15

黒子のバスケ

食べ終わった後、高尾は黒子に案内を頼み、黄瀬、青峰、さつきもなんだかんだとバスケ部の方へと行ってしまった。
広告塔並の派手さの黄瀬がいなくなったからか、教室内は静かになった。
だが、まだ先程の席には緑間ただ一人が座っているのだが、やはり人目を引くのか女の子のお客さんたちがチラチラと彼を眺めている。
まだ早い時間ではあるので混んではいないが、なんと言っても人目を引く美形が座っているせいでちょっとした客寄せパンダになっていることに本人は気づいていない。
その様子を眺めていた茉穂は隣に立つ友人にポツリと呟いた。

「緑間くん、退屈じゃないのかな?」

「大丈夫じゃない? お客さんも今はオーダーないし、茉穂、緑間くんと話してきたら?」

「え? でも…「いーからいーから、行っといで!」」

どんっ!と背中を押され、渋々といった訳ではないが茉穂は緑間に近づいた。

「緑間くん…」

「白川、どうしたのだよ」

まだ時間ではないだろう、と黒板上にある時計を見た緑間に茉穂は苦笑した。

「その、やっぱり暇じゃないかな?って……今からでも高尾くんたちの所に行ってみたら?」

「…………もしかして邪魔になっているか?」

「え? そんなことないよ? 黄瀬くんが出ていったら、お客さんちょっと減ったくらいだし」

「……なら、いいのだが…。そうだな、その…おしるこのおかわりを頼んでもいいか?」

緑間の手元には既におしるこのお碗はなく、抹茶が僅かに入った湯飲みがあるだけだ。
おしるこが好物とは聞いていたが、おかわりする程だとは思っていなかった茉穂はフフッと笑みを浮かべた。

「ど、どうかしたのか?」

「ううん。おかわりだなんて本当におしるこが好きなんだね。作った甲斐があったよ」

「ああ、ここの汁粉はなかなか美味………は?」

「ん?」

茉穂の言った言葉に緑間は眼を見開いた。
文化祭の、まして、クラスの模擬店の汁粉なんてインスタントかレトルトなんだろうと思っていた。むしろいつも愛飲している缶だとばかり。
しかし思っていた以上に美味かった為、どこのメーカーなのかと訊こうと思っていただけに、彼女の発した言葉に驚いた。

「……もしかして、この汁粉は白川が作った、のか?」

「うん、そうだよ? お口に合ったみたいで嬉しいよ」

にこり、と笑う彼女に緑間はさっと顔を逸らした。
茉穂はどうしたんだろう?と疑問に思い、声を掛けようとして「白川さーん、ちょっとー」と呼ばれ、席を離れた。
その事に緑間はホッと息を吐いた。
口元を手で覆い、他人に見せられないだろう顔を隠した。

(不意打ちなのだよ! あんな、あんな表情っ!)

桃井のように美人という訳でもない。中学時代は回りは美形がやたら多かったが、緑間とて一般的な美醜くらいは分かる。
だが、緑間にとって彼女は誰よりも可愛いと思えてしまうのだった。
しかし、黒子や桃井は茉穂に関しては充分可愛いと思っているし、事実中高と彼女に想いを寄せている人間がいるのだが、彼はそれを知る由もない。

(恋は盲目……とは良く言ったものなのだよ)

こんな調子で彼女と学祭を回るだなんて、自分は大丈夫だろうか、とため息を吐いた。

(早く戻ってくるのだよ、高尾!)

ここにはいない人物にそんな事を思っていれば、手元にコトリとお碗が置かれた。
「おかわり」といっていたおしるこを持ってこられ、尚且つ笑みを浮かべる茉穂を前に、緑間はどこか緊張した様子で美味いお汁粉を食したのであった。
やがて、交代の時間になり、ちょっと待っててね!と言う茉穂の言葉に緑間は教室に留まったままだった。

「お待たせー」

「…………着替えたのか…」

パタパタとやって来た茉穂の姿を見て、緑間はポツリと溢した。
紅い着物が似合っていると思ったし、ヒラヒラのエプロンも可愛かった。
そういえば、桃井や黄瀬、高尾は彼女の格好を可愛い可愛いとやたら褒めていたな、と今更ながら思う。
青峰なんぞは「なんだっけ?あれ、あれだよ、マゴにもなんたら」とか言っていた。
黒子が「青峰くん、それ誉め言葉じゃないですし、孫じゃなくて、馬子にもです」

「はぁ? マゴってマゴだろ?」

「青峰っち分かってないっスよね」

「あ? 黄瀬に言われたくねーわ」

等と騒いでいた。高尾なども「茉穂ちゃん、可愛いね」と言っていた。
緑間は無意識にイラッとし、彼女を見た。何回か見た事がある制服姿。
キョトンとこちらを見上げてくる目線にうっ、となってしまった。

「そ、その……先程の、着物……に、ににに似合っていたのだよっ!」

急に真っ赤になりながら、カチャカチャカチャと眼鏡を直す緑間に茉穂はびっくりした。
だが、彼のその態度に、熱が移ったかのように恥ずかしくなる。

「……あ、ありがと…ございます…」

伝染した、と思うしかなくて茉穂は顔を隠したのだった。
二人のいい雰囲気は、茉穂の友人によって高尾に筒抜けである事に、緑間も茉穂も知らなかったのだった。




To be Continued


act.15
2015/01/31


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