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黒子のバスケ

テツが新技を特訓していた頃、誠凛高校では第一回目となる、学園祭が行われようとしていた。(昨年は新設校故に予算やらの関係でなかったらしい)
という訳で、私は部活の方ではシュータワーというのを作り、クラスでは甘味処をすることになっている。
ちなみにテツのクラスではカメラとプリンターを使い、色々な衣装を揃えて、撮影が出来るという『コスプレ写真館』というのをするらしい。そして、部活では──

「さぁ、みんな!キリキリ働いて、優勝を目指すのよっ!」

リコ先輩は制服のままだが、テツたちはコスプレをしている。いや、違うかな、ギャルソン姿である。
さつきちゃんが見たら、多分気絶しそうな気がする。今日、来るみたいだけど、先に連絡しておいた方がいいかしら?

「あのぅ、」

「ん? んんん? 茉穂ちゃん?! やだ、可愛いー!!」

「わわっ! あ、ありがとうございます。クラスの出し物の衣装なんです」

ムギュッと抱きつかれてしまった。
慌てているとテツが話しかけてきた、というか、準備中であろうに皆さんが集まってきた。

「カントク、何してるんだよ。白川さんびっくりしてるだろうが」

「いやいや、でもカントクのいう通り白川さん可愛いね」

「でしょでしょ!」

「なんでカントクが答えてるんだよ」

「はは…」

なんだか乾いた笑いが出てしまった。

「あ、あの…足りないって言われてた材料が調理室に届きましたので連絡に来たんです。部長に頼まれて……」

「あらそうなの?じゃあ、水戸部くんと土田くん、取りにいってもらえるかしら?」

「オッケー。行こうか、水戸部」

「…………」

コクンと頷いた水戸部さんは土田さんと教室を出ていった。
調理は大丈夫なのかと思っていたが、テツ曰く、火神くんと水戸部さんが主に調理をするらしい。といっても、サンドイッチとかの軽食らしいが。

「しかし白川さんの衣装可愛いね、これはクラスの?」

「あ、降旗くん。うんクラスの。良かったら来てね。お茶くらいならサービスするから」

「本当? ラッキー」

降旗くんに言われて改めて衣装を見てみる。可愛いのは嬉しいが、似合っているかがよく分からないが。

「茉穂、リボンみたいなのずれてますよ」

「え、うそ?」

慌てて直そうとするがどうなっているかがよく分からない。するとテツの手が伸びて触れてきた。

「わ、ありがとう…」

「あれ、リボンじゃないんですね。そういえば、茉穂は裏方だったんじゃなかったでしたか?」

テツの疑問に「ああ」と答えた。

「ウェイトレスの女の子一人、熱出しちゃったみたいで、休んじゃったの。そしたら衣装余ってるからって無理矢理着せられたの」

男子バスケ部がギャルソン姿であるならば、茉穂の姿は紅色を基調とした、着物である。が着物の上には白のレースが施されたエプロンと、頭には白いレースのヘアタイが乗っている。
強いていえば、和風メイドという感じだろうか。

「そうだったんですか」

「うん。まぁ、基本的には裏方の予定だけどね」

フフッと笑う茉穂の姿にバスケ部員はどこか癒されていた。

「あ、そろそろクラスに戻らないと。じゃあ、テツ、良かったらクラスの方にも来てね。じゃあ、失礼します」

一年生たちには手を振りながら、二年のリコたちには頭を下げて、茉穂はバスケ部が使用する教室から出ていった。

「いや〜、なんつーか、本当に白川さんは癒されるよな」

「妹みたいで可愛いよな」

「むしろ妹に欲しいな」

うんうん、と日向たちは腕を組んで頷いていたのだった。


◇◇◇◇◇


「おー、めちゃくちゃキレーじゃね?」

「新設校だからな」

「茉穂ちゃんのクラスどこかな? 真ちゃん、知ってる?」

「当たり前なのだよ、俺は人事を尽くしているかなら」

フンと眼鏡を押し上げる緑間 真太郎の友人であり、相棒である高尾 和成はへーへーと流した。
わざわざ聞いたんだ〜なんてからかってやりたくもなったが、帰る!と言い出してしまいそうな、面倒なヤツなのだ、コイツは。

「お、でも先にバスケ部にいってみるのも良くね? サンドイッチ攻防?なんだよ、攻防って、工房の間違いじゃねーの?」

笑いの沸点が低いせいか、高尾は「ブフォ」と笑い始めていた。
緑間はそれを目線だけ向け、馬鹿らしいと思いながら、入口で渡されたパンフレットを開く。
白川から聞いていたクラスを探し、まだ笑っている高尾をもう一度一瞥した。

「行くぞ、高尾」

「……わーったよ、真ちゃん」

緑間は片手に本日のラッキーアイテムを持ち、校舎内へと入っていった。


◇◇◇◇◇


「もう、青峰くん!」

「なんだよ、さつき」

「本読みながら歩くの止めなさいよ!」

「うるせーな、いいだろ、別に」

先程、緑間たちがいた場所とは違うところに目を引く男女がいた。
女の方は綺麗な長い髪に羨ましいとしかいえない見事なスタイルの持ち主、そして、もう一人はガチでヤバいのではないかと思いたくなる長身の顔付きが怖い男だった。しかし持っているのはグラビアのようだが。

「もう、青峰くんも久々に茉穂ちゃんに会いたいでしょ?」

「茉穂〜? 茉穂って、アイツ誠凛だったのかよ?!」

「……え? 知らなかったの? 私、何回も教えたよね? 茉穂ちゃん、テツくんと同じ学校だよ、って。あ〜でもいいなぁ〜茉穂ちゃん、私もテツくんと同じ学校に通いたい〜」

傍らで頬に両手を添え、騒ぎ出した幼馴染みに青峰は(うるせーな)と思うしかない。
そして、先程名前が出たかつての同級生を思い浮かべた。
懐かしさとほんの気まずさ。
意図して会わなかった訳ではないが、なんとなく疎遠になっていた。

「おい、アイツはどこにいんだよ」

「え? あ、待って待って青峰くん!」

スタスタと歩き出した幼馴染みに桃井は慌てて追いかけたのだった。

「茉穂ちゃんのクラスは、確か──」

慌てて桃井が校内図を拡げ、現在位置を確かめた上で、青峰を掴み「あっちみたい」と引きずっていった。


◇◇◇◇◇


「ひょえ〜、結構人いるもんスね〜」

黄瀬は校門に掲げられているアーチの看板を見てから、人の混み具合を眼鏡越しに見つめた。
前回来た時は女の子たちに掴まり、サイン会をしてしまい、黒子を待たせてしまった。
今回は、帽子を目深に被り、モデルの仕事で使用したお洒落なサングラスを購入し、付けてきた。

「つか、一人で来るとか、心細いったらないっスよ、センパイたちも来てくれたら、いいっスのに。っと、黒子っちの所はなにしてるんスかね、んと、男子バスケ部、バスケ部…っと」

ブツブツと一人淋しく、入口から入って直ぐに係りから渡された案内図を眺めた。元チームメイトの彼はどこかな〜なんて思いながら。




To be Continued


いきなり文化祭ですみません。
2014/09/21


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