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《それでは これより ウィンターカップ予選決勝リーグ 第二試合 誠凛高校対秀徳高校の試合を始めます》
館内に流れるアナウンスに歓声が広まる。
選手たちが礼をして、ジャンプボールは木吉先輩のようだ。
ボールは始め、伊月先輩が取ったかに見えたがあっという間に秀徳に決まってる渡る。しかし、テツがブロックをした。それでもボールを拾ったのは緑間だった。
シュートフォームに入り、手からシュートを放ったがそれをブロックしたのは火神である。
あっという間の出来事に、茉穂は友人を探すのすら忘れ、試合に釘付けになった。
(緑間くんっ…)
秀徳に渡ったボールはまた緑間へと繋がっていくが、またしても火神による連続ブロックで止めていく。
さっきからそれの繰り返しで、開始から秀徳相手に誠凛はリードし、それを守っている。
なんだろう、茉穂は何かしら違和感を感じていた。
そもそもバスケの知識はなんとなくしか分からない茉穂にとって、何がおかしいとかは分からない。それでも夏休み合宿時の練習試合を間近で見ていたからだろうか、何か違う気がした。
グッと手摺を握り、試合を見つめていた。
「あれ? 白川さん?」
「……黄瀬くん?」
名前を呼ばれて振り向けば、そこには制服姿の黄瀬が立っていた。
なんでここに、とも思ったが彼は『キセキの世代』と呼ばれていた一人だ。
元チームメイトである彼らを観に来ていたとしても不思議はない。
「緑間っちの応援スか?」
黄瀬の一言に茉穂は眼を丸くし、クスッと笑みが溢れた。
「黄瀬くん。誠凛の生徒だよ、私は」
「あ、そういやそうだったスね。じゃ、黒子っちの応援スか」
「う、ん。………そうだね」
頷きながら、視線をコートに向ける。
真っ先に目に入るのは誠凛、ではなくオレンジ色のユニフォームを着ている緑間だ。
誠凛を応援しなければならない。自分は誠凛高校の生徒なんだから。
テツにも昨夜約束したじゃないか、きちんと誠凛を応援する、と。
その様子に黄瀬は頬を掻いた。
「そういや一人なんスか?」
「え、あ、うん……。友達と来たんだけど、はぐれちゃって。テツ、誠凛に差し入れに行ってたら試合も始まっちゃってね」
探すより試合が気になっているのだ。
「そっスか。なんなら一緒に観ないっスか。俺、先輩たち誘ったんスけどみんな断られて……心細いったらないっス!」
あの先輩たちに誘ったのに断られる黄瀬を想像して、茉穂は思わず笑ってしまった。
なんとも微笑ましい感じがする。
「ちょっ、笑わないで欲しいっス!」
「ご、ごめんね」
「ま、いーっスけど」
黄瀬も少し笑いながら、視線をコートへ向けた。
ボールが緑間に渡り打とうとしたが、火神がブロックする為に飛んだ。しかしそれをフェイクでかわしすぐにシュートフォームに入るも火神の連続超跳躍で止めようとする。
一瞬早くボールを放つも軌道はずれていた。
「あのタイミングで触れるんスか、火神っち」
隣の黄瀬が怪訝そうに呟くのを耳にしながら、ボールを見ればテツがパスを繰り出した。
試合はまだ続き、緑間がフェイクを混ぜてきていた事に黄瀬はもちろん、コート内の選手たちも惑わせられている。
再度、対火神でフェイクを混ぜた緑間に連続超跳躍は無理だったらしい。跳べない火神を無視し、シュートフォームに入ろうとして、木吉が代わりに止めた────が、緑間がパスを出した。
「なっ?! 緑間っち?」
出されたパスはあっという間に秀徳の点に変わる。茉穂は驚きはしたものの、隣の黄瀬やコート内の彼ら程驚くことはなかった。
別にパスを出してもいいじゃないか、とも思う。
不思議そうに見ていると、黄瀬が口を開いた。
「あの緑間っちがパスを出すなんてびっくりしたっスね」
「?」
「白川さんはあまり見たことなかったっスよね。緑間っちは………キセキの世代といった方がいいかもしれないっスけど、周りを頼るようなバスケはしてなかったんスよ」
少しだけ情けなさそうな声音で話しだした。
「だからこそ黒子っち──誠凛はチームプレイで対抗してた。でも今は逆」
「逆?」
「うん、緑間っちが一人で闘うことをやめて、チームとして一つになったっス。秀徳は」
そう話す黄瀬の姿がなんだか嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「黄瀬くんも…」
「ん?」
「黄瀬くんも、そうだったの? 一人で闘ってたの? インターハイで見た時はそんな風に見えなかったよ?」
「……あんときは一回、誠凛に負けたっスからね…。多分、緑間っちも黒子っちに……」
呟いて黙ってしまった黄瀬に茉穂は倣うようにコート内を見た。
ビー!と機械音がして誠凛メンバーチェンジのアナウンスが鳴った。
「ありゃ、黒子っち下げられたっスね」
どうやら交代は黒子のようだった。とりあえずのメンバーチェンジなんだろう。まだあの新技を出してはいない。
「……頑張れ、テツ」
呟いた声音は隣の黄瀬に聞こえただろう。でも気にすることはない。だって茉穂は誠凛の生徒なのだから。
ふと緑間に目を向けるが、彼と目が合う事はない。人事を尽くして天命を待つ、が座右の銘の彼だ。
人事を尽くすべく、練習していたのだろう。
きっと、今、彼の眸には茉穂は映らない。
目の前の選手──火神や黒子たちだけなんだろう。
(男の子って、凄いなぁ……)
茉穂はそんな事を思いながら、眩しそうに目を細めて動き回る彼らを見つめていた。
To be Continued
act.23
2015/08/31