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黒子のバスケ

学園祭が終わり数日、バスケ部はウインターカップ予選が始まった。それは緑間くんも同じ事。
ただ、予選といってもインターハイの地区予選とは違いウインターカップ予選はトーナメントではなく、インターハイ予選上位8校が競い、2校が出場出来る。リコ先輩曰く、ウインターカップは夏から続く最も長い予選らしい。
しかも今年は特別枠があるらしく、インターハイ優勝、準優勝のチームは無条件でウインターカップ出場が決まっているらしい。
つまり、準優勝した桐皇学園は出場が決まっていて、東京都代表は後2校出れるらしい。
らしい、らしいばかりだが、バスケ部ではない自分が知っていることはこれくらいだ。
ちらり、と机に置いてある携帯に目をやる。毎日欠かさず送られてくるメールは夏休みからのとなんの変わりもなく『ラッキーアイテム』に関する事だけだ。
それに別段返す理由もないので、ベッドに寝転びながら目を閉じた。
瞼の裏に浮かんでくるのは緑間くんだ。
ついこないだの告白を思い出して口元が歪むのが分かる。恥ずかしいのかなんなのかは分からないが、自分を保ちたいが為に歪むのだ。
別に嫌いではないし、彼の姿を見れば、動悸が早まることがある。

「────緑間くん」

呟いた声音が部屋に響いたような気がして、茉穂はベッドから飛び起きた。
誰かに聞かれた訳でもないが、どこか恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じる。
学園祭以降、緑間くんには会えていない。
ラッキーアイテムのメール以外は来ないのだ。
高尾くんから『茉穂ちゃんが応援に来てくれたら真ちゃんすげー喜ぶと思うんだけど、来れない?』とメールが着ていたが、行きようがないのだ。
第一に、あの時、緑間くんの申し出に私は明確には答えを出せなかったからだ。
喜ぶ、だろうか──。
きちんと答えを出せずにいた私のことなんて嫌になってないだろうか。

「……応援、行きたかったな…」

友人は高尾くんに誘われたから行ってくる!とLINEで知らせてきた。
私は数ヶ月前から今日、明日と用事が入っていた為に行けないのだ。
体育座りのまま腕に額を乗せた。
あー、と唸っていると階下から声がかかった。

「茉穂ー? そろそろ行くわよー」

「……はーい…」

母からの呼び掛けにベッドから降りて、姿見を覗いた。特に問題はないだろう。
寧ろ、向こうにいってからが大変なのだから。


◇◇◇◇◇


夜、テツから「明日は秀徳と試合です」と電話を受けた。決勝リーグに進んだ誠凛は今日、泉心館との試合に勝ったそうだ。
決勝リーグに進んだことは友人からのメールで知っていたし、高尾くんからもメールが送られて着ていた。が緑間くんからはラッキーアイテムのメールしか着ていない事になんとなくがっかりしてしまう。
「茉穂」電話越しに名前を呼ばれ、茉穂はハッとした。電話の最中だったのだ。

「な、なに? テツ」

「……明日は試合、観に来るんですか?」

「そう、だね。明日は手伝わなくていいし」

「そうですか」

「うん」

「茉穂、1つお願いがあります」

珍しく頼み事をしてくる幼馴染みに茉穂は耳に集中する。

「何? テツが頼みなんて珍しいね」

「明日、レモンのハチミツ漬け作ってきて下さい」

「…………はい?」

「忘れたんですか? カントクの事」

その言葉に茉穂は夏休みの合宿に付き合わせられた理由を思い出した。
そうだ、彼女は、リコ先輩はさつきちゃんと同じだった。レモンをまるごとハチミツ漬けにするんだった。

「わ、分かった。ハチミツ漬け持っていくよ」

「よろしくお願いします。────後、」

「まだあるの?」

なんとなく笑いながら訊ねるとテツの言葉に、茉穂は眼を見開いたのだった。




To be Continued


act.21
2015/08/26


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