながら、なんだか笑いそうになっている。
気持ちは分からなくもないし、高尾くんはニヤニヤしていた。
「じゃあ、二人ともバスケ部なんだ〜」
「そ。君は何部なの?」
「私? 私は茉穂と同じ料理部なの」
「へぇ、いいね。料理出来る女の子って」
「そ、そうかな? ありがとう」
やたら盛り上がる二人を眺めながら、私はシェイクを啜っていた。
照れている友人を見て、こりゃ、明日から煩そうなんて思ってしまった。
ズコーと凄い音がして、シェイクを飲みきったことに気づく。凄い音だったから、友人も高尾くんも緑間くんもこちらを見た。
「茉穂、もう飲み終わったの?」
「うん。そうみたい」
そういえば、飲み終えたら帰ろうと話をしていたのだが、それは出来ないようだ。
高尾くんなんか、音が凄かったからか可笑しかったのか笑っている。
彼って笑い上戸だよなぁ。
そんなことを考えながら、まだ帰らないよ!とアイコンタクトしてくる友人を見つめ、席を立った。
「……何か追加で頼んでくるね」
「うん、分かった〜」
財布を片手に移動すると、何故か傍らの緑間くんも席を立った。
「俺も行くのだよ」
「へ?」
「お、俺も何か追加するのだよ」
発言する緑間くんに高尾くんはブハッと笑い出す。
一体、なんなの?と疑問を抱きながら「煩いのだよ、高尾!」と怒鳴る緑間くんに押され移動した。
「緑間くん、もしかして気を遣わせた?」
レジに並びながら、後ろに立つ彼に聞いてみるが、そんなことはないのだよ。と言われてしまう。
そっか、と相槌を打ちながら何を注文しようかとメニューパネルを見る。
もう一回、シェイクでもいいかな〜なんて考えていると声を掛けられた。
「何にするか決めたのか?」
「え、あ、うん。シェイクにしようかなって」
「……先程も飲んでいなかったか?」
「あ〜、うん。好きなんだよね、ここのバニラシェイク」
そう言った途端、緑間くんの眉間に皺が寄った。
顔が良いだけに迫力がありすぎる。
「ど、どうかした?」
「…………いや、ここのバニラシェイクと聞くと…」
「あぁ、テツを思い出す? テツもここのバニラシェイクが大好きなんだよね。小さい頃、親たちが買ってきてくれた時なんか手違いでバニラ1つしかなくて、喧嘩したくらいだよ」
小さい頃を思い出しながら、クックッと笑いが溢れる。
とその時、視界に入った幼馴染みの姿に声が出た。
「あれ? テツ?」
「は? 黒子の姿など……」
緑間くんは気づかなかったようだが、声に気づいたテツはこっちに一直線に寄ってきた。
「茉穂、と緑間くん。こんなところでどうしたんですか?」
「テツこそ。部活は終わったの?」
「はい。ちょうど良かった、茉穂、一緒にシェイク買って下さい」
僕だとなかなか気づいてもらうのに時間が掛かって。早くシェイク飲みたいのに。と愚痴るテツを見て、茉穂は笑いながら引き受けた。
「というか、緑間くんと一緒なのはどうしてなんですか?」
「えっ、と……偶然?」
「偶然、ですか」
「……そうなのだよ」
テツが繰り返すと、何故か緑間くんはそっぽ向いてしまった。
分からずにいると、テツはクスッと笑い「シェイクお願いします」と傍から離れた。
一体なんなんだろう?と不思議に思いながら、レジでバニラシェイクを2つ頼んだ。
席に戻ると、テツも一緒のテーブルにいた。
「お、真ちゃん、茉穂ちゃんおかえり〜」
「テツ、ここにいたのね。はい」
「高尾くんに勧められたので。ありがとうございます」
シェイクを手渡して、席についた。
色々会話をしていると今度は火神くんが現れて、緑間くんと火花を散らしている。
テツや高尾くんが言うには相性が悪いだけ、というが……。
「そういえば、茉穂ちゃん。こないだ海常の黄瀬とカラオケしたんだって?」
「え? なんで知ってるの?」
「僕にも黄瀬くんから写メ届きましたからね。高尾くんが知ってるということは、緑間くんにメールがいったんですか?」
「そ、真ちゃんってば凄いイライラして大変だったよ」
「そういえば、僕のところに黄瀬くんからメールが着ましたよ。緑間くんに叱られたとか、なんとか」
それを聞いた高尾は腹を抱えて笑い始め、黒子も意味ありげに笑っている。
何故か、友人も茉穂と緑間を交互に見ると笑っていた。
訳が分からないのは茉穂と火神である。が緑間の「煩いのだよ!」という大声にその場は終わってしまった。
友人は方向が違うらしく、高尾くんと帰れない事を悔やみながら、たまたま途中まで一緒の火神くんを連れて帰っていった。
高尾くんはじゃあ、待ったねぇ〜と自転車とリアカーを繋げた乗り物に乗って行こうとしていた。
「高尾っ、待つのだよっ!」
「え〜、真ちゃんは茉穂ちゃんと黒子と帰りなよ。帝光仲間なんだし〜。じゃーなぁ〜」
高尾くんは自転車でリアカーを引っ張っているとは思えない速さで行ってしまった。
「……高尾くん、凄い脚力ありそうだね。リアカー引っ張って行くなんて」
「そうですね、僕には無理ですね。あんなの」
そんな会話をしながら、家路へと向かう。
別段、テツとは話さなくても互いに苦にはならないが、緑間くんが加わると何か不思議である。
あまり会話もなく、分かれ道まで来た。
「緑間くんは、あちらでしたね」
「あぁ。……その、気をつけて、帰るのだよ」
「緑間くんも気をつけてね」
「大丈夫だ、ラッキーアイテムを持っているからな」
そう言ってスタスタ歩いて行く緑間くんを見送るが、茉穂は思い出した様に声をあげた。
「テツ、先に帰ってて! 言うの忘れてた!」
「え、茉穂?」
やや小走りで行ってしまった幼馴染みに黒子は額に手を当てた。
「走ったりしたら、辛いのは自分なのに」
ボソリと呟いた声は誰にも届かなかった。
◇◇◇◇◇
「緑間くんっ!」
名前を呼ばれ、振り返れば茉穂の姿に緑間は目を見開いた。
「白川、どうかしたのか?」
「緑間くん、歩くの早いねぇ〜」
ハァハァとやや息を乱し、胸に手を当てている茉穂に緑間は踵を返して、彼女の元へと戻る。
「どうかしたのか?」
再び、訊いてみると彼女は笑みを浮かべて口を開いた。
「あのね、いつもおは朝の占いの事ありがとう!」
「大したことではないのだよ」
「でも朝は忙がしいのにメールくれるでしょ。ちゃんと会ってお礼言いたかったの。本当にありがとう」
ふふっと溢れる笑みに、緑間の心臓はどくんっと大きく高鳴った。
じゃあ、それだけ。と行って引き返そうとする茉穂の腕を緑間は慌てて掴んだ。
「待つのだよ!」
「へっ?」
「……く、黒子はどうしたのだよ?」
「テツ? 先に帰ってもらったけど?」
キョトンとした顔で緑間を見上げてくる姿にまた胸が鳴る。
「もう暗い。送っていくのだよ!」
なんとなく顔を見られたくなくて、緑間はそっぽ向いて、そう告げると歩き出した。
いきなりの行動に訳が分からないが、茉穂は緑間を追いかけた。
その姿に緑間の口端がやや上がったのだった。
To be Continued
幕間的な感じ。
纏まりがなくてすみません。
次は一気に進みたい、ですね。
2013/06/17